最終章 12 帝国城~地下牢獄~
出来ました。
遅くなりすみません。
帝国城、謁見の間から転移した水の神霊ガブリエルは帝国城地下にある牢獄に、とらえている者に会うため向かっている。
牢獄は犯罪をおかした重要人物や、多大な魔力を持つ危険人物を入れる為、強力な結界がはられ、入れられた者は、体力を十分の一まで下げ、また、魔力が封じる結界と、複雑で迷路の様に入り込んだ通路により、簡単には脱走出来ない工夫がなされている。
その中で最奥にとらわれた人物は、様々な暴力を受け、傷つき座り俯いている。
その両手は、壁から左右に出ている鎖の先、手枷にてはめられていた。
「どうだ?
そろそろ、私達に手を貸す気になったか?」
牢獄の前の鉄格子をはさみ、ガブリエルは俯く人物に問う。
人物は、声に反応したのか肩が震え、俯く顔を上げ、ガブリエルを見た。
「……何度も、言って……いるが、お断り、だ」
顔を上げた人物は、数年前まで、帝国の王レオハルトだった。
三年前のイルミア王国と同じ様に、勇者による洗脳感染を、少しでも回避させようとし帝王に戻ったが、北の同盟国、南の王国が、すでに抑えられ、後手にまわった帝王は、洗脳された国民達に捕らえられた。
洗脳し終えた帝国民を指示していた、ガブリエル達は、歴代の帝王と契約し、守護する火の神霊ミカエルに戻るよう、何度も説得をおこなった。
だが、ミカエルは、今までそれを拒否し、勇者に力を封印された今では、ミカエルは、何も出来ないレオハルトとともに、牢獄にいる。
レオハルトが洗脳されないのは、ミカエルが離れず守護しているからだった。
「貴様に言っているのではない。
……ミカエル、これが最後だ。
その様な者から離れ、我らとともに、勇者アベル様に力なろう」
ガブリエルの言葉に、姿を隠していたミカエルが現れ、レオハルトを隠す様に鉄格子をはさんで対峙する。
「おお……ミカエル。
やっと、我らとともに……」
ガブリエルは、姿を現したミカエルを、感動し向かい入れようと両腕を広げる。
「……」
ミカエルは、そんなガブリエルに悲しみ、首を横に振り否定する。
「……何故だ?
何故、そこまで頑なに我らとともに戦う事を否定する」
「……ガブリエル。
逆に問いましょう。
貴方達は、何故、あの勇者の下で、命令を聞き、忠誠を誓うのです?
あの者は、我らが主、創造神ではないのですよ」
「……それがどうした。
それでも、あの方は創造神様の力を持っている。
我らを疎ましく思おうが、どうしようが、今の創造神様は、あの方だ。
作られた我らは、あの方の言う事を聞くのは当たり前ではないか」
「ふう」
ガブリエルの思いを聞き、ミカエルはため息を吐く。
ガブリエルが不憫で。
「ガブリエル……貴方は、私達の中でも特に創造神への忠誠心が高い神霊でしたね。
しかし、私には、どうしても創造神と勇者が同じ存在には見えないのですよ。
私には、勇者は、創造神の力を持った自分勝手な子供にしか見えません」
「なっ……何を馬鹿な事を……?」
「私は、長きにこの帝国で人族を、歴代の帝王を見てきました。
勇者の様に自分本意な者や、空の様に広い優しき心を持つ者、他者を騙し金儲けする者、自分を犠牲にして他者を助ける者、他にも多くの人族を、魔族を見てきました。
もう一度言いましょう。
そんな私には、勇者は自分勝手な子供に見えます」
「……例え、そうだとしても」
「ええ、例え、そうだとしても、私達を作り出した創造神の力を、彼は持っています。
故に、私は手を貸さない代わりに、この世界、この戦争に中立として見守ると決めました」
「馬鹿な……馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な!
貴様は、何を言っているんだ!」
「……面白い話をしているな~?」
「誰だっ?」
神霊二人の意見の言い合いに割り込んできた声に、ガブリエルは後ろを振り向いた。
通路から現れたのは、魔族ライ・ハワードだった。
「貴様は……先程、ラファエルを殺した魔族?」
「……ラファエルを?」
ミカエルは、ガブリエルの呟いた言葉に驚き、ライの顔を食い入る様に見つめ気づく。
「貴方は……三年前の武闘大会に出ていた」
「何故……貴様が、ここに?」
ガブリエルは、剣と盾を出現させ、両手に持ち、右手の剣をライに向けた。
「いや、何故って……城門抜けて、他の道で勇者の所に行けないかな~って思って、歩いていたら、神霊の気配を地下に感じてさ?
こう、やってここに来た……それだけ?」
「なるほど……丁度いい。
我ら神霊、お互いを出し抜くばかりであったが……それでも、兄弟と言えるラファエルの仇が、現れるとは好都合と言うもの。
……貴様は、ここで倒させてもらう」
ガブリエルが、盾に隠れる様に戦闘に備え構える。
「へぇー?」
隙のない構えに、ライは通路全体を見て、手にした棍棒を腰元のアイテムボックスに直し、代わりに第二の武器とも言える、長さ十五センチメトルの太針が拳から出ている手甲と、膝から足首までを守る足甲を取り出し素早く装着する。
手甲は、まるで短い刺突槍の様に鋭い。
ライは狭い通路で戦うには、棍棒より、こちらの方が向いていると判断した。
「待っててくれたんだ?」
「ふん……よくいう。
隙だらけに見せて、警戒を起こらなかったクセに」
「まぁね」
軽く飛びながら、両腕を構える。
父親のガイから教わりし歩術、跳歩。
それ対し、盾をライに向け、ジリジリ少しずつ近寄るガブリエル。
「フッ」
先に動いたのはライ。
小手調べな感じで、ガブリエルに詰めより、右ストレートを繰り出す。
手甲の太針が、ガブリエルの顔面に向かう。
ガブリエルは、冷静に盾をあわせ受ける。
ガブリエルの盾は身体半分を隠す、大きな玉の端を一部切り落とした、鏡の様に滑らかで中央が膨らんだ円盾であり。
ライの拳は、水滴が滑る様に流され、盾で押し弾く。
「うゎ?」
弾かれ体勢を崩されたライに、ガブリエルの剣が振り降ろされる。
ライは、無理に受けようとせず、弾かれた勢いを利用し、身体を回転、回し蹴りを出す。
ガシィーン
ライは手甲で剣を受け、ガブリエルは盾で蹴りを受けた。
その衝撃を利用し、二人は、いったん距離をとった。
「ふう……さっきの奴より、やるなあ」
ライは、自分がこの場所で色々な制限を受けているのもわかっているが、それでも相手の手応えは確実に感じる。
「貴様こそ、この場所で、そこまで動けるとは称賛にあたいする。
だが、だからこそ言おう。
この場所故に、我の敗北はあり得ない!」
「そうかな?
まあ、確かに身体は重いし、魔力も上手く使えないが……それでも」
ライは、再び動き、ガブリエルとの距離を縮める。
左で何発もの拳を打ち出し、盾で受け止められも、
「フッ!」
真っ直ぐに右ストレートを放つ。
盾の中央の中心に、手甲の太針半ばまでが刺さる。
「なっ……馬鹿、な」
後ろに引く事で、盾から針を抜き、盾を凝視する。
盾の中央に、綺麗な穴が空いている。
「ほら……俺も負けるイメージがわかない」
右の手甲は、盾に穴を空けたが、太針は先端が折れ潰れ、刺す事が出来ない。
ライは、構えを左右逆にした。
今回は長くなったので、話を割り2本立てです。
次は、18時に投稿します。
よろしくお願いします。




