5章 5 会議室にて、再び 2
出来ました。
お待たせしました。
よろしくお願いします。
「魔王として、もう一度言う、何が有るのか、この場で話せ」
場の空気を、気まずくした二人、ザンバインと、アミルに、魔王ミーザの言葉が、会議室に響く。
「……」
「はっ、申し訳ございませぬ。
魔王様。
実は、其処に居る、アミル・タンザナイトは、私の娘の子でして……」
「私は、一度も、祖父だと思った事は無いっ!」
ザンバインの言葉を聞き、机を叩きながら、否定するアミル。
「……待て?
待て、待て、待ってくれ!
ザンバイン?
孫だと?
もしかして、アミルは、あの時の子か?」
そして、同じく慌てたのが、ザンバインと同じ、六魔将のギバだった。
「……そうだが、ギバ。
お主の気にする事ではない」
「いや!
あれは、どう考えても、俺のせいだろう?
アミル!
お前が、どう思っているかは、分からん。
だが、お前は、ザンバインを責めては駄目だ!
お前が、責める相手は、俺だ!
ザンバインは、何も悪くは無いんだ」
「ギバ……どちらにせよ、私にも責任は有る。
だから、もう、其処まで自分を責めないでほしい」
「……意味分かんない。
二人して、自分が悪いとか、有り得ない!」
アミルは、椅子から立ち上がり、会議室を出ようと、ドアに向かう。
「待て。
アミル、何処へ行く?」
ミーザが、割かさず声を掛ける。
「……魔王様、申し訳ございませんが、退席させて頂きます。
私の、説明は終わりましたので、良いですよね?」
ミーザの声に、立ち止まった、アミルだが、振り返らず答える。
「いや、まあ、そうだが……とりあえず、待て」
「そうだ、待て。
アミル。
待った方が良い。
多分、あの二人の話を聞く事が、アミルにとって必要になるとはずだ。
おい、ザンバイン、ギバ!
いい加減にして、アミルに説明しろ!
どうせ、先代魔王に関わりの有る話なんだろう?」
ミーザに続き、ザーツも引き留め、ザンバイン達に説明を求める。
未だ、言い争っていた二人は、先代魔王という言葉に反応し、ザーツに顔を向けた。
「ザーツ……何故、お前が、その事に気付く?」
「いや、ザンバイン。
ザーツだからこそ、気付くんだ。
……ザーツの母君は、あの、翼麗姫様だぞ」
「なっ?
……まさか、本当なのか?」
二人は、言い争いは無くなったが、今度は、ザーツに対する事で話合う。
「……俺の事は、どうでも良い。
大体の事は、察するが、詳しい事までは、流石に知らん。
早く、アミルに話してやれ」
「分かった」
ザーツによる、再三の要求に、ギバが答えた。
「アミル。
結論から、言おう。
……お前の両親を殺したのは、俺だ」
「なっ?
どういう事ですか?
それは!」
「……その、ままの意味だ」
「っ!」
何かに堪える様に告げる、ギバに、激情したアミルは、飛び掛かろうとした。
「待て、アミル」
「離して、離して、彼奴を……彼奴を、殺す!」
素早く転移した、ザーツに止められたが、アミルは、鼻息荒く暴れ、飛び掛かるのを止めない。
「ギバ、お前、馬鹿か?
何で、結論から、何だよ!
アミルも、落ち着け!
気持ちは分かるが……俺だって、あの馬鹿、殴りたいが、少しは、我慢しろ!
くそっ、話が、進まん。
ザンバイン、お前が話せ。
ギバ、お前は喋んな!」
「分かった……話そう」
ザンバインは、荒れるアミルを見て、覚悟を決めた。
「先ずは、前提として。
我ら魔族は、魔王を尊重し、魔王の命に従い、行動する。
此れは、どの格代の魔王でも、同じ事。
今代の魔王、ミーザ様に対しても、我ら魔族は、命令に従う。
まあ、本の一部、例外は有るがな?
そして、先代の魔王であった、ブラッド様は、ミーザ様と、真逆の魔王だった。
ミーザ様は、我らに、決して無理はさせぬ、我らを労り、拒む事を許す方だからな」
ザンバインの言葉に、ミーザは照れて、顔を真っ赤にし、俯いて震えている。
「うむ、私も、先代国王だった父に、聞いた事がある。
人族領に、魔族が攻めに来る時、滅ぼされた村は、全て全滅の上、誰一人の生き残りも無かったと……父から、国を引き継ぐ時、そう聞かされている。
後、たしか、部類の女好きだとも聞いたな」
昔、聞いた事を思い出しながら、ラカールは同意する。
「私が、王国を引き継いた時には、既に、ミーザ殿が、魔王だった故、国どころか、街や村さえも、一度も被害が無かったな。
それでも、警戒は怠らなかったが……其れが、どういう訳か、人族に平和をもたらす筈の、勇者に、国を乗っ取られるとは、何と、皮肉な事か」
「……ラカール殿」
「いや、済まぬ。
こんな空気にするつもりはなかったし、話を混ぜ返すつもりもなかったのだ。
ザンバイン殿、私が聞いた先代魔王は、この様な感じだったのだが、どうだろうか?」
「ええ、概ね間違っておりませぬ」
「そうだな、特に、今回の話は、ラカール殿が言っていた、女好きの先代魔王、ブラッド・レオハートが、ザンバインの娘に、目をつけた事が始まりだな」
ラカールの問いに、ザンバイン、ギバの二人が同意し、当時の出来事を語り始めた。
この時には、アミルの興奮も収まり、話を聞く体制になっていた。
「あの時は、先代ブラッド様が、私の娘に目をつけ、私に娘を差し出す様、命令を下したのだが……本来なら、私は、素直に差し出していただろう。
当時、私の、総死魔族の長として、其れを支える二人の部下がいた。
娘は、その片方に愛し、結婚を前提に付き合っていた。
勿論、私も、認めていたし、祝福していた。
……だが、私は、魔王の忠誠より、娘の幸せを取り、二人を逃がした。
行き着いた場所は、確か、その時は、まだ小さな村とも言えぬ、人が殆ど居ない、辺境の場所だったな。
後に、サウルと名付いたか。
激怒した先代は、逃がした私に、娘を戻す様に、もう一度、命令をしたが、私は拒み続けた」
「次に、命令を受けたのは、俺だった」
ザンバインに続き、ギバが話を引き継いた。
「当時の俺は、六魔将になったばかりの上、先代の息子として、親の七光りとか、色々な陰口を叩かれていてな、常に項を焦っていた。
そうだ、俺は、先代魔王、ブラッド・レオハートと、正妃の間に産まれた子供だ。
とにかく、命令を受けた俺は、仲間を三十くらい連れ、逃げたザンバインの娘達を、追いかけた。
その中には、アルテの父親、ガルテも含まれて居た。
彼奴の鼻は、追跡に都合が良かったしな。
……俺達は、サウルに着く頃には、再び逃げた後だった。
人族領から魔族領へ、山の奥地迄、かなりの距離を逃げていた、二人を追いかけ殺した。
だから、アミル、お前の両親を殺したのは、俺だ。
アミルは、ザンバインを責めてはいけないんだ」
「そんな……じゃあ、その時、ザンバインは、何をしていたの?」
顔を青くして、ザンバインを見つめる、アミル。
「……ギバ、お前に、とっても辛い記憶を……済まない。
アミル、私は……私は、その時は、魔王に逆らった罰として、両腕両足を切り落とされ、牢に放り込まれていた。
残った、もう一人の部下に、数年掛けて、義腕義脚を作って貰い、現在は、何とか動ける様になったが、結局は、二人を助ける事は出来なかった。
……アミル、本当に済まなかった。
二人を、助け続ける事が出来ずに、また、お前を引き取る事が出来無くて、済まなかった」
ザンバインは、アミルの前迄来て、膝をつき、土下座をした。
其処から見えた、腕と脚は、死魔族として、見慣れた人形の其れだった。
「もう良いよ……ザンバイン、お、お爺ちゃん、顔を上げて?
……私の方こそ、ご免なさい。
私、知らなかった、知らなかったの……ずっと、お爺ちゃんを恨んでいた。
誰も、教えてくれないし、話してくれなかった。
どうして、誰も教えてくれなかったの?
どうして?」
「アミル……」
ザンバインにしがみつき、大声で叫び続ける、アミルに、誰もが、声を掛けれなかった。
「おい、ギバ」
「何だ?」
アミルが、落ち着いた頃、ザーツは、ギバに、声を掛ける。
「お前、話していない事が有るだろう?」
「……何の事だ」
「手を掛けたのは、お前じゃ無いんだろ?」
「……俺だよ。
アミルの両親を、手を掛けたのは、俺だ」
「じゃあ、何で、お前達が、サウルに着いた時には、アミルの両親は居なかったんだ?」
「それは、だな……あれだ!
俺達が来ると気付いて、その場を逃げだしたんだろ!
あー、あれは見事に、逃げられたなー、ガッハッハッ」
どう見ても、今、思い付きました、という言葉と、最後は棒読みなギバを見て、全員が呆れる。
「ギバ……お前、演技、下手だな」
「うぐぅっ!」
「……先程、ギバが、無理をして言ってくれたんだ。
次は、私が言おう。
ギバ達、追跡者は、誰も娘達に手を掛けてはおらんのだ。
ギバ達が追い付いた時には、娘達は、既に死んでいた……娘達を追い詰めたのは、そこそこ実力を持った傭兵だったらしい。
娘達は、アミルを隠し応戦したが、多勢に無勢。
追い付いた、ギバ達は、傭兵達を撃退。
アミルを見つけ、魔族領に戻り、アミルを部下に引き取って貰った。
此れが、真相だ。
アミル。
ギバが、説明を濁したのは、此れからの人族との関係を壊さない為に、あえて、自分を悪者にした。
……アミルにとって、こらから言う事は、残酷になるかもしれない。
アミルよ。
真実を知って、私でも、ギバでも無く、恨む相手の傭兵は、当時にギバ達に倒されて、もう居ない。
そして、先代魔王も、この世に存在しない。
アミルは、心も、身体も、十分成長している。
私が、真実を言ったのは、アミルに、前向きに……現魔王、ミーザ様の下に、未来を見つめて欲しい」
ザンバインは、アミルの両肩を掴み、真剣な眼で見つめ、乞い願う。
アミルは、暫くキョトンとした顔で、聞いていたが……
「ぷっ、ふふふ、あはははは……!」
大声で笑い出した。
一頻り、笑い、落ち着いたアミルは、目元を拭いながら、ザンバインに言う。
「お爺ちゃん……うん、ありがとう。
言いたい事、分かったよ。
大丈夫、私、此れでも、見た目以上に歳を重ねているんだよ?」
首を傾げ、優しく微笑むアミルは、言葉を続ける。
見た目十五歳前後のアミル。
死魔族の集落に引き取られ、育ち、ミーザ達の次世代の魔王候補として、集められる前に、集落を出て、魔族領の最南端の山、サーズ山の洞窟で過ごし、魔法の研究を失敗し二十年近くの仮死状態となり、意識だけを別の物に移し、成長が止まっていたが、リシェル達との出会いで、現在に至るので、姿は、未だ少女のものだった。
「確かに、今日、色々な事が分かって、少し、混乱してるかも、だけど……うん、大丈夫!
ちゃんと、分かっているよ。
お爺ちゃん、心配し過ぎ!
……心配してくれて、ありがとう、お爺ちゃん」
「アミル……」
「ギバさん……ちょっとだけ思い出したかも?」
「……何だ?」
「あの時、隠れていた私を見つけた、白い髪の男の人って」
「ああ、アルテの父親、ガルテだ。
彼奴、鼻が良いからな……向かった途中で、お前を見つけたんだよ」
「そっかぁ」
「俺は、親父の命令を聞き、ガルテをはじめ、仲間を集め、お前達が居る所に向かい、暫くして、仲間に殴られて、説教されたなぁ。
何故、ザンバインが、身を挺して、命令を背き、娘達を逃がしたのか、とか。
お前に、もし子供が居て、嫌な相手に差し出せとの要求を、お前は飲めるのか、とか。
くくっ、色々、言われたなぁ。
実際、娘夫婦の下に、辿り着いた時、傭兵達が、二人に武器を落とした時は、頭が真っ白になって、気が付いた時には、傭兵達は地に伏せ、二人は間に合わなかった。
……その事が有ったから、ガルテの時も、何とかしたかったんだが、な?
……しかし、ずっと不思議に思っていたんだが、何故、ガルテ達は、魔王の支配に抵抗出来たんだ?」
「簡単な事だ。
ギバ、お前は、魔王に命令されたが、ガルテ達は、お前が集めた仲間なんだろ?
つまり、そういう事だ」
ザンバインが、ギバの疑問を聞き取り、説明した。
「……ああ、成る程。
そうだったのか……ははっ、そうだったのか」
ギバが、当時を思い出したのか、目を閉じ、上を向いた。
まだ、終わらない会議。
まだ、続きます。
毎日、暑いですね?
夏バテには、気をつけて!




