最終章 6 タイタン 対 天使アーク
出来ました。
今回、ちょっと長くなりましたが、割れなかったので
このままで投稿します。
11月11日~12日に
0話~10話の、スペースと、改行を増やしました。
11月13日に
3話の、祖父から、曾祖父に変更。
魔王の前に、三代前の を追加しました。
ーブォン
タイタンの振り下ろす両手剣が唸る。
幾多となるタイタンの攻撃は、天使アークは剣の軌道を見据え、避け続ける。
ー零の極致。
天使アーク……いや、槍聖アーク・ジルベスタが生前長年の鍛練により身に付けた、全ての武に繋がる、最高の頂きの一つ。
精神を極限まで集中し高め、発動させる事が出来るが、それに至るまでの人物は数少ない。
生前のアークは、零の極致を覚え、様々な凶悪な魔獣を倒し、様々なギルドの依頼を達成し、零の極致を、さらに使いこなせる様に修行を続け、自身を鍛えた。
アークは、勇者の協力を拒み、洗脳されない為自決したが、死んだアークの身体に天使が取り付き、アークの技術を全て奪い覚えた。
今、天使アークには目に見える事象が、全てゆっくりと見える。
だが、タイタンは、それを承知で剣を振り続ける。
「どうした?
避け続けるだけか?
……人の技術盗んで、それだけか?」
なお、両手剣を振りながら、不敵に笑う。
「ふっ……貴様程度の剣、見続けたが、その程度か?
確かに、その一振り一振りは、凡人にしては見事。
しかし、達人の域である、私には到底届かぬ」
天使アークは、タイタンの剣を見切り、口角を上げる。
「そうかい?
……確かに、ワシは凡人。
生前のアークには、一度も勝った覚えは無い。
……無いが、だからと言って、今、貴様に届かぬ訳がない!」
タイタンは、ここで一番の速さで、剣を横に振り抜いた。
「む?」
確かに避けた筈の剣は、天使アークの腹に、一筋の切り傷が入り血を流した。
「何時の間に?
零の極致で見て、避けたはず……」
「おい、おい?
気付かなかったのか?
ワシは、今まで通り剣を振り続けただけだぞ?
……集中が切れたか?
ん?」
タイタンは、剣を振るのをやめ、ニヤついている。
「……偶然だ」
「そうかい?
解らなかったら、死にな!」
タイタンは、再び剣を縦横無尽に、一心不乱に振り続ける。
ー零の極致
「全てはゆっくりと時が流れる」
天使アークは、同じく再び、零の極致を発動し避ける。
(見えている。剣の軌道は、全て見えている……なのに、何故?)
天使アークの身体は、幾多の傷が、新たに剣が振られるたび増えていく。
「ーチィ」
天使アークは、イラつきながら、とうとう槍で受けた。
「……そういう事か!」
そして、理解する。
両手剣のその先に、魔力で刃を作り伸ばし、見えなくしているのに、槍を通し気付く。
「……バレたか。
どうだい……単純だけど、効果的だろ?
零の極致。
確かに、強力な技術だよな。
だけど、使い手は少ないが、他にいない訳ではない。
そういう奴等に協力を得て、対策はいくらでも取れたさ」
受けられた槍から、剣を離し鋭く突きを繰り出す。
天使アークは悠々と避け、今度は自ら槍を突き出す。
何十と攻撃し合う二人、やがて、おかしいと首を捻るのは、天使アーク。
自身が余裕で、タイタンの剣を避け捌けるのは、零を使用している為、だが、同じ様に避け続けるタイタンは、いったい何故?
ーまさか?
「貴様……貴様も、零の極致を使っているのか?」
天使アークは尋ねる。
「さあな……全てを教えてやる必要なんて、ないだろ?
てめぇとは、殺し合っているんだ!
馴れ合うつもりは……ねぇ!」
気合いを込め、剣を両手に持ち大振りする。
大振りを避ける際、一旦、タイタンから飛び離れ、天使アークは天使の力をもって肉体能力の限界を越え身体強化をおこない。
「……確かに、その通りだ。
ならば、そんな小賢しい事が通用しない、圧倒的な力でねじ伏せてやろう」
地面にヒビが入る程の踏み込みで、先程の何倍もの速く間合いに入り、槍を突き出す。
その際、槍の刃先が三つに分かれた。
「うおっ……」
タイタンは、なんとか避ける事が出来たが、髪の毛が数本、頬、肩にかすれ、髪は切れ、頬と肩は血を流した。
天使アークは繰り出した一撃は、同時三回の突きだった。
タイタンが今まで避けていたのは、零の極致ではなく、アークとともに修行し、戦ってきた経験による予測。
突き出す動きを見定め、クセを見抜いていた。
だが、ここでそれを上回る速さの攻撃。
(まずいな……やはり、こうなったか)
タイタンは、自身の凡人さを恨む。
どれだけ修行し、実力の底上げを行っても、天才や、化け物《天使》はそれを上回る。
しかも、タイタンが身体強化をしても、追いつかない事も気付いていた。
だから……
「くくっ……どうした?
顔色が変わったぞ」
天使アークは嘲笑する。
だが、タイタンの決意した顔を見て、油断はしない。
「フォルネウス、頼む」
『承知した』
タイタンが願い、フォルネウスが力を貸す。
フォルネウスの承諾が、タイタンを加速させる。
タイタンが、この世界に存在出来る、時間。
ー残り十五分ー
三年前の会議室にて、大悪魔と契約せし者達の、自身の自己紹介が終わり、各自が部屋なり、仕事に戻った後。
タイタンは、ルー・ルーセントと契約している大悪魔フォルネウスと又借り契約する為、タイタンが魔王城にて借りている部屋にて対峙していた。
『話は聞いていた。
ルー・ルーセントと契約している我と、又借り契約を行い若返りたいと、間違いないか?』
フォルネウスは部屋の中で円を描くように、空をまわり尋ねる。
「ええ、お願い」
「いや、待った」
ルーが頷くが、タイタンは待ったをかけた。
「フォルネウスよ……一つ、尋ねたい。
契約をする事は頼みたい、が、本当に時間操作はワシには使えないのか?」
タイタンは難しい顔で、フォルネウスに尋ねた。
『……ふむ?
ルーは、そう言ったはずだが、なぜあえて、それを尋ねる?』
フォルネウスは、空をまわる事をやめ、タイタンに顔となる部分を向け、真剣な口調で尋ねた。
「ワシは凡人だ。
そして、ワシが相手する者は、若い頃、どれだけ修行をしても追い付かない天才……友の身体を扱う天使だ。
使えるなら、どんな手だって使いたい。
もちろん、使わなくてもいいなら、最高なんだが」
奴を越えたら
そのような意思を、フォルネウスに向け、心の内を言う。
「……だから、時間操作か?
結論なら使える」
「本当か?」
「ああ、使えるが、その内容は決まっているし、さらなる契約により、貴様は辛い事になるぞ?」
「承知の上だ!
もとより、奴と戦って生き残るイメージがわかん!」
「……そうか。
ならば言おう……一度目の契約で、若返る契約をする。
その上で、更なる二度目の契約をおこなう。
戦いが終われば我が貴様を喰らう。
これは二度の契約をする事になればそうなる。
二度目の契約の内容は、本来貴様の生きる時間、寿命を短縮する。
つまり、感覚、動作、反応、魔力等、あらゆる全てが加速し、圧縮される。
一度目の契約、若返っていられる時間もな。
つまり、その圧縮された時間が過ぎると、貴様は一度目の契約、勝負が決まるまでというのは関係なく、燃えカスの状態、骨と皮の死にかけとなり、相手に殺される事になる。
相手を倒せなかったらだが」
「「……」」
部屋に沈黙が訪れる。
フォルネウスは、ルーにも、この事は話していなかったようであり、ルーは顔を青ざめていた。
「……なるほど。
そういう事か、フォルネウス」
『……なんだ?』
「あんた、優しいな?」
『……どういう意味だ?』
「あんた、ワシが、この願いをする事を気づいていただろう?」
『……』
「……沈黙は肯定だと受けとるぞ。
契約者のルーが、悔やむ事とか、ショックを受けないような事はしたくないんだろ?」
『その通りだ』
「すまないな……こんな事を頼む事になって」
『かまわん。
過保護過ぎるのも、己でわかっている』
「フォルネウス……」
『ところで、契約はどうするつもりだ?』
「そうだな?
ちなみに、二度目の契約で活動出来る時間はどれくらいだ?」
『……十五分だな』
「そうか……思ったより長いな。
わかった!
その契約、二つともさせて貰う!」
『了承した。
我、フォルネウスは、タイタン・ギガボルトと契約し、我の力で望みを叶える!』
フォルネウスは宣言し、タイタンの頭上で円を描くように泳ぎ、契約の魔法をかけた。
タイタンに光が集まり、全身を包む。
光が収まった時、タイタンの姿は、髪の毛は黒く、生命力溢れる瞳、張りのある顔立ち、身体全身ははち切れんばかりの筋肉に覆われ、今までにない程のに覇気を放っていた。
「タイタンさん」
ルーは涙を流し、泣いている。
「ルー、無理を言ってすまない。
そして、君との出会い、感謝する」
タイタンは、少ししゃがみ、目線を合わせ、ルーの頭を撫でた。
「……ずるいです」
ルーは流した涙を拭き、拗ねたようにタイタンを見て口を尖らせる。
そして、次には
「でも、若返ったタイタンさん……カッコいいです」
ルーは目を赤くしながら、頬を染め微笑んだ。
「そうか?」
タイタンはニヤリと笑った。
「むう……?」
悪魔の気配がしたと思えば、目の前の男は一瞬で感じが変わり、新たに鞘に入った小剣を腰に取りつけた。
それを見終えた瞬間。
「うおおおぉーーーー?」
私は大量の土砂を巻き込んだ、竜巻に飲み込まれ、動きを封じられた。
油断していなかったとはいえ、その変化に動揺し、男の動きに対応が遅れた。
風に巻き込まれた土砂は、私の身体を削り、小石はめり込み、瞬く間に大小様々な傷を作り、体力を奪う。
土砂の竜巻が突然やみ、封じられた身体は崩れようとした時。
目の前に、炎の塊が飛んで来た。
思わず両腕で防御をとり、炎を受けた。
その時、頭に浮かんだ事は炎の熱さより……左から剣で攻撃が来る……だった。
身体を右に倒し、剣をやり過ごす。
が、左腕を切り飛ばされた。
しかも、剣の炎をまとわせていたのか、切り落とされた断面は、炎で焼かれ再生出来なかった。
地面に倒れた私は、転がりながら男から離れ間合いをとった。
男の猛追は終わらない。
起き上がった私に剣を振り下ろされ、避ける為に後ろに飛ぶ。
突風が吹き、私の身体が浮く。
剣が突き出される。
「あああぁぁっ!」
残った右手に持つ槍で、全力で打ち払い、払い終わった腕を後ろに突き出し、石槌で地面を打ち、体勢を直し、槍を男に連続で突きを繰り出す。
先ほどまで避けるのに背一杯だった男は、全て避け、最後の一突きは下から打ち払われた。
その後は、防戦一方だった。
風、水、土砂の魔法に、鋭く多角な剣の攻撃。
避けるのに、精一杯だった。
だが……多少の傷は受けたが、なんとか避け続けた。
私自身、不思議だった。
とっくに、切られ地面に倒れていても、おかしくなかった。
そして、ふっと気づく。
この剣に覚えがあると……私ではなく、この取りついた身体の記憶。
この男の名は……そう思い出した時、男は動きが止まり、剣を取り落とした。
「間に合わなかったか……」
そう呟いた瞬間、身体中から力が抜け、タイタンは動く事をやめ、両手剣を落としてしまった。
「があっ?」
全身に鋭い痛いを感じ、身体を抱きしめた。
抱きしめた身体は、先ほどまでのはち切れんばかりの肉体ではなく、骨が浮きまくった皮だけの身体になり変わっていた。
「……一体なにが起こった?」
天使アークは、男の変わり果てた姿を見て、目を見開く。
そして悟る。
「そうか……悪魔との契約でそうなったのか」
天使アークは、男を見下ろす。
「実に、愚か……、実に、愚かだ!
タイタン・ギガボルトよ……そこまでして、私に、私が取りついた男に勝ちたかったのか?」
「なっ?
ワシの名を?」
タイタンは驚き顔を上げ、天使アークを見る。
天使アークは涙を流していた。
「なぜ、貴様ら人族、魔族は、そのように戦える?
この身体の男、アーク・ジルベスタもそうだった。
創造主、勇者様に誘われ、断り、自決した男。
無駄死にだったとはいえ、私には何かが心に残った。
サウルの街で、私達、勇者軍と戦う者達。
人族と魔族が手を取り合い、助け合う。
そして、貴様だ!
タイタン・ギガボルト……なぜ、悪魔と契約してまで、私と戦った?
そのような姿になり果ててまで?
わからない……わからないが、全てが尊く思える。
私は、おかしくなってしまった……」
天使アークはうつむき、わからない思いに苦しむ。
「お前は、心が芽生えたのさ」
「こころ……?」
天使アークは、タイタンの言葉に顔を上げ、タイタンを見る。
「そうだ、勇者の人形だったお前は、心に触れ、知ろうとし、悩み、心が産まれた。
だから、苦しいんだ!
お前は人形でいる為に、アークの経験だけを、技術だけを身につけた。
記憶を知る事は、心を、感情を知る事になるからな……だが、先ほど、ワシの名を言った。
お前はアークの記憶を見て、ワシの名を呼んだ。
今、お前には心がある。
感情がある。
今……お前は、なにをしたい?」
タイタンは、真っ直ぐに天使アークを見る。
「私は……私は、アークとして、タイタン。
今にも死にそうな貴様を殺し、眠らせてやりたい」
「そうか……なら、やれ!
ただし、ただでは終わるつもりは……ないぞ?」
天使アークは、残った右手で槍を握り直し、真っ直ぐタイタンの心臓に突き刺した。
「ぐふっ……」
心臓を突き潰されたタイタンは、大量の血を吐き、左手で槍の握り引っ張り、さらに押し込んだ。
「なっ?」
どこにそんな力を残していたのか……不意に引っ張れた為、体勢を崩し、天使アークは、タイタンに引き寄せられる。
「最後のイタチっ屁よ!」
引き寄せた天使アークに、腰元に用意していた小剣を抜き、天使アークの心臓に突き刺した。
タイタンは、心臓の位置にあった天使核を貫いた感覚を感じ、ニヤリと笑った。
天使アークは、天使核を刺され動けない。
そして、タイタンは空に叫ぶ。
「フォルネウスよ!
勝負は決した!
今こそ、契約を果たす時!
ワシと……ワシとともに、アークごと喰らうがよい!」
タイタンの背中に魔方陣が浮かび、そこからフォルネウスは現れ、グルリと二人のまわりを飛んだ後、空に向かい二人に向け急降下し、一瞬で二人を喰らった。
そして、タイタンと天使アークは姿を消し、勝負は相打ちとなり終了した。
その場には、タイタンの両手剣と、フォルネウスだけが存在した。
『……ふむ』
タイタンとの契約は終わり、フォルネウスは、本来の契約者ルーと、再び繋がり思念を送った。
その時、ルーは、〈脱落〉を発動したアミルの側で、アミルを守っていた。
「フォルネウス?」
突然、そう呟いたルーにアミルは顔を向ける。
「どうしたの?
ルーちゃん?」
「フォルネウスと、再び繋がったみたいです」
「それって……」
「……はい、タイタンの戦いが終わり、タイタンさんの望みがかなったようです」
「そう……いいよ、ルーちゃん。
〈脱落〉は発動し終えたから、行っておいで?」
「でも……~~~うー、すみません。
アミルさん、行ってきます」
葛藤の末、ルーは、アミルに謝り、タイタン達か戦った場所に向かった。
「フォルネウス!」
たどり着いたルーは、フォルネウスを見つけ、呼んだ。
『来たか……ルー』
「はぁ、はぁ……フォルネウス。
タイタンさんは?」
立ち止まり、息を整え、フォルネウスに尋ねた。
『……アヤツは、契約のもと、天使とともに喰った』
「そう……勝ったの?」
『相打ちだ』
「そっか……挨拶はすませておいたけど、やっぱり最後に話したかったなぁ」
ルーはそう言い、タイタンの両手剣が刺さっている場所に歩き、引き抜いた。
「じゃ……行こっか、フォルネウス」
『うむ』
フォルネウスは姿を消し、ルーはアミルのもとに戻った。
前回、書いたように、少しずつ読みやすくする為、
編集していってます。
話を見ていて、こんな書きかただっけと自分でビックリしたりしてました。
もっと早く気付くべきでしたね(反省)
次もよろしくお願いします。
ブクマ登録、ありがとうございました。
うれしいです。
毎回、書いてますけど、本当です!




