5章 5 会議室にて、再び 3
出来ました。
よろしくお願いします。
「さて、続けようか?」
アミル達が、席に戻り、ミーザが、顔を見渡し、会議室にて、話し合いが再開された。
「この会議室に居る者達で、大悪魔と契約しているのが、私がサタン、ザーツがベルゼブブ、ガインがマモン、ルイがアスモデウス、アミルがベルフェゴールと、それぞれ、説明していたんだったな。
次は、アルテ。
説明して貰えるか?」
「ん、分かった!
アルテ・フェンシスだよ」
ミーザに指名された、アルテは、元気良く、手を上げて自己紹介をする。
「悪魔は、マルコシアス。
能力は〈群狼〉。
影から、沢山の狼が出て来るよ。
後は~、知らない?
マルコシアスとは、遊んでいるけど、使った事無いから?
分かんない」
満面の笑顔で、アルテは言う。
「そ、そうか……じゃあ、アルテ?
此れからは、暫く、マルコシアスと、アルテが契約で得た能力の把握と、練習をしてくれるか?」
ミーザは、少し甘えさせ過ぎたかと思い、アルテに、此れからの事を教えようと考え直した。
「おかあさん、アルテの相手は、私と、ザーツおとうさんとで、するよ?
ねっ、おとうさん?」
リシェルが、ミーザの考えを読み、ザーツを巻き込んで意見した。
「……な?」
「本当、リシェル?
頼めるか?
……ザーツも、良いか?」
「……ああ、分かった。
引き受けよう」
ザーツは、ニコニコと笑っている、リシェルを見て、深くため息を吐き、承諾した。
「助かる。
じゃあ、次は、ルー・ルーセント。
説明、頼む」
「私ですか?
……分かりました。
私、ルー・ルーセントは大悪魔、フォルネウスと、契約しています。
能力なのですが、〈流作〉と言います。
実は、フォルネウスとは、意思疎通が出来てなくて……あ、でも、昨日、オズマ様に相談しまして、何とか、少しずつですが、通じる様になりました。
それで、分かったんですが、私、魔鱗族の中でも、水の得意な種族だったので、水を操るのが得意な能力だと思っていました。
が、どうやら、水だけでなく、風や、砂等、自然の中でも、何かに影響を受け、動く物を操る事が出来るみたいです。
後……後、もう一つ、有るのですが」
言い詰まる、ルーは、チラリと、隣に座るタイタン・ギガボルトを見て、タイタンと目が合い、直ぐ様、目を反らし、言い難そうに言葉を続けた。
「……魔王様、言いたくない事は、言わなくても良いんですよね」
「ああ、そう言ったが……言えない事か?」
「……そう、ですね。
言いたくないです」
「……ルー嬢ちゃん、さっき、ワシを見たな?
もしかして、言えないのは、ワシに対してか?」
先程のルーとの、目が合った際に、何かを感じた、タイタンは問い詰める。
「……それは」
「どうなんだ?」
「言った方が良いと思うよ、ルーさん?」
更に、問い詰めるタイタンに、顔をしかめる、ルーを、助言したのは、リシェルだった。
「リシェル、さん?」
「ん、何です?」
「……貴女は、フォルネウスとの契約能力を、知っているの?」
ルーは、疑わしげに、リシェルを見つめる。
「知ってますよ。
正確には、ルシファーの記憶に有るんですけど……ルーさんが、言い難いなら、私が言いましょうか?
私が、タイタンさんなら、聞いて戦いから」
「でも……」
「多分、教えなくても、三年後、タイタンさんは、天使に全てを奪われた、アークさんの前に立たれると思いますよ?
しかも、天使の力で若返った、アークさんですよ。
こう言って良いのか、分からないけど、どちらにせよ、タイタンさん、死んじゃいます。
私だって、傭兵としては、半年位しかやってないけど、タイタンさんと、アークさんの事は、少しは知っています。
もう一度、言います。
私だったら、話を聞いて、フォルネウスと契約して、戦って死にたいです」
「リシェルさん」
ルーは、目を瞑り俯く。
「リシェルに、ルーよ。
嬢ちゃん達の話を聞いて、何となく分かったぞ。
然るに、ルー嬢ちゃんのフォルネウス、最後の能力は、時間を操る事、ではないのか?」
「タイタンさん」
ルーは、目を開き、タイタンを見た。
「……そう、です。
時間です。
只、この能力は、私自身の体感や、行動を速めるなら、問題は有りません。
でも、他人の時間を操る場合は、其れなりの対価が必要となるんです」
「ふむ、並ば、時間を……いや、今まで生きた経験や、記憶はそのままに、肉体だけを戻す場合はどうなる?」
「……七十を越えた年齢を、二十歳位に、肉体を戻した場合、全てを終えた時に」
「死ぬ、か?
……望むところだ!」
タイタンは、笑う。
その顔は、正に、戦いに望む戦士の顔だった。
その顔を見た、ルーは深く息を吸い、また、覚悟を決めた。
「魔王様」
「……ふむ、何だ?」
「私も、覚悟を決めました。
もう一度、説明させて頂きます」;
「うむ」
「今日、この話し合いが終わり次第、タイタンさんと、フォルネウスの直接契約を交わします。
直接契約により、タイタンさんが、フォルネウスの契約者になり、その間、私は、フォルネウスとは離れ、闇属性の使い手の魔族となります」
「ふむ、質問だが、何故、この後に契約する事になるのだ?
別に、戦争が起こる三年後でも、契約はしても良いんじゃないのか?」
ミーザの質問に、ルーは答える。
「いいえ、契約する事で、タイタンさんは、時間を操る事以外の、水、風、砂は使える様になります。
それに、若返った肉体を扱うにしても、また、新たに鍛える事も出来ます。
契約能力も含め。
並ば、少しでも、早く契約をしたほうが良いんです。
タイタンさんは、おそらく、槍聖アークに取り付いた天使と、戦いたいと願っているはずです。
それに向こうも……槍聖アークの肉体に憑依した天使も、肉体を若返えらせ、肉体と、アークの実力を十全と使える様にしてくると思います。
条件は、同じの方が……」
「成る程……タイタン殿、ルーは、こう言っているが、どうかな?」
ルーの考えを聞き、タイタンに尋ねる。
「ふふ、先程も言ったが、望むところだ。
……ワシは、若き頃、チームを組んでいた時も、別れて、地方のギルドマスターになった後も、身体を鍛え、技術を着け、経験を増やし続けて来た。
これも、今まで、アークの奴に勝ったと思った事のない、ワシの我が儘だ。
多分、此れが最後の機会だろう。
願ってもない事だ。
中身は紛い物だとしても、実力は、奴の物。
勝たせて貰うさ、ワシの為に……この世界の為に!」
「タイタン殿……よろしくお願いする」
ミーザは、タイタンの意気込みと、思いを、天使アークに対する戦いを、完全に任せると決め、椅子から立ち上がり、頭を下げた。
その行動に、魔族側、人族側、全員立ち上がり、同じく、頭を下げた。
「ああ、止してくだされ。
単に、老人の我が儘だ。
其処までされる謂れはないのだ」
「いや、此れは、貴方の心意気と、同胞としての、一同の敬意だ。
受け取って欲しい」
全員、頭を上げ、タイタンを見て、ミーザが代表で告げる。
「……あい、分かった。
しかし、ふふ、我が儘で戦うにしても、まさか、魔族と共にとは思わなかったな?
それに」
タイタンは、リシェルを見て、微笑む。
「まさか、自分が、追い続けていた相手を、槍で勝ち、引退を決意させる程の、実力者が現れるとも、思わなかった……リシェル嬢ちゃん、お願いが有る」
「え、はい、何でしょう?」
リシェルは、少し気まずそうに、返事する。
「いや、責めている訳ではないんだ。
時折で良い、嬢ちゃんの槍で、相手をして欲しいんだ。
勿論、此所に居る、皆さんとも手合わせを願いたい。
如何か?」
「私は、良いですよ」
「勿論だ!」
「良いねー、人族、傭兵の長との勝負、楽しみだ!」
「ああ」
リシェルを始め、戦う者、全て同意した。
「感謝する」
タイタンは、頭を下げた。
「さて、次だが、リシェル。
リシェルの事は、此所に居る者、大抵は知っていると思うんだが、知らない者はいるか?」
ミーザは、リシェルを指名しようとしたが、ミーザにとって、今更な感じがして尋ねた。
「魔王さま、私、お姉ちゃんの事、知らない」
アルテが、手を上げた。
因みに、リシェルは、アルテに、お姉ちゃんと言われ、嬉しそうに悶えている。
「あー、済みません。
魔王様。
私達も、良く知りません」
人族側に座る、ルイ達、夫婦も手を上げる。
「そうか、済まない。
……そうだったな。
リシェルが、あまりにも、此所に馴染んでいるのでな?
リシェル、頼めるか」
「はい」
リシェルは、立ち上がる。
「リシェル・シュザットです。
契約した悪魔は、ルシファーです。
私は、産まれた前に、お母さんのお腹に居る時に
、ルシファーに見初められ、契約し、融合したので、私がルシファーでも在ります。
能力は、全属性、全て使え、ルシファーの知恵と、記憶を持ってます。
見初められた理由は、私の魔力が、闇属性で、魔力量が、属性関係なく、世界で一番、多いからですね」
リシェルは、ルシファーの事情を話し、全ての真実を話した。
今まで、勇者が行って来た事や、此処で話した内容で、ある程度、理解していた者達も、リシェルの話で納得した。
「リシェル、良いか?」
「何、おとうさん?」
話に区切りが着いた頃、ザーツが疑問をかける。
「ルシファーとの融合、完全ではないんじゃないのか?」
「分かる?」
「ああ、昔、ルシファーが、リシェルと融合する前に、ベルベブブと共に、話した事が有るんだが、その時、ルシファーは言っていたんだ。
リシェルが、勇者と戦い死んだ後、ルシファーは目覚め、創造神達と、再び戦う、と。
だが、現状では、勇者は、勇者に乗り移ろうとした創造神を、逆に喰らい、創造神の力を得た。
ルシファーの誤算が、生じているはずた。
どうなるか、分かるか?」
「流石、おとうさん。
うん、完全、ではないよ。
でも、時期が来たら……かな?」
「そうか」
「うん、その時には、迷惑掛けるかも?」
「気にするな」
「ありがとう、おとうさん」
リシェルは、ザーツの腕に、頭を付け甘える様に言った。
会議室での話は、後1回の予定です。
引き続き、読んで頂けると嬉しいです。
よろしくお願いします。




