第3話 武士は食わねど高楊枝
◇安心院 紬視点◇
溌剌ちゃんってなんなのでしょうか……。
まぁ、気にせずに手を水晶にかざしましょう。
これに手をかざせば、自分の能力が分かるのですわね。
能力に、家の資産は含まれるのでしょうか?
もう、異世界に来てるから、うちの資産とか表示されないですわよね??
うちの惨状とか、経営破綻の件とか、ばれないですわよね?
ちょっと、不安ですわ……。
それに、ちょっと、ギルドの職員さんが近くて怖いけど、がっ我慢ですわ。
「読み上げますね。火が0、水が0、風が0、土が1、光が0、闇が2ですね。続いてスキルの傾向の特に出てるのは、『刺技』が1、『制作』が2、『裁縫』が4、『園芸』が3、『弁舌』が2、『叙事』が1ね」
属性は闇が2で、他があまり高くありませんのですね……。
まぁ、意味はまだよく分かっておりませんが。
「うーん、このスキルの傾向だと、裁縫師が無難ですかねぇ。ちょっと他は、今は思いつかないですね。弁舌は冒険時は使いにくいのですよねぇ」
「裁縫師かぁ、わらわでもあまり聞いたことがない職業なノ蛇」
操文さんでもあまり知らないってことは、たぶんマイナーな職業なのでしょうね。
マイナーなことはさておき、手芸部の私には合ってるのかもしれませんわね。
「わっ、わっ、私手芸部ですの。だからちょうど良いのですわ」
「紬は手芸部なのかぇ。そのような感じがするのぅ。では、部長をしておるのか? もしくは部長候補かえ? とても部長っポイゾナ」
「いえ、私は部長では無いですわ……」
うーん、やっぱり私部長として見られるのですわね。
人見知りというか、人と面と向かって話せない私なんかが部長なんてできるわけが無いのに。
清銘さんと、操文さんには、何故か何も感じないけど……。
ギルドの職員さんは、傍にいるだけでなんか怖いですし、こんな私が部長なんて、とてもとても……。
でも、清銘さんと操文さんに対しては、何故恐怖を感じないのでしょうか。
なにか運命的な物を感じてしまうかもしれません。
「うわー、手芸部なんだ、うん。それっぽいツムちゃん。でで、どんなのが縫えるの? 腹巻とか? 腹巻作って彼氏にあげようとして、お父さんに取られちゃったってことある? あっ、そうかツムちゃんも、お父さんを……」
「なっ、なっ無いですわ。好きな人に差し上げようとしたことなんてないですわ。でもお父さんに差し上げたことはありますの」
「うんうん、さっきも、言ったが創ったモノを人に使ってもらえるというのは、一つの幸せ蛇て」
生前に、お父さんにはあげたことあるんですよね。
お父さん喜んでましたわね。
懐かしいですわ。
でも、彼氏にあげたことなんてあるわけないですわ……。
そもそも、私には彼氏どころか男友達すら、おりませんし…………。
いえ、男友達どころか、性別関係なく友達なんて………………。
………………友達どころか、普段からお喋りの相手が……………………。
なんとか、対人恐怖症を直したいのですけど……。
話すこと自体は弁論同好会で鍛えてるので、活舌も悪く無いと思うのですが。
はっ、やはりそのせいででしょうか。
活舌の良い喋り方と、弁論同好会ならではの物怖じしない理論立てた喋り。
これらが、他人……クラスメイトなどと話すのが得意そうに見える原因なのでしょうか。
どっ、どうしましょう。
お二人には、早いうちに私が人見知りをするし、対人恐怖症めいてることを伝えておいた方がよいのでしょうか……。
いや、でも、今は、異世界に来てしまったという異常事態ですし、そんないろいろ凌ぎきらなくてはならない状況で、そんな重石を二人が持つなんてことをさせてしまうのは………………。
やはり、ここは我慢して、内緒にしてたほうがいいのではないでしょうか……。
だっ、大丈夫、私は、お嬢様。私はお嬢様。お嬢様は誇りを忘れない!
「ツムちゃん!!」
「なっ、なんでしょうか?」
びっくりした、いきなり清銘さんが大きな声を出して。
「無理しなくていいからね! なんでも頼ってね!」
「はっ……、はい」
何か勢いに押し切られましたのですわ……。
「まぁ裁縫師は戦闘は得意では無いので、確かにパーティーメンバーに頼ることになりますかもしれないですね。後に、他の職業になることもありますし、そんなに気にしなくても大丈夫と思いますよ」
と、違う方向のフォローを入れて下さる、ギルドの職員さん。
「まぁでは悠然ちゃんの職業は裁縫師に決定で、他の細かいスキルはメモしておくわ。後で渡すわね。では、次の方どうぞ~」
悠然ちゃんってなんなのでしょうか……。