5章 魔王城にて
出来ました。
前回より、かなり少ないです。
5章、プロローグ的な話です。
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勇者一味との対面の後、魔王達は、一度転移で魔王城に引き上げた。
「引き上げてきた、そうそうで申し訳ないが、今、有った事を、配下達に伝えたいと思うので、もう暫くは、お付き合いを願う」
通路を歩いている途中、擦れ違った兵士を呼び止めた。
「そこの君、手分けして、六魔将と、アミル・タンザナイトを呼んで来てくれるか?
後、人数分の軽食と、飲み物を用意も頼む。
場所は、大会議室だ。
よろしく頼む。」
「はい、分かりました。
魔王様」
頼まれた兵士は、一礼をし、その場を離れた。
「済まないな……精神、体力共に疲れているだろうが、配下には、そなた達の事を話しておかなければ、後々、面倒な事になるのでな……。
後、謁見の間だと、話し合いには向かないので、会議室でさせて頂く」
「いや、これまでの両族の関係なら、それは仕方の無い事だ。
此方こそ、気を使って貰い、申し訳ない」
イルミア王国、国王だったラカールが、代表で答え、頭を下げた。
「いや、頭を上げてくれ。
私は、出来れば、対等でいたい……会議室は、此方だ。
ついてきてくれ」
「……えへへ」
ミーザと、ラカールのやり取りを後ろで歩き見ていた、リシェルが嬉しそうに笑っていた。
「何だ、リシェル?
嬉しそうじゃん」
「えー、そりゃあ、嬉しいよ。
本来なら、仲の悪い両族の王様が、お互いを気遣って話しているんだよ?
それに、その両族の王様は私のおとうさんと、おかあさんだよ……凄くない?
この世界で、私だけだよ?
両族に、両親がいるの!」
「「……リシェル!」」
リシェルの言葉に、両母親が反応し、振り返り抱き締めようとする。
「ミーザ……嬉しいのは分かるが、今は、黙って会議室を案内しろ。
抱き締めるのは、後でな」
「うっ、分かったわよ……ザーツ」
「お前もだ、リサ」
「……分かりましたわ、貴方」
しょぼんとする母親二人を見て、声を掛けようとするリシェルを止め、ライがリシェルに言う。
「リシェル」
「……何?」
「お前が、嬉しいと言う、この状況はお前がその間に居るからこそだと思うぞ?」
「……私?」
「そうだぞ」
「~~~っ」
言われて理解した、リシェルは顔を真っ赤にして、前を歩いていたザーツの背中に、顔を隠す様にしがみついた。
「あー、ザーツ、ズルいぞ?
リシェル、しがみつくなら、私にしろ!」
それを後ろ目で見ていた、ミーザがザーツを非難し、リシェルに懇願した。
「そうです!
どうせなら、私にしなさい」
リサも、空かさず同じ事を言った。
「~~~」
リシェルは顔を埋め、隠しながら首を振った。
未だに顔を赤くし、嬉しそうにしながら……
「……なあ、親父?
ライって、本当に、俺の弟か?」
「……まあ、信じられんだろうが、そうだ」
「あれ、誰に似たんだ?
俺には、あんな事、流石に言えんぞ」
「鋭い指摘は、お父さんだと思うけど……あの性格はね?
誰とも、思い付かないわ」
ガイと、ルイの親子の会話に、キーシャも参加する。
元々、キーシャは、闇属性の魔力を持って産まれた人族で、ライの義兄姉のレイや、ランと同じく、ルイの義理の妹として、ガイが拾った最初の赤子だった。
闇属性の暴走を何とかしたくて、ルイは、ガイと喧嘩し、言い争いの末、キーシャを連れて、家を出て行った。
大悪魔アスモデウスと契約したルイは、アスモデウスの力を使い、キーシャの暴走を止める事が出来、結婚した。
今回、大会で、ライと出会い、ガイにも再会したので、戻って来れた。
だから、ここにレイと、ランが居れば本当のガイ一家が揃うはずだったが……レイ達は、数ヶ月前から家に戻らず、姿を見せなかった。
「本当、誰に似たのかしらね?」
「「「……」」」
ガイ達は、何も言えなかった。
あえて言うならば、ラーシャだったからだ。
故に、誰も言わない。
ラーシャが拗ねたら、後々面倒臭い事になるし、
怒らせたなら、ガイは惚れた弱味で、ルイ達は、子供の頃の記憶から、一番恐れているのだった。
「どうかしたの?
急に黙り込んじゃって?」
「いや、誰かな、と考えていたんだ」
「ね、誰かしらね?」
(流石、親父、ナイス!)
ルイ達は心の中で思った。
「……何か、こうして見ると魔族も、人族と変わらないな?」
最後尾を歩いている、帝都傭兵ギルド、本部長タイタン・ギガボルトは先を歩いている魔王や、国王達、ガイ一家のやり取りを見て呟く。
「そりゃー、そうですよ?
だって、この世界を作った神達は、お互いを憎しみ合う様に、見た目を変えただけで、両族の中身は同じですよ?
そりゃ、長い年月で、憎しみは、変わっていって、元々、何で憎しんでいるのかも分かってないんですけどね。
人族も、その様なものでしょ?」
タイタンの呟きを聞き、長年、人族に化け生きてきたルー・ルーセントの言葉に、ルーを見て思った。
(人族と姿を変え、人族を見て来ただけあって、重みがあるな)
「? どうしました?」
無言で、ルーを見つめ続けたのを、不振に思ったのか、心配して尋ねられた。
「いや……髪の色が変わっていて、若干、印象が違ってな?
後、性格も、其れが素か?」
「あー、そんな事は無いですよ?
状況していたのも、素です。
……ただ、今、魔王城に居るのが、信じられなくて、正直、ちょっと、緊張してます。
髪の色は、フォルネウスを召喚した時に、魔術による幻術が、解けたみたいですね。
元々の色はこうなんですよ?」
「良く似合っているよ」
「ありゃ?
私、口説かれちゃいました?」
ルーは、ほんのり頬を赤く染め、照れながら言った。
「ふふ、ワシの様な、爺に言われても困るよな?」
「いえいえ、十分魅力的ですよ。
ただ、本部長の若い頃からの浮き名が、有名ですので、半分で受け止めますね」
「浮き名ね……そこまで、浮かせたつもりは無いんだが?」
「有名ですよ」
「……そうか」
そう念入りに言われ、引き下がるしかなかった。
「着いた。
ここが、会議室だ、中に入ってくれ」
全員が中に入り、魔王が上座に、魔王の右側、部屋の奥には、国王、王妃、リシェル、ザーツ、本部長、ガイ、ラーシャ、ルイ、キーシャ、ライ、ルーと下座に向け座り。
左側は、これから来る者が座る事になっていた。
暫くして、焦りを含めた足音が聞こえ、会議室の扉が、勢い良く開いた。
「すみません、誰か、手伝って下さい!」
ノックもせず、突然、部屋に入って来た、アミルが焦りながら助けを求めた。
「アミル!
何だ、ノックもせず、入って来るとは、何事だ!」
「すみません、お叱りは後で受けます!
ですが、今は助けて下さい。
サウルの街がヤバいのです!」
突然の入室に、ミーザは、魔王として叱咤するが、アミルはそれでも助けを求める。
「……何が有った。
アミル、キチンと説明しろ」
「はい、有難うございます。
私は、イルミア王国の大会を、千里眼の魔術で見ており、この会議室にいる人族、イルミア国王夫妻や、ギルド本部長が、どういった立場なのかも知っております。
リシェルちゃんの準決勝の後の事も……。
それと同時に、サウルの街の事も見ておりました。
そして、今現在、サウルの街は王国の近衛兵により、襲撃を受けております。
襲撃の指導者は、天使に乗り移られた、イルミア王国、第一王女ルリ・イルミア、並びにその婚約者であるエリック公爵です。
……お願いです。
街の人々を助けて頂けないでしょうか?」
アミルは、頭を下げた。
「……どうして、貴女が、其処まで必死に頼むですか?」
国王ラカールは、魔族であるアミルが、人族の街を心配し、助けを求めるのか分からず尋ねる。
「それは……私が一時期、サウルの街に居て、お世話になったからです。
それに、私よりも、そこに居るガイさんのほうが、心配しているんじゃないですか?」
「……まあな、だが、俺だって街の全員が心配な訳ではないぞ?」
「ガイ……もしかして、貴方が〈英雄〉ガイなのか?」
「……そんな徒名は知らん!」
ガイは、尋ねたラカールから、顔を背けた。
「知らんが……仕方がない、行くか」
「おとうさん、私もサウルに行きたい」
リシェルが、ザーツの服を引っ張り、懇願する。
「アリアさんや、ギルドの人達、助けたい……」
ザーツが、リシェルを見てため息を吐いた。
「……リシェルは、ここに残っていなさい。
リシェルは、何だかんだと、疲れているだろ?
俺が行くよ」
「でも……」
「リシェル、お前の変わりに、俺が行くよ」
行く事を諦められないリシェルの変わりに、ライが立ち上がった。
「ライ……」
「任せておけって」
「うん、お願い」
「任せろ!」
「盛り上がっているところ、済まないが、ワシも連れていってくれないか?
いくら、街の住人と顔見知りと言っても、既にお前さん達が魔族だという事は、伝わっているだろう……なら、ワシも行った方がマシかも、と思うが?」
「……分かった。
だが、断って魔族領に来ない者は、見捨てるぞ?
此方とて、全てに余裕は無いからな」
この場の意見を聞き、ミーザは許可するが、残酷な事も言う。
そう魔王として、言わざるをえない。
「仕方あるまい……選ぶのは、自己責任だ。
後、ワシの事は呼び捨てで良い。
これから、暫く厄介になるしな。
肩苦しいのは嫌いだ、魔王殿」
「済まない、これから、そうさせて貰う。
では、サウルに向かうのは、アミル、ガイ、ザーツ、ライ、タイタンの五人だ。
それ以上は、認められない。
厳しいだろうが、アミルと、ザーツの転移で、少しでも多くの人族を連れて、勇者の邪魔をして来い。
此方は、受け入れ体制を、出来る限りしておく」
「分かりました。
魔王様、有難うございます」
「うむ、行くと良い」
「では、行って参ります」
アミルは、集まった五人で、サウルに転移した。
「行ったか……誰か、居らぬか?」
「はい、此方に」
ミーザが、声を掛けると、ドアの向こうで待機していた兵士に、先程の事を話し、受け入れの準備を急がせた。
「了解しました。
では、失礼致します」
兵士は、一礼し、部屋を出て行った。
「見事な、統率力ですな。
ミーザ殿」
「いや、ここまでに成ったのは、其処まで昔の事ではない。
最初は、なかなか、小娘と馬鹿にされた物だよ。
ラカール殿」
名前で呼ばれた事により、ミーザは同じく名前で呼び返し、魔王としての苦労を話した。
「失礼します。
お待たせ致しました。
軽食と、お飲み物をお持ちしました」
「済まぬ。
そのまま、給仕を頼む」
「分かりました」
魔族の侍女が、給仕し配り始めた。
「わあ、美味しそう。
おかあさん、食べても良いですか?」
リシェルは、お腹を空かせていたらしく、ミーザに尋ねた。
「良いよ、よく噛んで食べなさい。
でも、暫くしたら、夕食になるから、程々にね」
「うん、分かった」
リシェルは、テーブルに置かれた、食べ物を摘まんでゆっくりと食べ始めた。
それを切っ掛けに、他の者達も食べ始め、雑談をしていた。
(さて、本当にどうなる事やら……)
ミーザは、先程、サウルに行った五人に悪いと思いながら、一時の休憩を楽しんだ。
この5章は、今まで出てたのに、日の目に当たらなかったキャラや、新キャラを出そうと思っています。
当たらないキャラもいますけど……今の所、分かりません(笑)
相変わらずの、ほぼ即興な話し作りなもので……
それでも、続き気になる方、面白い?と思った方、よろしければ、ブクマ登録、評価点を入れて頂けたら、嬉しいです。
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