第19話 王女姉妹の決意
「それでじゃの、話を纏めるとじゃな。光属性を持つ者がどんどん倒れていった。それで終わるかと思いきや、闇属性の者も少しずつ『魔王の呪い』にやられ始めておる。そのような現状なのじゃ。王都にはもう、光属性の者は数えるほどしかおらん……。姉上も光属性が3じゃったのじゃ。姉上…………」
悲しそうな顔になるジャクリーン姫。
「アンナ様は姫様の事を……」
オスカーが何かを言いかけてやめる。
「でじゃ、姉上のことについても聞いてもらおうぞ。姉上は、自分ばかりが、良すぎる処遇なこと嘆いておってな。王家の秘薬のエリクサーを何個も使って、命を繋いでいたのじゃ。でも、聡明な姉上のこと……自分にだけそのような高価な薬を使うのを良しとせず、使わせることを止めたのじゃ。どころか、国の未来を憂いて、神術を使ったのじゃ」
「「「神術?」」」
「そうじゃ。奇跡の御業じゃ。Beポイントを使い、その身を犠牲にして奇跡の術を使う。姉上は願ったのじゃ。その身を犠牲にして今回の『魔王の呪い』を止める方法を知ることを…………。うぐっ、うぐっ……姉上……」
ジャクリーン姫は話を続けられなくなってしまった。
「ううう、姫様……」
もらい泣きをしそうになるオスカー
場に、ジャクリーン姫の嗚咽が響き渡る……。
空気が淀みを感じた、サフィアーが続ける。
「だが、王は、アンナ様の行動を何度も止めて、止まらないと分かると、国にいるの秘術師に頼んで、アンナ様が神術を使った後、崩れゆくアンナ様に、停滞の術を掛けさせた。それによってアンナ様の時は氷ついた。アンナ様はまだ御逝去なさってない。まだ…………」
サフィアーの良かれと思ってした説明も、さらに場を暗くしてしまったかのようだ。
「まっ、まぁ、さきほど姫様も言っていたが、みんなも何か言いたいこと、聞きたいことがあれば、じゃんじゃん言ってくれ」
サフィアーが皆に発言を促す。
「そっ、そう蛇! ジョージさんに無理を言って、1本借りて来たの蛇ガ、これは今日エリカさんが飲んだ薬の原料となっている花なノ蛇が」
操文はそう言いながら、一輪の花を皆に見せる。
「これは光属性なの蛇。今日、ジョージさんに案内してもらい、薬草が取れなくなったというところを鑑定してきたの蛇ガ、同じ品種の物でも、闇属性の物もあるノ蛇。そして、光属性の物はほとんど枯れていたの蛇。全部では無いの蛇が……。人間と同じような状況にあると見るの蛇ガ……」
「ううう……姉上……」
ジャクリーン姫はまた、泣きそうな顔になっていく……。
「あわわ、あわ、ちょっと聞きたいの蛇ガ! オスカーさんと、セリエさんに聞きたいの蛇が! 今日、清銘と紬とわらわでペストグリーンキャタピラーと魔法で戦ったの蛇ガまったく歯が立たなかったの蛇ガ、魔法で戦うということについてどう思うかの?」
「ペストグリーンキャタピラーに魔法で? 普通に倒せるのではないか?」
と、オスカーは言う。その表情には、話題を変えてくれてありがとうと書いてあることが読み取れる。
「ペストグリーンキャタピラーは、非常に魔法に弱いな。消し飛ぶな」
と、セリエは言う。
「レベッカさん。この世界って、あ、いや……、属性の相性について聞きたいの蛇ガ。火魔法は土の属性に強いのかえ?」
「世界? あら、属性ね。説明してなかったわね。えっと、土属性に対し、火魔法は強いわ。火属性に対し水魔法は強く、水属性に対し風属性は強いわ。で、風属性に対しては土属性が強いわね、属性で戦う冒険者の間ではよく知られてることね」
「なるほどなノ蛇。日本でよく見る典型的な属性相性とはちょっと違うノ蛇な。でも、まぁ誤差かのぉ。メモメモ」
「可愛いメモ帳ですわね。あ、生徒手帳なのですか。でも小さくないですか? 私大学ノート持ってますので差し上げますわ」
「ありがとうなノ蛇。今、すごく欲しかったノ蛇。助かるノ蛇。わらわも、学校行事なんだから、ちゃんとノートを持ってくればよかったのじゃ。修学旅行には、持ってかないでいいと思っちゃったノ蛇」
ジャクリーン姫が涙声で言う。
「ぐすっ。なんじゃ? 紙が必要じゃったのか? それならいくらでもあるぞよ。それにしても綺麗な紙じゃなぁ。高いのではないか?」
「ありがとうございますなノ蛇。でも、今はこのノートで大丈夫なノ蛇。ちょっと、いろいろ分かったから、表を書くからしばらく待ってなノ蛇」
そう言ったあと、操文はかなり集中した後、詠唱に入る。
「せれくと かうんと こめ~~~~~~~」
操文はSQL文で属性表を呼び出す。
その後なにやらを書く、集中作業(?)に入る。
それを見て、ちょっと修羅場っぽいなぁっと思ったのがそのセリフは飲み込んだ紬が別の話を振る。
「えっと、確認なのですが、その結局、『魔王の呪い』とやらを消す方法は無いのでしょうか? 呪いを解くといいましょうか?」
「『魔王の呪い』とは仮名であり、原因すら分かって無いのだ。対処法もまだ分かって無い」
「えっと、エリカさんにはお薬を使えば、症状が和らぎましたですわよね? お薬でその症状は消えないのでしょうか?」
重ねて紬が質問をする。
「ポーションを使えば一時的には消える。だが、またすぐ症状が重くなる。薬を毎日、与え続けても、いずれ症状が重くなるスピード早くなっていき、ポーションのクールタイムより、症状の重くなることのほうが勝ってしまうのだ」
落ち着きを取り戻したオスカーが返答をする。
「そうなのですか……。根治はしないのですね……」
「徐々に弱って行ってしまうんだね……」
清銘も悲しそうに言う。
「それに、他にも問題がある。ポーションの精製には時間がそれなりに掛かるし、ポーションの材料である草や花の備蓄がもう無くなって来てるのだ。材料の産地からも王都に入って来る量もどんどん減っている。現地で消費してる分を差し引いても、材料自体の生産量が減っているのだろう……。さきほど言ってた、薬草が取れなくなっているという話とも合致するしな……。いやな結論を聞いてしまったよ」
オスカーが自嘲気味に言う。
場に沈黙が再び流れる…………。
「実は……………………、根治の方法はあるのじゃ」
「ひっ、姫様?」
「よいのじゃ。王家に伝わる、伝承にこうあっての。教会の上層部は知っていることじゃと思うが、ポエタ司祭は司祭になったばかりと言っておったので、たぶん知らぬかもしれぬが。そもそも、この世界に満ちている魔力が人間側についてくれたことにも、関わりがある、人族の歴史に関わることなのじゃが。そうじゃの、人族の歴史について少し話をするのじゃ」
「人族の歴史ですか……」
ポエタが恐る恐る呟く。
「我らが王家の一族は、この国が王国になる前、いや、人族の中に王とういう考え方ができる前から、人族を纏めて来たそうじゃ。逆に人族を纏めていたから、王になったという考えもあるのじゃが。まぁ、同じことじゃ。それでのぉ、昔は、ここらも人が住めないような、瘴気しか存在しない所じゃったそうじゃ。魔力が瘴気を帯びていて、そこにいるだけで、苦しくなっていき、後には死んでしまうほどに。じゃが、そのような所でも、聖なる者たちの作り出す結界の中では生きていけたそうじゃ。その結界が進化した形……、力をさらに上手くコントロールして使っているのが、各町や都市に今も張ってある結界なのじゃが。……いや張ってあったか……」
「クレッセントタウンの結界も、もう維持できてない状態です……」
ポエタが現状の説明を付け加える。
「そうなのじゃ。皆も知ってる通りの状態じゃ。それでのぉ、歴史の話に戻るが、我らの先祖の幾人かが力と知恵を振り絞り、結界の機構を理解して、その機構を改良したのじゃ。結界の効力範囲が徐々に大きくなるように……。その取り組みは上手くいき、瘴気を打ち払う結界は、今では、『見えなくなる果て』、世界の果てまで続いてると言われておる。人族は瘴気に勝ったのじゃ。ちなみに、結界を最初に張った場所が、今の王都の王城がある位置なのじゃ。今も王城の中心の開かずの間に、その聖域を張る為の機構はしっかりとある」
「姫様、お詳しい、すごいです」
オスカーがここぞとばかりにヨイショする。
「聞いたことあるな……」
セリアが頷いている。
「人族は、過去にこの機構を4度使ったと言わておる。最初の一回目は、今言った瘴気を打ち払うのに使われたが、他にも人族の危機が来るたびに何度も使ったそうじゃ。だから、今回も、この機構を使えば、なんとかなるはず何じゃが…………………………」
「4度? ……すべて、聖歌になってますね。その伝承は歌としても受けづかれていたということなのですね……」
「ジャクリーン姫。その機構を使えない事情などがあるの?」
清銘がずばり聞く。
「この機構を発動するには、聖なる力が大量に必要なのだ。じゃが、今、この王都には、いや、この国いや、この世界には……、その力を持っている者が……必要な人材が……圧倒的に足りないのじゃ」
「そうでした。多くの聖職者の方が入寂なされて……、特に光属性の強い方たちが……」
と、ポエタが、うなだれるように言う。
「それでじゃ、姉上様の予言の力……これが……この指し示す何かが、問題をなんとか解決する手掛かりになってるのではと、わらわは考えておるのじゃ……。具体的にはどんな方法かはまだ分からぬ。じゃが、ここで何かを調べれば、手掛かりが見つかるはずと信じておる。延いては、それがこの国を救い、この世界を救い、そして、また姉上も救えるのではと考えておるのじゃが。姉上…………」
場にしばしの沈黙が流れる。
「なので、どんなことでも良い、気づいたことがあれば教えて欲しいし、何か考えが浮かんだら、奇抜なことでもよい。どんどん報告して欲しいのじゃ。皆の者、頼むのじゃ……」




