第8話 のじゃとの遭遇
近衛騎士の二人が立ち上がり、少し臨戦態勢風に何故か構え、場が進行していく。
王女の近衛騎士が『同行者が誰か』の確認をする。
それに対しレベッカが丁寧に対応する。
大人同士の対応に、流れを任せる三人の少女。
集まった九人がそれぞれがそれぞれを観察する。
「で、誰が鑑定を使えるのじゃ?」
座っていた三人の中でも、最も身なりが良く、これまた髪を縦ロールに巻き、見た目の年齢が清銘達とそう変わらない少女が立ち上がり質問を投げかけた。
「「のじゃ?」……本物の髪型……」
清銘と紬がハモって反射的に声を上げた。
「わっ、わっ、わらわなノ蛇」
操文が精一杯、気丈に振る舞い、答える。
「負けちゃ駄目だよ! ミサちゃん」
「そっ、そうですわ。負けては駄目ですわ。操文さん」
紬が自分の頭を触り、髪型を気にしながら言う。
「むっ? なんの勝ち負けなのじゃ?」
「ひm……、あ、いえ、すいません、交渉の方はこちらで勧めますので、もうしばしお待ちを」
司祭はその高貴な少女に丁寧に待てをする。
「む、そうか、あっ、お忍びであったなすまんのぅ。仕切らなければいけないという思い込みが……。待機を続けるぞよ」
まるでお忍べてないと、思う他全員であった。
が、そこはみなスルーをし、会話は進む。
「まずは、自己紹介と致しましょう。そして、その後、承諾の有無を頂ければと思います。ただ、状況が状況ですので、コモンセンスのスキルを使いますのでご容赦ください」
仕切り直した司祭が話を進める。
「コモンセンスってなんなのかしら?」
「たぶん蛇ガ、嘘発見器の魔法、蛇ないかのぉ。状況と、話の流れから察すると蛇ガ。真実を言っているかウソかを見破るノ蛇ろう」
「えっ、それは、ちょっと……」
何故か困り出す紬であるが、話は進む。
「天にまします…………、コモンセンス!」
ポエタは詠唱を行い、呪文を発動する。
三人の少女と、レベッカに発動された魔法が降りかかる。
「えっ、私にも掛けるの?」
レベッカが驚いた声を上げる。
「仕方が無いでしょう、状況が状況ですし、こちらにおわす御方が御方ですからね。それと貴方、今日も変よ? だらか、面倒になるから抵抗しないでよね」
「えっ? も?」
何故かがっかりしてるように見えるレベッカ。
四人にコモンセンスが掛かり、特徴的なリズムのあるエフェクトが発動する。
コモンセンスに掛かっているということが一目瞭然となる。
「では、まずは私から自己紹介をさせて頂きます。私はスロッス教のクレッセントタウン支部の司祭、ポエタです。レベッカとは幼馴染という立場となりますね。ですから顔見知りなのです」
その後ポエタは目でセリエに合図し、自己紹介するように促す。
「私は、クレッセントタウンの神殿騎士団に所属してます神殿騎士のセリエと申す」
「こちらにおわす御方方は後に回させて頂きます。先に、貴方たちの自己紹介をお願いしたいです。それと、いくばくか質問をしますね」
そう、司祭のポエタは、清銘達に言い、三人の顔色を窺う。
紬と操文がどうしようっと、顔を見合わすが、清銘が動き出す。
一歩前に出て、軽く目礼をする。
「では、私から行きます。よろしくお願いします。私は地丹座 清銘です。14歳になります。フューチャーインターナショナルスクールの8年生になります。過去にクラブ活動によって、様々なスポーツこなしております。他にも幼少の頃より様々な鍵盤楽器、弦楽器、管楽器なども嗜んでおります。御案件を承諾した理由に対しては、教会関係者からの依頼とのことで、社会福祉全般に携われることと思いますので、お受けしようとかと考えております。他の案件は、お受けしてません。単願志望となります。尊敬する人は父です。特技は、剣道道場に長く通っておりますので剣術が得意です。特異な科目は数学と理科と音楽です。何故、理科を好きなったかと申しますと、父が生前の職業である「ちょっと、お待ちなさい」
清銘が自己紹介をしていると、司祭のポエタが止めに入った。
「一気に説明しすぎといいますか……、何を言っているのか分からない部分が多過ぎます」
ポエタは自分だけが清銘の言っていることを理解できないのか、周りに目線を配り確かめた。
どうやら、我々五人だけが分かっていないのではなく、レベッカも分かっていないようだ。
さらに、不可解なのは、清銘の発言を操文や紬も不思議そうに聞いていたことを、ポエタは違和感を感じた。
だが、ポエタが清銘に掛けている、嘘を見抜くコモンセンスの魔法が症状を表さない。
これは、嘘を言って無いことを示している。
「あれ、一度に言い過ぎたでしょうか、あっ、あと、スペイン語と日本語と多くの言語がちょっとでき、数学が得意で、あれ、コレ言ったか、氷の息は吐けませんが、舌が丸められます」
「えっと……もういいわ……、まず、どこから来たのですか?」
「あ、ごめんなさい。確かに出身を言っておりませんでした。東京都中央区銀座から来ました。通学……通勤に関しましては、現在住んでおります宿屋から通えると思います」
「聞きなれない地名ですねぇ……」
ポエタは周りに知っているか目で問う。
全員首を振り、誰も知らないという結果が分かる。
「他国の方なのですか?」
ポエタは清銘に対し、質問を重ねる。
「そうだと思います。えっと、すいません、私は、ここがどこの国なのか知りません」
清銘は詰まりながらも毅然として答える。
「おかしな答えじゃのう。しかし嘘ではないようじゃな。ここはスウェルの国じゃ。知られてないということは、知名度が低いのか、はたまた、何か理由があるのかのぅ」
王女が割り込むように、話しかける。
話の内容からして、割り込まずにはいられなかったようだ。
「私は、日本という国から来ました」
「聞いたことがないのぅ」
王女は周りを見渡す。
周りの人間も自分は知らないと首を振る。
「我が国の閥族の者やと思ったが、そうではないのじゃな。ふむぅ、どうしたものか」
「意見を具申致します。この少女達三人からは邪気を感じられません。状況が状況ですし、タイミング的にも考えて、アンナ様の予言の思し召しとかと思われます」
男装の麗人のような王女の近衛騎士の一人が、王女に意見を言う。
「オスカー殿、情報を漏らしすぎですぞ」
こちらも男装の麗人のような王女の近衛騎士の、もう一人が、それを止める。
「こっ、これは失礼しました」
オスカーは、すぐに謝った。
「うむ、まぁ待つのじゃサフィアー。オスカーの言うことにも一理ある。今の我らには時間が無いことは確かじゃ。自国の者では無いが、身分が高いことは確かであろうし、そこにいる者で一人を除いて邪気は感じられぬし、その邪気も司祭の知り合いのようじゃし、まぁ、このメンバーで向かうのがベストじゃろうて」
「「御意」」
「話が早く纏まるのが良いと思ってしまったのじゃ。出しゃばってすまんのぅ。ポエタ殿。だが、教会側も早く話を進めたいと見るがどうなのじゃ?」
「確かにその通りでございますわ。危険性さえ問題が無ければ、道中にでも細かい話は詰められます。後は、貴方たちが承諾するかですね」
紬はこのまま流れるように結論が決定しそうになり不安を覚えた。
「えっと、すいませんですわ。依頼の内容を再確認してもよろしいでしょうか?」
なので、今までずっと黙っていた紬が確認を促す。
その発言を聞いて神殿騎士のセリエは、レベッカの顔を見て、こいつはちゃんと説明してないのかと、問いただす顔をする。
レベッカは、『あっ、やべ。だけどしょうがないじゃん』という顔をした後に、すまし顔で、手に持った紙を見ながら説明を始める。
「今回の依頼内容を纏めますと、ここにいるメンバー全員で……」
レベッカはちらりとポエタの顔を見る。
ポエタは頷く。
「ここにいる全員でパンドラ村に赴き、現地を調査する。調査内容については、現地にて報告をする‥‥とありますね。これは‥‥‥‥‥‥王族の権威と教会の権威を使って、メンドクサのオズマを黙らせましたね? 依頼内容の適正化問題がありまして、依頼内容をはっきりとさせないと、冒険者ギルドとしては、冒険者に依頼を出すことはできません。例え王名であったとしても、教皇の勅令であったとしてもです。戦争や紛争状態などの緊急事態ならば、この限りではありませんが‥‥」
「うわっ、レベッカがちゃんと仕事してる!!」
セリエがいきなりツッコミを入れる。
その後、セリアはレベッカが何かを企んでるのではと、顔をじっと見る。
「「コホンッ、コホンッ」」
話を中断させたことに対して、サフィアーとオスカーが咳払いでけん制する。
「あ、いや、ふざけた訳では無いのだ。その言い分だと、教皇の勅令が緊急事態では無いかのようではないか……」
セリエは立場的な言い訳でなんとか凌ぐ。
「冒険者ギルド規約を申し上げたまでです!」
「ふむぅ、各々の立場もあるとは思うのじゃが、ここはわらわに免じてそこを曲げてくれんじゃろうか?」
「‥‥‥‥なりません。王族の我儘から冒険者を守るのも、冒険者ギルドの仕事です」
知り合いから見たら、報酬を吊り上げようとしている人の表情になって、レベッカが答えた。
また、見る者によっては白鳥のようにも見えたであろう。
「そうか……。仕方ない、正直に言おう。実は、調査すべきものがなんなのか分かって無いのじゃ」
王女は諦めたように言う。
「もう気づいているかもしれんが……わらわはスウェル国の第二王女ジャクリーンじゃ。今回の依頼の件は、我姉である、アンナ姉さまの予言から始まったのじゃ。パンドラの村に行って調査をすることが、この国の王都での問題を解決する足掛かりがあるかもしれないとの、予言をなされたのじゃ」
「王都での問題とはなんでしょうか?」
清銘が丁寧に尋ねる。
「む、この辺でも最近異変が起きてると聞いたが……どうなのじゃ? ポエタ殿? 確認の為の再び尋ねるのじゃが」
「このクレッセントタウンでも、ここ最近、聖職者のヒーラーが病に患うことがとても多くございます……」
ポエタは歯切れ悪く答える。
「ふむ、やはりそうであるよな。何度も確認したはずじゃが」
「私たちは昨日この町に来たばかりなので、この辺りの事情を詳しくは知りません」
きっぱりと説明をする清銘。
「なるほどのぉ。ならば、そのほうら三人に、今、時間を与える、三人で相談をし、質問したいことがあれば質問をするがよい。そして、今回の件、引き受けてくれるかどうか、答えを聞きたいのじゃ」
「分かりました。相談をさせて頂きます」
清銘は、そのようにジャクリーン王女に答える。
そして、三人は部屋の隅の方に少し移動を、会議を始める。