5章 7 〈変幻妖〉スラン 前編
出来ました。
遅くなりましたが、前編です。
よろしくお願いします。
かつて、魔獣達の楽園の、北東の方角に、魔獣や動物にとって、憩いの泉が存在した。
泉は、地下から水と共に、魔力素が脇出し、魔獣には、潤いと力を、動物達には、潤いと進化を与えていた。
ある日、泉の中で、魔力素が集まり、一匹のピュアスライムが誕生した。
ピュアスライム……綺麗な水辺で、魔力素が集まり、生まれ成長するスライム。
ピュアスライムは、回りの状況や、環境、その場の魔力素を吸収したり、物質を溶解して吸収する事で、様々な種類に変化、又は、進化し。
毒が発生する場所なら、ポイズンスライム。
鉱石が多い場所で、食べた鉱石に変化出来る、メタルスライム等に成長する。
ピュアスライムは、赤子の様に、純粋な性格な為、成長が早くて、見つける事は希な存在であり、性質的な事は、殆ど知られていない。
ピュアスライムは、生まれた初日は、母である泉の中で、自由にさ迷い、ゆっくりと、魔力素を吸収しながら、過ごし。
二日目、泉に押し出される様に、水面上に浮き上がり、泉を囲む森林と、空の高さに感動し、プカプカと浮きながら、景色を見ていた。
三日目、泉の水辺に上陸して、辺りを跳び跳ねて、風を感じながら、森林を散歩していた。
途中、何か強い思念を感じ、森の中に入っていく。
思念を感じた場所に着くと、森の中で見た、多数の四つ足の生き物達、魔獣が、見た事の二本足で立つ生き物、魔族の少年を、囲んでいる。
どうやら、感じた思念の送り主は、魔族の少年の強い思念だったらしい。
少年は、どうやら、魔蟲族の少年だった。
ピュアスライムは、木に隠れて、見ている。
「おらぁ、掛かって来い!
俺は、お前達なんかに負けないぞ!」
(ちくしょう!こんな所で、死んでたまるか……俺は、強くなるんだ!)
また、あの少年から、思念が飛んで来る。
少年は傷付きながらも、魔獣達を倒していく。
苦痛、覚悟、悩み、恐怖、色々な感情が、少年から、魔獣達から、思念が飛んで来る。
ピュアスライムは、観察する。
様々な感情を。
やがて、少年は、魔獣達を、全て倒す。
「やった……ーくそっ!」
生き残った喜び、歓喜。
魔獣を倒しても、状況が変わらない、虚しさ。
ピュアスライムは、少年を、観察し続ける。
人という物を。
「彼奴、まだ、居るのなか?」
「さあ?」
少年を、見ているスライムの後方から、二人の黒い翼を持つ少年少女が現れた。
「お?
……ピュアスライムか?
珍しいな」
魔翼族の少年は、ピュアスライムを見つけ、しゃがみ込む。
「……只のスライムでしょ?」
「いやいや、このスライムは、本当、中々、見つからないんだ。
でも、何で、こんな所に?
……そうか、君も、彼奴が、気になるんだな?」
魔翼族の少年は、小さなスライムを持ち上げ、嬉しそうに言う。
「そうだ、一つ頼んで良いか?
君、彼奴の前に、姿出して、様子を見てきてくれないか?」
ピュアスライムは、一震えをして、少年の手から飛び降り、今は、瞑想をしている魔蟲族の少年に、向かって跳ねて行った。
「流石に、可哀想じゃない?
もしかしたら、アレ、あのスライムに、攻撃して、殺しちゃうんじゃない?」
「もし、そうなったら、ちゃんと止めるし、大丈夫。
それに、もし、そんな事をすれば、彼奴を見放すよ」
『なんだ?
お前……もしかして、挑みに来たのか?』
「おっ、早速だな」
魔翼族の少年は、ピュアスライムに接触した、魔蟲族の少年を見る。
スライムは、ピョンピョンと跳び跳ねてる。
『悪いけど、お前みたいな、産まれたばかりの様な奴を、倒す気にはなるか……向こう行け』
そう言われた、スライムは、跳び跳ねるのを止め、暫くして、此方に戻って来た。
『……あ、あー、ありがとうな?』
魔蟲族の少年から、ピュアスライムが、見えなくなった頃、魔蟲族の少年は、小さく呟いた。
「「「!」」」
小さな呟きだったが、魔翼族の少年少女、ピュアスライムには、十分に聞こえた。
暫く時間を置き、魔翼族の少年少女は、魔蟲族の少年に接触をはかり、魔翼族の少年は、魔蟲族の少年の荒れていた原因、魔力が使えない悩みを解決し、少女と共に、この地を離れた。
魔蟲族の少年は、使える様になった魔力操作を、ひたすら、練習をすれば、喜び。
使役する魔蟲を召還出来れば、更に、感動し。
今まで、出来無かった事が出来る様になると、喜びを重ね合わせ、魔翼族の少年に感謝の念を飛ばす。
ピュアスライムは、魔蟲族の少年が、この地を離れる迄、少年を見詰め続けた。
二日後、少年が去り、ピュアスライムは再び、森林をさまよい続けた。
が、ピュアスライムには、少年達以上に、気を引かれる物は無く、暫くして、泉に戻って来た。
ピュアスライムは、生まれてからの間を思い出す。
泉の中は、静かで、美しく。
泉の水面の上は、遥か高く、広い空。
そして、感情豊かな人達。
あの人達と、一緒に居れたら、他にも色んな事、見れるかな?
色々な事を思い浮かべていると、水面に浮かぶ、ピュアスライムは、淡く輝き出し、進化が始まった。
フッと、輝きが消えた後、ゆっくりと、ピュアスライムは、水中に沈んで行く。
最深まで、沈んだピュアスライムは、生まれた時の様に、泉の水と、魔力素を吸収しながら、長い長い眠りに着いた。
何年か、過ぎた時には、泉は枯れた。
残されたのは、一匹のスライム。
手のひらぐらいの、大きさだったスライムは、十メトルぐらいになり、何年かぶりに、目を覚ましたのか、プルリと揺れ、輝きを戻した。
泉を吸収し尽くし、進化したスライムは、自身の状況を確認する。
スライムは、この世界に存在する、全てのスライムの力を持ち、頂点の一つまで進化した、クイーンスライム。
その力は、この世界を統べる、王の力。
それ程までに進化した、スライムは更に、自身の力を探る。
十メトル程のスライムボディの中、泉が枯れるまで、吸収した魔力素に含まれた闇。
闇の中に、悪意の声が聞こえる。
-破壊せよ!この世界の全てを破壊し、滅せよ-
スライムが感動した、世界の美しさ。
スライムが望んだ、人々との共存。
悪意の声は、スライムの心を飲み込もうとする。
悪意に支配される前に、スライムは二つに分離した。
一つは、巨大で、純粋な心を引き継ぎ持つ、白く輝く、クイーンスライム。
一つは、悪意に飲み込まれそうになっている、闇を纏めたダーククイーンスライム。
ダーククイーンスライムは、時間を掛けてでも、悪意を浄化する為、泉の在った地面に潜り、自身を封印し、眠りについた。
クイーンスライムも、地面に更なる結界を張り、何時か、完全に浄化出来る事を願い、泉の跡地を出た。
辺りを見る。
泉が枯れ無くなった為か、魔獣とかの生命を、近くに感じない。
……いや、何かが、此方に向かって、遣って来る。
「……様、お願いですから、貴方自らが、行かないで下さい」
「だが、この気配は、お前達では……むっ?」
声が聞こえ、森林を抜け、姿を現した、何人かの魔族。
その一人が、此方に気付いた。
「……あれは」
「スライム、ですね……オズマ様、あれが、オズマ様が、気になされた気配の正体でしょうか?」
「スライムごときに、何を?
……オズマ様?」
オズマに、付いてきた部下達は、オズマの感じた気配の正体を、スライムと知り、侮る態度で、オズマに尋ねるが、オズマは、難しい顔で、スライムを見ている。
「むう……お前達、其処で待っておれ」
オズマは、部下達に待機する様に命令し、慎重に、スライムの方に近付き、少し離れた場所で止まった。
「お前は、クイーンスライム、だな?
並ば、私の言っている事は、理解しているな?
ここに、在った泉は、どうして枯れたか、聞きたいのだが、知っているんじゃないのか?」
オズマは、少しも油断せず、話しかける。
クイーンスライムは、ブルリと震え、未完成でありなが、人形の姿になり、話始める。
「……シッテ、イル」
「むっ?
……話せるのか?」
「スコシ、ズツ、ナラ、ハナセル」
「ほう、それは助かる」
「イズミハ、ワタシ、ノ、シンカ、リヨウ、スル、タメ、キュウシュウ、シタ」
「吸収……て、まさか!
泉、全部を吸収したって事か?」
「ソウ、ナンネン、カカッタ、カハ、シラナイ」
「はー、成る程、だから、それ程の魔力を……納得した!
あー、そうだな?
なあ、お前、名前は有るか?」
「ナイ」
「そうか……私の名は、オズマだ」
「おずまだ?」
「いや、オズマ。
……少し、尋ねるが、もし、良ければ、魔王軍に入ってくれるか?
お前から、感じる魔力なら、魔王様も、喜んで下さる」
「ワタシハ、アイタイ、マゾク、ガ、イル。
ダガ、アテガ、ナイ。
ソノ、モノタチ、二、アエル、カモ、シレナイ、ナラ、トリアエズ、ツイテ、イコウ」
「ふむ、良くは分からないが、付いて来てくれるなら、歓迎しよう」
こうして、オズマ率いる部隊は、泉に関する事を、調べ上げ(クイーンスライムを含む)、魔王城に引き上げた。
魔王城に着き、早速、魔王が居る、謁見の間に向かい、中央で、オズマ達は、膝まつき頭を下げている。
玉座に座り、膝まつく者を、見ている、魔王ブラッド・レオハートが、威厳の有る声で話し出す。
「皆のもの、頭を上げよ。
……ほう、お前が?
オズマが、軍に引き込んだという、クイーンスライムか?
……くくっ、中々の、魔力量だな。
オズマよ」
「はっ!」
「現在居る、六魔将、オズマ、アギ、ギバ……ザンバインは謹慎中だったな。
仕方ない、お前達、三名で、其処のスライムと勝負し、実力を計れ。
其処のスライム、名は無かったそうだな?
もし、俺で良ければ、名付けても良いか?」
「……ハイ、ヨロシ、ケレバ、オネガイ、シマス」
「ふむ……分かった。
名付けるが、センスの無さには、文句を受け付けんぞ?
そうだな……スラン、は、どうだ?」
「すらん」
「そうだ、今日から、お前は、スランと名乗るが良い」
「アリガトウ、ゴザイ、マス」
スランは、魔王に頭を下げ、礼をとる。
「うむ、では、オズマよ」
「はっ」
「この後、先程述べた、お前を含む、三名で、スランの実力を計るが良い」
「分かり申した」
魔王の監視下で行われた、一対一による勝負により、スランの実力は、ほぼ、三人の実力と同じぐらいで有り、この後、魔王の宣言で、スランは、六魔将の一人となり、〈変幻妖〉スランと呼ばれる事になった。
六魔将アギ……リシェルが五歳の誕生日の夜、ミーザが連れてきた、六魔将の一人。
天使に取り付かれていて、ザーツに殺された魔族。
前回の後書きで、総合評価が、目標の100P越えで、喜んでいましたが、ブクマ登録、評価採点等を打ち切った訳ではありません。
何時でも、受け付けています。
よろしくお願いします。




