アルパカ
アルパカの見た目には癒されますよね。
最近モスクワのメトロにアルパカが乗っていたそうです。
見てみたかったですね。
夏の高山にも行ってみたいです。スイスアルプスとか。きっと気持ちいですよね。
ユイ:シシリー、今日わたしカザド・ドゥムの近くにあるアルパカ牧場にクリーナースライムを連れて行くんだけど、一緒に来ない?
シシリー:えっ!アルパカに会いに行くの?行く行く!
ユイ:今からスライムステーションに行ってスライムを何体かとってきて、ワイバーンで牧場に行こうと思うの。
シシリー:楽しそう!だったらかごがいるんじゃないかしら。
ユイ:そうね。籠をもって一緒に行きましょう!
ユイとシシリーはスライムステーションへ鳥かごならぬスライムかごをもって向かった。スライムステーションにはいろいろなタイプのスライムが常に数体ずついる。
ドロシュの街の住人はここから好きな時に好きなだけ必要なスライムを連れていくことができる。
シシリー:ユイ、どの種類のスライムをもっていくの?
ユイ:えっとー、クリーナースライムと、スカベンジャースライム、あとプランツスライムね。
シシリー:わかったわ、それぞれ3匹ずつくらいでいいかしら。
ユイ:ええ、そうしましょう。
2人は数匹ずつスライムをかごに入れて彼女たちのワイバーンの待つ広場へと移動した。
ユイ:じゃあ北方のカザド・ドゥム目指して飛びましょう!
シシリー:レッツゴー!
2人は宝珠を装備したワイバーンに乗ってドロシュを飛び立った。
2人の乗ったワイバーンたちはぐんぐんと高度を上げアという間に雲の上に出た。
そこからは風を切りながら眼下の雲海をすべるように飛んで行った。
ドロシュからマノーク川をさかのぼればカザド・ドゥムがあるミストラル山脈に行きつく。
ただし、今日の目的地であるアルパカ牧場はカザド・ドゥムから少し離れたミストラル山脈の中腹にある。
川を船で遡上したり、地上の道を進んでいたりしたのでは数日かかってしまう道程も宝珠を装備したワイバーンで空路の最短距離をとればあっという間である。
ワイバーンで数十分飛んだ頃に雲海の上にまでそびえている万年雪に覆われたミストラル山脈の峰々が見えてきた。
シシリー:ユイ、そろそろ高度を下げてそのアルパカ牧場に向かいましょうよ。
ユイ:そうね、私が案内するから後ろをついてきて!
シシリー:わかったわ!
ユイがシシリーの前方に出て雲海へと突っ込んでゆく。
高度を下げると荒々しいミストラル山脈の山肌が目に入ってきた。
森林限界よりも上のエリアには今が夏ということもあって青々と高山草原が広がっている。
そしてその中にアルパカ牧場もあった。
上空から近づくと緑の草原の中に白や茶色のモコモコとした斑点が見えてきた。
シシリー:あれがアルパカ牧場?
ユイ:そうよ!さあ着陸しましょう!
2人は牧場の柵の外にある山小屋のそばに降り立った。
ユイ:こんにちはエマさん!ユイです!
エマ:よく来てくれたわねユイちゃん!あら、そちらのハーフエルフの子ははじめてお目にかかわるわね。私はエルフ族でここミストラル山脈でアルパカの放牧をしているエマよ。よろしく!
シシリー:こんにちは、ユイの友達のシシリーといいます!アルパカすごくかわいいですね!
エマ:あら、ほめてくれてありがとう!
ユイ:今日は依然お願いされていたスライムをお届けに来たんです。こちらになります!
エマ:あらぁ、立派なスライムがたくさん!ありがとう!これから早速スライムを使って作業をしようと思うのだけれど、協力してくれるかしら?
シシリー:喜んで!
3人は夏の高原に吹く澄み切った風を深く吸い込みながらアルパカたちがいるほうに向かった。
エマ:まずはプランツスライムとスカベンジャースライムをこの囲いの中に放してくれるかしら?彼らがこの牧草地の牧草の健康や土壌を改良してくれるから。
ユイ:わかりました!
シシリー:よーし、スライムたち頑張って!
2人がスライムをかごの中から解き放つとスライムたちは元気よく牧場にピョンピョンと飛び跳ねて入っていった。
エマ:プランツスライムとスカベンジャースライムは放っておいていいから、次はクリーナースライムでアルパカの毛をきれいにしてくれるかしら?きれいになったらアルパカの毛を刈ろうと思うの。
シシリー:任せてください!
2人はエマが呼び寄せたアルパカの背中にクリーナースライムを載せてゆく。
クリーナースライムはアルパカの体を包むように大きくなったりモコモコの毛の中にするすると入っていったりしてアルパカの毛の汚れをみるみるうちにきれいにしていく。
アルパカも気持ちよさそうである。
クリーナースライムにきれいにしてもらっている間もアルパカももぞもぞと草を食んでいる。
クリーニングが終わったアルパカはエマが次から次へとその毛を刈ってゆく。
見事な毛刈りのテクニックである。
毛を刈られたアルパカはスリムになって再び元気に牧場に新鮮な草をはみに駆けていった。
その後も順調に作業は進んでいった。
そして昼の3時ごろにはすべてのアルパカのクリーニングと毛刈りが完了したのだった。
エマ:助かったわぁ!ユイちゃんにシシリーちゃん!
ユイ:こちらこそとっても楽しかったです!アルパカにも癒されました!
シシリー:私たちもアルパカ買ってみたいって思いました!
エマ:それなら、ドロシュの街のこのお店に行ってこの手紙を渡せばアルパカを譲ってくれるはずよ。
ユイ:このお手紙は?
エマ:あなたたちがよく働いてくれたからそのちょっとしたお礼よ。このお店の主人とは仲がいいから、すぐにとはいかないけれど数日中には多分アルパカを2頭くらいあなたたちのところに届けてくれると思うわ。
シシリー:ええ!いいんですか!ありがとうございます!
エマ:それにたくさん働いておなかすいたでしょう?お菓子とお茶を用意するから食べていかない?
ユイ:やった!
3人は山小屋の外にあるテラスでお茶とお菓子を楽しんだ。
目の前には万年雪に覆われた急峻なミストラル山脈の山肌と山麓へ続く森、青い空と風に流されてゆく白い雲。
これ以上ないほど穏やかで楽しい時間をすごしたのちユイとシシリーの2人はエマに別れを告げてドロシュへの帰途についたのだった。
後日、ユイとシシリーあてに白と茶色のアルパカが送られてきた。
2頭のアルパカは魔の森の屋敷、地下第10階層の魔物牧場の仲間となったのだった。
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ーなおこの物語のスピンオフ小説募集中:町の人でも王族でも、貴族でも、冒険者でも、魔物でも、何でもいいのでスピンオフで書いてみたい方がいたらこの異世界を舞台としてどしどし使ってみてほしいです。書いてくださった際にはぜひご一報ください-