第7話 少女たちを導く者
◇ギルド職員レベッカ24歳未婚視点◇
ふぅ、冒険者ギルドに到着~。
「おっせえなレベッカ。もう教会関係者の方たち来ちまってるぞ。ちょっと奥に来い」
オグマさんについて事務所の奥の方に行く。
なんだろ?
表で、冒険者たちに聞かせちゃいけない話でもあるのかな?
「実はな、教会関係者ってのがな……、司祭様が直々にお越しなんだ。それに神殿騎士団の護衛が一人。さらになぁ……。実はな王族の方も一緒だ」
なっなんですと?
「えっ、えっと? 王族?」
「ああ、なんでも、お忍びっていうほど、お忍びでもないが……、第二王女様が一緒に来てらっしゃるんだ。近衛の護衛も二人連れてなぁ……。まぁ、魔王のアレ対策についに、王国も本腰を入れたって考えてもいいのかもなぁ……」
お姫様?
王族?
近衛騎士?
コネ!
コネコネ~。こねこね~。
タマ、玉、玉の輿~~~~。
ついに、ついに来た。私の時代が。《高速思考スキル発動》風だ風が吹いている。王族の方とお知り合いに~。さらに、王族の直属の近衛騎士って言ったら、エリート中のエリートじゃない。きっと、かっこいい騎士が二人付いているんだわ。細身の筋肉がびっしりと付いた! そして、姫に思いを寄せて、でも、姫とは身分が違う……。そう身分が違うから、結婚できない……。諦めるしかない、ってことは、他の人と結婚するしかないのよね。そうなのよね。そう。そんな時、傍に誰か相応しい人がいれば! そう、それ、それこそが私よ。あっ、いえ、決めつけは早いわ。司祭様もいらっしゃるのですよね。司祭様……。うーん司祭様はお年を召しているのでしょうか? あ、いえ、こんな片田舎に来るくらい人なら、若いって可能性もあるのでは? それに神殿騎士団の方もいるのよねぇ? あり得る、ありえる、候補が4人も! 確率4倍。確変じゃー。ぐへへ
「そうですか、近衛騎士の方たちも来てるのですわね?」
「おい? どうした、ついにおかしくなったか? 変な事すんなよ? ギルド全体の問題なるからな?」
「大丈夫ですわ~」
「大丈夫なのか……こいつ。んでも他にいねぇしなぁ、いくらなんでもモリじゃなぁ……。こいつとモリしかいねぇしなぁ。えっと、で、昨日、ギルドに来たひよっこパーティーいるだろ? 昨日結成した。あいつらと引き合わせて話し合いをして欲しいんだが。俺は、話し合いの場に行けねぇし、今日、クラウチは休みなんだよなぁ。で、モリが今、対応してるけど、それもそれで心配だから、早いところ行ってくれねぇか。おめぇのほうがマシだからなぁ」
「はい~分かりましたわ~。行きましょう~」
二人でその部屋に向かう途中、広間に出たところで、ちょうど昨日の三人がギルドに入って来たことに気づいた。
「あ、オグマさんとレベッカさんだ。忙しいかな?」
「顔見知りのほうが安心するが、あの二人なにやら取込み中かもしれん。とりあえず、受付に並ぶノ蛇」
「ですわね」
「おお~。ちょうど来たか。ほれ、レベッカ。後は任せたぞ。この用紙に依頼内容の詳細が書いてあるから、今ざっくりと目を通しておけ。後、教会関係者の方々は奥の最上級来客室にいらしてもらってるからな」
そう言ってオグマはレベッカに用紙を手渡す。
「はい~お任せあれ~」
「ふぅー、テンション高すぎるな……。大丈夫なのかコレ……」
私は、三人の少女たちの所へ移動します。
そうです。私はギルドに任されたのです。
この三人を見事、無事に教会関係者の所へ連れて行かなければなりません!
さらに~私は~冒険者ギルドの~~昇・給・判・定・員!
少女達の冒険に付き添わなければならないのです~~なのです~。
「やぁ、昨日ぶりですねぇ、皆さん~。お待ちしてましたよ~。では教会関係者の方々もいらっしゃってますよ~。さっそく会いに行きましょう~」
「あっ、ごめんなさい、来るの遅かったですか? 待たせちゃったかなぁ。 それにしてもレベッカさんなんか今日は、見るからに機嫌がいいですね~? なんかあったのですか~?」
溌剌ちゃんが話しかけてきます~。
「そうですね~。天気もいいし~空も青いし~いい日ですよ~いい事これからいっぱいあるんですよ~」
「だっ、大丈夫なのですか? ちょっと士気が高すぎるのではないでしょうか?」
うーん、今日も悠然ちゃんは、悠然だねぇ~非常によろしい~。
「大丈夫ですよ~。お仕事ですもん。気合入れないとですわ~。では行きますよ~」
さてと、少女たちを奥の部屋へと導いていきますわ~。
「あ、みなさん、あちらには5名おりますので、そのつもりで~」
んで4倍! 4倍!
・
・
・
コンコン
ノックをしますわ~。もしもし~。
「失礼します~」
部屋に入るとそこは……。
アイエエエエ! オンナ!? オンナ、オンナ、ナンデ!?
「お待ちしてました。って、レベッカかよ。あっ失礼しました。そうね、貴方ここの職員ですもんね」
「おお~レベッカか、懐かしいな~」
司祭様って、お前かー!
神殿騎士団って、お前かー!
っていうか、王女の近衛騎士は、王女の近衛騎士は…………。
ですよねぇ~~ですよねぇ…………王女の護衛なんだから、オンナだよねぇ…………。
「おっ おい、大丈夫なのか? このギルド職員、何かどんよりとした、邪気を放っているぞ?」
いやはやいやはや、《高速思考スキル発動》ごめんなさい、近衛騎士の方……。仕方ないじゃないの……、気配を極力消して、モンスターの後に立って、モンスターと冒険者が戦っているところを見るのが一番パーティー実力が分かるんだから。 採点するには、それがベストだったよの……。 私の性じゃないのよ……。モンスターの後に回ってたら、暗殺のスキルが伸びるのよ……。しょうがないじゃないの、しょうがないじゃないの……、ちょっと無意識に邪気が出ちゃうくらいしょうがないじゃないの……。職業病なの……。確かに、この少女達三人にからはまったく邪気が感じられない。 ここで、邪気を一番放ってるのは私なのは、分かるわ……。でも、しょうがないじゃない、私、もう24なのよ、ギリギリなのよ……。しょうがないのよ、しょうがないのよ……。
「貴方たちが、今回の調査に同行してくれるのでしょうか?」
近衛騎士の方が質問してくる。
「はい、この者達は初心者パーティーとなりますので、私がギルド員として付き添いになります。全員で4名の追加人員となりますね」
私は事務的に、無意識に答えていた。