4章 7 第三試合 カム・ホークス 対 ナユタ・カーリー
出来ました。
ブクマ登録、有難うございます。
まだ、色々とシンドイのですが……
少し短いですけど、頑張りました。
『……間もなく、第三試合が始まろうとしている大舞台の上には、既に、対戦する二人が向かい合っています!
双剣の美麗なる剣士、ナユタ・カーリー選手と、孤高の剣士、カム・ホークス選手!
この試合、二人の剣士、型は違えど剣での戦いには注目!
さあ、審判が上がって来ました!
間もなく、始まります!』
「……貴女の舞踊、一度、酒場で見た事が有る。
実に、魅了してしまう程の美しさだった。
まさか、この様な場所で、対峙するとは思わなかった」
「あら、そうでしたの?
嬉しいですわ。
でも、私だって、剣を握る者。
一度はこういう場所で、自分の実力を知りたいとは思うのは、可笑しいかしら?」
「そんな事はない。
それは、心理だ……ただ、困惑している。
憧れた貴女の剣技、そして貴女と戦う事に」
「でしたら、他の相手と同じ様に、戦って頂けるかしら?
私だって、女として手加減をされるのは、嬉しいですけど……この場合は、剣士として本気で戦ってもらえるかしら?」
「……分かった。
並ば、本気で戦おう。
お互い悔いの無い様に」
「ええ、よろしくお願いしますわ」
審判が、舞台に立ち、両者を確認、一言声を掛け、二人は構える。
ナユタは、身体は左側を前に出し、左の剣を前に、右を後方に向け、少し重心を落とし構える。
カムは、左足を前に、剣を両手に、腰元で構える。
所謂、正眼の構えである。
「それでは、第三試合……始め!」
まずは、先行として、ナユタが仕掛ける。
両手に持つ、それぞれの剣を縦横無尽に振り翳す。
カムは冷静に受け返し、体勢を崩したナユタに反撃する。
ナユタは、身体を反転させ、攻撃を避けて、再び数の剣撃を仕掛ける。
しかも、今度は単に剣を振るだけでなく、フェイントを入れ、突きも出し、剣を交差させたりと、様々な動きをする。
が、カムは迫り来る剣を弾き、フェイントに惑わされず、全てが、カムには通じなかった。
『カム選手、凄ーい!
殆ど、その場を動かず、数多の攻撃を凌ぎ、受け返し、一度も攻撃を通さない!
正に、剣の盾!
先程の第二試合を彷彿させる試合となりました!
しかし、何故、二本の剣の連続攻撃を、一本の剣で凌ぎきれるのでしょう?
ここは、本部長に聞いてみましょう!
本部長、お願いします!』
『ふむ……幾つか言える事は、先ずは、ナユタの剣が、鋭いが軽いという事だな』
『軽い、ですか?』
『そうだ!
片手で剣を振る事は出来ているし、対象を切る事も出来ているが、所詮は片手!
基本、カムは両手で構え、弾き返すから力負けはしない。
基本でどんな攻撃にも備える事の出来る構え、正眼の構えは、カムには不動の防御となるだろう。
彼奴は、剣を振り続けて来た男。
剣を振るというのは、単に対象を切る為に振るのではなく、目的にそって剣を振るという事だ!
彼奴は、常に想像しながら、剣を振って来たんだろう』
(……あの馬鹿と同じだな)
『はあ、まるで、槍聖アーク様みたいですね?』
『むっ、どうしてそう思った?』
『え、あの、昔、そういった話を聞いた覚えが……』
『む、すまん。
怖がらせたみたいだ……そうだ、彼奴は、アークとよく似ている。
アークも、五十年以上、毎日、何千、何万と槍を振り続けておる。
多分、今もそうだろう』
『じゃあ、カム選手も、このままいけば?』
『剣聖……と、呼ばれるかもな?
それに、ワシから見て、既に、片足を突っ込んでいるがな』
『本当ですか?』
『うむ、受けた剣で弾き返す際、ナユタの攻撃を、ワンテンポ遅れる様にしておる。
それと、彼奴の動き、零の極致に近い』
『零の極致、ですか?』
『うむ、どんな速い動きも、ゆっくり見える為に、対処出来る……らしい。
まあ、対処出来る動きが出来ない事には意味が無いがな。
それに、ワシも、アークから聞いただけだからな?
ワシの考えは、知的感覚による反応が変化したものだと思っておる。
故に、どんな攻撃にも対応し、対処出来る』
『剣や、槍を振り続けたら、零の極致を修得出来るのですか?』
『振り続ける意味は、振るのに無駄を無くす為だ。
知的感覚は、集中力による、一つの潜在能力の開花……迫って来る物を、見続けると止まって見える感覚が有る。
零の極致は、それを自分独自の世界なんだろう。
どんな感覚かは、ワシにも分からんがな?』
『……難しいですね』
『非常に難しい、な』
そして、再び試合は、二人は動き出す。
一旦、攻撃を止め、右の剣を突き出し、カムに問いだした。
「ハアハア……どうして?
どうして、全部、弾かれるの?」
「……残念だが、貴女の動きは、一度見ている」
「何時?」
「……さっきも言ったが、酒場で、だ。
ただ、言葉が足りなかったかもしれない」
「……まさか?」
「そう、貴女は酒場の舞台で、演技を終えた後、酔っ払いに絡まれた、仲間を助ける為戦った。
一応、助けようと動いたんだが、貴女に余計な手出しは無用と言われてな。
そういう事で、貴女の動きは大体、予想がつくんだ」
「……思い出したわ。
それ、二年近く前の、帝国の田舎町の事じゃない?」
「覚えているのか?」
「ええ……ああいう事は、頻繁に起こる事じゃないしね。
有っても、そんな事を言ったのは、その時くらいよ?」
「……そうか」
「今、それで、追い詰められているから、複雑だけど……有難う、礼を言わせて貰うわ。
それに、貴方。
あの時、影で、牽制とか、色々してくれていたでしょ?」
「……さて、何の事だ?」
「ふふ、そういう事にしてあげる。
……次、もう一度、攻撃を仕掛けるわ。
気付いているかしら?
さっきの試合とよく似ているわね。
勿論、只の悪足掻きよ?
だって、私、貴方に勝てそうに無いもの」
「……だったら、何故?」
「そうね?
私の意地と、観客席にいるお客様に、私の剣舞を魅せる為よ」
「……そうか、並ば、貴女の相手として、俺も特等席で魅せて貰おう。
此れでも、貴女のファンなんだ」
「あら、じゃあ……全力で魅せてあげるわ!
魅せて、防御も忘れるぐらいに」
「楽しみだ!」
その剣は確かに美しかった……観客は、歓声を忘れ、只、舞台で行われている戦いを見続けた。
聞こえるのは、剣と剣の交わる音。
剣が空を切る音。
二人が舞台を踏む音。
二人の呼吸音。
それ以外は、世界が音を出すのを恐れ、音を消した様な感じだった。
それを、打ち破ったのは、やはり、カムとナユタ。
舞台で戦っている二人だった。
カムの剣先は、ナユタの喉元を捕らえていた。
ナユタは、両手の剣を、両腕を下ろし、負けを認めた。
「勝負あり!
勝者、カム・ホークス!」
審判の勝者宣言が、闘技場に響き渡った。
『決まったー!
第三試合の勝者は、カム・ホークス選手!
正に、観客も、そして、私、実況を忘れるぐらいに見惚れてしまう、美しい!
実に、美しい二人の戦いでした!
……おや、二人が何やら、話していますね?
第一試合の事が有ったのですが……気になります!
ここは、集音くんを使いましょう!
もし、ヤバそうな事なら、また謝りに行きます!
えいっ!』
ルーは、舞台に向け、集音くんを投げた。
「ふふ、どう?
私は、観客を魅了したわ!」
「……ああ」
「でも……やっぱり、貴方には届かなかった。
それでも、私は満足!」
「見事、だった。
やっぱり、俺は、貴女の剣は美しいと思う。
貴女の、剣舞が好きだ」
「有難う!
貴方に、そう言って貰えて、嬉しいわ。
……私ね、私より強く、私の剣に理解を持つ男性が現れたら、思っていた事が有るのよ」
「あー、ちょっと待って欲しい!
あれ、見てくれ」
カムが、指を指した場所、空には胡桃サイズの黒い玉に双葉の芽が生えた物が浮いていた。
「何?
あれって……実況の?
確か、集音くんだっけ?」
「ああ、多分、今、俺達の会話が、あれで流れているんだろうな?
……聞かれても、気にしないか?」
「ええ、私は大丈夫よ」
「俺もだ……よし!」
カムは、顔を赤らめ気合いを入れた。
「それで、だ。
俺からも、貴女に伝えたい事が有る。
貴女が、良ければ……俺と結婚する前提で付き合って欲しい。
貴女さえ、良ければ、結婚してくれないか?」
「……嘘?」
「嘘じゃない」
「私も、同じ事を言おうと思ったのに……」
「だから、実況のアレで、間を挿させて貰った」
「……えと、その、よろしく、お願いします」
ナユタも、顔を赤らめ、返事を返した。
二人は舞台で頭を下げた。
『な、な、なーー?
もしかして、私の集音くん、利用されました?
ねぇ、利用されました?
誰か、誰か、えーーーーーー?』
『……落ち着け、ルー嬢ちゃん。
確かに、驚いたが、目出度い事だろ?
ここは、祝福してやらんか?』
『そうですよ!
ルーさん、良いじゃないですか?
私、憧れます!
羨ましいです!
『……そりゃ、私だって羨ましいですよ?
でも、何か、納得出来ないというか。
はぁ、とりあえず、結婚の約束を近い有った、二人に、カム選手とナユタ選手に、皆様、祝福を!』
何やら諦めた、ルーの実況で、少しずつ観客からの祝福の声と、拍手が聞こえ、最後には、闘技場を揺るがす祝福が、羨ましいと恨みの声も聞こえるが、響き渡った。
そして、それは二人が引っ付き合った状態で舞台を降り、姿を消すまで鳴り響いた。
『祝福の歓声、凄かったですね!
第三試合も終わり、次、第四試合が始まります!
この試合の勝者が、準決勝へ進む為の、最後の試合となります!
勝つのは、どちらだ!
最年少にて、美少女傭兵!
リシェル・シュザット選手!
対っ!
最年長にて、槍聖!
アーク・ジルベスタ選手!
休憩時間の後、試合が始まります!』
えーーーと、久しぶりに、ラブラブになってしまいました。
前書きにも書きましたが、ブクマ登録、ありがとうございます。
一人でも、登録されると嬉しいです。
まったく反応が無いのは、書いていて自信がなくなってしまいます。
と、いう事で、同じ理由で評価点を入れて貰えると嬉しいです。
一点でも反応が有ると、内容を頑張ったりします。
何も無いのが、一番辛いんです。
よろしくお願いします。




