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最終章 9 魔王城の戦い

出来ました。


また3作目となる、新作を書きました。

現在、7千文字超えの3話まで投稿しています。


そちらもよろしくお願いします。

詳しくは、後書きにて


では、どうぞ

 向かいあった魔王軍と、勇者軍。

 緊張は魔王軍だけ拡がる。

 勇者軍の兵士達は洗脳の為、無表情だ。


 勇者軍から、二人こちらに向かって歩いてくる。


 三年前、ルリとウォルドとともに、天使が取りつき、勇者の駒の一人となった天使クレイン。

 クレインは、イルミア王国の第一王子、つまりルリの実の兄だ。


 もう一人は、イルミア王国で数多くの兵士を鍛え、慕われ、ルリ達の母、王妃リサを守っていた、老騎士ランフォード。

 イルミア王国に、この者ありと云われた男だった。

 彼も、また、勇者に天使を取りつけられ、洗脳された憐れな男。

 三年前の武闘大会の最後の時、勇者に連れられ、今まで守ってきた王妃に剣を向けた。


 二人は立ち止まった。


 魔王軍からも、二人の人物が出てきた。

 ルリと、ウォルドだ。


 四人は向かい合う。

 天使に取りつかれた二人。

 天使を取り除かれた二人。


 ルリと、ウォルドは、元々この二人と戦うつもりだった。

 天使に取りつけられたという、同じ境遇にあい、そこから抜けられなかった、二人と戦うのは……。


「久しぶり……と、言えばいいのかしら?」

「ああ、久しぶりだね、ルリ?

 元気そうだ」

 天使クレインは、久しぶりにあった妹に、笑顔で返した。


「……うん、分かっていたとはいえ、これはキツいわね?

 ねぇ、貴方?」

「ああ、そうだな」

 かつての兄と変わらぬ表情と声を聞き、ルリ達は、兄はもういないと悟った。


「おや……もしかして、二人は結婚したのかな?

 だとしたら、祝ななければならないな。

 そう思わないか、ランフォード?」

「そうですな。

 あのお転婆だった、ルリ様の晴れの舞台、さぞ、リサ様も喜ばれたことでしょう。

 遅かれながら、贈り物致しませんか?

 クレイン様」

「そうだな……何が良いかな?

 そうだ!

 我ら勇者軍で、全ての魔族を滅ぼし、人族と魔族の紅い鮮血の華を咲かす、というのはどうだ?」

「素晴らしい発想です。

 クレイン様」

 ルリの言葉で、ルリ達の状況を理解し、クレイン達は言葉を紡ぐ。


 殲滅という、悪意の言葉を。


「……はぁ、分かっていましたが、ここまでとは」

「まったくだ……やはり、施しの処置もない様だ。

 いや、一つだけある、か」

 ルリ達は、改めて決意した。


「ねぇ、かつてのお兄様?」

「かつて、って酷いね?

 まあ、いいけど……何だい、ルリ?」

「あそこにいる兵士……どうして、彼は、あんな所にいるのかしら?」

 ルリはクレイン達の後方で隊列を並ぶ、兵士に指を指し尋ねた。


「ん?

 何の事だい?」

 クレインは、指先の方向を見て、首を傾げる。


「あそこにいる、あの子の事よ!」

 ルリは、指した指先から魔法で氷の弾丸を打ち、兵士の兜に当て、兜が飛び兵士の素顔がさらけ出した。


 素顔をさらした兵士……それは、クレインとルリの弟、イルミア王国、第二王子クロードだった。

 クロードは、言われるまま行動する、洗脳された国民と同じく、瞳に光は無く無表情だ。


「ああ……あんな所にいたんだ?

 クロードの奴。

 まあ、どうでも良いさ。

 ようは、勇者様の役にたてば、ね?」

 クレインは、クロードをはじめ、後方に立つ兵士達は、駒でしかなく早く死んで欲しかった。


「ほんと~にっ、ムカつくわね!」

 クロードに向けてた指先を、クレインに変え、先程より速く威力を高めた氷の弾丸を放つ。


 天使クレインは動かず、ニヤリと口角を上げ、天使クレインの前に、素早く移動した天使ランフォードが剣で氷を砕いた。


 その瞬間、ウォルドは素早く動き、天使ランフォードに剣を振り抜いた。

 天使ランフォードは、氷を砕いた剣を切り返し、ウォルドの剣と剣が重なり力競べとなった。


 こうして魔王城の戦いの幕は開いた。


「全軍、魔王軍を殲滅せよ!」

 天使クレインは剣を抜き、上空から前に振り下ろした。



「「「うおおおおおおー!」」」

 勇者軍は、それぞれ武器を抜き、雄叫びをあげ天使クレインを避ける様に進軍する。


 それに対し。

「死霊部隊、各自魔法を放て!」

 ザンバインの号令の下、陣列中央の後方より、様々な魔法が打ち出される。


 だが、進軍は止まらず。


 魔王軍、陣列右側からアルテ率いる獣魔部隊が、左側からオズマ率いる厳選部隊が突撃する。


 二手に真っ直ぐ進軍する勇者軍に対し、左右から攻撃を仕掛ける形に……自然と戦いの場は二つに別れた。




 剣を持つ、天使クレインは走る。

 同じく、ルリも氷を更に凝縮させ、鋭く強固な剣を作り、対峙する。


 二人の戦いは、剣と魔法を駆使して戦う戦法だ。

 だが、元々、クレインは内政を主に学んでおり、剣も魔法も、飛び抜けた才能はなく、嗜む程度だった。

 クレインの属性は、風。

 天使が取りついた事で、闇以外の属性を使える様になったが、所詮は、人より少し魔力の多いだけの器。

 力も、魔力も、剣の技術も、全て、一回りか、二回り上昇したに過ぎない。

 それでも、勇者軍の中では、天使ランフォードに次ぐ、二番目の実力だった。


 対して、ルリは、氷の単一魔法の使い手の為、魔法特化であったが、天使を取り除かれた後、傷ついた魂と、肉体を回復させ、出来る限りの時間、剣を振り、魔法と絡めて技術を研いてきた。


 天使クレインと、ルリの実力は、ほぼ互角。

 剣では、ルリが力負けをして不利だが、繰り出す魔法の早さで、手数を増やし凌いでいた。



 一方では。

 天使ランフォードと、ウォルドは、逆に剣の技術はウォルドに、天使の魔法の多属性の使い分けで、魔法は天使ランフォードに傾き、天使ランフォードが優勢だった。


 ウォルドは、その魔法の種類の多さに、気を取られ集中出来ず、零の極致を使えなかった。


 飛んで来る火の塊、風の刃、水の弾丸、土の弾丸、光の目眩まし、その間の剣の攻防。


 天使ランフォードの老獪な巧みの技術。

 ウォルドは、押し込まれそうになる攻防から、一度、飛び退き、体勢を立て直そうとするが、、中々にそれをさせてもらえない。


 仕方なく、戦法を変え、この三年近くで学び、会得した魔術を使い出した。

 戦いながら使える魔術は、身体強化と、五メトルだけの転移。

 身体強化で、力負けを無くし、転移で相手の不意をつく。

 更に、転移を連続で使用し、距離を取る事が出来た。


 先程とは違い、天使ランフォードは追いつけない。


 お互い距離を置き、動きを止める。


 ウォルドは、何度か深呼吸をし、集中を始め、意識を深く、静かに持っていく。


 零の極致を発動。




「みんな、まずは、ぼくが行く」

 アルテは、大悪魔マルコシアスを呼び出し、契約能力〈群狼〉を発動。

 十メトルの大きさを誇る、狼型の悪魔マルコシアス。

 マルコシアスの影が広がり、影から三メトル程の眷属……黒い狼が、十二匹現れ、勇者軍に襲撃する。


「みんな~、殺しちゃダメだよ!

 ……じゃあ、あと、逃れた者は、ぼく達で倒そう!」

「「「おう!」」」

 アルテは、黒狼に不殺の指示を出し、獣魔部隊にも、指示を出す。


 まだ、十三歳と幼く、指示を出す声は軽いが、的確である……獣魔部隊が合わせている、だけではあるが、七千を超える勇者軍に対し、獣魔部隊は三百の部隊。


 それでも、アルテの契約能力〈群狼〉は、確実に相手の数を減らしていく。


「みんな~、無茶せず、確実に~っ、行け~!」

「おめぇらっ!

 姫様の命令だー、突撃ぃぃぃっ!」

「「「おおおーー!」」」

 アルテと、副部隊長の激で獣魔部隊は、更に勢いが増し、勇者軍を圧倒していった。



「まずは、妖魔小隊〈土〉、お前達からだ!」

「「「……おうっ!」」」

 オズマの命令の下、三メトルの岩石のゴーレム三体が動き出し、横に一列並んだ。

 その後ろに泥のゴーレム達が十三体、列を作った。


 泥のゴーレムは、前方に両手を置き、泥魔法で地面を泥に変えた。

 泥は勇者軍の足元まで延び進み、進軍を遅らせる。


 その隙を狙い、岩石のゴーレムが前に倒れ、両腕を地面に勢い良く叩きつけた。


 すると、大地を揺らし、泥の波が発生した。

 波は次第に高くなり、十メトル近くまであがり、大量の泥が津波となって、勇者軍に向かう。


 足を捕られ、その場を離れられない者達は、盾を構え津波を耐えるが、泥に飲み込まれ、先鋒をきって進軍していた兵士は、巻き込み押し流され、行動不能に落ちいった。



 勿論、それだけの被害、命を落とした者も数多くいるだろう。

 兵士、平民関係なく……だからといって、オズマは容赦はしない。


 これは、戦争。

 オズマは、大悪魔バハムートの一部と融合し、何千の時を生き、幾度の戦争を見続けてきた。


 その度、友であった者、愛した者等を失くし、また、生き残った場合でも、その者達は、オズマの事を忘れ去れ、苦く悲しく、狂いそうな思いをしてきた。


 実際、オズマは、その事に関して、幾度と自殺を行い、その都度、バハムートが、オズマを蘇らし、平静を保つ様に心も修復していた。


 だが、オズマは落ち着きはしたが、一度も忘れた事はなく、人族を、神を呪った。

 オズマはこの度最後の機会を得た。

 故に、オズマには、向こうが洗脳されていようが、容赦はしない。

 人族が、生き残ろうが、死のうが関係ない。


 オズマは、その事を魔王ミーザにも、他の者達にも、伝えている。

 ミーザ達は、オズマの思いを汲み、出来るだけ、生かして欲しいと、皆、オズマに願った。



 オズマ率いる厳選部隊は、実際は、他の部隊や、種族の集落から、爪弾きされていた者達の集まりだ。


 岩石のゴーレムと、泥のゴーレムの妖魔小隊〈土〉は、他のゴーレムに比べ脆く、攻防力が劣り、妖魔部隊として使えないと、馬鹿にされていた。

 妖魔小隊〈火〉の者は、元は死魔族であったが、魂の炎を操り続け、やがて、肉体を失くし、自身が炎の塊となり、死魔族、妖魔族どちらからも、嫌煙し追い出された存在。

 魔法が得意な魔翼族の中で、魔力は多いが操作が苦手で、馬鹿にされ、クサっていた者達。


 その者達を、オズマの指導の下、気長に訓練し続け、決して見捨てる事なく、長所を伸ばし、合同で戦う術を身につかせた。


 これも全て、長く生きた人生で、多くの種族と出会った事で、その種族の特性を知り得た、他の六魔将には無い、オズマならではの力だった。


 故に、六魔将、第一位として君臨し、魔王の右腕といわれている。


「次!

 魔翼小隊、妖魔小隊〈火〉は、空から向かい、被害が弱まった辺りから、殲滅合成魔法をぶち噛ませ!!」

「「「よっしゃーー!」」」

「妖魔小隊は、体力魔力を防御しつつ、回復せよ」

「「「……了解」」」

「その他の者は泥の被害を逃れた左側の兵士を蹴散らせ!!」

「「「うおおぅっ!」」」

「次からの指示は、副部隊長、任せた!

 俺も、出る!」

「了解しました」

 そう指示を出し、オズマは単独で、逆の右側に向かい散らばった兵士を倒していく。


 そして、アルテの獣魔部隊、オズマの厳選部隊を、更に避け、魔王城に向かった勇者軍は、最も守りの固いダグドの魔蟲部隊と対峙し、後方からのザンバイン率いる死霊部隊の魔法が飛ぶ。



 こうして、魔王城の戦いが始まった。






如何でしたか?


前書きにも、書きましたが、新作を投稿しています。

「特殊能力:カード」という、タイトルです。

よろしければ、こちらもよろしくお願いします。

作者名『マス シゲナ』を押して、そこから入ってみてください。


しばらくは、交互に書いていこうと思っています。

また、この作品の投稿日がズレるかもしれません。

読んで頂いている方には、ご迷惑をお掛けしますが、よろしくお願いします。


では、また


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