5章 5 会議室にて、再び 4
出来ました。
段々、終わりにつれ、文字にするのが難しくなって来ました。
読んで頂いている方、お待たせしました。
よろしくお願いします。
リシェルが嬉しそうに、ザーツの腕に頭を当て、甘えているのを見て、微笑ましく、又、自分も混ざりたいと思いながら、ミーザは話を戻す。
「うむ、リシェルが説明したところで、現在、会議室に居る、大悪魔と契約した者達、八人を説明を含め、確認をしたのだが、何か、質問等は有るか?」
ミーザが、全員を見渡す。
「ああ、俺達では無いが、聞きたい事が有る奴が居るんだが良いか?」
ザーツは、手を上げ意見する。
「うむ、勿論だ」
「では、ルー・ルーセント」
「え、私ですか?」
「ああ、そんなに身を構えないでくれ?
昨日、会議が終わった後、オズマ将軍との話を、聞いてしまったんだが……済まない。
気になって、別室での、二人の会話を盗み聞きさせて貰った。
此れに関しては、誠に、済まないと思っている。
が、さっきの、君の説明の時だが、何故、オズマ将軍なんだ?
と、思ってな。
悪魔と契約していない、オズマ将軍に、何故、悪魔との意思疎通で困る相談をするんだ?
と、気になった訳なんだ。
聞いた内容だが……俺が言うより、オズマ将軍。
あんたが、言ったほうが良いんじゃないのか?」
ザーツの疑問も尤もなので、皆の視線が、オズマに集まる。
「あー、別に隠していた訳ではないんだがな?」
オズマは、軽く鼻でため息をして、話し出す。
「魔王様を含め、此の中で、私の名前を、フルネームで知っている者は居るかな?
……案外、知っている者は居らぬだろう。
先ず、其処からだな。
私の名前は、オズマ・ルーセントという。
だからと言って、其処に居る、ルーとは、親子でも、祖父と孫という関係、でもない。
どちらかと言えば、ルーは、かつて、私の妹夫婦の流れを持つ子孫だ。
何世代、開いているかは、知らないけどな?
では、私は、何なのか、何時から存在するか?
と言えば、簡単だ。
私は、オズマで有り、大悪魔バハムートの一部で有る」
「「「なっ?」」」
昨日、盗み聞きをした、ザーツと、ルー以外の、会議室に居る全員が、オズマの言葉に驚く。
「……それは、オズマと、バハムートだったか?
両者が、リシェルと、ルシファーの様に融合しているという事か?」
ミーザが、オズマに尋ねる。
「そういう事です、魔王様。
只、融合したと言っても、一部は一部、バハムート全ての力を使え無いが、魔界に居る本体と、私の記憶、知識、考え、感情等も、全て綱がっている。
……ザーツ?
私の六魔将の二つ名は、知っているよな?」
「……無限、だな」
「そう、無限。
死んでも、蘇る。
身体の一部が、無くなっても戻る。
それどころか、髪の毛一本、細胞の一つさえ残さず、全て消滅しても、元の状態に戻る。
そして、ザーツが、昔、魔王様や、アルテ以外の六魔将達に言ったが……いや、私が、ザーツにそう教えたのだが、死に方によって、蘇る時間の掛かり具合が違う……そう思っているだろうが、本当は、どの状態でも、一瞬で蘇る事が出来る」
「なっ?
おっさん、嘘をついていたのか?」
ザーツは、驚いたのか、少し椅子から腰を浮かし、睨みながら尋ねた。
「おっさん、言うな。
負担の掛からない様にするには、その方が良いだけで、瞬間的に戻る場合は、ダメージは残っているからな。
普段は、時間を掛けて戻る様にしている。
まあ、不死者なのは、魔界に本体が居るからな……死んでも復活し、何千年以上も生きて居られる訳だ」
「じゃあ、オズマおじさんの強さは、バハムートは関係無いの?」
リシェルが、首を傾げ、尋ねる。
「ああ、関係無いな。
勿論、融合する前は、歳を取って引退したとはいえ、バハムートの一部と何とか戦えるぐらいには、ある程度の強さを持っていたさ。
でも、大半は、長い年月による修行の成果だ。
毎日、時間は有ったからな?
だが、それだけの時間を掛け鍛えても、それでも、実力は此の程度だ。
才能は無いのは自分でも分かっている。
元々、バハムートと融合したのは、この見た目通り、歳を食っていたからな、仕方無い」
「オズマよ?」
ミーザが、尋ねる。
「何でしょう?」
「では、何時、バハムートと出会い、融合したのだ?」
「それは」
オズマは、チラリとリシェルを見る。
「ルシファーが、神に戦いを挑み、負け、魔界に堕ちた後……ですね。
ルシファーが、堕ちた時は、やはり、其れなりの障害が魔界で起こった。
その一つに、魔界に居るバハムートの寝蔵、バハムートの目の前に、五メトル位の次元の穴が、何処かに繋がって開いていたので、面白そうだったから、穴を通れるぐらいの分身を送ったら、当時の魔鱗族の集落の近くで、その時、残っていた戦える者は私しか居らず、仕方なく、私が、バハムートと戦い、様々な経緯を得て、バハムートと融合した次第」
「集落には、オズマしか戦える者は、居なかったのか?」
「あの時は、まだ、人族との戦争の途中で、若く戦える者は、召集されていたので……因みに、私は歳を取り、戦力外と告げられまして、集落の守りをしていました」
「成る程、融合した後も、そのまま、集落に?」
「暫くは、集落に居ましたね。
バハムートと、私が融合したのは、集落の皆が見ていたので、記録を残し、言い伝えられていたのでしょう。
人族との戦争が終わった後は、私、集落を出ましたが」
「何で、集落を出たのだ?」
オズマは、その質問に、苦笑しながら、寂しそうに話し出した。
「それは、妹夫婦を始め、集落の皆や、戻って来た者達も、全員、私の事を忘れたから」
「全員が?」
ミーザが、疑問を持つ。
「それは」
「戦争が終わって、法の神の法則が起こったから
……自分達が、必要な事以外、忘れてしまったんだよね?
オズマおじさんは、集落の皆に忘れられ、追い出されたんじゃないかな?」
「よく……分かるな」
オズマは、複雑で、少し悲しそうに微笑む。
「ルシファーの、記憶に有るよ。
何らかの事情で、戦争前の記憶を持つ者は、迫害されるか、追い出されるか……そうやって、記憶を持つ者に、圧力を掛け、追いやり、孤独に苦しむ。
リセットされた者は、記憶を持つ者を、憎しむ様に仕向け、後に、軽く思い出させては、苦しむところを見て、法の神は喜び、楽しむ。
神の癖に……」
「リシェル……どうしたんだ?」
ハッキリと聞こえる、リシェルの声。
だが、その瞳は、何も写さない無機質で、その表情は、どんな感情も失った、作り物の様な無表情。
ザーツは、その様なリシェルを、初めて見て、嫌な予感がした。
リシェルは、ザーツに、気付きもせず、人形の様に話し続ける。
「ルシファーは、この世界を創った、四柱の神々、創造神に、戦神に、命神、そして法神は、それぞれ、何かしらにして、この世界の人々を傷付け、苦しめる。
ルシファーは、この世界の人々を、不憫に思い、四柱に、自分を創った創造神に、戦いを挑んだ」
「リシェル、リシェルッ!
おいっ、目を覚ませ、リシェル!」
ザーツは、リシェルの両肩を掴み、揺さぶり、頬を叩く。
暫くして、目に光が戻った、リシェルは、状況が 分からず、周りを見渡し、何故だか、痛む頬を押さえる。
「……おとうさん?
……私?
あれ?
何で、皆、心配そうな、顔をしてるの?
……頬っぺた、痛い」
「大丈夫か?
リシェル……さっきの事、何処まで覚えている?」
「え?
何が……さっきの事?
えーと、オズマおじさんが、昔の事を話していて……あれ?
其処から、記憶が無い?
おとうさん、私、何が有ったの?」
不思議そうな顔をする、リシェルは、ザーツに、周りの皆に尋ねるが、皆、複雑な、其れでいて、困った顔で、口を出せないでいる。
「おとうさん?
ねぇ、何が有ったの?」
「……突然、リシェルが、顔の表情を失くし、ルシファーの過去、神に挑んだ時の理由を、心無く話したんだ。
……覚えていないのか?」
リシェルは、頷く。
「覚えて、ない……ルシファーが、戦いを挑んだ時の事?
……あれ?
私、そんな事、話していたの?」
「ああ、そうだ」
「そっか、うん、私は大丈夫だよ……オズマおじさん」
「ん、どうした?」
少し悩んだリシェルは、オズマに尋ねた。
「寂しくない?」
何が、と言える、リシェルの言葉に、オズマは、ふむっ、と呟き、嬉しそうに笑った。
「今は、大丈夫だ。
流石に、当時、妹や、集落の皆に、忘れられたのは、キツかったが、な?
其れに、私には、バハムートが居たからな。
まだ、マシだったな。
其れに、リシェル……こんな事は、今回で、終わらせてくれるんだろ?」
「皆でね!」
「ああ……そうだ。
皆で、だ」
リシェルと、オズマの会話は、他の者達に、新たな力と、希望になり、決意させる会話だった。
「他に、聞きたい質問は有るか?
……無ければ、次に、入るが、思いついたら、途中、キリの良いところで、質問してくれ。
次に」
ガタッ!
昨日、今日と、会議室で喋らず、感情を表す行動もせず、普段も、静かに存在する、人の形を取ったスライム。
六魔将の一人、〈変幻妖〉スランが、ある方向に顔を向け、椅子を倒す程の勢いで立ち上がった。
「……どうした、スラン?」
ただならぬ、気配を出し、立ち続けるスランに、ミーザは声を掛ける。
「……マオウサマ。
ダレカガ、ワタシノ、フウインヲ、トイタ。
マモナク、ワタシノモトニ、ココニ、ヤッテクル」
「何が来るんだ?」
ミーザは、普段喋らない、スランが、此処まで話す事に、驚き、真剣に問い質した。
「……カツテ、ワタシガ、イマノジテン、フヨウダト、オモイ、キリステタ、ワタシ。
キリステタ、ワタシハ、ソレヲ、ウケイレ、フウインヲ、ネガッタ。
ソレヲ、サッキ、ダレカガ、フウインヲ、トイタ」
会議室の外から、ノックする音が聞こえ、一人の兵士が、会議室に入って来て、報告を始める。
「会議中、失礼致します。
先程、城の城壁にて、城外の警備をしていた兵士による、報告がございました。
報告内容は、『魔獣達の楽園より、突如、闇の様に真っ黒で、巨大なスライムが出現し、森林を飲み込みながら、魔王城に向かって、進んで来ている』との事です」
「ふむ、そうか……そのスライムは、何れくらいで、城に到着するか、計算は済んでいるか、分かるか?」
ミーザは、スランから、そう聞いていたので、落ち着いて、兵士に尋ねる。
「はっ、計測士によりますと、約二時間程で到着するとの事です」
「そうか、分かった。
お前は至急に戻り、各部隊に、戦闘準備、並び、待機する様に報告を頼む。
此れより、本日の会議は終了とし、六魔将は、それぞれ、己れの部隊の指揮に入る様、申しつける」
「はっ、了解致しました。
失礼致します」
魔王の命を受け、兵士は一礼し、会議室を後にした。
「さて、この様になったので、ラカール殿達には、申し訳ないが、今日の話し合いは終わらせてもらう」
「うむ、事態は理解している。
どう結末を着けるか、分からぬが、健闘を祈る。
どうか、ご無事で」
そう言って、ラカールも、一礼し会議室を出た。
「さて、本来なら、オズマに指揮をさせ、討伐させるのだが……スラン、今回の件、お前の事情が絡んでいるしな。
お前に、任せる。
皆のもの、それで良いな」
「「「はっ」」」
「では、スラン、頼む」
「ハイ」
スランは、一礼し、話し始める。
「マズ、すらいむ……ワタシハ、ワタシト、ヒトツニモドル、タメニ、ムカッテイルノデ、ソノトオリ二、ヒトツニ、モドリマス。
ココデ、ミチハフタツ。
ヒトツハ、ナニモオコラズ、ワタシガ、ソノママデ、ソンザイスルナラ、シュウリョウデス。
フタツメハ、ギャクニ、トリコマレ、ボウソウシ、シロ、マタハ、ミナヲ、ホロボスタメニ、ミナト、タタカウコトニナリマス。
カクリツテキニハ、コチラガ、タカイデショウ。
ココデ、テイアンガアリマス。
デムカウ、ブタイハ、ぎばサマノブタイ、ざんばいんサマノブタイ、だぐどサマノブタイ、ソシテ、ワガ、ヨウマゾクノブタイ二ヨル、ゴウドウデ、ワタシヲトウバツスルノデス。
モチロン、ロクマショウハ、サンカシマセン。
アクマデ、フクブタイチョウ、イカ二ヨル、トウバツヲノゾミマス」
「何故、副部隊長以下で行うのだ?」
ミーザは問う。
「ココニイル、モノタチハ、イツデモ、ツヨクナレマス。
ナラバ、ココデ、ツヨクナルノハ、ヘイシタチ。
ヘイシタチノ、レンドヲ、アゲレバ、サンネンゴ、センソウ二、マケナイタメノ、ケイケンニナルハズデス」
「成る程、分かった。
オズマ、スランの話をどう思う?」
「良く考えられていると思います。
確かに、今回、戦う事になれば、部下達に、必要な経験となるでしょう。
しかし、スランよ?
お前は、其れで良いのか?」
「モチロン……ダケド、ヒトツダケ、だぐどサマ」
スランは、ダグドに向き直り、両手で何かを差し出す様に、手を出した。
暫くすると、両手のひらには、一匹のスライムが現れた。
スライムは、透明度の高い姿で、光を照り返す色は、淡い桃色のスライムだった。
「これは……ピュアスライムか?」
スライムを受け取った、ダグドは、スランに問う。
「ソウデス。
コノ、すらいむハ、ハジマリノすらいむ。
だぐどサマ二、アズカッテ、ホシイノデス」
「分かった、いや、意味は分からないが、預かって欲しいなら、預かろう」
「アリガトウ、ゴザイマス。
マオウサマ、ミナサマ、アリガトウ、ゴザイマシタ。
モシ、ワタシガ、ブジダッタ、バアイ、コンゴトモ、ヨロシク、オネガイシマス」
スランは、頭を下げ、会議室を出た。
スランが、会議室を出た後、それぞれ、思う所が有り、皆が無言だったが、黒いスランが、魔王城に着くまでの時間も有り、ミーザが、作戦を詰める為、話を切り出す。
「時間が押している。
私も、思う所が有るが、此処は、始めるぞ」
「「「はっ」」」
「暴走したスランは、どう動くと思う?」
「恐らく、ですが……初めは、一つの巨大なスライムとして動くかと」
オズマは、顎に右手を当て、人差し指で、頬を叩きながら、発言する。
「また、各部隊から攻撃を受け続けた場合、数多く分裂し、部隊を殲滅する方向で……そうなった場合は、分裂した一匹の力も、測り知れぬ故、何人かで当たり、倒していく形になるでしょう」
「そうだな」
オズマの考えに、ザーツも賛成し、言葉を繋ぐ。
「一つになったスランの実力は、俺達並みか、それ以上か?
そう思った方が良いな?
分裂したスランも、最低でも、部隊長クラス。
オズマのおっさんの考え、正しいだろうな」
「そうか、二人がそう言うなら、そう警戒した方が良いな。
ギバ、ザンバイン、ダグド。
準備を終えた、部隊にそう指示を出し、戦わせる様に」
「「「はっ」」」
「しかし、ピュアスライムか」
ミーザは、ダグドの元に居る、ピュアスライムを見て、昔を少し思い出した。
「なぁ、ザーツ、あの時の事、思い出さないか?」
「いや、ミーザ。
俺も、そう思っていたところ」
「何だ、ザーツ?
魔王様も?
何で、ニヤニヤしているんだ?」
二人が、ピュアスライムを見て、笑っているのが、不思議で、ギバが尋ねる。
「いやな?
昔、子供の頃、魔獣達の楽園で、ダグドが荒れていた時が有ってさ。
その時、ずっと、ダグドの側で、ピュアスライムが居たのさ」
「あっ、あー!
ザーツっ、言うな!
思い出すなー!」
ダグドも、思い出したのか、ザーツを止める。
しかし、ザーツは黙ったが、アイコンタクトで、ミーザが、変わりに話し始めた。
「ある理由で、ダグドが、楽園で、魔獣どもを倒しまくっていたんだ」
「魔王様ー?」
「そんな、ある日、一匹の産まれたばかりのピュアスライムが、ダグドの前に現れてな?
それで、そのスライムも、ダグドは倒すのかなーって見てたら、『お前みたいな、産まれたばかりの奴を、倒す気にはなるか……向こう行け。……ありがとな』だって」
「おっ、おっ」
ダグドは、顔を真っ赤にし
「「お?」」
「お前らー!
言うなと、言ったろー!
つか、あの時、何時から見ていたー!」
「結構、最初から?」
「そうだな」
ザーツと、ミーザは、悪びれもせず、淡々と答える。
「と、それよりも、早く部下達の下に向かったらどうだ?
時間が無いぞ」
「……糞っ!
お前ら、後で覚えておけ?」
ダグドは、余りにも頭に血が登ったのと、恥ずかしさで、悪態を着きながらも、会議室を出た。
その後を、ピュアスライムが、着いていった。
「魔王様、ザーツ、余り、ダグドをからかっては……面白いけど。
俺も行くか、では、失礼」
ギバ達も、会議室を出た。
「ねぇ、おとうさん、おかあさん。
その時の、スライムって、もしかして、スランさんじゃないのかな?」
「「……え?」」
リシェルが言った言葉に、ザーツ達は固まった。
スランのセリフ、面倒くさかったです。
と、いう事は、皆様も……(゜゜;)
すみません。
ちょっと、ネタばらしになるかもしれませんが、
スランのセリフは、この形は最後になります。
普通になります。




