4章 リシェル、イルミア王国に入国する
出来ました。
お待たせしました。
一番、難しかったです。
詳しくは後書きにて……
「はい、確認しました。
入国して良いよ」
「ありがとう」
山の様に高い外壁、その内、東西南北、それぞれに有る門、その北門で、私、リシェルと、ライは今日、イルミア王国に辿り着き、入国審査を受け、入国を許された。
サウルの街を出て、実に、五ヶ月と二週間が過ぎていた。
「……嬢ちゃん達、ちょっと良いかい?」
「何ですか?」
私達の、入国審査を受けもった兵士とは、別の兵士が、まだ成人していない私達達に、興味を持ったのか、呼び止めて尋ねて来た。
がっしりとした身体に、艶を落とした燻し銀の鎧、右目の上から頬まで走る傷痕、顎に生えた不精髭、厳しいが優しい目をした熟練の兵士だった。
「嬢ちゃん達、傭兵かい?」
「うん、……あ、はい、そうです」
「もしかして、サウル出身かい?」
「え、どうして?」
「いやいや、昔、一度行った時に、嬢ちゃんを見た事が有ってね……もしかしたらと思ったんだよ?」
「……おい、もう、行っても良いんだろう?
リシェル、そろそろ行くぞ!」
ライが、リシェルの腕を強引に引く。
「え?
ライ君、ちょっと、どうしたの?」
「良いから、行くぞ」
「ちょ、ちょっと、待って……?
あの、すみません。
連れが、こう言ってますので、失礼します」
「ああ、此方こそ、引き留めて済まなかった」
ライが、リシェルを引っ張って行く姿が、見えなくなるまで、熟練の兵士は見つめ続けた。
「似ておられる……」
「あ、あの、ランフォード教官殿?
どうなされました?」
「いや……少し懐かしくてな」
「は?」
「ふむ、済まぬが、行く所が出来た。
少し、この場を離れるぞ?」
「は、はい、お気をつけて」
ランフォードと呼ばれた、熟練の兵士はゆっくりと入場門を離れ王城に向かった。
「ライ君、いい加減にして、もう良いでしょ?」
リシェルは、捕まれていた腕を振りほどき、ライを問い詰めた。
「どういうつもりなの?」
「あいつ、あの兵士は危険だ!」
「何を言っているの?」
「あいつ、昔、サウルで、リシェルを見たって言ってた。
おかしいだろ?
今、お前はザーツさんに言われて、髪の毛の色を、白銀から茶色に変えているんだぜ?
何で、今のお前を見て、サウルの事を言えるんだよ?」
そう、リシェルはサウルの街を出る時に、王国に行くなら、髪の毛の色を変えなさいと、ザーツに言われ、この五ヶ月の間、茶色に染め上げ旅を続けていた。
「俺は、詳しい事は聞いていない。
でも、お前がこの国に、王国に何かあるという事は察している。
何か有ってからじゃ遅いんだぞ?」
「ごめん……そうだね、ライ君の言う通りだ。
ただ、さっきの兵士さんから、嫌な感じがしなかったから、つい……」
「はぁ、まあ、いいや……何か有るなら、また会うだろうな?
その時は、気を抜くなよ?」
「うん、分かった。
ありがとう、ライ君」
リシェルが満面の笑顔をライに向け、ライは顔を赤くしながら横に向ける 。
「とりあえず、ギルドに行って、大会の登録しようぜ?
……って、此処は何処だ?」
「何処だって、言われても?
まずは大通りに戻って、傭兵ギルド探すしかないね?」
「そうだな、そうするか」
二人は、ライが引っ張って来た道を戻ってギルドに向かった。
大通りに戻って、暫く、真っ直ぐに大通りを歩き、この国の王様達が住む、城が見えた辺りで、ギルドの見慣れた看板を見つけた。
「有った!
意外と、近くに有ったね」
「そうだな、早速、中に入ろうぜ」
「うん」
二人は、中に入り、受付に向かった。
この国のギルド指定の制服を着た、受付嬢に挨拶した。
「こんにちは」
「あら、いらっしゃいませ。
初めて見る方達ですね?
今日はどういう要件でしょうか?」
「えっと、まずはこの国に着いたという報告と、もうすぐ、行われる大会に出る登録をしたいんですけど」
「分かりました。
では、ギルドカードの提出をお願いします」
「はい」
リシェルと、ライはカードを、受付嬢に渡し、受け取った受付嬢は、本人確認の為、カードを見た。
「ありがとうございます。
……あら、貴方達、凄いのね!
貴方がBランクで、貴女がCランクって、今まで、沢山の傭兵を見て来たけど、僅か半年でCランク、しかも、こんな可愛いのに、びっくりだわ?」
「いや~、私の場合、私が傭兵になるって言ったら、私と彼の父親達が、しっかりと訓練をして、鍛えてくれたお陰ですね」
「そうなのね、あ、ごめんなさい。
傭兵武闘大会の登録だったわね?
貴方達、運が良いわ、登録、今日までだったねよ」
「え?
でも、大会開催日まで、まだ日にち有りますよね?」
「ええ、そうなんだけど、思っていたより登録者が多くてね?
今日で打ち切りにするって、三日前に連絡が、全ギルドに回ったのよ」
「そう何ですか?
良かった~、間に合って~、ねぇ、ライ君?」
「そうだな」
「じゃあ、登録するけど、二人共で良かったのかしら?」
「はい、お願いします」
「分かりました。
では、登録しますね……はい、出来ました。
カードをお返しします。
後、今大会の説明しますね。
まず、この王国で行われる事になったのは、国王陛下が国王になられて、二十周年の記念として、行われる行事の一つよ。
現在、約四百名程の参加者が集まっています。
初日に五十名のバトルロイヤルで勝ち抜いた者、一名が、次の日の本戦出場となるわ。
本戦の組み合わせは、抽選ね。
武器の使用は例外を除き一つだけ、例外は、投げナイフとか、数に頼る物。
魔法は即死する様な極大魔法等の使用不可、使った時点で失格です。
武器は彼方で説明して貰います」
説明の最後に、受付嬢が左方を示し、それに気付いた女性が手の平を軽く振っていた。
「以上かしらね、これが参加証明になるわ。
無くさないでね?
貴方、ライ君がDブロック、リシェルちゃんがAブロック、最初のブロックね。
闘技場だけど、今日、入国したのよね?」
「うん」
「どの門から入って来た?」
「えーと、北門です」
「そう、じゃあ、見ていないわね?
西門を出た、直ぐの所に闘技場が有ります。
当日は、選手受付に参加証明を見せれば、控え室に入れます。
観客席入り口と間違わないでね?
この紙に予定が詳しく書いてあるから、しっかり見ておいてください。
勿論、当日前まで、普通に依頼受けて頂いても大丈夫です。
此方での説明はこれぐらいかな?
予選、頑張ってね」
「ありがとう、頑張る」
「じゃあ、彼方で武器の事を聞いてね」
「はい、行ってきます」
二人は席を離れ、先程、手を振っていた女性の所に行く。
「いらっしゃい、待ってたよー。
早速だけど、説明するね。
武闘大会の武器の使用は一つ、その使用する武器を私に見せてくれるかなー。
私は、木工技師のアンリ。
見せてくれた武器を、形、重さ、バランス等、完璧にそっくりな木製の武器を作るよー。
私の風塵魔法でねー
だから、私に、武器を見せて?」
「もし、断ったら?」
「勿論、出られない!
だって、そういうルールだもん。
元々、特殊な武器の力を使わず、傭兵選手の技術と、魔法で戦う大会だからね。
私が作った木製武器だと、平等でしょ?
殺傷力も殆ど無いし?」
「なるほど、じゃあ、これでお願いします」
リシェルが取り出したのは、ミーザに貰った槍だった。
「あれ、リシェル?
リュートじゃないのか?」
「うん、最近、リュートばっかりだったし、せっかくの対人戦だから、勝っても負けても、技の練習になるでしょ?」
「なるほどな、俺はどうすっかな?」
「複数有るなら、しっかり考えたら良いよ。
で、貴方は、この槍で良いのかな?」
「はい、お願いします。
あ、でも、こっちの剣も頼んだら駄目ですか?」
「ごめんねー、人一つまでは、王国が出してくれるから、ただで良いんだけど、二本目、若しくは別のを作るには、一律、5,000G貰う事になってるんだー。
それでも良いなら、作るよ?」
「……じゃあ、槍を合計三本、剣を二本、お願いします」
リシェルは、20,000Gをアンリに渡し、お願いする。
「え、良いの?
私は、嬉しいけどー。
じゃあ、作るねー」
まずは、槍を一本作り、リシェルに渡された。
渡されたリシェルは、周りを気にしながら扱った。
「凄い……」
アンリ本人が、豪語するだけの事もあり、形、重さ、触り心地、バランス等が全て本物と代わらなかった。
「そりゃ、良かった、良かった~」
感動しているうちに、頼んだ分を作り終え、リシェルの反応を喜んでいた。
「で、そっちの君は、選び終えたかなー」
「……こっちで」
ライは、手甲脚甲と、鉄棍を持って悩み込み、最終的に鉄棍を選んだみたいだ。
「あー、もしかして、君が悩んだのは、手に持っているヤツ?」
「? そうだけど?」
「ごめん、ごめん。
もっと早く気がついてあげれば良かったねー。
それなら、一緒に作れるよ。
貸してごらんー」
「え、そうなの?」
と驚きながらも、ライは両方渡す。
「多分、この場合は認められると思うけど、一応、確認してね?」
「分かった」
「君は、一セットで良いー?」
「そうだなー、二セットで」
お金を出し頼む。
「了解ー」
暫くすると、頼んだ分が出来上がり、ライに渡された。
「……リシェルの言った通りだな。
これ、凄いわ」
「だよね、これなら日々の練習に最適だね!」
二人は頷き合う。
「おねえさん、ありがとう」
「いやいや、こちらこそ、ありがとうだよー。
毎度ありー、当日、頑張ってねー」
「うん、頑張る」
二人は、立ちあがり、ギルドを出て、今日から泊まる宿屋を探しに出た。
少し時間は戻り。
王城に向かったランフォードは、国王ラカールと、王妃リサに謁見を求め、王の執務室にて会っていた。
執務室には三人以外の人物は居らず、また音が一切漏れなく、盗聴等出来ない様に強力な結界が敷かれていた。
「陛下、並び王妃様、先程、北門にて、気になる人物に出会いました」
「気になる人物?」
「どういう事ですか、ランフォード?」
「はっ、昔、私が近衛隊長を辞めた時、陛下に、ある人物を探す様に頼まれた事を、覚えておられるでしようか?」
「うむ、勿論、覚えておる」
「私も、ですわ」
「……まさか?」
「はい、そのまさか、です。
髪の毛の色は、その時とは違っておりましたが、色を変えているのでしょう。
本人に、昔見かけた事があると言って、場所も伝えると、本人は驚き、連れの者は慌てて、連れ離れました故。
何より、幼き頃のお嬢様……いえ、王妃様と瓜二つでごさいました」
「……真実か?」
「はい、どうやら傭兵として活動しておられ、恐らく武闘大会に出られるとの報告を、先程、待っている間に部下から受けました」
「で、ランフォード。
お前から見て、その者はどうだった?
狂っている様に見えたか?
魔人となっておったか、どうだ?」
「私が見たところ、一切、その様なところは無く、また、天真爛漫で、素直な女の子でした。
ただ、一つ気になるのは、傭兵ギルドに登録されている属性が、火属性だったという事でしょうか?」
「一度、会って見たいが……もし、本人なら私を恨んでおるだろうな。
武闘大会に出ると言ったな?」
「はっ、間違いなく」
「その時に、私も観客席で確認するとしょう。
……リサ、大丈夫か?
お前には、辛いかも知れぬが」
「いえ、貴方様、大丈夫です。
私も、あの時は、気が着いた時には全て終わっていた故に、あの子を一度も抱けず、どう感情を出せば良いのか、分からないのです」
「そうか、そうだな……私も結局は、一度も目にせず、報告を聞いただけで命令を下してしまった。
今となれば、悔いしか残らぬ。
ランフォードよ」
「はっ」
「その子の名前は、なんという?」
「名前は、リシェル……リシェル・シュザットでごさいます」
4章の大体の流れは考えているのですが、
最初は全然、考えてなくて大変でした。
後、超ベタネタ、武闘大会!
ベタですが、これが一番、話の流れが活かせ易かったので、こういう展開にしました。
読んで頂いている方達に楽しんで貰えたら良いなと思います。
よろしくお願いします。




