4章 10 準決勝第一試合、ライ 対 ブロッケン
出来ました。
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リシェルは、朝、起きて身支度し、下に降り食事をした。
今日は、ライとは別だ。
昨日、ライは言った。
「今日、宿に帰って、メシ食ったら、部屋に戻るだろ?
俺、準決勝は負ける気しねぇから、その時まで、別行動しないか?」
サウルの街を出てからは、大抵、ギルドに行ったり、宿で食事したりする時は、ライは離れず、側にいた。
珍しい事も有るものだ。
別に、ライが常に側に居ても、口を挟む事はしないし、絡まれる時は、ライが表立って庇って来た。
今日、大会が終われば、いつも通りだけど、何だか……変な気分だ。
昨日、リシェルの試合を見て思った。
一度、本気で戦ってみたい!
と……自分でも、分かっている。
それは、まだ、幼い頃、父ちゃんの元で、一緒に修行した時に、気がついた。
俺は、こいつに勝てない、と。
だから、練習相手以外は相手をしていない。
本気で戦った事が無かった。
で、レイ兄ちゃん達みたいに、落ち込んで、悩み、父ちゃん、母ちゃん、ザーツさんに相談して、落ち着いて、普通にリシェルと向き合う事が出来たんだけど……今度は、別の事が、浮き上がってしまった。
俺は、リシェルが好きなんだと。
だから、リシェルに勝てない、リシェルの方が強い事に悩んだ。
けど、だからと言って、リシェルを守ってはいけない事も無く、側に居て、守る事にした。
……あいつ、自分が可愛いとか、モテるなんて、思ってないんだよな。
んで、将来は美人になるだろうし(俺主観)
サウルを出てから、特にそう思った。
だって、十二歳の子供に、大人(男八:女二)が、リシェル目当てで、声掛けて来るし。
リシェルの実力が知れたら、知れたで、一層声を掛けて来る。
……まあ、俺が殆ど止めたけど。
そう思うと、あいつ、どっか抜けてるよな?
……おっと、そろそろ時間か?
今、俺はギルドでメシを食べてた。
リシェルに頼んで、昨日、宿に戻ってから、別行動にしてもらってる。
リシェルとの勝負に、集中したかったからだ。
ただ……リシェルの事を考えたら、あいつ一人にして、良かったのかな、と思う。
まあ、あいつを信じよう……
俺から、言い出した事だし、ここで戻るのも何だし、向こうで顔を見れば、不要な考えだと分かるだろ。
よし、闘技場に行こう!
……闘技場に着いて、リシェルを見かけた。
案の定、声を掛けられている。
あれは……女性だけの傭兵チーム〈カサブランカ〉だったか?
あの中の一人、リーダーのダリアだったかな?
見覚えがある。
あ、ちゃんと断った。
でも、しつこく勧誘している。
ん、今、何か変な事を言ったぞ?
誰に、聞いたんだ?
……行った方が良いか?
あ、引き下がった……大丈夫そうだ。
リシェルが、こっち見た。
手を振ってる。
安心した。
手を振り返し、この場を離れた。
試合が始まりそうだ。
実況のお姉さんが、舞台で話している。
行くか!
舞台に立って、暫くすると、対戦相手が来た。
二人が揃うと、実況のお姉さん、ルーが、試合前に、勝負の意気込みを聞いて来た。
「これから、準決勝が始まりますけど、意気込み、または、心境はどうでしょうか?」
「うーん……どうやって勝つかなー?
リシェルに?」
「え、いや、あの……リシェル選手は、次の試合で、ライ選手?
貴方の相手は、あそこに居る、ブロッケン選手なんですが……」
「んー、ああ、そっか?
今日の意気込みって言われても、リシェルの事しか、考えてなかったからなー」
ライが、惚けた様に、そう答えた。
「んじゃ、何か?
俺は眼中に無いって事か?
あ゛あ゛?」
ブロッケンが、ライの物言いに、キレそうになっている。
「眼中というより、存在?」
この言葉を聞いて、ルーは、うぁーって顔になった。
「てめえ……調子に乗るなよ?」
「ごめん、ごめん。
単に、忘れていただけなんだ。
許してよ?」
ライは、全然、悪いと思った顔をしておらず、簡単に、心から適当に言っている。
「てめえは、絶対に許さねぇぞ」
「別にいいけど、あんた、さぁ?
結構、裏で色々やってるだろ?」
「……どういう意味だ」
「そのままの意味だけど?
あんたの、昨日の試合はさ。
別にいいんだ。
直前に、決まった相手だしさ?
でもさ……今日、ここ来たらさ。
リシェルが、勧誘されているんだ」
「……」
「別に、それはいいんだ。
いつもの事だし、相手もいつも勧誘しに来る傭兵だったし?
でもさ?
いつも、大体、一回断れば、そいつら諦めるんだよ。
また、暫くしたら来るけど……でも、今日はしつこく勧誘しててさ?
その時にさ、変な事言ってたんだよ」
「……さっきから、何を言っている」
「まあ、聞いてくんない?
今日は、俺、リシェルと決勝で戦うつもりだからさ。
昨日、約束したんだ。
宿に戻ってメシ食ったら、距離置こうって。
だから、今日、リシェルと一言も、話してなくてさ。
その時見かけたのが、今日、最初なんだ。
なのに、そいつらこう言ったんだ。
『いつも一緒にいるアイツと、やっと、チーム別れたんだよね?
聞いたよ。残念だったね?
だからさ、私達とチーム、組もうよ』だってさ?
そいつら、誰から聞いたんだ?
てか、あんただろ?
ブロッケンさんよ。
確か、裏で〈チームブレーカー〉って、呼ばれていたっけ?
何だよ?
リシェルを惑わすなよ。
あんたも、リシェルと戦う気、満々じゃん」
「……チッ、よく分かったな?」
「あれ?
もう、認めるんだ?
……俺、あんたの事は知ってたからさ。
それに、リシェルを勧誘してた奴等は、見目麗しき女の子を、見つけては勧誘し、断られたら、あんたを使って、有る事無い事吹き込んで、チームを解散させ、引き寄せる。
……うーん、あんたらいい加減、そういうの辞めたら?」
「証拠は、有るのかよ?」
「ん、何が?」
「だから、証拠だよ!
其処まで言うんだ……さっき、俺が認めたのは、『リシェルと戦う気、満々』の所だ。
俺は、チームブレーカーなんて知らん!」
「……ふーん、そっか。
ルーお姉さん、これ、あげる」
そう言って、ライは自分の腕に着けている腕輪を外し、ルーに渡す。
「これって……アイテムボックス?」
「ちょっと違う。
入るのは、紙類だけ。
ギルド本部長に渡してくれる?
んで、俺、もう辞めるからって言っといて」
「……何だ、それは?」
ブロッケンが、自分を無視して、ライが、ルーに
渡した腕輪を見ている。
「ん、これ?
あんたの言う証拠?
並び、俺が集めた、色んな情報」
「なっ?
まさか、お前?
ギルドの情報屋だというのか?」
「元ね、元!
今、辞めたから。
因みに、情報屋は沢山いるよ。
俺は、サウルのギルドで頼まれたから、やってただけだし、他の人は知らないよ?
……お、やっと審判、来た。
ルーお姉さん、早く実況席に、戻った方が良くない?」
「え、本当だ!
ちょっとした、インタビューのつもりだったのに?
もう、何なのよ?」
そう言って、ルーはこの場を離れ、実況席に戻った。
それを阻止しようとブロッケンが動くが、ライが邪魔をする。
「くそっ!
こうなったら、お前だけでも」
「無理だし……審判、始めていいよ」
「はぁ……準決勝、第一試合、始め!」
審判は、何で毎回、試合前にこんな事になるんだ、と内心思いながら、試合開始の宣言をする。
『はぁ、間に合った!
さあ、準決勝、第一試合が開始しました!
今日も、実況は、私、ルー・ルーセントです!
解説も、勿論、この方達、傭兵ギルド帝都本部ギルド長、タイタン・ギガボルト本部長と、アンリ・マーガスさんにお越しして頂いてます。
よろしくお願いします』
『よろしく、頼む』
『よろしくお願いします』
『ルー嬢ちゃんよ、さっき舞台で預かった物、俺にくれないか?』
『あ、はい、これです』
ライから預かった腕輪を、本部長に渡した。
受け取った本部長は、腕輪を確認し、腕輪の装飾の石に触り、中から大量の紙を取り出した。
『わ、凄い!』
アンリが驚いている間に、本部長はその中から、先程のやり取りされていた内容を探し出し、読み込む。
『……これは』
『本部長?
ライ選手が、言っていた事は本当なんでしょうか?』
『ん、ああ、結論から、本当だな。
これは、結構な事になるぞ?
っと、ルー嬢ちゃん、こっちより、試合、試合』
『あ、そうでした!
試合のほうは、ブロッケン選手、そうとうキレてますね?
ハンマーを振り回しています!
それを、ライ選手!
避けたり、棍で受け流したりと、ブロッケン選手の攻撃を通しません!
それに、私の思い違いでしょうか?
昨日のリシェル選手の動きに、似ている様な気がします!』
『似てるどころか、一緒だ。
リシェルより、棍の動きが洗練されているな。
そういえば、幼なじみだったな?
同じ人物に習ったんだろう』
『なるほど!
それじゃあ、似てるのも、当たり前ですね!
おっと、ここで動きがあります!
ライ選手、ブロッケン選手の攻撃の合間に、反撃!
これは全て、クリーンヒット!
思わず、ブロッケン選手、膝を付く!』
『速い!』
『確かに、そうですね!
ここまで、攻撃が入って膝を付くのは早いです!』
『いや、そうじゃない。
単に、ライ自身の動き、棍の動き、全てが速い!』
『そう、ですね。
私も、殆ど目視が出来ません。
棍が通る線が見えるくらいです』
アンリが、じっと舞台で戦っている二人、特にライを見て呟く。
『ブロッケン選手、立ち上がり、構えを取った!
これは、昨日、盾の傭兵、ゼイン選手を倒した技の構え!
魔力が溜まっていきます!
昨日より、断然、多いです!』
『あいつ、相手を殺す気か?』
『それを見て、ライも魔力を溜め始めました!』
ドンッ!
『ライ選手、溜めた魔力を変化させました!
あれは……雷!
何と、ライ選手、光属性です!
身体中、雷で輝いています!
更に、再び魔力を溜め、今度は棍に魔力を集めてます!
棍が、魔力で槍、しかも、突撃槍の様な鋭く鋭利な槍に姿を変えました!』
『魔力具現変化……だと?』
『……魔力具現変化とは、何ですか?
本部長?』
『ああ、あれは元になる武器や、道具に魔力を溜め違う姿に変え、絶大な威力を与える魔具にする。
属性魔法じゃない、純粋な魔力による、魔法の極みの一つの姿。
今回は、槍だが、剣、斧等、その他様々な武器になる。
イメージが出来る限りだが』
『武器が、魔力次第で……』
『その時の状況に合わせ武器を変え、魔力の籠った武器であり、まさに千差万別!
故に、純魔力の極みの一つとなる魔法だろう』
『彼も、また、リシェル選手と同じくとんでもない才能の持ち主ですね?』
『……凄いのは、凄いが、どうかな?
ライの場合は、少し違う気がする』
『そうでしょうか?
私には、分からないです』
『あれが、リシェルの為なら、追い付く為の努力だろう。
勿論、才能も有るがな』
『なるほど、それなら分かります!
……そろそろでしょうか?
お互い、物凄い魔力が溜まったみたいです!
先程の件も有りますし、私、そろそろ、これを使いたいと思います!
毎度、お馴染み集音くんです!
えいっ!』
そう言って、ルーは集音くんを舞台に投げた。
「ふぅ、やっと溜まったぞ!
お前を殺す為の魔力が」
「あっそ?
じゃあ、来なよ」
「その余裕、後悔しろ!」
ブロッケンは、ゼインと戦った時の様に、体勢を低く、身体を擦るぐらいに走り、ハンマーを振る。
確実に、ライに当たるコースだった。
ライは、少し後ろに飛び退き避けた。
ハンマーが通り過ぎ、前回と同じく、ハンマーの当てる面とは、逆の面から炎が吹き出し、回転する身体の速さが増す!
二回目を攻撃を、ライに目掛け、ハンマーを振る。
ハンマーから吹き出す炎は気流を産み、辺りの空気を巻き込む。
そして、それはライも同じく、引き寄せられる。
ライは焦らず、流れに乗り、瞬歩でブロッケンに近寄り、槍と変化し、更に雷を纏わせた棍を、ハンマーが振り抜かれる前に、ハンマーの面、中心に突き出した!
結果……!
ハンマーは突き抜かれ、砕けた!
対し、ライの棍は無事だった。
砕かれた反動で、ハンマーに溜まっていた魔力が暴発し、ブロッケンは吹き飛ばされ、舞台を二度三度と跳ね、転がり立ち上がれない。
「な、何故だ?
何で、俺が打ち負けた?」
立ち上がれないが、ブロッケンはその倒れた体勢から、何が起こったのか問い質した。
「ん?
簡単な事だ……あんたの本戦一試合目でやった事に、合わせて、あんたの攻撃の力を利用した。
それだけだ」
「……どういう事だ?」
「呆れたな、あんた、あれ程の攻撃、何にも考えずやってたのか?
……つまりな、面と点の攻撃なんだが。
本戦一試合目で、攻撃の仕方は、どうあれ、土の壁という面に対し、あんたはハンマーという点で攻撃をした。
その為、攻撃を受けた土壁は破壊され、あんたは勝った。
今回は、逆だ。
あんたのハンマーの面に、俺の槍と化した棍で、突き破った。
あんたの引き起こした炎の気流と、攻撃の威力を利用してな」
「そのいう事か……だが、しかし、スピードに乗ったハンマーの面の中心に、そう上手く当てられるものか」
「あー、あれね。
あれは、あんたが最初、魔力を溜めてた間に、俺も魔力を溜めて、その後に使った魔法の効果だよ。
魔法の効果は、反射神経と、反応速度を上げる事」
「そんなはず?
それだけじゃ無いだろ」
「まぁね、後は、秘密だ!
自分のネタ、全部教える訳無いだろ?
万が一、真似されたら嫌だし!
ところでさ、動けない振りは止めて立ったら?
隙あらば、殴り掛かろうとしているの、分かってるし。
さっさと、諦めたら?」
「むぅ、そん、なわけ……いくか」
ブロッケンは、ふらつきながらも立ち上がる。
それを見て、ライは近付きブロッケンの間合いに入る。
「んー、早く終わらねぇ?」
「ぬかせ!」
ブロッケンは、右ストレートを出す。
「はぁっ」
ライは、かわし一本背負いの要領で、場外に投げた。
「準決勝第一試合、勝者、ライ・ハワード!」
『決まったー!
ライ選手、準決勝を勝ち抜きました!
いやー、なかなかの実力者、ライ選手、ブロッケン選手を簡単にあしらった感じで、終始、余裕と思わせる試合でした!』
『……うーん?』
『どうしました、本部長?』
『いや、ライの、あの技……棍を魔力で姿を変えた、魔力具現変化。
それと、もう一つ、さっき、ブロッケンが問い質した雷を纏ったあの魔法?
あれは、もしかしたら、とんでもない代物かもしれないと思ってな?』
『とんでもないとは?』
『ワシの想像が、正しければ、あれは〈零の極致〉と同じ効果が有るんじゃないのか?』
『え、それ、本当ですか?』
『まだ、想像の範囲を越えていないから、上手く言えんが、あの魔法は、反射神経と、反応速度を上げると言っていたな?
並ば、ライはどんな攻撃にも、反応し動く事が出来る。
これは、速いか、遅いかの違いで、よく似ていないか?
そして、次の試合の選手が、どちらが勝ち残っても、ライの相手となる以上、決勝で、ライのあの魔法は明らかになるな。
何故なら、次の試合、リシェルも、カム・ホークスも〈零の極致〉使う試合になるからな。
そうなれば、あの魔法と、〈零の極致〉の戦いになる。
楽しみだな』
『そうですね!
しかし、次の試合、準決勝第二試合は、本部長が仰有いましたが、〈零の極致〉を使う者同士の対決となりました!
あれ?
本部長、何処に行かれるのですか?』
『ん、ちょっと、野暮用だ。
次の試合までには戻る。
済まんな』
そう言って、本部長は実況席を離れた。
『そうですか?
では、次の試合が、始まるまで約三十分の休憩となります。
観客の皆様、暫くお待ちください!』
次の投稿は三十分後ではありません。
また、数日かかります。
後、いつも、説明的な内容でスミマセン。
m(__)m
書きたい事が上手く書けなくて難儀してます。
これからもよろしくお願いします。
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