第2話 冒険者ギルドの世界
◇ギルド職員レベッカ24歳未婚視点◇
今日はゆっくり出勤っと~。
「お、レベッカ今ごろ出勤か、いい身分だなぁ。あぁ、昨日まで付き添いで探索に出てたのか、それでか。で、あのパーティーどうだったよ?」
到着したと思ったら、今、受付を担当しているオグマさんに話しかけられた。
「あのDランクのパーティー、実力が出し切れてない感じがしたわね。あれだとCランクに昇給の件は難しいわね……。体調が悪いメンバーがいたのかもしれないわ」
そう、最近体調を崩している人をよく見るのよね……。
「体調が悪い? 教会の問題の影響……魔王のアレかぁ……。 由々しき問題だなぁ。まぁそれはさておき、ちょっと受付変わってくれねぇか?」
オグマさんに頼まれたので、受付を変わる。
お昼の時間も近いからか、人も少なくてガラガラだ。
特にすることも無いので、ぼ~っとしていると、3人の身なりの良い少女たちが冒険者ギルドに入って来た。
あら、珍しい服装の人達ね。
教会関係者かしら、いやもしくは貴族様かな、いやいやまさかの王族の方かしら。
「冒険者ギルドに来たら、まずは募集の掲示板を見るのがセオリーなノ蛇」
「先に冒険者登録を済ませた方がいいのでは無いかしら?」
「む、紬もけっこう、こういう知識があったノ蛇な」
「あ、じゃぁミサちゃんは掲示板で情報収集しててよ、私は暇そうにしてる受付の人に話を聞いてみるよ」
三人の内の二人がこちらにやって来た。
その内一人が溌剌と話しかけてきた。
「お姉さんこんにちは。 この世界ってどういう所なの?」
この世界? 何を言ってるのでしょうか?
ギルド職員の仕事場の話でしょうか?
そうねぇ……………………えっと…………、《高速思考スキル発動》この仕事場はどんな世界なのかというと……、まず……サブマスターはガゼルを連れて来て、これが魔馬だって言い張るし。そのサブマスターの連れて来たガゼルが魔馬じゃないとマスターが答えるが、サブマスターは自分の支持者を増やそうとオグマさんに賛同を求めるのだけど、オグマさんとしては、マスターとサブマスターどちらの意見を尊重するか言えなくて、しょうがないから新人のモリにそのまま話を振るのだけど、モリはモリで、モリだから空気読めなくて突然話を変えて、チーフのクラウチの悪口をここぞとばかりにマスターとサブマスター告げ口しようとするのだけど、そのことが公になると査定に響くオグマさんがさりげなく話を変えようとするのだけど上手く行かずに、結局マスターとサブマスターにクラウチの話が伝わるのだけど、その話を糸口にして、今度はマスターがサブマスターを詰るのだけど、もう気まずいからオグマさんはその場から去っているし、新人のモリは飽きてその場から堂々といなくなるし、その現場に後からドンピシャなタイミングで来てしまった私が旧世界から新世界に迷い込んでしまったかのように感じるような世界……かなぁ。まぁ、隠伏をすぐに使ったけどね。
「えっとここの職「あっ、あっ、えっと、なんでも無いのですわ。ごめんなさいね。えっと、冒険者登録ってどうやってやるのかしら?」
もう一人、悠然とした態度をしてる少女の方が取り繕うように質問を変えて来た。
どうやらここの職場がどんな世界かは説明しなくて良いみたいね。
「えっと、こちらの用紙に必要事項を書いて、この水晶に手をかざしてステータスチェックをしてくれればOKよ」
「それだけでいいの? あれ、お姉さん、白鳥のバタ足してる?」
えっ白鳥? 足?
そんなに私の足って綺麗?
あれ、そこから私の足って見える?
「もう、若いのに、お世辞が上手なのですね。それだけやって頂ければ登録できます」
「なんだ。簡単じゃん。おーいミサちゃん。先に冒険者登録をやっちゃおうよ~」
その溌剌とした少女が掲示板を見てる博士っぽい少女を呼ぶ。
「分かったノ蛇。今行くぞよ」
冒険者登録するっぽいわね。
三人、全員登録をしそうね。
用紙を3枚用意しておくわ。
それにしても3人とも良い、身なりね。
あ、さっきの白鳥に例えた褒め言葉も、貴族ならではの言い回しなのかしらね。
博士っぽい少女も言ってた通りにやって来た。
「掲示板を見て来たノ蛇が、やたらヒーラーの募集が多かったノ蛇、バランス悪いくらいに」
「そうなんだ。よく分からないけど不思議だねぇ。それじゃぁ、登録をさっそくお願いしまーす」
「まずは、この水晶に手をかざしてください。スキルや属性が分かります。それらの情報を考慮して、こちらの用紙に名前と職業をお書きください」
「掲示板を見て来たら、全部ローマ字で書いてあったノ蛇。ローマ字で書くといいみたいなノ蛇」
「ロッ、ローマ字が使われてるのですか。不思議ですわね」
何かしらやいのやいの言いながら、溌剌少女がまずはと、水晶の上に手をかざす。
「え~っと、属性が各々表示されますね。火が0、水が0、風が0、土が2。おお、すごいですわね。土属性が高いですね。2なのです」
「土が高いの? やったー」
「そうですね。属性は最高が4ですが、4なんてのは魔王とかじゃないと存在しないですし、3もほぼいません。なので、2はとても高いですねぇ」
うーん、本当に何も知らないみたいね。
やっぱり、御令嬢たちが、お忍びでこの辺境の田舎町の冒険者ギルドに来たのかしら。
ステータス鑑定すらしたことが無いなんて、いったいどんな生活をしてるのやら。
宮中で優雅な暮らしをしてたのかしら。
ナイフやフォークよりも重たい物を持ったことが無い生活とかをしてたんじゃないかしら。
憧れちゃうわねぇ。
ちょっと嫉妬もしちゃうわ。
それに、まだ若いのに、土の属性が2だなんて。
まだまだ伸びるでしょうし、もし冒険者として生きて行くなら、ひとかどの人物になるんじゃないかしら。
お貴族様だから、そんな人生歩まないでしょうけど。
貴族だから、もう許嫁がいたり、婚約していたりして、そうね、あと何年かしたら……。
いや、実はもう結婚してるとか?
ありえなくはないはねぇ……。
あとからやって来た、眼鏡かけてる博士ちゃんとかは、~~爵夫人っぽいですものねぇ。
ここはやはり、細かく説明してあげると喜びそうね。
お嬢様達でしょうから、親切にして、コネでも作っておこうかしら。
「4属性の次に陰陽を見るわね。光が0、闇が2ですね。闇まで2だなんて……すごいですわね。まぁでも、ご助言をしておきますと、闇は高くてもあまり使い道が無いのです……」
「ありゃま……。闇じゃなくて光だったらよかったのかなぁ。光だったら皆を守れたのかなぁ……」
ありゃりゃ、溌剌ちゃん何かしょんぼりしちゃったみたい。
気持ちの浮き沈みの激しい子ですねぇ。
「まぁ、あまり気にしないでください、何も問題無いですよう。むしろ今は光属性が無い方が良いと噂されてますから、むしろ良かったんですよ」
「え? そうなの? どうして?」
「最近、光属性の方が体調を崩されることが多いのですねぇ。まぁ闇属性だからと言って必ず安心できるというものでも無いのですけどねぇ」
「そうなんだ」
「続いてスキルの傾向を見て行くわね。傾向は10段階評価よ。こちらは種類がたくさんあるから、目立つところだけを伝えるわね。『剣技』が1、『制作』が2、『精錬』が2、『鍛造』が2ね。ふむぅ、ぱっと見は斬撃できるってことは剣士かなぁ、鍛冶師系でも良いわね、錬金術師でも全然行けるわよ」
「アルケミストってのもあるのか。幸せの青い鳥っぽいやつかな? 南北アメリカの人ってサンチャゴって名前好きだよね。 それとも化学者みたいな感じなのかなぁ。それならとっても面白そうだなぁ。うーん、それとも私、剣道の習い事もやってるから剣士でもいいのか。その方が皆を守れるよね。うーんブラックなぁ……、ブラックだけはやだなぁ」
「まぁ、きっと、生産職も楽しいぞよ。自分の創ったモノを人に使ってもらうっていうのは、楽しいこと蛇しのぉ。それと、サンチャゴうんたらと、よう、分からんことを言っておるが、分かる部分を訂正すると蛇な、それはブラックだけど、ブラックじゃないノ蛇。黒鉄をスミスことをする者のことじゃ安心するノ蛇。一応、ツッコミしておくノ蛇」
「そうなんだ。再説明してくれるの助かるよ~」
他に、ステータスの件で伝える必要がありそうなこと、あるかしら?
あれ? Beポイントが0なのね……。
なんでなんでしょう?
王族の秘儀みたいなもので、Beポイントを使う方法があるのかしら?
理由は分からないけど、ここは聞かない方が良いかもしれないわね。
庶民には、知っちゃいけないことかもしれないし……。
とりあえず、スキルをメモしてと。
「じゃぁ溌剌ちゃんの他の細かいスキルはメモしておくわ。後で渡すわね。では、次の方どうぞ~」