黒の塔
お久しぶりです。
ほのぼの系でこの話は進めようかと思っていたのですが、ちょっと方向性を変えてみようかなと思います。
ほのぼの系の話も書くと思うので、好きなところを読んでいただければと思います。
よろしくお願いします。
死霊王は冥府の扉に通じる穴の中に大規模魔方陣を組み立てた。
底の見えない巨大な陥没穴の中に一回り小さい魔方陣が現れた。
複雑な紋章からまがまがしい魔力があふれる。
邪悪な魔物たちが叫び死霊たちは演舞する。
魔方陣から赤黒い光が空に向けて解き放たれみるみるうちに巨大な黒い塔が空を突き刺すように伸びていった。
茫漠とした荒野の中にぽっかりとあいた穴の中に突如としてその塔は現れた。
それは漆黒の塔であった。
魔法によって構築されたとはいえ、ほとんどの物理攻撃でも魔法攻撃でもこの塔を傷つけることはできない。
塔は死霊王が滅せられるまで不滅なのである。
塔には東西南北に門があり、穴の中にそびえる黒の塔と外界とを結ぶ4つの橋それぞれとつながっていた。
塔は数十回層に分かれており内部は複雑に入り組んでいた。
塔はその最下層で冥府の扉とつながっていた。
冥府の扉はもはや開かれたままになり扉の向こうで死霊王がこれまで蓄えてきた邪なるものたちがうごめいていた。
彼らはようやく地上に出るチャンスを得ることになったのだ。
塔の最上部には黒魔法の儀式用の神殿があった。
かつてここで行われた邪悪な儀式には必ず生贄がささげられた。
様々な種族の血が流され叫び声が響き渡った儀式上もこうして復活したのだった。
黒の塔は新鮮な生き血を欲していた。
生贄の絶望の叫びを欲していた。
絢爛豪華でありながら瘴気が充満し常人ならばその場に居合わせただけで正気を失う死霊王の玉座の間には死霊王とその配下たちが集っていた。
王の復活に集まった有象無象の悪霊たちは黒の塔の復活を寿ぎ、次々と橋を渡ってこの悪の城の中へと入っていった。
死霊王は配下の悪霊たちにいくつかの命令を下した。
一つ目はドニアのドワーフ王国の征服だった。
ドニアのドワーフ王国は貨幣偽造事件で貨幣鋳造権を失って以来周辺国との関係が悪化し、国力も著しく低下していた。
しかしなお莫大な資源をその国土に保有しており死霊王は手始めにこの哀れなドワーフ王国を滅ぼすことにしたのだった。
第二は奴隷狩りであった。とりわけエルフ族の女子供の奴隷狩りを命じた。
かつて勇者に滅ぼされる以前死霊王の配下には極めて知能の高いオークの軍勢がいた。
オークとはそもそも拷問によって堕落させられたエルフから生まれた存在であった。
死霊王はオークの精鋭軍を再建するつもりであった。
第三は邪悪な魔物を集めることだった。
死霊王は魔物を自由に使役できた。
魔物たちは侵略軍の強力な尖兵として活用されるのだった。
とりわけ邪竜はその強大な破壊力でどの種族からも恐れられていた。
邪竜たちが集められれば彼らはこの黒の塔の周りに巣くうことになるだろう。
死霊王の不在の間にこの世界のあらゆる場所から邪悪な魔物たちは駆逐されかけていたが再び人間族をはじめとする文明を脅かすことになるのだった。
こうして死霊王の復活は世界の行く先に暗雲を垂れこめさせるのだった。
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