5章 2 ルリ・イルミア 前編
出来ました。
今回、思っていたより長くなったので、2つに割りました。
ブクマ登録、有難うございます。
約十二年と半年前、王妃であり、私の母親でもあるリサ・イルミアに、新しい生命が宿ったと報告が有った。
魔術で調べたところ、女の子との事だった。
兄であるクレイン、私ルリ、弟のクロードは、新しい妹が出来ると、凄く喜んだ。
だが、報告に来た兵士によると、妹は闇属性の魔力を持って、産まれたと言う。
父、国王ラカール・ナグア・イルミアは、苦悩の末、処分を命じ、私達は産まれた赤ちゃんの顔を見る事も無く、死産として扱われた。
父上は、一度でも、顔を見てしまったら愛情が出て、皆が苦しむ事に成りかねないと判断し、苦しい決断をしたと、お兄様は言っていた。
実際、私は産まれて来た妹は、闇属性だったので、処分されたという事実しか、頭の中の認識となっている。
私は、幼い頃より魔法に長け、暫くすると、王立イルミア魔法学院に入り、更に、才能を伸ばして来た。
やがて、エリック公爵家、ウォルド・フォン・エリックと婚約し、卒業した十五の歳に結婚となる予定だったが、もう少し魔法を研究したかった為、父様と、ウォルドにお願いし、高等魔法学院にて、二年間の延長をお願いした。
父様は渋々、ウォルドは快く承諾してくれた。
その結果、様々な魔法具か出来、世間に広まった。
そして、現在。
王城、大ホールにて。
「そこの花瓶には、青をメインに、華美すぎない様に飾ってちょうだい。
そう……その感じで!」
イルミア国王、ラカール即位二十周年、傭兵武闘大会の裏側で、今日、明日と二夜連続行われる、夜会の準備が行われていた。
今日、行われるのは、次代を背負う若者達をメインで、明日は、本番の全貴族が集まる夜会となっていた。
その為、準備を指揮するのはルリと、婚約者のウォルド、第二王子クロード達だった。
「姉上、ある程度、目処がついてきたので、後は
、私に任せて休んでください。
姉上、ほとんど休まれていないじゃないですか?
……あ、エリック公爵。
エリック公爵も、姉上と共に、作業終えられてください」
向こうで、作業を進めていたウォルドが、此方に来たついでに、一緒に休む様に薦める。
「……そう?
それじゃあ、そうさせて頂こうかしら?
ウォルド、そちらはどうかしら?」
「此方も、目処が立ちましたね……では、クロード殿下、お言葉に甘えて、休ませて頂きます」
「はい、では、また夜会で……あ、それは、此方に!
そうです」
クロードは、二人に挨拶し、再び、作業に戻った。
「……あの子、大丈夫かしら?」
「大丈夫だろ。
自分で判断したんだ……彼も、それなりに成長しなくては、クレイン殿下も困るだろう」
「そうね、信用して、休ませて貰いましょうか」
「ああ、そうさせて貰おう」
二人は、連れ添って大ホールを出た。
侍女達に、香油の入った入浴や、全身のマッサージを施され、ルリは、すっかりリラックスし、戻って来た。
「ふぅ……スッキリしたわ。
あら、何を見ているの?」
先に、戻って来ていたウォルドは、何やら、数枚の紙束を読みながら、ソファーで寛いでいた。
「ん?
ああ、今日、武闘大会本戦、各試合の結果の早刷りだよ」
「あら、どうだったのかしら?」
「見るかい?」
「ええ」
ウォルドの座るソファーまで行き、横に座り、ウォルドの手元の紙束を覗き込む。
「第一試合は……へぇ、兄弟対決だったのね?
結果は、弟くんか……兄弟揃って、中々の顔立ちね?」
試合内容の書かれた文に合わせ、映像を紙に写した顔写真も有り、其処には、兄に勝利し笑顔で、兄と握手している兄弟が写っていた。
「おや?
君は、そういう顔立ちが好みなのかい?
……少し、妬けるな」
「うふふ、何を言っているの?
分かっているくせに。
顔立ちが整っているのを好むのは、いつもの事でしょう?
それに、私の一番の好みが、貴方だって事も?」
「有難う……冗談だよ。
ちゃんと、分かっているさ……ただ、それでも、妬いてしまうんだよ?」
「それは、謝るわ……ごめんなさい」
「ああ、でも、私も、君に厭きられ無い様に頑張るさ」
「私もよ……」
二人は、見つめ合い、暫くして仲良く笑い合う。
落ち着いたところで、二人は続きを見る。
「第二試合は、どうかしら?」
「そうだね……っと」
ウォルドは紙を数枚捲り、確認しようとすると、手元から一枚、紙が抜け落ちた。
拾ったルリは、渡そうとした時、其処に写っている一人の少女がいた。
「……これは?」
その少女の顔を見て、ルリは目を開き驚く。
「どうか、したのかい?」
ウォルドは、ルリの異変に気付き尋ねながら、ルリの持っている紙を覗く。
「おや、可愛い女の子だね?
……っと、さっき私が、君にお願いしたのに、これを言っては駄目だね。
ルリ、ごめん」
「え?
あ、ううん……気にしていないわ。
だけど、ウォルド?
もう一度、この娘を見てちょうだい!
ねぇ、誰かに、似てると思わない?」
「え、そう……だな?」
ウォルドは、そう言われて確認し、考える。
「分かった!
王妃様に、似ているんだね!」
そう、紙に写されているのは、リシェル。
「そう、お母様に似ているの!
いえ、違うわ……似ているのじゃなくて、若くした、お母様そのもの」
色のついていない、顔写真は、リシェルが髪の色を変えていても、白黒のまま。
つまり、リサ王妃が写っているとも言い難かった。
「どういう事?
何でこんな娘が、写っているの?」
「分かった……この娘、第四試合に出ているんだ。
しかも?
槍聖アークに勝っているだって?」
「アークって言ったら……」
「そう、SSランクの最強槍使い」
「……何なの、この娘?」
二人は、暫く口を動かす事が出来ず、沈黙が降りた。
コン、コン、コン。
「「……ッ!」」
沈黙を破ったのは、部屋の外で待機していた侍女のドアをノックする音だった。
「失礼します。
クレイン殿下が、お目見えになられました。
……どうか、なされましたか?」
侍女は、二人の様子がおかしいと感じ尋ねる。
「……いえ、何でもないわ。
お兄様ね?
入って貰ってちょうだい」
「分かりました」
侍女は、ドアを開け、道を作り、クレインが入って来た。
「やあ、失礼するよ?
クロードに聞いたら、二人を休めさせたって聞いたのでね?
少し寄らせて貰ったよ」
部屋に入った、クレインは、二人が見ていたと思われる紙を見て、何となく、二人が何を考えているか理解した。
「その紙……そうか、丁度良いね。
君達、二人に話す事があってね。
父上達が待っているから、ついて来てくれるかい?」
「お父様が?」
「ああ、大事な事だ」
「行きましょう」
ウォルドは、ルリを見て頷くのを確認し、立ち上がった。
三人は、国王達が居る部屋へ向かい、通路を歩いている。
「父上達が居る部屋には、帝王レオハルト陛下も居られる。
決して、失礼の無い様に」
「帝王陛下が?
……分かりました。
何故かは、着いて話を聞けば分かるのね?
お兄様」
「ああ、そうだ。
私も今日、帝王陛下から、詳しい事を聞いた。
……心して、話を聞く様に。
ウォルドも、ルリと共に聞いて、ルリを支えて欲しい。
頼む」
「……分かりました」
やがて、部屋に着き、三人は部屋の中に入って行った。
クレイン達は、座る様にと進められ、それぞれに座る。
「二人共、忙しい中、来て貰って済まないな。
……エリック公爵には、ルリの婚約者として、また、クレインの側近として、聞いて貰いたいと思う」
「……お父様、それは、この娘の事について、でしょうか」
ルリは、リシェルが写し出された、先程の早刷りの紙を見せ問う。
「……うむ、その事も、含めてだな」
「では、やはり!」
「まあ、待て。
事は、順番にだな」
「しかし……」
ルリは、尚も食い下がる。
「……ルリ、落ち着け!
父上は、話さないとは言ってないだろう。
むしろ、お前が、邪魔しているぞ」
「……だって」
「ウォルドも、ルリを立てるのは構わないが、この場合、君は婚約者として、また、夫として止めなくてはならない」
ルリは、ウォルドが、自分のせいで注意された為に、冷静になりラカールに詰め寄る様に立ち上がっていたのを、座り直した。
「……ふふ、中々、情熱的なお嬢さんだな?
ラカール殿」
「……いや、情けないところを、お見せした」
レオハルトは、静観していたが、家族の中が良いのを羨ましく思ったのだが、ラカールは、娘のお転婆ぶりに汗が止まらなかった。
「いやいや、家族仲良く、羨ましい事だ。
ところで、話を戻そうか?
話は、私が……」
「いえ、今回は私が、話させて頂きます」
突然、聞こえた聞きた事のない声に、ルリと、ウォルドは首を巡らす。
「……初めまして、ルリ・イルミア。
並びに、ウォルド・フォン・エリック。
私は、帝国全土を守護し、歴代の帝王を見守り力を貸している。
神霊ミカエル。
これから、貴女達に、この世界の話をしましょう」
「「……」」
レオハルトの後ろに、姿を現したミカエルに、ルリと、ウォルドは王族、貴族らしからぬ、口を開けたまま、ミカエルの美しさに見惚れていた。
「ルリ、エリック公爵、失礼だぞ!」
「「はっ?」」
未だ、反応を返さないルリ達を、クレインは叱責し、意識を取り戻した、二人は膝をつき、王に対する臣下の一礼を無意識で取る。
「失礼致しました。
私、イルミア国王、第一王女、ルリ・イルミアにございます。
神に順ずる、神霊に対し失礼極わる態度申し訳有りませぬ」
「イルミア王国、エリック公爵家当主、並びにルリ・イルミア王女が婚約者である、ウォルド・フォン・エリック。
大変、失礼を致しました。
申し訳ございません」
「顔を上げて下さい。
私が、突然、姿を現した為に、余計な時間を取らせてしまった様ですね?
私に対する態度は、レオハルトと同じで構いません。
先ずは、椅子に座り直し、話を聞いて下さい」
ルリ達が、ミカエルの言葉に従い、座ったのを確認した時点で語り出す。
この世界の理、存在する意味、神々の間違った行い、人族と魔族、勇者と魔王、両族の戦いの意味の無さ、自分と同じ存在だったルシファーの神への反乱と敗北、リシェルの事、今代の勇者の事。
ルリと、ウォルドは、ミカエルが語る言葉に、声が出ない。
ミカエルが、語り終えると、ルリは震えながら、ミカエルに問い質す。
「今の……今の話が本当なら、何故、誰もが気が付かず、憎しみあっているのでしょうか?」
ミカエルは、答える
「戦の神と、法の神が、お互いを戦わせる為、意味も無く憎しみ合わせる法律を作った、からです」
「そんな……では、何故、今、私達は其れを理解し、貴女様の言葉を、信じられるのでしょうか?」
「神に順ずる神霊、又は、敵対する悪魔の言葉を聞く事、存在に触れる事により、神の定めた法律を拒む事が出来たのです。
魔族は、魔王であるミーザ・エスクードが、大悪魔サタンと契約し、また、周りには様々な悪魔と契約している者達により、魔族の殆どが神の支配を抜けています」
「並ば、何故、貴女様は其れを人族にしないのです?」
「……其れは」
「出来無いんだよ、ルリ王女」
ミカエルが、言葉に詰り返答出来無いと見た時点で、レオハルトが言葉を挟む。
「レオハルト……」
「ここからは、私が答えよう。
ミカエルは、ミカエルを作り出した神、創造神には、本来、逆らえないんだ。
ルシファーの反乱により、創造神は、他の神霊に強制を掛けた。
勿論、其れにはミカエルも含まれている。
だが、ミカエルは、ルシファーの反乱に共感していた。
だから、今も、ミカエルは創造神に抵抗している。
神の世界を離れ、初代帝王と契約し、帝国を作り、人族を変えようと努力した。
私達の様に、真実を話したりしてな。
だけど、戦争は起こり、歴史は何度もリセットされ、人族の記憶は消された。
だが、今、人族を纏める国。
帝国、王国、連合国。
その内、帝国と王国は、王が真実を知りこうして話し合っている。
そして、魔王率いる魔族も、この世界を壊そうとしている勇者である神を倒し、殺そうとしている。
どちらにせよ、今がチャンスなんだ!
だから、君達も力を貸して欲しい。
頼む」
帝王と、ミカエルは頭を下げる。
世界を守りたい為に……
「……分かりました。
正直、私達に何が出来るかは分かりませんが、お父様や、お兄様に力を貸し、一緒に世界を守りたいと思います。
ねっ、ウォルド?」
「ええ、私も、及ばずながら、手を貸したいと思います」
「有難う、よろしく頼む」
帝王と、ミカエルは再び、深く頭を下げた。
「さて、話が纏まったところで、ルリ?
そろそろ、夜会が始まる時間に、近付いてきたみたいだ。
準備、再開しようか?」
クレインが、様子と、時間を見て、ルリに時間を促す。
「え?
もう、そんな時間なの?
大変、急がなきゃ、ウォルド、行きましょう!」
「ああ、そうだな。
では、陛下、王妃殿下、帝王陛下、申し訳ございません」
「ああ、時間を取らせて、済まなかった」
「いえ、これにて、失礼致します」
「父上、帝王陛下、私も、これにて……」
「ああ、夜会、楽しんで来なさい」
「はい、では」
クレイン、ルリ、ウォルドは席を立ち、一礼をして部屋を出た。
「さて、ルリ、ウォルド?
悪いけど、其処まで一緒に付いて行かせて貰うよ?」
「仕方がないわね?
せっかく、ウォルドと二人きりで居たかったのに……お兄様たら」
文句を言いながらも、笑顔で部屋に向かう三人だった。
長くなると、私も、読んで頂いている方達も、大変だと分かりました。
今更ですが……
ので、話が割れる時は割ろうと決めました!
キラリ!
次も、少しでも、早く投稿出来るように、頑張ります。
ブクマ登録、評価点を入れて頂けると嬉しいです。
やる気も、出ます。
よろしくお願いします。




