5章 2 ルリ・イルミア 後編
出来ました。
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本当ですよ。
だって、読んで貰っているという気持ちになりますから!
この、つたない話でも、読んで貰っている。
私は、嬉しい。
前回の話(今度は簡単に)
ギルド長サラドの態度に、天使ルリが内心キレて、氷の針を放ち、殺そうとした。
続きをどうぞ。
街の外に出て来たザーツ、アミル、そしてライは、天使ルリ達率いる五百の兵に対峙しているサラドの安否を安心しつつ、状況を確認する。
「あれがリシェルのねぇちゃんかー。
似てるちゃ、似てるかなー?
……ん?」
「どうかしたか?」
ライが、天使ルリを見ていて、何かに気が付いたみたいで、首を捻っているので、ザーツは尋ねる。
「んー、何だろ?
ちょっと待って、もう少しで分かるかも?」
「そうか?」
「あ、ザーツさん、見て下さい!
ギルド長、何か言ってますよ」
アミルが、指を差し、ザーツがサラドを見る。
「……単に、サラドが、悪態付いているだけだな?
っと、不味いな……悪い先に行く」
サラドの悪態に、苦笑するザーツだったが、ある事に気付き、転移した。
天使ルリは、自分達、天使を謀ったサラドを殺す為、無言で氷の針を打ち出した。
「させるか!」
転移で、サラドの前に立ったザーツは、氷の針を迅速の抜剣で打ち払う。
「サラド、最後まで気を抜くな。
不意で、殺されるところだぞ」
「え、あっ、ザーツ……済まねぇ」
「悪かったな。
ここは、もう俺達が変わるから、サラドはギルドに戻って、ガイ達の手伝いを頼む」
「分かった。
後は、頼んだ!」
サラドは、そう言って、今度は隙を見せず街の中に戻って行った。
「ザーツさん」
「……」
入れ替りにアミルと、ライが来て、三人で天使ルリ達と対峙する。
「……分かった。
やっぱり、そうだ!」
ここに来て、先程から、何かに集中していたライが、漸く何かに気が付けたみたいで、喜んでいた。
「……ライ、何が分かったんだ?」
「え、うん、このリシェルのねぇちゃん達だけど、まだ完全に取り付かれてないみたいだ」
「ふむ、つまり?」
「何とか、なりそうなんだけど……ちょっと、試してみたいなー」
「……リシェルも、同じ様な事を言っていたな」
「そうなんだ?
……リシェルはどうやったのかな」
「リシェルは、聖魔法で何とかしようとしてたな」
「あー、なるほど、そっか!
リシェル、勘違いしたんだな」
「勘違い?」
「うん、そう。
リシェルは、取り付かれた状態を、呪いや、憑依だと思ったんだと思う」
「呪い……は、分かるが、憑依は間違ってないんじゃないか?」
「間違ってないね……でも、この場合は、間違っているかな?
リシェルも、魔族寄りの考えだから、聖魔法を使ったんじゃないかな?」
ザーツには、まるで謎かけの様な、ライの言い方に頭を悩ます。
「あ、分かった。
そういう事ですか!」
アミルは、分かったみたいだ。
ザーツは観念して、アミルに聞いた。
「時間切れだな……アミル、教えてくれ、どういう事だ?」
「敵と言っても、取り付いている天使は、神の使い、つまり、私達にとって、邪悪だとしても、普通は光、聖なる属性なんですよ……その様な存在に、聖魔法は効きません」
「……なるほどな。
確かに、それは間違ってないけど、間違ってるだな。
でも、ライ、お前、何とかなりそうって、どうするつもりだ?」
「それ、なんだけど……これって、勇者見てるかな?」
ライは、目線を上に、空を見て伺う。
「ん、そうだな?
……勇者に見られたく無いのか?」
「うん、そう、それと、この兵士達も、逃がして情報を持たせたく無いな」
「……なら、提案が有る。
アミル、兵士全体を含む、逃げる事の出来ない巨大な結界を張れるか?」
「そー、ですねー?
ちょっと、キツいですね」
「そうか、なら俺が張った結界を強化、出来るか?」
「あ、それなら、大丈夫です!」
「そういう事だ、ライ……結界、張るぞ!」
ザーツは、二種類の結界を別々の手で作り、手のひらを打ち合わせて混ぜ合わせ、より巨大に、より効果的に、より強力に無詠唱で結界を張った。
「……流石、ザーツさん」
アミルは、ザーツの張った結界に気を取られ放心している。
「アミル!
次は、アミルの番だぞ?」
「はっ、はい、すみません。
ーーーーー〈闇魔法、闇増強〉!」
アミルの放った闇魔法が、ザーツの結界に当たり吸収され、全てを強化し、結界全体を薄黒く染め上げた。
「……これで、視覚系の魔法、魔術共に、更に見え難くしました」
「へぇ、此れは凄い……俺にも負担が減るようにしてくれたんだな?」
「ええ、差し出がましいかと、思いましたが……」
「いや、有難い……どうも、俺と戦いたがっている奴が居るしな。
丁度良い」
ザーツの目線には、上着を脱ぎ、タイを外し、袖を捲り、鞘から剣を抜いて、此方を見ている、ウォルドが居た。
「どうやら、君がこの戦いの柱みたいだ。
つまり、君を倒せば、この戦い、此方が有利になると見た!
並ば、私が相手をしよう……良いな、ルリ?」
「良いわよ……私は、横の女性魔族を相手しましょうかしら?」
「私ですか?
わーい……嬉しくないなー」
ルリに使命された、アミルは汗を一筋足らし、苦笑する。
「んじゃ、俺は兵士達か?」
ライは、ルリ達の後ろで控えて居る五百の兵士を見渡す。
「大丈夫だろ?」
ザーツが、確信をもって尋ねる。
「まぁ、此れだけ居ても、リシェルより上って事、無いでしょ?
アミルねぇちゃん、出来るだけ早く終わらせるから、頑張って耐えてくれ」
「お願いよ?
ライくん」
「任せろ!
〈雷魔法、雷纏〉!」
ライは、雷を纏い、身体中を雷が歩と走る!
「はあっ!」
次の瞬間、ライは其処には居らず、兵士達の所に現れて、次々と倒して行く。
あまりの速さに、兵士達は対応出来ず、一撃、又は二撃と攻撃を受け、倒れて行く。
ライの攻撃は、只の攻撃ではない。
雷を纏った攻撃は、速度も上がり、威力が上がり、更に、麻痺状態になり、倒れた兵士達は気絶、又は、昏倒して動けなくなる。
「はあっ!」
ガシィン!
ウォルドが放つ、上段からの降り下ろし受け、ザーツは軽く驚く。
ウォルドの一振りは、其処らの傭兵とは違い、中々の重みの有る一撃だった。
「ふむ、良い一撃だ?
公爵、アンタ、文官じゃなかったのか?」
「文官だよ!
しかし、剣は貴族の嗜み……だが、私は嗜みでは終わらなかった!
そして、天使の力も加わり、全てが増した。
只、それだけだ、はあっ!」
次々と、繰り出される剣は、美しく、見事で、ザーツでなかったら、もしかしたら、既に、終わっていたかもしれない。
そんな攻撃だった。
だが、相手はザーツ……魔族一の剣士で有る。
余裕で、ウォルドの攻撃を捌き、一切のかすり傷も受け無い。
ここで、ウォルドに変化が有る。
「はあっ、〈零の極致〉!」
「へぇ?」
ザーツは、再び驚く。
ウォルドの攻撃は、速さも多少上がり、隙を付いた攻撃が増え始めた。
「どうだ!
驚いたか?
剣聖の域まで至った、私の剣を!」
「ああ、驚いた……次は、何で驚かさてくれるんだ?」
ウォルドのより複雑になった攻撃は、先程と変わらず、ザーツは捌く。
「……何故だ?
攻撃が、通じない?」
一切攻撃が通じない、ウォルドは焦る。
「確かに、凄いが……それだけだ。
その先には、至らない。
そもそも、〈零の極致〉は受けを中心に、相手の攻撃を返し、又は、攻撃の隙をつくのに、有効な技術だ。
アンタみたいな、攻撃は意味無いな。
そして、此れが、その先だ!
〈刹那の零撃〉」
〈零の極致〉を使っている、ウォルドには、こう見えた。
只、動いていない……と。
実際は、気付いた時には、ウォルドは身体中に傷を負い倒れて居た。
「な、何が、起こった?」
立ち上がろうとするが、力が入らない。
「魔力の込めた剣撃で、肉体を傷つけず、神経を一時断ち切った。
動く事も、神経を繋ぐ事も出来んよ……終わりだ」
「……くそっ!」
本当なら、ウォルドが言わない悪態を、天使ウォルドはつき、勝負は終わった。
「ふう、終わった……アミルねぇちゃん、大丈夫か?」
満身創痍、疲労困憊なアミルを心配し、五百の兵士を倒した、ライは、アミルの元に近寄り、天使ルリと対峙する。
元々、アミルは攻撃、防御、より支援の方が得意で有り、傷を受けながらも、防御一辺で、ルリの攻撃を凌いでいた。
ザーツと、ライを信じて。
「そっちも、終わったか」
ザーツも終わり、アミルの元に来た。
「ザーツさん、殺してないよね?」
「ああ、動けなくはしたが、今日、明日は直らないだろうよ。
俺が、直さない限りな」
「さっすが、ザーツさん。
やっぱ、まだ、勝てないな」
ライが、心からそう言ってしまうくらい、ザーツは強かった。
「当たり前だ。
でも、まあ……お前も強くなったよ」
「有難う、ザーツさんに言って貰えると嬉しいよ。
ついでだけど、あの天使の相手、俺がしたい」
「……ふむ、それは良いが、分かっているのか?
あの相手は、お前と同じ、氷の単一魔法の使い手。
雷では、氷の相手はつらいぞ?」
「分かってる……だから、此れを使う」
ライは、腰元のアイテムボックスから、鉄棍と、木棍を取り出し、どっちを使うか悩み、鉄棍を片付けて、残った木棍を一振りする。
「正解だ、じゃあ、やってみな」
「よっしゃあ!」
嬉々として、天使ルリに向かうライだった。
「良いんですか?
単一魔法でしたっけ?
確か……属性魔法でも、属性に合った色んな魔法が使えるはずなのに、一つしか使えないっていう片寄った才能。
但し、一つの魔法に込める魔力は無限に増幅出来る。
産まれながらの魔力に関わらず。
操作が出来るか、どうかが単一魔法同士の戦い。
水からは氷が。
光からは雷が。
火からは炎が。
土からは重力が。
闇からは吸収が。
風からは空気が。
無は、氷、雷、炎、重力、吸収、空気、全てに強く、全てに弱い氣力。
氷は雷に強く、雷は炎に強く、炎は氷に強い。
重力は吸収に強く、吸収は空気に強く、空気は重力に強い。
氷炎雷の三つと、重力吸収空気の三つは対等にして無効。
……ザーツさんも言ってましたけど、ライくんの雷では、氷に勝てないと思います」
アミルは、元々、属性、魔法の研究をしていただけの事は有り、良く知っている。
感心する程の知識だ。
だが、ザーツもこの事を知っている。
そして、ガイと、ラーシャにも伝えている。
だから……
「大丈夫だ。
だから、ライは棍を出しただろ。
しかも、鉄ではなく、木製のを」
「ええ、そうですね?」
「武闘大会、見てたんだろ……分からないか?」
「えっ、えーと」
「ガイ達は、ちゃんと対策をライに教えているよ……ほら」
ライは、棍に魔力を通し、棍を振る事で風を作り、氷を払っていた。
「ああ、凄いです!
木製にしたのも、凍傷を恐れてですね?」
「ちゃんと考えているよな?
強くなるはずだ、アイツ。
とりあえず、倒した奴らを縛っておくか」
「ええっ、この人数をですか?
無茶ですよ!
五百人ですよ、五百人!」
「だが、やるしかないだろ?」
ザーツは、大地に、手のひらを当てる。
いや、正確には、自分の影に。
影は広がり、兵士達をのし掛かる様に突き進む。
結界全域まで、広がり、広がりきった影は元に戻る。
姿を現した兵士達は、身体中を闇で巻かれ、動きを封じた。
その行動は、隣に居たアミルは勿論、戦っていたライ達も動きを止め、ザーツを見た。
「な、んなの、今の?
無詠唱の上、これ程の人数を、一度に?」
天使ルリは、震える。
それは、天使として震えているのか、天使とは別に、ルリの本能が震えているのか。
「やっぱ、凄えー」
剣も、魔法も、実力も、まだまだ敵わない……でも、いつかは。
そう願う、ライだった。
「さて、本気で行くか……〈魔術、身体強化〉」
ライは、身体中に魔力を通す。爪先まで、髪の毛一本まで、強化する。
肉体も、身体中に走る神経も、全て!
「次だ、〈雷魔法、雷纏〉」
続けて、雷を纏い、更に一段強化を上げる。
「ふぅ、今日、本来、大会でリシェルと勝負する時に使う予定だった。
取って置きだ。
悪いけど、早い事終わらせたいから使わせて貰った」
「……さっき、兵士達に使ってた強化魔法よね?
どう違うのかしら?」
違いの分からない天使ルリは、首を捻る。
と、見せかけ、無詠唱、無動作で氷の矢を数発放つ。
「戦えば分かるよ」
ライは動いて、その場所には居ない。
「ど、どこ?」
完全に、見失った天使ルリは、幾方向に氷の矢を放ち、更に、辺りを冷却し、氷の霜を振り散らした。
「ここだ!」
突然、姿を現したライは、天使ルリの腹に、拳で打つ。
「くぅ……」
天使に憑依したとはいえ、所詮は魔法職、不意を喰らえば、防御は紙に等しい。
が、ライは、リシェルの姉の事を思い、腹に当たる瞬間、拳を止めて、雷の衝撃だけを与えるのみに留めていた。
「つっ、ふっ、ふふ、そういう事……貴方、私の事を思って、攻撃を最小限に留めたわね?」
「……」
ライは沈黙で答える。
天使ルリは、嬉しそうに、可笑しそうに、ライを笑う。
「そういう事なら、此方は遠慮なく、最大限で行かさて貰うわ」
「〈氷魔法、夢幻像〉」
先程、攻撃を受けた時も途切れず、未だに辺りを冷却し続けていた、天使ルリ。
大地は凍てつき、大気は刺すぐらいに冷たく、振り散らした霜は増え、魔法の詠唱と共に、霜は集まり、天使ルリの姿を模した動く像が数台現れた。
本体も、氷像も全く見分けがつかないくらい動きまわり、ライを囲む。
全ての天使ルリは、氷の矢を幾つ物数を放つ。
ライは、避けるつもりがないのか、その場を動かない。
そして、当たる瞬間、氷の矢は全て砕け散った。
「なっ?
……まだよ!」
砕け散った氷は、再び矢の形をとろうとする。
が、形になる時、再び砕け散る。
「どうして?」
天使ルリは、もう一度と思った時に、ライの周りから、風か吹いているのに気が付いた。
「……そう、そのいう事だったの。
貴方、単一の雷使いのくせに、何故か、風が使えるのね?」
「気付いた?
修業を始めた時、彼処にいるザーツさんが気付いて、うちの父ちゃん達に言ってくれてね。
父ちゃんから体術、母ちゃんから棍術を習ってさ。
母ちゃんが風属性で、棍術と合わせた技を使っていたらしいんだけど、後に魔法を使わなくても、疑似風を作って戦える棍術を編み出したのを、教えて貰った。
因みに、リシェルも、この棍術、使えるよ。
大会見てたら、知ってると思うけど」
「……種明かし、どうも、有難う。
大会は見てないのよ、残念だわ」
天使ルリは、ため息を吐き、残念そうにしている。
「……嘘、発見!
見てないのは、リシェルのねぇちゃんだろ?
天使のあんたは関係無い。
さて、もう良いか……サマエル、出てこいよ」
『良いのかい?
私が出る事で、君が追及される事になるかもしれないよ?』
「構うもんか……既に、ザーツさん辺りは、気付いているみたいだし、こうやって、強力な結界だって張って貰えたんだ。
逆に、説明しなきゃ、怒られるよ」
『ふふ、そうかもね?
じゃあ、出て、挨拶するとしよう』
「よし、出てこい!
サマエル!」
ライは、右手を上に突き上げ、サマエルを呼んだ。
「神霊サマエル、見参」
ライの後ろに白い翼を広げ、サマエルは姿を現した。
「な、天使?
いや、この気配、霊格は神霊だと?
だが、知らない……私は、この方を知らない。
一体、どの神の神霊なんだ」
あまりの驚きに、ルリの口調ではなく、取り付いた天使の言葉だった。
「あれは……天使ですか?
天使が、ライくんについているんですか?」
ライが呼び出した、サマエルを見て慌て、ザーツに意見を聞く。
「……いや、あれは、神霊、だな。
ライの奴、神霊と契約してただと?
しかし……取り付いた天使が、知らない神霊だと?
後で、話を聞くとしても、なるほど、切り札か……勇者に見られたくないものとは、これか?」
ザーツも、天使の様子や、ライの言動、自分に張らせた結界の意味等、考慮して納得した。
「貴方、何者なの?」
天使ルリは、愕然として尋ねた。
「俺か?
それとも、こっちか?
悪いが、どっちも、あんたには教えられないな。
サマエル……あいつを、リシェルのねぇちゃんから、引き離す。
力を、貸してくれ!」
「良いよ……私の力、存分に使ってくれ」
サマエルは、力を、ライに送り、受け取ったライは構える。
「どう使うかは、イメージを送った。
失敗するなよ?
本物の霊体が傷付くぞ!」
「分かってる!」
ライは、その場から姿を消し、ルリの後ろに移動した。
移動した瞬間、ライは、力をルリに向け、解放した。
「〈〇〇魔法、霊体剥離〉!」
ライが、言った魔法は、誰も聞こえず、理解出来ず、ライ自身も言ったが、何と言ったか覚えていなかった。
ライが、解き放った魔法は、ルリから前に押し出された様に、天使が飛び出した。
「なっ?」
突然、憑依を解除され、ルリの身体から、分離させられた天使は状況が分からず、辺りを見渡し、ルリを見つけ、自分の目で、自分の身体を見て、
頭の中が、真っ白になった。
天使が離れた、ルリは意識がなく、その場に倒れそうになるのを、ライは受け止め、その場にゆっくりと寝かせた。
「よしっ!」
ライは、再び移動し、天使をザーツの元に蹴り飛ばした。
「むっ?」
ザーツも驚いていたが、天使が、自分の元に蹴り出された事で、正気を戻し、天使を捕縛した。
「ザーツさん、此方も頼む」
既に、ライは、先程ザーツが倒し、捕縛しているウォルドに、ルリに行った、先程と同じ魔法を放ち、天使を取り出して、ザーツの元に蹴った。
「……おう!」
ザーツの元に、二体の天使が捕まっている。
ライも、ザーツの元に、戻って来た。
「天使を、このままに生かすのは、論外だし、消滅させるか」
ザーツの意見は、最もで、ライも、アミルも同意し、塵も残さず、二度と戻らない様に消滅させた。
此れで、勇者の言う駒が二体、減った事になる。
ルリと、ウォルドは、アミルが召喚した人形二体、ギルバートと、量産型の人形に運ばせて、三人はギルドに向かう事にした。
捕らえた五百の兵士達は、洗脳は完全には解けなかった。
簡単な判断は出来るが、何も考えず、言われた事を遂行する、只の生きる人形となってしまった。
このまま、置いておく事も出来ないので、とりあえず、ギルドまで付いて来させた。
既に、結界は、天使を消滅させた時点で消してある。
「んー、ルリと、ウォルドに付けた天使は居ないなー?
やっぱり、ザーツっていう魔族がやったのかな?
……やったとしても、どうやったのかな?
あー、検討も、つ、か、な、いー!」
勇者が、現在居る場所は、イルミア王国、王城謁見の間。
本来、国王が座る玉座。
其処に座り、サウルに向かった、ルリと、ウォルドを千里眼で見ていたが、ザーツ達が現れ、結界を張った時から、様子が見れなく、声も拾えなくなり、援軍を出すか、自分が向かうか、悩んでいる内に、結界は解かれ、再び、見えた時には、全てが終わっていた。
ルリと、ウォルドには、どうやってか、天使は居らず、五百の兵士達は、半分洗脳を解かれ、此方の命令が効かない状態だった。
そして、サウルの街は、ルリが破壊した結界が、再び、張られ、前回よりも強力に、勇者である自分でさえ破壊出来るか、どうか、難しいものが張られいた。
「……今回は、僕の負けかー。
天使二体は、結構、痛いなー。
しかも、サウルを取られたから、人族の領土も取られたなー、参ったな。
暫くは、ほっといて領土の基盤を固めるか……」
現在、勇者しか居ない、謁見の間。
勇者は一人、愚痴をこぼし、此れからの事を考えた。
ギルドの入り口には、傭兵や住民が大勢集まっていた。
ザーツ達を見つけた、サラドは駆け寄り、後ろの兵士達を見て驚いた。
「おい、何だ?
……コイツら大丈夫か?
どいつも、こいつも意思を感じねぇ」
サラドは、ぼー、としている兵士達の顔の前で手を振りながら、反応しない兵士達に、疑問を持つ。
「ああ、洗脳は解けたし、触られても洗脳される訳でもないな。
だが、勇者が居る限り、完全には無理だ。
後、この二人は、まぁ、大丈夫だ。
取り付いた天使は、もう居ない」
「うぉ、姫さま達じゃないか?
え、本当に大丈夫なのか?」
人形達が抱かえている、死んだ様に、意識を失っている二人を、心配しているサラドを見て、ザーツは、人を気に掛けるサラドが人として好ましいと思い直した。
「ああ、只、無理に引き離した状態だからな……身体的の障害、精神、記憶等の障害が出ても仕方がないだろうな」
「……そうか」
「まぁ、今、憶測で物を言っても仕方がない。
早く目を覚ましてくれれば、それでいいさ」
「そうだな」
「それで、この外に居るのはどういう連中なんだ?」
「ああ、ガイと、タイタン様が……」
「どうした?」
「……いや、どうして、タイタン様が居るんだ?」
「そりゃ、大会の時、保護したからな。
敵に回すのは、面倒な人物だし」
「そりゃ、そうだけど……一体、王国で何が、有ったんだよ?」
「その辺も、向こうに行ったら、教えるつもりだけど……行くよな?」
「あー、それなんだけどな?」
サラドは、ばつの悪そうな顔をして、頬をかく。
「外に居る奴らは、魔族領に行かない連中なんだよ。
だからさ、指揮する奴が居ないからさ?
俺、残ろうかと思ってさ……悪いな?」
「いや、良いんじゃないか?
それに、もしかしたら、暫くはここは安全になるかも知れんし?」
「そうなのか?」
「勇者次第だがな?
……今、彼奴は駒を集めているはずだ。
そう何度も、こっちを攻める事は無いはずだ」
「……もし、集め終わったら?」
「その時は、来るかもな?」
「だよな」
「「くく」」
ザーツと、サラドは笑い会う。
「あー、笑った。
で、何だっけ……ああ、そうだ?
ガイと、タイタン様が説明して、魔族領に来る者は中に、残る者は外に分かれたんだ」
「そういう事か……それで、サラドは外に居たのか?」
「そうだ」
「それなら、俺達は中に入るが……この人数は、中に入るのは難しいな。
アミル、俺達だけ、中に入って人数の確認と、状況の相談をしよう」
「そうですね、行きましょう」
中に入り、確認したところ、十七人の希望者が居り、ガイ達二人を含め、アミルに転移を任せた。
状況と、受け入りの報告を済ませ戻って来た、アミルと共に、五百の兵士を連れ魔族領に戻った。
とりあえず、五百の兵士達は、現在、使われていない集落を拠点にし、戦争に関わらない様に、また、畑や、狩り等をして、戦争時の食糧の余裕を作る様に依頼した。
勿論、その際、管理者として、ギルドにいた十七人の内、八人は共に生活をして過ごして貰う事になった。
残りの九人は、魔王城にて事務等の仕事を住み込みとなった。
元ギルド職員達である。
そして、ルリと、ウォルドは意識を失ったままの、一週間。
その間、ラカールは、魔王ミーザの事務処理の手伝いを、リサは、ルリ達の看病を、魔王城の侍女達の手伝いを共に行い、目覚めを待っていた。
ルリが目を覚ました。
目の前に居て、顔を覗き込んでいた人物を見て。
「……お母様?」
そう、呼ばれた人物は、驚き席を立って医療者や、侍女達を呼びに行った。
ルリは思う。
母にしては、幼さを残した女の子だったと。
そして、自分はどうして、見た事無い部屋で眠っていたのか。
疑問は増える。
右足の感覚が鈍く、動かす事が出来なかった。
やがて、先程の女の子が、医療者と母リサ、侍女を一人連れて戻って来た。
医療者の質問に、声を詰まらせながらも答え、少しずつ、記憶を取り戻し始めた。
少し水を飲ませて貰い、少しずつ滑らかに話せる様になった頃。
医療者の質問も終わり、入れ替りに母リサが座る。
「お母様……痩せました?」
「……馬鹿ね、痩せたのは貴女よ、ルリ?」
リサは、涙を浮かべながら、優しく微笑み答える。
「ルリ、貴女、状況を覚えてる?」
「ええ、先程受けた質問に答えながら、少しずつ……私に取り付いた天使は?」
「どうにかして、取り除いたそうよ。
でも、その際に、後遺症が残ったのね?」
「そうね……右足の感覚が鈍いわ」
「そう、記憶はどう?」
「話している途中、少しずつ思い出したわ。
お母様?
お母様の後ろに居るのが、あの時に聞いた、妹。
リシェルなのね?
聞いていた通り、本当に、お母様そっくり。
リシェル……側に来てくれないかしら?」
リシェルは、戸惑いながら、リサを見て、首肯くリサの横に座り、ルリの側に来た。
ルリは、ゆっくりと身体を支えながら、身体を起こし座り直す。
「十二年前、私、貴女が死産だって聞いたわ?
正直、妹は死んだという記憶だけが残り、今まで過ごしていた。
結構、幸せにね。
貴女は、魔族に引き取られ、生きてきたそうだけど、幸せかしら?」
その言葉を聞いて、リシェルは首肯き、初めてルリに声を掛ける。
「うん……私、幸せだよ!
引き取ってくれた、おとうさん。
おとうさんの回りにいた魔族の人達。
サウルの街の人々。
皆、優しくて、時には、怒られもしたけど……私は元気に、そして幸せに生きてきたよ」
「そう、良かった」
リシェルの言葉に、ルリは涙を流しながら答える。
また、リシェルの横で、リシェルの言葉に同じく涙を流す、リサ。
ルリは、リシェルを抱き締める。
「生きているのね?
私の、妹は生きているのね」
「お姉ちゃん」
その言葉を聞いたルリは、一度離れ、リシェルの顔を見て微笑む。
「お姉ちゃん……ふふ、呼ばれ慣れない言葉。
でも、貴女には、そう呼んで貰えるのが、一番嬉しいわね」
そう言って、もう一度、抱き締める。
「凄く、凄く嬉しいわ!」
ルリは、天使から解放されたよりも、何倍もの喜びを感じた。
前書き、テンション高くて、すみません。
m(__)m
まだ、終わりではありません。
一応、もう少し続きます。
私自身、終わっても良いんじゃないかという、気持ちになりましたけど……
もうちょっと、頑張ります。
(o゜◇゜)ゝ
今回で51話、今回、気が付けば1万文字。
前中後編合わせて2万文字超、割ってなかったら今までの最長になってましたね
(-_-;)
一応、これとは違う、新しい話も考えてはいるんですけど、完結してからにしなさいと、怒られました。
私としても処女作なので、終わらせたいと思います。
このまま、もう少しのお付き合いを。
ブクマ登録、評価の採点をして頂けると嬉しいです。
宜しくお願いします。




