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最終章 18  封印の地 魔王 対 リア

お待たせしました。

遅くなったぶん、ちょっと長めです。

 魔王ミーザを連れて、スランが転移した場所は水に溢れた不思議な場所だった。


 ミーザが辺りを見渡すと、青い空は一切なく、鍾乳洞の様に鋭く尖った岩が連なり、地面は尖った岩から落ちる水滴で至るところに凹凸が出来て、平らな所が見当たらない。


 更に、天井と地面を支える壁は、尖った岩の隙間から流れ落ちる水が、滝の様に全方位落ち、水壁となっていた。


 水壁からこぼれる水滴が、空間に満ち、ミストとなってミーザを濡らす。


 ミーザは、水壁の端まで歩く。


「……これは」

 ミーザが、途中で立ち止まった所で、地面は無くなり、滝が落ちていく 先は遥か下まであり滝がはぜるところが見えない。


 落ちれば、魔王であるミーザでさえ、どうなるかわからない。


 左右を見ても同じ状態だ。

 ならば、逆方向に行っても、同じ事だろう。


「理解出来た?」

 中央で、ミーザを見守っていたスランは、ある程度の確認が終わり理解したとみて、ミーザに声をかけた。


「そうだな。

 ここは、どこだ?

 異次元ではないみたいだが」

 ミーザは、スランに向き直り頷く。


「ここは、魔獣達の楽園。

 かつて私が生まれた場所……憩いの泉があった場所。

 今は渇れた泉だけど。

 その地中、奥深くにある空間だよ。

 三年前まで、私の半身が封印されていた所と言えば、もっとわかりやすいなか?」

 スランの説明で、ミーザは納得し、もう一度頷く。


「ああ、ここがそうか」


「そう、ここなら、魔王の力を封じて戦う事が出来る。

 この水に囲まれた場所なら。

 単一魔法の使い手は、無限に魔力を増幅し威力を高めるが、魔王の炎の単一魔法は、この天然の冷気と、空気中に含まれる大量の水分の前には、かなりの制限される。

 ちなみに、空気中の水分で、空気が塩っぱくない?

 ここに流れる水壁の滝はこの大陸を囲む海が地中を流れ、ここに集まり、滝となっている。

 さすがに、魔王でも、この世界の海を干上がらせる程の魔力を瞬時に増幅出来ないでしょ?」


「よく喋る様になったな、スラン?

 それも、リアという少女を取り込んだからか?」


「……まあね。

 三年前、半身が取り込んだ少女、リアの心が、ここまで私に混ざり込むとは思わなかった。

 それから、私はスランなのか、リアなのかわからなくなり、行動もあやふやで、勇者アベルに魔族領の情報を流したりした。

 貴女とザーツ・シュザットには気づかれて、問い質されたけどね?

 今でも、不思議なんだけど……どうして、気づいた時点で、私を処分しなかったのか?

 今なら、教えてもらえるのかな?」


「スランと、リアの心が戦い、苦しんでいたのもわかっていたからな。

 スランとして残って欲しかったからと、私がザーツに頼んで見逃していたんだ。

 結局は、リアとして、勇者の下についたのは、残念だったが。

 お前が情報を流されていたのはわざとだ。

 お前にはある程度の嘘の情報を教えていたのでな……情報操作されてもらった」


「うん、知ってた。

 それはスランとして受け入れていたし、知っててアベルに情報を流した。

 アベルも、混乱してたよ。

 本当もあれば、嘘もある。

 私が、どっちなのかも、信じていいのかとも」

 スラン……いや、リアは笑う。


「結局は、リアが勝ったのか?」


「どうだろ?

 結局、今も、わかんないな……性格は、リアだけどね」


「そうか……わかった。

 聞きたい事もすんだし、お前に勝ち、向こうに戻らせてもらうとするか」

 ミーザは、リアの策略通り、炎を出し難く、苦戦するがいつも以上に魔力を増幅し、濡れて冷えきった身体を乾かし、更に魔力を高める。


 ここなら、増幅し過ぎるという事はない。


「確かに、お前の策略は効果がある。

 ただし……穴があるけどな」

 ミーザは、魔力の増幅をやめない。


 ミーザは全身に炎を纏い、リアに攻撃する。


 距離のある攻撃は、炎を放出しても炎は弱まり、さほどのダメージは与えられない。


 ならば、放出しても弱まらない近距離で戦うのがベスト。


 だが、リアも、その事は予測している。


 スライムとしての本来の水の能力と、闇の魔力を持つ〈変幻妖〉スランの属性能力で対応する。


 近距離で、闇と水で、炎を塞ぎ、空気中の水分を集め凝縮、多方面の攻撃を仕掛ける。


 全身に纏う超高熱の炎で、凝縮した水を蒸発させる。


 それでも、やはり不利なのはミーザだった。


 蒸発させても、冷えた時点で水分に戻り、再び空気中に漂う。


 広い場所だが、閉じられた空間。

 空気中の水分を全て、蒸発させても、水壁から流れる無限ともいえる水で元に戻る。


 ミーザが、無限に炎の魔力を増幅出来るといっても、体力がもたない。


 剣を取り出し、魔力を纏わせ、少しでも距離を伸ばしても、結果は同じだった。


 そして、攻撃が当たっても、元がスライム、圧縮し人形の姿は瞬時に傷はふさがり、ほとんどダメージは与えられない。


 いや、大ダメージを与えても、空気中や、滝から水分を吸収して元に戻る。


 穴が多いと思った策略だが、対応はしっかりしていた。


(まずいな、このままでは負ける……ぐはっ?)

 焦りはないが、体力の他に、集中力も、一旦途切れ、リアからの水を纏った蹴りが、ミーザの腹に入り後ろに跳ばされた。


 リアの足は、纏った水は消され、足も足首まで失っていたが、痛みもなく、下ろした時には再生している。


 強烈な蹴りで、纏っていた炎は消え、凸凹した地面を転がる身体に、ミーザは打ち身傷を作り、濡れた地面で滑る。


(強い)

 ふらつく身体を、なんとか立たせ、ゆっくりと呼吸も整える。


「……もう、やめない?」

 ふらつくミーザを見て、リアは困った顔で提案する。


「……なに?」

 自分が不利ならいざ知らず、策略がはまり有利なリアがやめると言い出し、ミーザは燻しがる。


「魔王、貴女は魔力量と、単一魔法の使い手というだけで、魔王となるべき人物ではなかった」


「……それで?」

 ミーザは、首を傾けた。


「貴女は弱い。

 本来、ザーツ・シュザットが、魔王になるべきだった」


「言われなくても、私も、そう思っていた」


「ならば、何故?」


「アイツがなりたいと思わなかったからだ。

 確かに、私は、ザーツの様な剣の才能はない。

 ガインの様に、身体能力が優れている訳でもない。

 だが、私を、魔王にと望んだのは、ザーツの母、クレアおば様だ。

 未来視を持っていたおば様は、先代の魔王を殺し倒すのは、かつて見た未来ザーツではなく、私だった」


「へえ、それで、そんなに魔王が誕生したのか……そんな未来、見なきゃよかったのに」


「本当だね」

 ミーザは、リアの嫌みも関係なく笑った。


「……戦いをやめるつもり、ないんだよね?」


「ないね」


「そう……じゃあ、終わらせてあげる」

 リアは、ミーザと同じ様に、身体中に水を纏わせ、リアは動く。


 瞬時に、ミーザに届く範囲に入り、右足のハイキックで頭を狙った。


 ミーザは、素早くしゃがみ、リアの右足はミーザの頭が場所を通り過ぎた。


 再び魔力を増幅させ、纏い、両手を突きだし手のひらから炎を放出。

 炎は、リアを包み込み動きを封じる。


 絶えず炎で包み、外からの水分補給は、蒸発させ吸収出来ず、内部のリアを炎の熱で焼き付くす。


 中から、体内の液体を犠牲に、炎の檻から抜け出ようとするが、触れた場所から焼滅する為、リアは動きを止めた。


「油断大敵だな?

 もう手はないと思ったか?

 お前が蒸発し焼滅するか、私がもつか?

 こうなれば、お互いに我慢勝負だな」

 破られない為には、増幅し続ける気力と、体力を維持しなくてはならない。


 ミーザは、炎の熱量を更にあげる為、集中を増す。


「確かに……ならば、奥の手をきらせてもらうよ!

 来い、リヴァイアサン!」

 そう、リアが叫ぶと同時に、水壁から何かが顔を出し、ミーザと、炎の檻に囲まれたリアに向け、開いた大口から大量の水を吐き出し、飲み込まんと迫ってくる。


「チィッ」

 ミーザは、仕方なく炎の放出をやめ、遠くに離れた。


 吐き出された水は、残された炎を消し、リアに直撃する。


 直撃した大量の水は、辺りに飛び散るのではなく、リアを蒸発させたリアの身体を補い、元に戻った。


「魔王、紹介するよ。

 このモノこそ、魔王達が探していた、十二の大悪魔の一体、リヴァイアサン。

 彼は、オズマ将軍と融合したバハムートと同じ、魔界に開いた穴を抜け、この世界に現れたモノ。

 融合をとったバハムートと違い、彼は海に飛び込み、魔界に戻る事を諦めた。

 リヴァイアサンは、水と同化し、この場所に流れ、棲み隠れる事になった。

 彼、リヴァイアサンは、ルー・ルーセントのフォルネウスとよく似た能力だけど、格が違う上位のモノ」

 リヴァイアサンは、水壁から抜け出て、全体の姿を現し、この空間を泳ぎさ迷っている。


「水と、闇の、二つの魔力を大量に持つ者にしか契約を交わさない、彼は、三年前、封印していた私と一つになり、完全体な私に加え、リアの闇属性の力を得た事で、彼に力を借りる事が出来た。

 魔王、貴女達には報告しなかったけどね」

 空気中に含む水分を泳ぐ、リヴァイアサンは睨む様に、ミーザを見る。


 全長百メトルを越える蛇の様に長い身体を持ち、この空間の三分の一をしめている。


「へえ、噂通り、でっかいな~?

 大悪魔の中で、一番大きいんじゃない?

 それで、このリヴァイアサンで、私に攻撃するの?

 それも、契約能力を使えないのに?」

 ミーザも、リヴァイアサンを見上げながら、リアに問う。


「……なんで、知っているの?」


「まあ、聞いていたから。

 ……三年前、お前も出ていた会議で、契約者の事を尋ねたでしょ。

 あの後、私の契約悪魔、サタンに調べてもらって聞いたのよ。

 残りの悪魔は契約しない、ただリヴァイアサンだけが、長い期間誰も見たことがないって。

 サタンが配下達を使い、調べたらここにいる事がわかって、リヴァイアサンに訪ねたらしいね。

 リヴァイアサンは、契約しないって。

 その事を聞いていて良かったよ」


「なっ?」

 リアは、リヴァイアサンを勢いよく振り向き見た。


「ああ、お前が協力を頼む前の事だから、リヴァイアサンを責めるのは違うと思うぞ?

 それに……切り札きったみたいだし?

 こっちも、終わらせる為に切るかな。

 出来れば、自分の力で終わらせたかったけど……まったく」

 ミーザは、鼻から息をはき、最後の言葉は小さく呟いた。


「さて……『私が契約し、悪魔の王よ。

 私の炎を扉とし、この地に出でよ、サタン!

 来たりて、私との契約能力を使いたまえ』」

 炎を手のひらの上に出し、魔力を増幅、天井に向かい炎が伸びる。


 伸びた炎の中に指が出て、左右に開く様に炎の中心部が分かれた。


 左右に開いたサタンが、こちらに足を踏み出し地に立つ。


 人とも、獣でも、虫でも、魚類でも、昆虫でも、爬虫類でも、竜でも無い、この世に生きる、どの生物でも無い、言い様の無い姿をした大悪魔サタン。


 サタンが、ミーザを見る。


『……先の契約者クレアといい、貴様といい、何故、我を喚ぶ際、その様な祝詞を唱えるのか?

 まあ、構わぬが……魔王ミーザよ。

 我と契約し、得た能力の発動を許可する。

 さあ、唱えよ!』


「『〈滅界〉』」


 サタンと、ミーザを中心に炎が広がり、世界が変わる。


 炎がリアを飲み込まんと迫って来た。


 リアは、とっさに両腕で防御する。


 炎は、リアや、リヴァイアサンを通り過ぎ、天井や、水壁に向かって当たる。


 リアが、防御を解き、目を開き、見た風景は地獄の様に様変わりしていた。


 窪んだ地にたまっていた、水溜まりはなくなり、空気中に漂うミストは失くなり、喉がひりつく様に、ひんやりとした空気は熱され、喉が乾く。


 水壁も失くなり、地肌が姿を出していた。


「これは?」

 リアは、辺りを見渡し、あまりにも、様変わりした場所に驚く。


『グゥゥ……』

 リヴァイアサンも、誰もいない場所に落ちて、どこか苦しそうにしていた。


「三年前も言ったけど、この世界は私の……私とサタンの世界。

 私達の力を、限界以上に引き上げ、威力も高める。

 また、お前達は相性により、体力も能力も落ちていく。

 簡単に言えば、逆転したって事だ。

 そして、私は、お前みたいにダラダラと戦うつもりはない。

 終わらせてもらう」

 ミーザから、炎が吹き荒れ、リアを襲う。


 リアは、魔力を出すが、上手く練れずに炎を受け吹き飛ぶ。


 あれほど、体内に貯めていた水分は、一気になくなり、身体を、保つ事も出来なくなっていた。


 いや、完全に致命傷となっていた。


 ミーザ達が〈滅界〉を解き、世界が元に戻っても、リアは助からない……そう、リアも理解していた。



 サタンは、サタンで、リヴァイアサンの元に行き、鼻っ柱を叩き、起こす様に声をかけた。


『リヴァイアサンよ。

 久しいな?

 どうだ……我は直に魔界に戻るのだが、ついでに貴様を連れて戻るのはどうって事もないが、どうする?

 戻る気はあるか?』


『魔王よ』

 リヴァイアサンは、ミーザに問う。


『貴様達は、この戦い、勇者に勝ち、この世界を守れるのか?』


「ああ、勿論だ」

 ミーザは頷く。


『それが、真実ならば、サタンよ。

 私は、この世界、この場所に残ろうと思う』


『……それ、か。

 ならば、そうすると良い。

 こちらと、魔界にパスを通しておく。

 戻りたければ、いつでも戻って来れば良い』


『すまぬ、サタンよ』

 サタンは、両手を叩き合わせ、世界を元に戻した。


 空気中は、再び水壁より、ミストが漂い、ひんやりと肌を冷やし濡らす。


 ミーザも、倒れているリアに近づく。


「……魔王」

 リアは、右手以外の手足が既に溶地面に溶け、あれほどにあった存在感がなくなっていた。


「なんだ?」


「ありがとう」


「……礼を言われる事をした覚えはないが?」


「私のわがままを聞いてもらった。

 私は、このまま、この場所で終わる。

 本当は、わかっていた……こうなる事を。

 それでも、私は、勇者の手伝いをしたかった」


「そうか……ところで、私は、帝国城に戻ればいいんだ?

 私は、転移は苦手でな……どうすればいい?」


「ふふ……これを使って」

 残った右手を、体内に突っ込み、黒い玉を取り出した。


「これは、転移石。

 これに魔力を通せば、元の場所に戻れる」

 差し出された石を、ミーザは受け取った。


「ああ……勇者の、アベルの顔を……いえ、あの人の顔を見たかったな。

 魔王様……あの人に、よろしくと……」

 そう言ったリア……最後は、スランとして言い残し、完全に溶け消滅した。


「……だったら、何で勇者につき、私達を裏切ったのだ?」

 ミーザは、スランの死に、涙を流し呟いた。




 しばらくして、サタンは消え、回復したリヴァイアサンも水壁に潜り姿を消し、残されたミーザも転移石を使い、この場所から誰もいなくなった。



ブクマ登録、ありがとうございます。

前話投稿後、数時間して4人もいれていただいたのですが、この投稿が遅い為、2人消されたのは、少し残念でした。


もう少しで、完結になります。

それまで、頑張って書きますので、よろしくお願いします。


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