第21話 万能文化鼠娘 ~馬車の中での対話篇 『換骨奪胎』~
ゴーレム馬車内の一室。
二段ベッドのような、寝台列車の中のような様相の部屋であり、その室内で三人はパジャマに着替え、寝る前に語り合っていた。
コピペ
「なんか、この属性表のジャンケンみたいなのって『ネズミの嫁入り』みたい蛇のぅ」
「あ、それ、私も知ってる。すごい小さいころ、お父さんから聞いた」
「ふっ。わらわも、お父さんから聞いたぞ。えっへん」
「操文さん、清銘さん、奇遇ですわね。私も知ってますわ。お父さんに聞きましたのですわ。意外と、三人ともが知ってる事って少ないのですよねぇ。うーん、でも内容がうろ覚えで、ネズミが出てくるのは確かで、確か齧ることが重要だった気がしますわ……。ちょっと内容を言って頂けると、思い出すかもですわ」
「ふむぅ、では、わらわが取りあえず話すノ蛇。間違っていたら指摘を頼むノ蛇。……昔々あるところに、蔵の中に裕福なネズミの夫婦が住んでおったそうな」
「裕福だったっけ? なんか、私が聞いた話より、設定が細かいかも……。あっ、はっきりと思い出して来た。裕福でいいのか」
「裕福なネズミですか? 『李斯感鼠』みたいですわね」
「それってなんなのなの? ツムちゃん」
「ちょっとした格言みたいなものですわ。最近では知ってる方、多くなってるとおもいますが、秦の始皇帝の側近が残した言葉ですわ。どんな意味かと申しますと、ざっくりと説明しますわ。おトイレに住むネズミはおどおどしながら食べ物も少ないところで生活をしている。しかし、食糧保管庫にいるネズミは非常に肥えてて、幸せそうに生きていますわ。しかも、ぜんぜん人間怖がらないネズミだとのこと。人間、堂々と生きる、才能を活かすなら活かせる所で生きなきゃならんって話ですわ」
「なるほどねぇ~イソップ寓話の『田舎のネズミと町のネズミ』みたいだね」
「それはどんな話ですの?」
「似たような話なのかな? うんと、田舎者のネズミの所へ都会者ネズミが、ご飯食べに行ったんだけどさ、みすぼらしいって、都会者は田舎者に言うんだ。で、都会の方が良い物が食べれるって都会者が言うから、二人とも都会に行くんだ。
やっぱ都会だから、すごい物にありつけるんだけど、食べようとするとしょっちゅう人間とかが邪魔しに来て怖くて食べれないの。で、ローカルの者はカントリーサイドの方が良いって言って、そっちに戻るんだ。そんな話」
「あら。なんか良い話ですわね。李斯の負けかしら。李斯って人生の最後のほうがアレですし」
「ていうか、勝ち負け蛇、無いと思うの蛇ガ、もうわらわの話は良いのかのぉ?」
「あっ、ミサちゃん、話止めてごめんね、えっと、狐の嫁入りの話をしてたんだったよね。続けてよ~」
「なんか違うの蛇。わらわの心はお天気雨なの蛇、で蛇、ネズミの嫁入りの話を続けるぞよ」
「「お願いしまーす」ですわ」
「うむ、で蛇。その裕福なネズミの夫婦に娘ができるそうな。名前をシオジと名付けたそうな。で蛇、その両親は娘のお婿さんを探そうとするの蛇ガ」
「あれ? そんな名前? 娘の名前ってエイドリアンじゃなかったっけ?」
「私は娘の名前はチュウコって聞きましたわ。中古みたいで、惨い名前つけるなぁって思ったものですわ。新品なのに」
「まぁ、いろいろなパターンがあるのかものぉ。細かい部分は気にせんでよいのではないかのぉ。で蛇、まず、その両親のネズミは、うちの娘はナンバーワンの娘なので、ナンバーワンのお婿を貰わなければならない。なので、ナンバーワンの婿といったら、空の上からすべてを見渡している、お日様だろうというの蛇」
「む、お日様、エジプトの話かしら? 太陽神ラー? あ、いえ、それだと安易ですわね。ここは、新王国時代のアルテナに遷都後の太陽神アテンの方ではないでしょうか」
「あははっ。ツムちゃん、また話が逸それちゃうよ~」
「はっ! ごめんなさい、操文さん」
「うむ、まぁ、逸れても続いてもどちらでも、良いの蛇。それにしても、紬の守備範囲も思ったよりずっと広いのぉ。まっ、続けるぞよ」
「そう、ナンバーワンというなら、太陽なノ蛇が、太陽は嫁にくれるなら、うれしいとは言うが、自分は雲に隠れるから、雲のほうが上、蛇というノ蛇。ならば、雲に嫁入りしようとするの蛇ガ、雲は雲で嬉しいとは言うものの、雲は風に飛ばされるから、風の方が上、蛇と。そんなこんなで、太陽→雲→風→壁→と、なり、で蛇、壁はネズミに負けるノ蛇。ネズミは壁を齧って穴を開けれるからのぉ」
「なるほどですわ。原点回帰ですわ。少し思い出してキマシタワ」
「で蛇、その自分たちが一番って考えに捕らわれて、自分たちの娘こそが一番って考え始めるノ蛇。両親は。で蛇、両親は、うちの娘が一番だって宣伝するから、多くのネズミはそれを信じるようになるノ蛇。そして、その後5人のネズミがムスメに求婚に来るんだけど、両親は自分ちの娘と釣り合う婿のネズミを探すために、無理難題を出すんだ。とても珍しい宝を持って来いって」
「えっ、ちょっとまってよ。そんな話だっけ? なんか違くない? ていうか、娘と好き合ってた鼠がいるって話でしょ?」
「む? そんな設定、蛇ったか?」
「で、両親は裕福で村の長者だったから、村の若い衆に呼び掛けて、一番強い者に娘をやるぞーって言うんでしょ? で、村の若い衆で一番強いって言われている、ごっつい筋肉隆々で、背もでかいやつが出て来て、長者の娘をくれって言うの。でも、その、娘と惚れ合ってた相手のネズミも名乗りをあげるのね。それで、15ラウンドくらい戦うんだけど、その好き合ってた方、ぼこぼこにされちゃうんだよね。このぼこぼこがやりすぎで、顔面の形が変わるくらいぼこぼこになっちゃうんだ。見てて引くって言ってた。でも、最終的に娘に『勝って』って言われて勝つんだよね? そして結婚しました。めでたしめでたしじゃなかったっけ?」
「え? そんな話なのかぇ? 無理難題を出した後、5人の婿の立候補者が出て来て……、無理難題だから、とりあえず力を合わせるかっていって、さらに2匹が手伝ってくれて、その7匹は力を合わせて、とりあえず、島に渡るん蛇けど、そこでイタチとの戦争が始まるのではなかったかのぉ?」
「清銘さんも、操文さんも、お二方とも、そんな話でしたっけ???」
「ワラワはそう聞いたぞよ」
「私もこう聞いたよ」
「えっと、思い出して来たんですけど、齧るのフレーズが無いような?」
「えっ? あった蛇ろ」
「あっ、いえ、人間を齧るのでは? あ、そう、娘が人間に攫わるのですわ」
「えっ? 人間が出てくるのかえ?」
「そうですわ。すごい有能な人間がある国を治めておりまして、たしか丞相だったかと。それで、誰を跡目にしたいかで悩んでおりましたの。そして、息子たちの中に、まだ幼く13歳くらいでしたかしら、の子供もおりまして、これが滅茶苦茶聡明ですの。その聡明な八男に継がせたいって思うようになっていくのですが、その時の長男が25歳……『その時』っていうのは、もっと他に長男がおりますが、死没しておりますの」
「なんかスケールが大きな話になって来たの蛇……」
「面白そうだね~」
「それで、その長男も優秀なのですが、もしかしたら跡目を奪われるんじゃないかって思っておりまして、そんな時に一計を案じますの。毒蛇とネズミをその八男の住んでいるところに放ちますの。そして、八男を噛ませるのですわ。古来よりある毒殺ですわね。ちなみに、部屋の中というのは、乾燥していて普通は蛇が入って来ないのです。人が持ち込まなければ。さらに、ここで、自分も――長男自身も毒蛇に、あえて噛ませるのですわ。二人とも生死の境をさまようのですが、25歳という成人してる大人だということもあり、長男は助かり、八男は若いので、死んでしまうのですわ」
「八男死んでしまうのかえ、それはないでしょのぉ。それにしても、まわりくどいことするのぉ……」
「しょうがないのですわ。丞相である父が滅茶苦茶優秀ですからね。生半可なことでは見抜かれてしまいますわ。でも、その計略も、八男の死に対し、寝ずの番を三日三晩、その、長男、次男、三男がするのですが、犯人は緊張していると、眠れずにずっと起きているらしく、次男、三男は寝てしまうのに、病み上がりの長男は起きてまして、それでバレてしまうのですわ。でもそこは、実力だけで丞相にまで上り詰めた、その父は、八男は毒鼠に噛まれたと、締めくくるのですわ。とても複雑な為政者としての親心ですわ……」
「なんか、複雑な話過ぎて、ついていけんぞぇ。ネズミは結局どうなったの蛇?」
「えっと、人間に捕らえられた娘のネズミは、庭にいた猫に食べられてしまいます。そして、猫も毒殺しまして、そのネズミを毒鼠に見せかけるのですわ。猫の臓物から、ネズミの死骸が出てくることにより、発覚するのですが」
「なんか……無理矢理に話をくっつけてないかのぉ?」
「なんていうか、ツムちゃんのお父さんすごいね~。それにそんなにちゃんとお父さんの話を憶えてるツムちゃんもすごいね~」
「そうなのですわ。お父さんはすごかったのですわ~」
「でも、娘のネズミって死んじゃうんだ?」
「あっ、えっ、まぁ。そう聞いておりますわ。清銘さんの話では、死なないのですわね。といいますか、操文さんのお話しだと、娘のネズミは死ぬのでしょうか?」
「えっと、確か死んでしまったような……なノ蛇」
「えっ? 死ぬの? 娘? ミサちゃん?」
「えっとのぅ……、なんか複雑で、なんでも原作では死ぬが、アニメだと死なないって言っておったの蛇」
「アニメがあるのでしょうか?」
「そう……みたい蛇のぅ……」
「まぁ、なんか三人ともそれぞれ細部が違うし、日本に戻れたら、検索してみれば分かるんじゃないかなぁって……、戻れるのかなぁ………………」
「清銘さんは、といいますか、お二方は、日本に戻りたいですか?」
「うーん、まぁ、向こうでもやるべきことはあるからのぉ。いろいろ投稿もしておったしのぉ。でも、こちらの世界も楽しいからのぉ……」
「私は、うーん、そんなに気にしてはいないんだけど……、戻らないと、ちょっとまずいかもなんだよね。ちょっと、ここ見て」
「あ、右肘の傷のことですの?」
「あ、うん。気付いてた?」
「えぇ。まぁ。これだけずっと傍にいるんですもの」
「どういった傷なノ蛇? 痛むのかえ?」
「うーんと、小さいころね、事故に合ってね。それで手術したんだ。リハビリも、もちろん済んでるし、事故自体は大分前だからね。でもね、ここ、その手術の時に金属を入れたんだ。関節の所。それで、体の成長に合わせて、何年かに一度、手術してるんだけど、もし、体が成長しちゃったら、問題が出てくるんだ……」
「ふむぅ、どうしたものかのぉ」
「成長しますと、問題なのでしょう? なら、だいじょぶではないでしょうか?」
「ちょっと、ツムちゃん! それっどういう意味?」
「あっ、ごめんなさい、つい」
「もう~! ついっなにさ~」
「まぁ、紬も心配から出た言葉、蛇ろうて」
「そっか、そうだよね。ありがとうね」
「ああ……いえ」
「ところで、なんの話をしておったん蛇っけ?」
「えっと、誰を次の跡継ぎにすべきだったかの継承問題の話をしてませんでしたっけ?」
「えっ、それしてたのツムちゃんだけでしょ~。あははっ。えっと、ネズミの話じゃないの?」
「ああぁ。そう蛇った。ネズミの嫁入りの話をしてたノ蛇のぉ」
「そうでしたわね。でも、みなさんの聞いていた話ってけっこう違いましたのですわね」
「まぁ、それも個性なノ蛇。だから、ここは最大公約数部分だけを取りあえず真実としておけばええノ蛇ないだろうか。まぁ、途中からマルチスレッドになったと思えばいいのではないかのぉ」
「あはは。最後の最後に、よく分からない事を言うよね。ミサちゃんも。この場合は話がdiversityを持っていたでいいんじゃないのかなぁ」
「台場シティ? ですの?」
「まぁ、深く考えるでないノ蛇紬。考えるん蛇ない。感じるノ蛇」
「あははっ、ミサちゃん、なんか変なテンションになってる~」
「えっと、よく分からないですけど、結局は、この世界の属性表と、『ネズミの嫁入り』の一部が近いってことで良いのでしょうか?」
「そうなるのぉ。そんな話に纏まったノ蛇」
「おい、おまえら!! いい加減に寝ろ!」
「うわっ、ビックリした。オスカーさん!」
「お前ら、まえにも言っただろ。もう寝ろ。お前らが寝ないと……、姫様がこちらに混ざりたくて気になって眠れんのだ。姫様の健康管理も我々の仕事だ。だから、頼むからもう寝てくれ」
「「はーい」ノ蛇」
「オチが天丼ですわ」
西暦208年
長男 25歳
八男 13歳
丞相 53歳
『…




