最終章 11 帝国城~事情~
出来ました。
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私の、別の作品、『特殊能力:カード』もよろしくお願いします。
帝国城に入り、ミーザ達は迷っていた。
勇者による結界が城の中に入った途端、結界は迷路化し、城内を駆け巡っていた。
「……何時になったら、ここを出られる?」
ミーザは、なかなか脱け出せない迷路に苛立っていた。
「ザーツ、いっそのこと魔力で破壊してやろうか!」
「落ち着け、ミーザ。
無理を通しても、勇者の事だ……何らかの罠が待ち構えている筈だ。
……それに、入って一時間か?
そろそろ、何かがあるみたいだそ?」
ザーツは、口角を上げながら、前方に見える扉に指をさす。
「……今までだって、扉はあったじゃないか」
「そう、拗ねるな……リシェル、どう思う?」
黙って扉を見ていた、リシェルに、ザーツは声をかけた。
「うん……おとうさんの言う通りかも?
少しだけど、気配が違う感じがする」
「という事だ……ミーザ。
とりあえず、行ってみるか?
さーて、と……何が出るかな」
三人は、扉に向かい歩き出す。
少し前、ミーザ達が城に入って、しばらくの事だった。
ミーザ達が結界の迷路を走る姿を写し出した、映像を見ている水の神霊ガブリエル、土の神霊ウリエル、そして玉座に座る勇者アベル・ノーマン。
「どうやら、奴等は結界に入った様だな」
ウリエルが、映像を見ながら肩をふるわし、笑いをこらえている。
結界を張ったのは勇者だと思っていたミーザ達。
実は、魔術師であった依り代の性格が、罠や、策略を仕掛け相手をはめる戦術を好むもので、三年の時で、写り混ったウリエルだった。
「……ふん」
ガブリエルは振り返り、勇者の下に向かう。
「どうした?
どこへ行くのだ……もう、見ないのか?」
罠にはまった魔王達に、気をよくしているウリエルは、この功績をもっと見せつけたく、ガブリエルに声をかけた。
「ふん……貴様の策略がはまれば、それでいいさ。
だが、私は、貴様の策略程度、奴等に上手くいくとは思っておらんさ。
それに、私は、私でやりたい事がある」
「……ふん、それこそ笑止。
幾度と足を運んでも、アヤツは承諾せん。
無駄な努力だというんだ」
ウリエルは、もうガブリエルを見ず、映像を見る事に集中する。
「……わかっているさ。
だが……私は、諦める事が出来ないだけだ」
勇者の下にたどり着き、膝をつき、その場を離れる事に頭を下げた。
「アベル様」
「……好きにするがいい」
勇者は、ガブリエルを興味なく見定め、好きにさせた。
「ありがとうございます」
そう言って立ち上がり、ガブリエルはある所に転移した。
「それで
……お前は、この後、どうするつもりだ?」
勇者は、ウリエルに問う。
「はい、アベル様。
我が策略により、魔王一派は罠に落ち、確実に戦力を落とすでしょう」
ウリエルは、映像に手を差し伸べ、自慢高々しく答えた。
「……お前は、馬鹿か?」
「は?
いえ……あの?」
ウリエルは、勇者の心意がわからず、うろたえる。
「正真正銘の馬鹿、か……俺は、お前は、いつ、場所を離れ、敵を向かい撃つと言っている」
明らかに、ゴミを見る目で、つまらなそうに勇者は言う。
「しかし……ラファエルが敗れ、さきほどガブリエルもこの場を離れ、今、ここに残って、アベル様をお守り出来るのは、我だけでございます」
「だから、何だ?
俺より、数段以上弱い、お前が、俺を守ると?」
「いや……その、それは……」
「策だの、何だの……お前が、ここにいれば、奴等を確実に倒せるというのか?」
「そっ……それは……」
「ならば……行けっ!」
「っ!
はっ!」
ウリエルは、一礼をして転移した。
「……」
帝国城、謁見の間には、静寂だけが残った。
「……いるんだろ?
出てこいよ」
静寂を打ち破ったのは、玉座に座る勇者アベル。
「……バレていましたか」
勇者の声に返答があり、天井から薄青い半透明の粘液が、ぼとっ、と落ち、姿を現したスライムが、人の形にまとまり、完全な人の姿に変わった。
帝国に着き、しばらくして姿を消した魔族。
六魔将、五席、〈変幻妖〉スラン。
スランがとった人の姿。
三年前、勇者アベルが失策し、永遠に失った愛しの恋人、リアだった。
「その姿……そうか。
お前、あの時のスライムか……何故、リアの姿をとる?」
アベルは、ゆっくりと魔力を解放する。
苛立ちと、怒り、憎しみを込めて。
「私は、スラン……勇者アベル、君の下に、私の分身を送っておいたでしょう?
役にたったかな?」
スランは、勇者の魔力を微塵も気にせず、笑いかける。
あの、優しいリアの笑顔で……
「その、顔を、やめろ!
お前が、リアの姿をとるんじゃない!」
更に増した、勇者の魔力は空気を、謁見の間を、帝国城を揺らす。
「……君は、勘違いをしている。
私の、この姿……リアの姿は、君が、三年前に望んだ事。
ただし、精神は完全ではないけどね」
「……どういう、意味だ?」
アベルは、話を聞く事にしたのか、魔力の解放をやめ、問い質す。
「君は、三年前、封印していた私を解放し、私の魔法という呪いで操ろうとした。
……ここでも、君は、失敗した。
私を、私の中で完全に溶かしきれば、君の望みはかなった。
だけど、君は、私を思い、私の中から私を取り出した。
その為、君は、私の死なせてしまった。
君は、私を失った後、その場を離れたから、知らないでしょうけど。
半分溶けた私は、痛みと苦しみと悲しみを、私の心に写し、呪いとなり、魔王城にいた、もう片方の正なる私と戦い、1つとなり、今の私となった。
……私は、魔族、六魔将の一人、スランにして、かつて、君の恋人だったリアでもある」
「……馬鹿な?」
アベルは、スラン=リアの話を聞き、信じきれない、驚愕の顔をする。
「嘘じゃないよ……完全に、私が溶けて一つになっていたら、私はスライムと私の能力、魔力、知力を合わせ、君の力になった……んだろうね?
今じゃ、結果はわからずしまい、だけど」
「そうか……そう、だったか……。
それで?
お前は、何をしたかったのだ?
三年前のある日、俺の下に分身を送ってきて、魔族の情報を流したりしてな?」
「私も、よくわかっていない……かな?
私は、私でもあるから、君の力になりたかったのもある。
でも、私でもあるから、こちらの情報も向こうに流し、魔王ミーザと、ザーツに、私の現状を話した。
まあ、魔王ミーザには、その場で殺されそうになったけどね。
だから、こちらに私が来る事が決まった時、二人に、先にここに来て、君と話す事にしたんだ。
……私が、誰なのか……それを知りたいのはっ、私なんだっ!
君のせいで!
お前のせいで!
アベルのせいで!
私は……私は、わからなくなったんだ!」
スラン=リアは混乱の激情の涙を流す。
「リア……」
アベルは、玉座から立ち上がり、スラン=リアを抱き締める。
「アベル……一度だけ、リアとして、ここに来る魔王は、私がくい止める。
アベルは、ザーツと、アベル最大の敵、リシェルと戦って」
「わかった……ごめん……リア、ありがとう」
この、わずかな時間、アベルは、リアと過ごした優しい勇者アベルに戻っていた。
そして、全てを終わらし、この世界を完全に消滅させ、殺した人族、魔族、神霊の恨みと無念の力と魂を、自分に取り込み、この世界をもて遊んだ神々を殺す事を、改めて心に誓った。
今回、スランのセリフが、私、私とわかりにくかもしれませんが、これも私の演出だと思ってください。
よろしくお願いします。
私は、ふつうに、私。
ルビ打ちの私は、そのまま。
傍点の私は、どっちが本当の自分がわからない、私。
君のせいで→スラン=リア
お前のせいで→スラン
アベルのせいで→リア
としての、それぞれの勇者呼び。
不安定のスラン=リアのセリフ。
な、感じでお願いします。
なんとか、話の着地地点が見えて来ました。
後は、文章に出来るか、どうかです。
頑張ります。




