天鯨(ソラクジラ)-その2 快癒
気温が一気に下がって寒いですね。
しばらく忙しいので投稿が遅れると思いますがご了承ください。
天鯨のこどもは治療を施されたあとすぐには元気にはならなかった。
しかし表面の傷も治り、ブラッディ―スライムによる輸血もうまくいったようで徐々に元気を取り戻した様子だった。
ユカワ:「シシリー、天鯨のエサは何なんだい?」
シシリー:「天鯨は周囲の魔素を吸収してエネルギーにしているようよ。」
ユカワ:「そうなのか。なら特に餌をやる必要もないんだね?」
シシリー:「ええ、あと数日もしたら動けるようになると思うわ。」
シシリーが言った通り天鯨の子は3日後ついに空に浮かび上がった!
天鯨の子:「ウォオオン!」
天鯨の母:「ウォオオン、ウォオオン!」
シシリー:「やったわ!これでもう大丈夫よ!」
ユカワ:「よかったね。無事に治癒して!それにしても改めて空に浮かんだのを見上げて思うけれど大きいよなぁ」
シシリー:「ええ、天鯨は最大級の魔獣ですもの。これほどの大きさの魔獣はめったにいないわ。」
天鯨の親子はどうやらしばらくの間ドロシュの付近に滞在する様子だった。
これまでは岬にいたが、市街地の上空へ移動してゆったりと親子で仲良さそうに漂っている。
普段なら地上からは見えないくらい上空を移動するがまだ子どもが病み上がりということもあって比較的低空を悠々と浮遊している。
ドロシュの子供たちも大人たちもその巨大かつ伝説的な姿に今ではすっかり慣れてしまったが、それでも巨大な穏やかな魔獣というのは人気だった。
いつの間にか天鯨親子のぬいぐるみやフィギュアが街中では売られるようになっていた。
そんなあるとき天鯨親子が鯨の潮吹きのように何かを空中に噴出した。
それはキラキラと光りながら街中にひらひらと舞い降りた。
それを拾い上げてみると極小の金平糖のような形をした粒だった。
ユカワ:「ウィッカ先生、これは一体何ですか?」
ウィッカ:「これは天鯨の星屑と呼ばれるものですよ!錬金術の素材としてはポーションの効果を数倍に高めたり、魔法具の効果を格段に上げたりできる希少素材です。めったなことでは手に入らず市場には決して流通しませんよ。」
ユカワ:「いったい何でできているんですか?」
ウィッカ:「正確なところはわからないのですが、天鯨が周囲の魔素を吸収してエネルギーにしているのは確かですから、天鯨の体内で魔素が結晶化した特殊素材といえると思います。」
ユカワ:「えっ!そんな希少なものなんですか!これ、今街中に降り注いでるんですけど。」
ウィッカ:「前代未聞ですね。でも天鯨の星屑には持っているだけで幸運が訪れるという言い伝えもありますしみんなに知らせるといいかもしれませんね。」
それからすぐに街中にこのことは知れ渡り子どもも大人もみな天鯨の星屑集めに夢中になった。
天芸の星屑のせいなのかはわからないが、街中の雰囲気はずいぶん明るくなった。
暴風竜の破壊によって傷ついた街の修復もはかどったうえ、人々の気分もいつもより高揚しているようだった。
それから数日して天鯨親子は静かに遠くの空へと旅立っていったのだった。
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