最終章 5 終着、 ガイ親子の対決
出来ました。
前回、書いたとおり、
書き方を変えました。
もしかしたら、前の方が良かったという方も、おられるでしょうが、これからはこちらにして行きます。
よろしくお願いします。
「……アイツも、やっと本気になったか」
ガイも、息をを整えながら、レイと向き合い、ルイ達の戦いを、気配で探っていた。
「余裕だね?
向こうを、気にしている場合?」
「いや、なに。
俺の子供達が、戦っているんだ……気になるだろ?
まあ、子供と言っても、アイツは結構な歳だがな。
それでも……気になるモノだ。
お前も、ランと子供を作れば、分かる様になるさ」
「ふん、貴方には、捨てた僕達の事なんて、気にする必要ないだろ!」
「待て?
捨てたとは、どういうっ……?」
ガイは、突然、身体中の痺れと、力が入らなくなり、膝をつき、苦しむ。
「ぐう、これは?」
「やっと効いて来たか?
僕の持つこの剣に、厚く塗られた毒が!」
レイは、安心するかの如く、ガイの状況を見て、笑う。
「しかし……即効性の、巨大な魔獣だって効く、猛毒なのに、これだけかかるなんて……?
だがこれで、やっと貴方の首を取れる」
レイは、ガイに、近寄り、首を落とそうと、剣を振り上げる。
「……そうか。
お互いの長話をすると思えば、此れを待っていたのか」
「その通りだっ!」
レイは、首を狙い、振り下ろす。
「……〈鬼法、身体強化五割増〉」
ガイは呟き、瞬時に身体の色が紅色に変わり、蒸気が身体中に吹き出る。
ーガンッ。
振り下ろされた剣は、首に当たるが傷付ける事なく、またもや跳ね返された。
「なっ?」
驚くレイに、ガイはため息を吐きながら、難なく立ち上がる。
「全く、成長を見せたかと思ったら、詰めが甘い」
「何故だ?
何故、立てる?」
「……何故、立てるか、か。
そりゃ、解毒したからに、決まっているだろ?
五割増は、強化は勿論、再生も同時に行う。
だから、体内にある毒も、種類関係無く、解毒し耐性を作る。
しかし、そんな事より、何故お前は、そこまで俺達を憎む?
殺したい程の事を、俺達は何かしたのか?」
ガイは、戦いか始まってから、レイから感じる憎しみを聞く。
「なにを、いまさら……僕達を見捨てた、父さん達に、僕達の将来を言われたくない」
レイは、憎々しく、ガイを睨む。
「見捨てた、だと?
何の事を、言っている?」
「惚けても、無駄だ!
僕達に、リシェルを傷付けた言動の罰として、僕とラン二人で、ワイバーン二百体倒すまで、戻って来るな、というなんて、死んでも戻ってくるなと、言っている様なものじゃないか!」
「……それは違う」
「何が、違うか!
実際、ランは、死にかけた!
あの時勇者が、来なければ死んでいた。
だから、僕達は助けて貰う為の、交換条件を受け入れ、勇者の配下となり、代価を払い力を得た!」
「……そうか」
レイの告白に、ガイは悲しそうに聞き理解した。
「何の代価を払ったかは、知らんが……あの試練を、そう捉えたか」
「何が試練だ!
……だが、そうだ!
その時、僕が得た経験と、技術で、父さん!
貴方を倒す!」
レイが指を指し、宣言した。
「経験と、技術?
……もしかして、予測の事か?」
「なっ?
何故、それを?」
「不思議そうだな?
さっきまでの戦い、それと今の話で、得られる技術といえば、それしかあるまい。
俺とザーツで、考えた修行だからな。
そうか、やっぱり会得出来ていたか。
……ランが死にかけたのは、知らなかったが」
「予測を会得する為の修行だって?
そんな馬鹿な?」
「嘘じゃない。
ザーツが、お前とランに教えた戦略。
相手の動き、戦場の流れ、相手の心理をよく見て考え、仲間の指示と、行動を的確に!
と、教えられただろ?
あれを、突き詰めれば、相手がどう動くか先読み出来る。
つまり、予測となる。
……そう思うと、俺の速さは、対応出来ていなかったのに、攻撃を全て避けていたのは、そういう事だろ?
まあ、それ以外にも、本来得られるものもあるんだが、どうだ?」
「そ、それは……」
レイは狼狽える。
「そうか出来なかったか……それは、仕方がないな。
しかし、時間も惜しいし、そろそろ終わらせ様か」
ガイは、瞬歩で、レイに向かい、真っ直ぐと移動する。
レイは、反応出来ていない。
勢いそのまま、拳を突き出し、レイの腹に直撃する。
瞬歩の勢い、五割増しの力と速さ、全て拳に乗り、レイは、地面と平行に、勢い良く飛び、岩にぶつかり、全身の骨が砕け折れた。
ガイは、完全に気を失っている、レイを抱き締めた後、抱えて、戦闘が終わっている、ルイ達の元へ向かった。
向かい合った二人は魔力を、自身や、武器に込めながら、相手の動きに注意し、出方を待つ。
ルイが先に動けば、動きに合わせ、矢が翔ぶ。
ランが先に放てば矢を弾かれ、次に矢を放てるまでに、ルイの攻撃が、ランを襲う。
それがお互いに分かる為、動けない。
二人の集中が高まる
先に動いたのは、ルイ。
瞬歩でランに向かい、すれ違う程近寄り、巨剣を突き出す。
それを見て、瞬時に魔力矢を放つ。
お互いが、力を溜め、集中していた為、武器に魔力が最大に集まっている。
ルイの巨剣から溢れ出す魔力は、進行方向から置き去りにされ、ルイを包む様に、横から見れば巨大な魔力の針が、ランを襲っていると見えるだろう。
またランの放つ矢は、幾百、幾千の矢となり、隙間無くルイを穿つ牙となりて襲う。
勝敗は、ルイだった。
幾多の矢は、ルイの巨剣の姿を変えた、魔力の巨針の進行に流され、ルイには、矢が当たらなかった。
先端が、ランに当たる瞬間、ルイは針の先端を平にし、ランの胸元に衝突した。
その衝撃で、ランは高く跳ね、大地に切り込み落ちた。
「かはっ……」
受け身も取れぬ、ランは、落ちた衝撃も全て、全身に受け、肺の中の空気が吐き出され、呼吸困難に陥り、立つ事も出来ない。
「すまないな……ランちゃん。
もうちょっと、手加減したかったんだが、ランちゃん強すぎてさ。
まあ、こっちも、ランちゃんが、手を抜いてくれた、お陰で何とか、勝てたわ。
それで……色々聞きたい事有るんだが、大丈夫か?」
倒れているランに近寄り、闇魔法の幻覚で、ランの痛みを誤魔化し、話掛ける。
「……何を聞きたいの?」
「ランちゃんって、洗脳されてないんじゃないか?」
「どうして、そう思うの?」
ランは、レイを見据え、質問を質問で返す。
「ん?
そうだな、向こうで戦っている、二人を心配そうにしながら、俺と戦っていたから、かな?」
「……そう。
良く分かったね、兄さん」
「おっ?」
ルイは、目を丸くする。
「……どうしたの?」
「いやー、嫁のキーシャが、妹だった時も、そう呼んでもらった事なくてさ?
何か、新鮮で」
「でも、そう呼ぶしかないじゃない?」
「ま、そうなんだけどね?
と、それはまた後で、それでだけど」
ルイが、本当に聞きたい事を聞こうとした時。
ドガッ……バガンッ
大きな音がなり、そちらを見ると、ガイの攻撃で、レイが飛び、岩にぶつかり、親父達の戦闘も終わった様だ。
「どうだ?
ルイ、何か、分かったか?」
ガイが、レイを抱えて、こちらに向かって来る。
「ああ、親父。
ランちゃんが、お兄ちゃんって、言ってくれたよ」
「ほう?」
「言ってません。
兄さんと、言ったんです」
ガイは、意外そうな顔をし、ランは、冷静に言い直した。
「と、まあ、こういう風に、ランちゃんは、感情を、勇者に奪われているみたいだ」
「どういう事だ?」
「親父が来る前、色々と探ってみたけど、勇者に強くなる代わりに、何か奪われているみたいだ。
そっちは何か、異常を感じなかったか?」
「ああ、そういう事なら、あるな。
レイは魔術や、魔技が使えなくなっているみたいだった。
本人も、今は使えないと、言っていたしな」
「成る程。
ランちゃん?
勇者に、何をされたんだい?」
ガイとの、話で出た結論を、ランに尋ねた。
「……父さんから、ワイバーンを二百体、二人で倒す様に言われてから、毎日毎日、倒していたわ。
ある日、私がヘマをして、死にかける程の大怪我をしたの。
レイは私に、父さんから持たされた薬をくれたけど、追い付かなくて……レイも、私を連れて街に戻ろうとしたけど、まだワイバーンが数匹いて、動けなかった。
そこに、勇者達が現れ、レイに取引を持ち出したわ。
『あそこにいる、ワイバーンも倒してあげるし、その子の、傷も直してあげるよ。
僕と共に来て、僕の配下になれば……ね?』って。
レイは、私が直るなら、と言って、勇者の言葉を受けた。
まず勇者は、私を直し、レイに洗脳をかけた。
それから、残っていたワイバーンを全滅させ、私達を連れて行ったらしい。
らしい、というのは、私は気絶していたし、後で聞いた話だから」
「ふむ?
……ああ、すまない、続きを頼む」
ランの話に、なにか引っ掛かったのか、考えながら話を促した。
「私が目を覚ました後、勇者から、レイの事を聞いた。
私は、勇者に、レイを人質にされ、言う事を聞かなければならなかった。
私は洗脳を、受けていない。
洗脳をかけたら、私が罪悪感を受けないから。
レイを見捨てられないから。
それから暫くして、私達に強くなる為にって、何かを持ってきたわ。
ある日勇者が、私達を暴走させようとしている、悪魔に融合させると言って、手のひらサイズの水晶みたいな物を見せていた。
それを、私達に、それぞれ押し当て、発動させたら、私達は強くなっていた。
ただし、父さん達が、言っていた様に、私は感情が、レイは魔術と魔技が、対価として奪われた。
……私の感情は、喜怒哀楽が無くなっただけで、物事が冷静に見れる様になったし、判断も取れる様になったから、マイナスではなかった。
でも、レイは……父さん達から学んだ事を、ほとんど奪われたから」
「そうだな。
基本の身体能力は上がって、攻撃や、防御は良くなっていたが、ハッキリ言って、全体的に弱くなっていた」
ガイは、レイとの勝負を思い出し、感想を言った。
「そう、それでも、大抵の者に勝てるから、勇者に利用され続けた」
「ん?
魔法は使えるんだろ?
使った様子は、なかった様な?」
ルイは疑問に持った、レイの魔法を尋ねた。
「レイ、闇魔法が苦手だから……影魔法の収納とかは、なんとかだけど」
「そうなんだ?」
ルイは納得し頷いた。
「親父……レイをそこに置いてくれるか?」
「かまわないが……どうするんだ?」
「まずは、レイから調べて見るよ。
んで、レイの悪魔の状態を調べて見る。
上手くいけは、悪魔の主導権を、勇者から奪えるかと」
「ああ……アスモデウスの契約能力か?」
ガイは、かつて聞いたルイの契約能力を、思い出した。
「ああ、そういう事」
「頼む」
そう言って、レイを静かに降ろし、ランの横に寝転ばせた。
「よし、やってみるか!」
ルイは、レイの心臓の位置に手を当て、目を瞑り、魔力をレイに通し探りを入れた。
「ん?
見つけた!」
レイの深層意識では、目が虚ろな悪魔がおり、ルイを、レイから追い出そうと攻撃を仕掛けて来た。
ルイは、逆に魔力の出力を上げ、悪魔を捕らえ、契約能力〈支配〉を使った。
「よし!
上手くいった!」
ルイは目を開け、勇者からの支配権を奪い、悪魔を解放し、かつてのキーシャを救った様に、暴走させぬ様に、命令を出した。
「おお、上手くいったのか?」
「ああ、なんとかな。
魔術魔技も、また使えるはずだ。
……次は、ランちゃんだな」
ルイは、ランの方を見る。
「あの、勇者から解放してもらうのは、嬉しいんですけど……」
「ん、なに?」
ルイは、ランが顔を赤くし非難の目を、向けてくる理由が分からなかった。
「む、胸を触らないと駄目ですか?」
「え?
あー、大丈夫。
そっか、それを心配してたんだ?
大丈夫、代わりに頭を触るけどいい?」
「あ、頭なら、いいです……お願いします。
ルイ兄さん。
ごめんなさい、ワガママ言って」
「いや、心配するのも、仕方がないって。
じゃあ、さっそくだけど、頭、触るね?」
「はい、お願いします」
「よし!」
ルイは、ランの頭に触れ、能力を発動させた。
「よしっ。
これで終わりだな?
アミル達の元に、戻ってフォローに入ろう」
ルイが、ランの悪魔も掌握を終えて、ガイが提案する。
「ラン、動けるか?」
「ええ、お父さん。
なんとか……身体中が痛いけど」
ランは顔をしかめながら、立ち上がり返事した。
「よし、じゃあ行こう」
ガイはいまだに、気絶しているレイを、担ぎ歩き出した。
ルイと、ふらつきながらもランは、ついて歩く。
ガイの広い背中の後を追って。
本当に、今回は大変でした。
ガイ達は殺さない様に、戦わせなくてはならいしで、
同じような、倒し方になるしで、
何回も書き直して、結局こうなって、
読ん頂いている方には、どうだったでしょう?
次回も、頑張ってみます。
ブクマ登録、ありがとうございました。
よろしくお願いします。




