4章 6 そして第二試合、開始
お待たせしました。
出来ました。
言い訳は、後書きで……
「大丈夫か、兄ちゃん?」
自身も、少しふらつきながら、ルイに手を差し伸べた、ライが笑顔で問う。
「……ああ、大丈夫だ。
しかし、強いなぁ、ライ」
手を握り返し、立ち上がりながら、嬉しそうに、ルイも笑う。
握りあっている手を離し、ルイは逆の手で、ライの上に持ち上げ伸ばし、観客達に勝者を讃える仕草で、ライをアピールした。
それを見た観客達は、先程の審判の宣告に続き、闘技場が震える程の喚声が響き渡った。
そして二人は、それを聞きながら舞台をおり、今後の事を、ライはルイに聞いた。
「そうだな、とりあえず、今日、最後、決勝まで見て、サウルに戻るよ」
「そっか、じゃあ、父ちゃん達に?」
「ああ、会う!
もう一度、親父に修行つけて貰うかな」
「じゃあ、その時、父ちゃん達から色々聞くと思うけど、頑張って!」
「……何だよ、色々って?」
「……ここでは、言えない。
言える事は、二年くらいしたら、世界が騒がしくなるって事かな」
「よく分からんが、帰ったら、分かるんだな?」
「そう」
「ふむ、じゃあ、次も頑張れよ!」
応援してるから、っと手の平を振り、今回、用意された自分の控え室に、ルイは向かった。
「ふぅ、流石に疲れたな」
ライは、ルイと別れた後、控え室に入り、手足を伸ばす様に椅子に座る。
「……兄ちゃん、か」
思い出すのは、年の近い義理の兄姉、レイとランの事だった。
「どうしてるかな?」
サウルの街を離れて半年以上になり、その間は、一度も手紙を出していない。
……代わりに、リシェルが出していたみたいだが。
そうリシェルは、元々、レイ兄ちゃん達に怒ってはいなかった。
落ち込んではいたが……
怒っていたのは、父ちゃんと母ちゃん、あの時、リシェルがギルドへ、チーム脱退の申し出に行った後、二人は物凄く怒られていた。
次の日に、リシェルと俺は、旅に出た。
その間、リシェルは、二人に一度も会う事なかった。
父ちゃん達が、合わせなかった為だ。
二人は、多分リシェルが怒っていると思っているかもしれない。
手紙も、兄ちゃん達に、見せていないかもしれない。
もしかしたら、兄ちゃん達も、旅に出ているかもしれない。
旅に出てから、一度も戻っていないから分からない。
あーだ、こーだ、と言ってないで、ルイ兄ちゃんに相談しよう。
そう決めたライは、立ち上がりルイのいる控え室に向かった。
「勝者、ライ・ハワード!」
審判の勝者宣告により、第一試合の勝者が決まった。
『決まりました!
最後に、立っていたのは、ライ・ハワード!
ライ・ハワード選手!
見事、勝ち残りました!
いやー、第一試合から、とんでもなく発熱した勝負でしたね?
本部長!
そして、アンリさん!』
『ええ、凄かったです!
剣と棍での、戦う技術!
正に、見事でした!』
『おお?
珍しく、アンリさんが興奮して居ります』
『え、あ、その……あれだけの戦いを魅せられたら当たり前です!
しかし、一つだけ、気になる事が』
『何がでしょう?』
『いえ、あれだけの技術、魔法に関しては、あまり使われなかったというか?』
『……それは多分、殆ど使う暇が無いのと、同じ人物に技等を習った事で、持っている武器は違えど、お互いに自分の実力を見せたかったからだろう』
『『なるほど』』
『さて、ルー嬢ちゃんよ。
言わなきゃならん事、有るんじゃないのか?』
『え、あ、そうでした!
観客の皆様、第一試合が終わりましたので、此れより、三十分の休憩となります。
次の試合、第二試合は、此れより二十分後となります。
その間に、お手洗い、各施設のご利用、売店のご利用等をお済ませ下さいませ。
また、当大会、闘技場係員からのお願いがあります。
各施設は、十分に設置しております。
きちんと例を作り、順番をお守り下さいませ。
また、売店等で、物を買い、その後に出たゴミは指定されているゴミ箱に、分別して捨てて下さい。
繰り返します。
売店等で、物を買い、その後に出たゴミは指定されているゴミ箱に、分別して捨てて下さい。
以上、当大会、闘技場係員からのお願いでした。
それでは、皆様、次の試合まで、お待ち下さい』
放送を止め、ルーは実況席を立ち上がると、本部長も合わせて立ち上がった。
「さて、行くか?」
本部長が、ルーをチラリと見て尋ねる。
「はい、行ましょう!」
ルーは頷く。
「? どこに行かれるのですか?」
そんな二人を不思議に、首を傾けアンリが尋ねる。
「ん?
いや、何、さっきの件でな」
「余計な事を、放送してしまったので、ルイ選手に謝りに行こうかと……」
「あ、では、私も」
「いやいや、アンリさんは、別に、悪い事をした訳では無いので、良いと思いますよ?
ねぇ、本部長?」
「そうだな、ワシが、ルー嬢ちゃんを唆し、事が起こってしまったんだ。
アンリ嬢ちゃんは悪くないぞ」
「でも……やっぱり、私も行きます!
二人を止めなかったので、私も悪いです!」
「……ふむ、好きにせい。
それじゃあ、行こうか?
時間が無くなるしな」
「「はい」」
三人は揃って、実況席を離れた。
暫くして、三人が戻って来た。
「ルイさん、直ぐに許してくれて良かったですね。
本部長、ルーさん!」
「うむ、そうだな」
「本当に……そろそろ、五分前です。
二人とも、宜しくお願いします」
「分かった」
「はい、分かりました」
二人が頷くのを確認し、ルーは、再び放送を始めた。
『あー、あー、テス、テス。
皆様、間もなく休憩時間、二十分が終わろうとしております。
が、安心してください。
第二試合の選手が、舞台の上に立ち、審判が来るまで、十分足らず有ります。
皆様、焦らず、自分の指定席までお戻り下さいませ。
また、自分の指定席が分からない、迷子になってしまった等、困る事が起こりましたら、鎧を着た兵士が係員ですので、事情を話して案内等をお求め下さいませ。
係員である兵士が対応致します。
繰り返し……』
観客が、ある程度、自分の席に戻って来た辺りで、第二試合の選手である、ゼイン・マークが現れ、少し遅れて、もう一人、ブロッケン・ビーバーが舞台に立ち向かい合った。
「よぅ、待たせたか?」
ブロッケンが、ニヤニヤと笑顔で、ゼインに尋ねる。
「いや、時間内だ。
十分、間に合っているだろう」
「そうか?
……しかし、楽しみだな?」
「何がだ?」
「いやー、守りの硬いあんたに、俺のハンマーがどれだけ効くのか?
と思うと、な?
楽しくて、楽しくて」
「そうそう、受け負けるつもりはない」
「だろうなぁ……だから、本気で行けるのが、嬉しいのさ!」
「それは、俺も楽しみだな?
お前の事は、噂で聞いている。
あまりの威力で、大抵の素材や、魔石が無駄になっているとな?
……今日は、それだけの一発勝負を望んでいるのか?」
「いやいや、折角だから、俺の大槌術が、あんた程の男に通用するか、試させて貰う!」
「そうか……そう思うと、確かに、俺も耐えられるか、どうか、楽しみになってきた」
「「フフフ」」
チラリと、ブロッケンが横に目を向ける。
「お、そろそろみたいだ?」
「そうだな」
審判が、舞台中央に立ち、選手、二人を確認。
一つ頷くと、声を大に宣告する。
「此れより、第二試合を始める。
両者、覚悟と用意は良いか?」
「ああ!」
「いつでも」
「それでは、第二試合……始め!」
今、審判による試合開始が宣言される。
『さー、始まりました!
第二試合、本部長、この試合の見所はどこに有るでしょう?』
『そうだな、この試合は、お互いの力の見せ所だな』
『見せ所、ですか?』
『そうだ、ブロッケンのハンマーの威力、対する、ゼインの防御力。
ゼインの防御力を、ブロッケンが突破出来るかどうか、これだろう!』
『なるほどー
アンリさんは、どう思われます?』
『私、ですか?
そうですね……本部長が威力と言うなら、私は技、技術力と言いましょうか。
ゼイン選手って、実は、只、攻撃を受けるだけでなく、攻撃を受け流すとか、裁くのも上手いんですよね。
ほら、あんな風に』
舞台の上では、ハンマーを振り回すブロッケンの攻撃を、片手で上半身を隠す大楯で裁き、受けては滑らして流し、避けていた。
『む?』
『どうかしましたか?』
『うーむ、どうやらアンリ嬢ちゃんの方が正解かもしれん?
アンリ嬢ちゃん』
『は、はい』
『ブロッケンの奴は、今はソロかい?』
『え、えーと?』
アンリは、手元の資料を捲り、ブロッケンの経歴を見た。
『はい、そうです』
『次、チームを組んでいたのは、いつまでだ?』
『最後は、二年前ですね。
その時はSランクみたいです。
その後、ソロになり、依頼を失敗し続けて、今のBランクになったみたいです』
『……そうか』
『……あの、本当にどうかなされました?』
ルーと、アンリは心配そうに、本部長を見た。
『いや、すまん。
全ギルドの長として、ブロッケンの行く末を心配しただけだ』
『行く末、ですか?』
『まあ、今は、未来の事を心配しても仕方ない!
今、行われている試合を楽しもうではないか!
ルー嬢ちゃん、仕事、仕事』
『あ、はい、失礼しました。
ブロッケン選手、今も尚、攻撃の手を緩めず、ハンマーを振り続けております!
が、ゼイン選手、此方も凄い!
あれだけの攻撃に対し、全くの無傷!
……おっと、ここでブロッケン選手、攻撃を止め、後ろに飛び、大きく距離を取った!
休憩でしょうか、それとも作戦変更か?』
『どうやら、作戦変更の様ですね』
『ブロッケン選手の次なる手は如何に?
ゼイン選手は、どう動くか?
目を離せなくなってきました』
この時、実況席、観客席に居る者達は、舞台から目を離せなくなった。
そして、この時、選手用に用意された観覧席に、ルイと共に、ライが現れ、リシェルの横に座った。
「今、どうなっている?」
「ライ、遅かったね?
今、二人の攻防、というか、ブロッケンの連続攻撃が、ゼインの防御に全く通用せず、今に至るところ」
「ふーん、じゃあ丁度、タイミング良かったな」
「そうだね」
「ライ、ライ!」
「何?」
「二人、仲が良いんだね?
もしかして、付き合っているのかい?」
仲良く話し合う二人を見て、ルイが尋ねた。
「な、何、言ってるんだ?」
焦るライに対し、
「違いますよ。
単に幼馴染です」
普通に返す、リシェル。
「ああ、そう何だ」
二人を見て、なるほどと思うルイだった。
舞台では、息を整え、先程より、深く力強く構えるブロッケン。
ゼインは、大技が来ると読み、警戒する。
「ゼインさんよ?
噂通りの実力だな。
全然っ、当たらねぇ……」
「そんな事は無いぞ?
此れでも、一杯、一杯でキツイ」
「……じゃあ、次は、俺の持つ最大の技で行くからよ?
受けきってみな!」
「……来い!」
体内で練った魔力を身体全体、またハンマー迄、巡り合わせ行き渡らせる。
更に、魔力が赤色に色付いてきた。
此れは、火属性の特性を持つ色合い。
当たれば、ハンマーの威力に、火属性の威力が重なるだろう。
それを、察知したゼインは同じく身体に、大楯に魔力を巡り合わせ、防御を固めた。
ブロッケンが地面すれすれに走り、ゼインに近付き、身体を拈り、両腕を最大限に伸ばし、軸となる足を地面に踏み込み、相手に当てる為の溜めた力を、一気に解放する。
「くぅ、〈大地魔法、地石壁〉」
ゼインは、ブロッケンの攻撃の威力を見て、魔法による防御を追加する。
構えた大楯の前に舞台から、分厚い壁の様な石壁を作り出した。
それを見て、ブロッケンは、ニヤリと笑う。
ブロッケンの一撃は……
「なっ?」
当たらず、石壁の前を通り過ぎて行く。
「火速」
ブロッケンが、そう呟くと、ハンマーの逆の側面から炎が吹き出し、もの凄い速さで一回転し、ハンマーが土壁に、ゼインに向かって再び牙を向く!
「しっ、くそっ」
完全に裏をかかれた、ゼインは焦る。
ドオォン!!
二度目の攻撃は石壁を砕く!
ハンマーの当たった瞬間、ブロッケンが仕込んだ第二の魔法、〈爆撃〉により、石壁は砕けちり、ハンマーを振り抜いた事により、爆撃の威力諸とも、砕けた石壁の瓦礫も含め、大楯を構えたゼインに振り掛かる。
ゼインは、全てを受けきれず、大楯も砕け、場外に吹き飛ばされた。
『おおっとー!
ゼイン選手、場外に飛ばされてしまいました!
この時点で、ブロッケン・ビーバー選手、準決勝進出!
次のコマへ進みました!
ゼイン選手は……立ち上がりました!
無事です!
瓦礫を押し退け、立ち上がりました!
いやー、頑丈ですねー!
流石、盾の傭兵!
しかし、それを吹き飛ばす、ブロッケン選手の一撃!
トンでもないです!
……本部長、先程のブロッケン選手の攻撃を、解説して頂いてもよろしいでしょうか?』
『……ふむ、まず、どうして、ゼインが飛ばされたのか?
それは、ゼインが虚を突かれたからだ』
『虚、ですか?』
『そうだ。
最初にブロッケンは魔力を、身体と武器に巡らせた。
それを見て、ゼインも魔力を巡らせた。
次に、ブロッケンは攻撃に出た。
ゼインも、攻撃に備え、防御を固めた。
力一杯な、しかし、それでは受けきれないと気付き、魔法で石壁を築いた。
が、ここでブロッケンは、攻撃をワザと外したんだ。
ここまでは、良いか?』
『はい……大丈夫です』
『攻撃を外された為に、ゼインは驚き、受けるタイミングを外された。
それでも、ゼインなら、次に備えられた。
が、またここで、ブロッケンは虚を突いた!
己の武器に二つ、いや、三つか?
一つ目、ハンマーに魔力を通し、強化した。
二つ目、ハンマーの逆の側面に、炎が吹き出し、もう一度の攻撃に、回転を加える事で、速度と、威力が上がった。
ここで、ゼインは、再びタイミングを外し、崩された。
三つ目、石壁に当たった瞬間、爆発した!
衝撃は、全てゼインに向かってな……その全威力と石壁の瓦礫に巻き込まれ、この結果だ。
以上だ』
『……あ、有難うございます。
いやー、凄く分かり易かったです』
『ただ、あれはゼインでなかったら、どうなっていたか?』
『ゼイン選手じゃ、なかったら?』
『大怪我ですまなかったな……』
そして、第二試合が終わり、第三試合が始まる。
前回、投稿日から3日間、引っ越ししました。
お金が無いので、車で何往復もして、疲れてヘトヘトしてました。
言い訳です。
これからもよろしくお願いします。




