ビーチコーミング
採集クエストばっかりやってたいです。
今日、俺はドロシュ湾の南東の岬の外洋側に来ている。
まだ日が昇ってそれほど時間がたっていないせいか空気が澄んでいて、暑くなく、風も気持ちよい。
澄み渡る青空と太陽の光を反射してキラキラと輝く海面。
海岸に打ち寄せる波の白い波頭が美しい。
ざぶんざぶんと強弱を繰り返しが習訪れる波の砕ける音はある人が言うには胎児が母親のおなかの中で聞く音とそっくりだそうで、ただ聞いているだけでもかなり癒される。
磯の香りが風に乗って運ばれてくるこの素晴らしいビーチで今日はビーチコーミングをする!
ここは砂利の海岸だ。
湾内には砂浜のビーチがあるが今日の目的にあっているのはこの砂利の海岸だ。
ビーチコーミングとは海岸での宝探しである。
とりわけ今日の目的はシーグラスとそれによく似た魔石の採集である。
シーグラスは海の中でガラスの破片が研磨されスモーキーな質感になった海の宝石とも呼ばれるものである。
そして、海岸には海の魔物の魔石も石とともに打ち寄せられる。
魔石は通常魔物を狩らないと手に入らないが海岸の散策によって見つけることもできるのだ。
この岬には山側から海に流れ込む小さな小川がある。
シーグラスや魔石はこういう小川が流れ込むあたりの海岸でよく見つけることができるのでそこを探索する。
今はちょうど干潮の時間帯なので波打ち際を中心に探していく。
少し歩くとさっそく黒い石に交じって水色のシーグラスを発見した!
親指の先くらいの大きさで平べったく、角がいい感じに取れ、表面も十分スモーキーな感じになっている。
続けて濃い緑のシーグラスだ!
これは小指くらい長さの細長いものだ。さっきのものよりより研磨されている。
見つけたシーグラスは持ってきた鞄に入れる。
水色や緑色、白のシーグラスは比較的よく見つかるのだ。
しばらく波打ち際を探索していくうちに次から次へとシーグラスが見つかる!
前世では東京湾の湾岸ではなかなかシーグラスを見つけることができず、しばしば遠出したものだった。
ここではこんなに簡単に良質なシーグラスが見つかる!
最高だ!
そうこうしているうちに石の隙間に紫色にきらりと輝くものを発見した。
拾い上げてみると魔石ではないか!
濃い紫色の魔石は角が取れて丸くなっているが、その内部に魔石特有の輝きをいまだに残している。
その周辺を中心に目を凝らして探してみると再び濃い紫色の魔石を見つけた。
今度のは先ほどのものよりも少し大振りである。
続いて見つけたのは真紅の魔石である。
魔石はシーグラスのよりもより球形に近いものが多い。
この深紅の魔石はおそらくレッドシードラゴンの魔石ではないだろうか。
魔石最終の楽しみの一つはこうして見た目から推測したその魔石の元の魔物の正体を工房に戻った後で魔力波動を照合することで確かめることである。
あまりに砕けて小さくなりすぎてしまった魔石は照合することができないのであるが、これくらい十分な大きさを保っているものに関しては問題なく照合できる。
そして、このシーグラスや魔石というのはアクセサリーのパーツになるのだ。
魔石であれば魔道具の部品にすることもできる。
海の中で研磨されることで生じる独特の質感が人気なのである。
そして私もそうした質感が気に入っているからこうして海岸で宝探し気分で採集クエストチックなことをしているわけである。
こうして波の音を聞きながら海風に吹かれてたくさんの石の間に隠れているきらりと光る宝物を見つけるのは童心に帰るようで純粋にとても楽しい。
最近は本当にいろいろありすぎでバタバタしていたからたまの休日にはこういう一人の時間があってもいいものだ。
水平線を見ればその先には今ここからは見えないがアヤック諸島があり、そしてさらにその先には魔族が暮らす双子大陸があるのだ。
などとボーっと考え事をしながらその後も潮が満ちてくるまで海岸をぶらぶらと歩きながらビーチコーミングを楽しんだのだった。
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ーなおこの物語のスピンオフ小説募集中:町の人でも王族でも、貴族でも、冒険者でも、魔物でも、何でもいいのでスピンオフで書いてみたい方がいたらこの異世界を舞台としてどしどし使ってみてほしいです。書いてくださった際にはぜひご一報ください-