最終章 13 続、帝国城~地下牢獄~
今回、話を割って2本立て
よろしくお願いします
ライは攻撃を続ける。
体重を乗せた蹴り、右のジャブ等、やむことのない連続の攻撃。
完璧なバランスで作られた盾は、穴が空いた事で脆くなり、やがてライの攻撃に耐えられなくなり砕けた。
ガブリエルは驚愕で、完全に動きがとまる。
「どうした?
盾はもう無いのか?」
ライは、余裕をもって、ガブリエルに問う。
「あっ?」
慌てて、盾を空間から取り出し着けようとする。
取り出した盾は先程の大円盾と違い、予備の盾は、手首から肘までに装着する円盾だった。
「遅い」
ライは、わざわざ待つつもりもなく、盾を蹴り飛ばした。
「あ……」
ガブリエルは、遠くに飛ぶ盾を無様に見送った。
もう声もかけるつもりもない、ライは左の拳は、ガブリエルの心臓ごと胸板を打ち抜いた。
「……ど、ぉして?」
腕を引き抜かれ、身体の支える力もなく、膝から崩れ、ミカエルがいる牢獄の鉄格子にぶつかりもたれた。
「どうしてか、か?
どういった意味かわかんねぇけど……俺なりに答えてやるよ。
お前が、先の神霊に対しやると言ったのは、技術的なモノだよ。
どっちにしろ、全然足りない」
ライは、ガブリエルの前にしゃがみ、目線を合わせ話す。
「な……にが、だ?」
「全部だ、全部。
って、心臓無いのに、本当、しぶといな?
……まあ、いいか。
お前は確かに技術は修練しただろうさ?
でも、それ個人だろ?
他の強い奴……勇者とかな、誰も一緒に相手をしてもらってないだろ?
突然のトラブルに対応しきれていない。
もろに、そういうのわかるし。
あと、お前らも含め、勇者以外の人族は、洗脳や身体の乗っ取りで、意思があるのか、ないのか、知らないけど、心がない。
次に、やたらと装備はいいし、戦える者も多い。
でも、攻撃が当たってわかったよ」
ライは、ガブリエルの穴が空いた服を破り、ガブリエルの身体を見た。
痩せてあばら骨が浮くくらいに細い。
「ほら、勇者の直属のお前でさえ、こんな身体だ。
体力も、魔力も回復する訳がないだろ。
俺達《魔族》は、三年前……いや、勇者が現れた十年以上も前から、用意してきたんだ。
特に、魔族領に戻ってから三年間、自身の技術を……連繋の連度を底上げし、どんな状況に陥っても戦える様に訓練し、戦い誰もが死なず生き残る覚悟を、戦わない者は戦う者達を支える為、備蓄の準備や家畜の世話、明るい笑顔で迎える安らぎを、この日の為、準備してきたんだ」
そう、その差がサウルでも、魔王城でも、ギバが戦っている帝国傭兵ギルドでも、少数で勇者軍の大軍を圧倒出来る理由。
「……」
「そりゃ、最後、勇者との対決で負けたら全てが終わりさ?
いくら、サウルの街を守りきっても、魔族領への攻撃を凌ぎきっても、帝国の傭兵ギルドに残ったギバのおっちゃんが倒しきっても、な!
何千何万の兵力だとしても、兵器を揃えも、心も技術も、身体もない、お前達に負けるはずがないだろう!
……そういう事にならない為、俺は、俺達は現在、動いている」
ライは立ち上がり、落ちているガブリエルの剣を拾い、ガブリエルに剣を向ける。
「……だから、お前を……勇者のチームに選ばれ、神霊の宿られる事になった名も知らないお前を、永遠に眠らせる」
剣を振りかぶり、ガブリエルの首を落とした。
首が落ちた瞬間、ガブリエル《名もなき英雄》の顔が安らぎで微笑んだ様に、ライは見えた。
……単に、願望が見せた幻だったのかもしれないが。
「さてと、ソコにいる神霊」
ガブリエルの身体から、出てきた神霊核を手に入れ、アイテムボックスに納め、再び剣を構えた。
「悪いけど、後ろに下がってソコを退いてくれないかな?」
ミカエルは、その言葉通り、鉄格子から離れ、レオハルトの下まで移動した。
「フッ」
ライは素早く剣を、三度振り抜き、中に入れる様に鉄格子を切り落とした、
「……見事」
ミカエルは、ライの技量を素直に認めた。
「……どうも。
剣は苦手なんだけど、上手くいった」
ライは、繋がった牢獄に入り、ミカエル達を見た。
「ソコのボロボロ……帝王、だよな?
神霊のアンタがいるし」
ライは、レオハルトを指でさし、ミカエルに確認する。
「ええ、そうです」
「そっか……おい、帝王のおっちゃん?
意識あるか、おい?」
「そっとしてあげてください。
彼は、ここに繋がれ、それでも幾度と脱走を試み、戦いましたが、結界に阻まれ、こうして牢獄に」
「ふ~ん……でも、それってアンタが戦わず、力を封印され、おっちゃんに力を貸さなかったから、だろ?」
「……ええ、そうです」
「んで、他の神霊達の誘いを、何度も断り続けた結果が、これ……か?」
「……私は……中立で」
「その度に、おっちゃんが傷ついても、意思を通すか?
そりゃ、ご立派で?」
「……そこまでに、してやって……くれる、か?」
レオハルトが、掠れ、聞こえ難い声で、ライをとめる。
「おっちゃん、気がついたか?」
「あ、あ……お前、は?
そう、か、戦争、が、始まっ……たか」
「おっちゃん……これ飲め」
アイテムボックスから、二本の小瓶を取り出し、一本を飲ませようとする。
「これ、魔族の研究員が作った魔力薬。
飲めば体力が戻り、傷にかければ、欠損以外は大抵直る優れ物、だぞ!」
ライは、無理やりレオハルトの口に突っ込み、上を向かせ飲ませた。
「ん……?
げ、ほっ、ごほっ……ぐは!
何だ、これ……死ぬほど、不味いぞ」
「だよな!
やっぱ、そうだよな!
俺も、何度も思った……けど、どうだ?
効くだろ?」
ライは、嬉しそうにレオハルトに聞く。
「……あ、ああ、確かにな」
身体の調子を確認しながら、レオハルトは頷く。
「で、次、これをかけるんだけど……良かったな?
手足の欠損や、腱を切られてなくて……これなら、歩けるぐらいには、なるだろ」
「な、待て……それもしかして、死ぬほど痛いんじゃ?」
「……当たり前だろ?
痛みなくて、傷が直るもんかって、な!」
レオハルトに、ジャバジャバと魔力薬をまんべんなくかけた。
「ぐぅ……が、あああぁ、ぎぃがっ、あがーーーー!」
手首に繋がった手枷が、千切れそうになるほど、レオハルトは暴れた。
「……うわ~?
ないわ~……て、止めるかと思った」
ライはレオハルトの状態を見て、顔をしかめ、ミカエルの方を見て不思議に思った。
「それが確かな物だというのは、見た時にわかりました。
止める理由はありません」
「……そっか?
じゃあ、アンタにはこれだな」
アイテムボックスから、風の神霊核を取り出し、ミカエルに向ける。
「これは……ラファエルの?
これを、私に……どうしろと?」
受け取った神霊核を持ち、ミカエルは混乱する。
「いや、さ?
アンタに、それ渡せって、さ」
「誰……が」
「コイツ」
『私です』
ライが指をさし、ライと契約した神霊サマエルが姿を現した。
『私が、それを渡すようにと指示しました』
「……神霊?」
初めて会う神霊に、ミカエルは驚き戸惑う。
『初めてまして、神霊ミカエル。
私は、ある神に作られし神霊、サマエル。
以後、お見知りおきを』
サマエルは頭を下げた。
「どうして?」
『この戦いは、私達を作った神の更に上の神が裏で関与しています。
故に、その命を受けた我が神の為、私はここに、そして、このライと契約を交わしました。
その神霊核を取り込めば、貴方は自力で封印を解けるでしょう』
「確かに、そうだが……」
『貴方の中立は、正しい。
全てが終わるまで、貴方はそのままで』
「……わかり、ました。
使わせてもらいます」
ミカエルは神霊核を解放し、自身に押し付け取り込んだ。
光輝いたミカエルは、封印を解き、全ての力を……いや、それ以上の新たな力を手にいれた。
『さて、ライ、急ぎましょう。
ここでの用事は終わりました』
サマエルは、そう言って再び姿を消した。
「そうだな……でも、その前に」
ライはレオハルトの前に膝をつき、手枷に魔力を通して壊し、レオハルトを自由にした。
「おっちゃん……動けるか?」
立ち上がったライは問う。
「……ああ、助かった。
わかっている……俺もついて行かせてもらう」
「ああ、頼む。
この先、何があるかわかんねぇからな?」
ミカエルも姿を消し、ライとレオハルトは地下通路を抜ける為、走り出した。
途中、サウルでの戦いが終わり、こちらに来たガインと合流し、勇者の下に向かった。
城内に入り、帝国城の通路を走る。
二階に入り、勇者がいる謁見の間の前に通る為の部屋に入った。
そこで見たのは、後ろから小さな子供に心臓ごと刺され、口から血を吐くリシェルの姿だった。
こんな終わりですが、次は、もう1つの作品。
『特殊能力:カード』を書きます。
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