5章 8 昔話り~魔王と翼麗姫~ 中編
出来ました。
まだ、長くなりそうなので、中編です。
今回も、ブクマ登録、評価採点を入れて頂き、
ありがとうございます。
また、誤字報告、ありがとうございます。
読んで頂いていると、実感が湧きます。
よろしくお願いします。
ザーツが、産まれた時、周りを驚かせ、クレアは、歓喜で叫び、ブラッドは、戦慄した。
この時、ザーツは、クレアの胎内で、既に、自我を持ち、大悪魔ベルゼブブと、契約していた。
産まれた時、ベルゼブブの存在は、上手く消し、取り上げられたが、溢れ出す闇属性の魔力は、類をみない、持ち主だった。
この後、一ヶ月も経たない内、魔翼族、黒翼衆から、ザーツに負けない、火属性の魔力の持ち主が産まれたと、ブラッドの元に、報告があがる。
勿論、ミーザで在る。
ブラッドは、ザーツと、ミーザの誕生に、自分の計画が上手くいき、此れから、魔族は、歴史上、最大の戦力を持って、勇者率いる人族に立ち向かえる者達が、誕生する事を確信し、一つ、肩の荷が降りた。
だが、油断は出来ない。
各種族の実力有る女性を、呼び出すのは、減らしても、自分に対する憎悪は、絶やしてはならない。
最悪の暴君で、更に、実力の底上げを、続けなくてはならない。
ザーツ達の様に、突飛つした実力者に、ついて行ける様に、導いていく。
恐らく、クレアが、未来視で見た通り、自分は、勇者との、戦争の時には、死んでいるだろう。
ザーツか、ミーザか、それとも、今は、名も無き、此れから生まれる者達が、次代の魔王となるのか?
魔族の未来は、輝かしく、平和で有れば良い。
ブラッドは、その未来に、己の死を覚悟した。
「差し当り、ザーツが、一番近いが……」
ザーツを思う。
産まれた時、皆を驚かせた魔力。
あれから、数ヶ月、ザーツは、その成長は、留まる事を知らない。
良く食べ、良く眠り、起きている時の行動力、そして、既に、物を持っての立ち上がっては、言葉を覚えていく。
まだ、上手く舌が回らず、噛む事が多いが、全ての成長が早い。
それを、見届ける、クレアは、日に日に、狂う時間が増え、苦しんでいる。
ある日、ブラッドが、自室で寛いでいた。
ザーツの前では、苦しんでいる姿を見せず、優しい母親としているが、ザーツは、既に気付いて、俺に、こっそりと、クレアの事を聞いて来た。
幾ら、成長の早い、ザーツだが、数ヶ月目の赤子に、理解出来るとも思わないが、懺悔のつもりで、全てを話した。
「ふ~ん、しょっか~」
と、言って、ヨチヨチと四つ足で歩き、部屋を出て、帰って行った。
……行動力、有り過ぎだろう?
と、この後、ブラッドは、エルザに、この事を話し、そう言っていたらしい。
五年後。
ザーツは、相変わらずの成長で、あらゆる物に興味を持っては、尋ね、調べ、勉強する。
勿論、普段の勉強も怠らない。
また、剣に興味を覚え、訓練場に出向いては、剣を振り、その才能を研いていく。
ザーツの才能は、常に、あちこちに、顔を出していて、城に居る者達に知れ渡っている。
魔王城では、育児場を作っており、城に遣えている者で、子供が出来た場合は、希望を聞き、残る事を望んだ者は、最大五年迄、母子共に城で見守る。
勿論、途中で、城を出るのも認めている。
そろそろ、クレアと共に、ザーツも、魔翼族の元に返す時期が、やって来た。
クレアは、正気と、狂気の境が、曖昧になっており、何かのスイッチが、入った場合は、人が変わったかの様に、狂い、暴れ続ける。
クレアは、ザーツを連れ、黒翼衆の集落に、帰って来た。
集落の皆は、クレアの事情を、城から伝わっており、涙を流しながら、ザーツも含め、向かい入れた。
集落に入った、クレアは、双子の妹、〈翼綺姫〉フレアと、再開した。
フレアは、クレアが、事情も話さず、一人で、城に、魔王の元に行った事を、涙を流しながら、クレアの、頬を叩いた。
クレアは、それでも、詳しい事は話さず、頬を押さえ、一言、「ごめん」と、言って、泣いた。
「ごめんなさい、クレア……ありがとう、姉さん」
立ち尽くす、クレアを、フレアは抱き締め、泣き、そんな、フレアを見て、抱き返し、泣き、二人は、共鳴する様に、更に、泣き叫んだ。
集落の皆も、二人を見守り、良かったと、泣いていた。
二人が、落ち着いた後、クレア達の為に、新たに用意した家の場所を、教えながら歩いている途中、クレアは、フレアに、ザーツを紹介した。
「よろしくね?
ザーツくん」
ザーツは、フレアを見て、母とは違う優しさを、感じた。
「よろしくお願いします。
フレアおば様」
ザーツは、少し顔を赤くし、頭を下げた。
「……おば様?」
フレアは、立ち止まって、ザーツの両肩を、捕まえ、目線を合わせ、笑顔で言った。
「ザーツくん?
私、まだ、若いのよ?
ザーツくんのお母さんとは、双子だもの。
私が、おばさんなら、ザーツくんのお母さんもも、おばさんになってしまうよね?
ザーツくんは、お母さんの事を、おばさんって思っているの?
違うよね?」
ザーツの両肩を掴んでいる、力が少しずつ強くなっていく。
「それとも、思っているのかしら?
思っているなら、心外だわ!
クレア、どうする?
私達、おばさんに見えるのかしら?
っ、……痛いよ、クレア?」
暴走する、フレアの頭に、チョップを落とした、クレア。
「はぁ……落ち着け、フレア。
おばさんの意味が違うであろう?
ザーツの言ったのは、叔母じゃ。
母の妹って意味に、決まっておろう。
ほら、ザーツが、痛がっておるわ!
本に、そういうところは、全然、変わっておらぬの」
「だって~、いきなりで、ビックリしたんだもん!
……ごめんね、ザーツくん?
痛かったよね?」
「大丈夫、痛くないよ。
それよりも、ごめんなさい。
紛らわしい事、言って」
「あ、謝らないで?
悪いのは、勘違いした、私だもの!
……クレアぁ、この子、しっかりしてるわね?」
「当たり前じゃ、妾の子じゃぞ!」
クレアは、胸を張り、自慢する。
「はぁ~、私の子と、全然、違うわ」
ため息を吐く、フレア。
「おお、聞いておるぞ!
娘を、産んだらしいの?
確か……ミーザ、だったかの?」
「ええ、そうよ。
ザーツくん、後で、紹介するから、仲良くしてあげてね?」
「うん……それより、お母さんと、お……フレアさんって、双子なのに、話し方、全然、違うね?
どうして?」
「う、それは……じゃの?」
「あははーーー、言われたわねー、クレア?
あのね、ザーツくん。
クレアが、あんな話し方するのはね」
「うん?」
「言わなくて、良いぞ」
フレアは、無視して、続ける。
「私達、それぞれ、〈翼麗姫〉、〈翼綺姫〉って呼ばれる事、有るでしょ?」
「うん」
「フレアー?」
「うるさいわね?
別に、良いじゃない!
大した理由なんて、無いんだから」
クレアに、文句を言って、ザーツに、向き直り、話を続ける。
「単に、その呼び名に、相応しい話し方をするべきだー、って言って、それからよ?
ず~っと、あの話し方よ」
フレアは、首を傾け、ウィンクする。
「ふ~ん?
お母さん、その話し方、似合ってるよ!」
ザーツは、母親を見て、笑顔で言った。
「ザーツぅ」
クレアは、感動のあまり、ザーツを抱き締めた。
それを見て、フレアは(この子、男前になるわ~)と、思った。
集落に戻って来てから、懐かしい、顔ぶれと、雰囲気で、クレアは、発狂する事も無く、落ち着いていた。
この後、あの未来視を見る迄は。
家を案内され、クレアと、ザーツは、荷物を置き、広場に来た。
二人が、帰って来た祝の宴を、開かれる為、呼ばれたからだ。
「クレア!」
宴が始まり、盛上がりも最大に高まった頃、フレアが、黒翼衆にしては珍しい、赤い髪の青年と、同じく赤い髪の幼女を、連れて来た。
「クレア、ザーツくん。
紹介するわね。
……クレアは、うちの旦那、知っているわね?」
「うむ、久しぶりじゃの。
フェザー・エスクード殿」
「久しぶりだね。
クレア殿」
「ザーツくん、これ、うちの旦那」
「これって、言うな」
「んで、この子が、私達の娘!
ミーザよ、仲良くしてあげてね?
ほら、ミーザ。
ご挨拶は?」
「は、はじめまして、ミーザです。
よろしくおねがいしまうっ」
勢い良く、お辞儀する途中に……噛んだ。
後ろを向いて、痛がっている。
(可愛いなぁ)
ザーツは、痛みが落ち着いて、父親の足元の後ろに隠れ、少しだけ、顔を出して、赤らめている女の子を、気にいった。
「はじめまして、俺は、ザーツだよ。
よろしくね?」
「……ザーツ」
「そう、ザーツ。
君の従兄になるね」
「……いとこ?」
「まだ、意味が分かんないかー。
大丈夫だよ、もう少し、大きくなったら分かるから」
「……うん!」
お互い、笑顔で話す二人を、親達は、微笑ましく見ていた。
「あー、二人共、可愛いわ~。
将来が楽しみね!
クレア、フェザー?」
「……今から、もう、嫁にやる覚悟を、しなきゃならないのか?」
フェザーは、少し、涙目になっている。
「本当ね~、まぁ、私、ザーツくんなら、良いかな~って、思うわ!
どう?
クレアは、どう思う?
……クレア?」
先程から、喋らないクレアに、意見を求める様に、クレアの腕を引っ張るが、返事が帰って来ないのを、フレアは、不審に思い、顔をのぞくと、クレアは、軽く呆けた顔で、普段の黒い目が、赤くなっているのに、気付き、腕を離す。
「貴方!
クレアが……未来視を発動しているわ」
「なっ?」
驚く二人を他所に、クレアは、少しずつ、ザーツ達の下に、ゆっくりと、不安定に、歩く。
「……どう、して?
お前が……どうしてじゃ?」
「母さん?」
近寄って来た、母親、クレアに気付いた、ザーツは、クレアの気配に、顔を青ざめた。
「不味い!
……ミーザ、離れて!」
ザーツは、クレアが、右手に魔力を集め、上に振り上げたのに対し、狙いが、ミーザだと、気付き、ミーザを突き飛ばした。
それを見た、クレアは、勢い良く、ザーツに、顔を向け、怒りの形相で、右手を振り抜いた。
ミーザに、当てる筈の、魔力が、ザーツに、当たり、ザーツは、吹き飛ばされた。
「ザーツくんっ?」
それでも、体中に擦り傷を作りながらも、ザーツは、起き上がり、フレアに、注意を叫ぶ。
「……フレアさん!
母さんを、止めて!
ミーザが、危ない!」
「なっ?」
その声を聞き、フレアは、クレアの前に立ち塞がり、動きを止め様と、クレアの腰元に、しがみつく。
「クレア、止まりなさい!
貴女、一体、何を見たの!」
「離せ!
離すの、じゃ!」
「きゃあ!」
一生懸命と、しがみついていたが、クレアが、魔力を解放し、その勢いで、フキ飛ばされる、フレア。
フェザーは、フレアを、心配し、朦朧としている、フレアを抱き起こした。
クレアは、解放した魔力を、ミーザに向け、打ち出した。
「あ……」
恐怖で動けない、ミーザに、魔力が、ミーザの胸に当たり、吹き飛び、山なりに落ちた。
「「ミーザっ!」」
フレアと、フェザーは、ミーザの名を叫ぶ。
クレアは、追い撃ちと、魔力を右手に集め、再び、放とうとする。
「駄目だ、母さん!」
ザーツは、影から、普段、使っている愛用の剣を取り出し、クレアに、剣を突き出し、飛び向かった。
トスッ
クレアの、右手から、魔力が打ち出される前に、
ザーツの剣が、クレアの胸元に、刺さった。
「あ…………ザーツ?」
クレアは、怒りの形相から、何が起こったのか、分からない顔で、自分の胸元を見て、ミーザを、フレアを、涙を流すザーツを、見て、全てを悟った。
「かあ……さ、ん」
「そう……ザーツ、私を、止めて、くれた、のね?」
クレアは、普段、ザーツ二人きりでいる時の、話し口調で、話し、ザーツの頭に、手を当て、ゆっくりと、撫で、微笑んだ。
「ありがとう、ザーツ」
「かあ、さん、俺……俺」
「良いのよ?
貴方は、正しいの、だから」
「クレア!」
フレアは、クレア達の下へ、フェザーは、ミーザの下へ、容態を確認する為、駆け寄った。
「ごめん、なさい……フレア」
「クレア、貴女、口調が?」
クレアは、その言葉に、苦笑して、フレアの、手を握る。
「私、貴女の、子を、傷つけて、しまったわ」
「どうして?
クレア……貴女、未来視で、何を見たの?」
「前に、見た……内容が、変わってしまったわ。
フレア、私ね?
どっちにしろ、長くは、なかったのよ?
知ってる?
魔王と……他種族との、性交は、女を、狂わせるの。
私ね?
何時、発狂するのか、怖かったわ?
ここに、帰って来て、落ち着いたと思ったけど……ははっ、全然、駄目ね?
貴女の娘、傷つけてしまった」
「クレア……」
クレアの話を、聞いて、全てを……私を置いて、クレア一人、魔王の下に行った理由を、自分の幸せを、放棄し、私の幸せを守った事を悟った。
フレアは、馬鹿な双子の姉に、今更ながら、怒りを覚え、いとおしく思い、そして、何も知らず、今までいた、自分に、激しく怒り、呪った。
「……ミーザ?
ミーザ、目を……目を覚ましてくれ?
ミーザ!」
ミーザの容態を、調べていた、フェザーは、目を覚まさないミーザに、不審を覚え、胸元に耳を当て、心音を聞くが、聞こえず、焦り、叫んだ。
ミーザは、この時、死んでいた。
前書きでも書きましたが……
ブクマ & 評価点 & 誤字報告を下さり、
ありがとうございます。
本当に、嬉しいです!
次回も、よろしくお願いします。




