3章 3 それぞれの思い、オーク討伐依頼の詳しい内容
出来ました。
読んで頂いている方、お待たせしました。
「……これは」
シーバイパーの屍体を見て、僕は愕然とする。
戦っていた最中は、意識を集中していたから、気がつかなかったけど、最初の地中探知から始まり、卵を潰す為の地面一帯を沈めた魔法、バイパーの動きを止めた火柱、剣に魔力を通した攻撃はバイパーの防御壁に阻まれ通らなかったが、二度目の地盤沈下、更に二度の火柱、傷ついたライを治療し、バイパーの体に大きな焼け後を残した炎の巨大槍、それだけの魔法を使っても平気そうにしている。
僕なら、あの最初の地盤沈下だけで魔力のほとんどを使い切るはずだ。
それに、父さんと、ザーツさんの元、七年修業したとはいえ、少し実戦しただけで、レアなオーガを倒せる事は普通ならあり得ない。
まあ、その本人は今は大泣きして、ランに抱き締められているが……
あ、ランがこっちを見た。
?、こっちを見る、ランの顔が何か伺わしい?
とりあえず、リシェルが泣き止むまで待つか。
……そういえば、ライを忘れてた。
レイが、バイパーの屍体を見て愕然としている。
多分、リシェルの底の見えない実力に恐れているのだろう。
私だって、前から思っていた。
今、私の胸元で泣いているリシェル、昔、ザーツさんが連れて来た赤ちゃん、同じ闇属性で親に捨てられた赤ちゃん、やがて父さんも母さんもリシェルを大切に見守っていた。
皆に愛されるリシェル。
私もリシェルは可愛い妹だと思っている。
だけど、同じくらい、リシェルが嫌いだった。
矛盾した思い、いつも苦しかった。
久しぶりに戻った街で、この子の誕生日を祝った。
私達兄妹の時より、盛大なお祝いだった。
ザーツさんが、渡した剣、凄く綺麗だった。
父さんが悪いというつもりは無い。
ああ、何だろう?
羨ましい?
疎ましい?
ああ、そろそろ離れてくれないかな?
何か……ムカつく。
その様な、二人の秘めた思いも気づきもせず。
それから数分が経ち、リシェルは落ち着き、ランから離れた。
「ごめんなさい、ラン姉さん」
「……いいよ、大丈夫?」
「うん、もう大丈夫。
ところで、このバイパー、どうやって持って帰ろう?」
ゴブリンや、オーガと違い、バイパーから取れる素材は沢山有り、魔石は勿論、肉や食材に、鱗は防具等に使われ、捨てる所がほとんど無い。
潰れた目や、焼けた傷周りの肉や鱗は、流石に使えないが、それでも取れる所は沢山有る。
それに解体しても、ランと、ライのアイテムボックスには入りきらず、影魔法の収納には入るが闇属性の事がバレるし、手詰まりだった。
「……そうね、とりあえず誰かがギルドに報告しに戻って、ギルドの人達に取りに来てもらうしかないかな?
ねぇ、レイ?」
「そう……だな、とりあえず、魔石だけでも取り出して、そうするしかないか」
レイは影から解体用のナイフを取り出し、魔石が有るバイパーの額に突き刺し、魔石を取り出し始めた。
「じゃあ、戻って報告に行くから、ライの事、頼む」
レイは取り出した魔石を持って街に戻った。
リシェルは、ライの治療を再開し、ランは放った矢の回収やバイパーが最初に潜んでいた岩場に行き、卵の様子を確認に向かった。
確認を終え、ランが戻った時には、ライが目を覚まし、怪我の確認をリシェルと共にしていた。
「卵は見たところ、全部潰れてるみたいだったわ。
あれも、職員が来たら確認してもらって貰いましょう」
「じゃあ、取れる様に引き上げた方が良いかな?」
「……そうね、リシェル、頼めるかしら?」
「うん」
今度は、リシェルが岩場に行き、地面に手を当て《無属性、思念魔法、念動》で、岩や卵を地面から動かし引き上げていった。
終わった頃に、レイがギルドの職員を連れて戻って来て、後の処理は職員に任せ、リシェル達は街に戻った。
戻ったリシェル達は、そのままギルドに向かい、ギルド長を訪ねた。
ギルド長に、もう一度報告と、オークキングの依頼を詳しく聞く為だった。
「おう、ご苦労さん、悪いが、粗方の事は聞いたが、もう一度詳しく聞かせてくれないか?」
「分かりました」
リーダーのレイが、バイパー討伐の内容を詳しく話した。
リシェルの魔法を一部隠して……レイは、リシェルの魔法を火属性として報告した。
バイパーの屍体に残った焼跡に関しては誤魔化し様の無い事だったので、街に戻る途中にリシェルに許可を取っていた。
すでに傭兵活動していた、レイ達三人はギルドに、レイが無、ランは風、ライは光と属性を報告していたので、焼跡の有るバイパーを見れば、リシェルは火属性と思われても仕方がないので、そういう事になった。
レイと、ランは闇属性、なるべく魔法は使わない様にして活動していたので、区別のつきにくい無と風としていた。
「なるほどな、何にせよ、バイパー討伐、ご苦労だった。
次は、オークキングだったな?
明日から、向かうのか?」
「そうですね……今日は帰ったら、ゆっくり休んで明日から向かいます。
が、その前に、オークキング依頼の事を情報を詳しく聞かせて貰えませんか?」
「くく、さっきと逆だな?
そうだな、その前にだ……」
そう言うと、ギルド長は部屋に盗聴を防ぐ、《無属性、結界魔法、防音》を掛け話し初めた。
「レイ、俺は、お前達の父親、母親が魔族だと知っている。
まあ、俺だけではなく、この街が、まだそこそこ大きな村だった頃、当時、村にいた村人や傭兵達はガイとラーシャが魔族だと知ってしまった。
……その顔、この話、知らなかったみたいだな?」
ギルド長は自分の話した事で、驚いた顔をしているレイ達を見て察した。
「そこからか……まあ、当時はな、村にいた傭兵は何らかの理由で、村に流れ、荒れていて村人に迷惑をかけてたんだ。
そんな傭兵の一人が俺だった訳だな。
それを収めたのが、同じく魔族領から流れて来た、ガイだった。
そんなある日、村に厄介な魔獣が現れた。
その時に、ガイ達夫婦が魔族だと知ってしまった。
だけど、俺を含め、傭兵や、村人はガイ達に感謝をしていたから、魔族という事を黙認した。
やがて、村は安全になり、時が経つにつれ、今の街まで発展した」
「そんな事が……」
「まあ、そんな名残でな?
ガイは今でも、はぐれた魔族が、この街に来たら橋渡しをしている。
勿論、人族に化けて、この街に住んでいる者もいれば、サーズの山の中に隠れて住んでいる者もいる。
ここからが、本題だ。
その隠れ住んでいる魔族が、オークキングが率いる、その種族の魔獣オーク達の集落を見つけたと報告してきた。
つまり、その集落、及びオークキングの討伐を依頼してきたんだ。
本来、この街にいる高ランクの傭兵チーム達で、討伐を依頼するのだが、魔族が関係しているからな、表だって依頼を出せなかったんだが……」
「そこで、僕達ですか」
「そういう事だ。
今回は、その魔族により、場所も、大体の数も分かっている。
オークキングを始め、ジェネラルやマジシャン等を含め、約二百匹近くの数がいるらしい。
改めて、聞くが、魔獣オークキングを含む種族、集落の全滅を依頼する。
受けてくれるか?」
「分かりました。
この依頼、改めて受けさせて頂きます」
レイは、皆の顔を見渡し、確認を取って依頼を受けた。
「ああ、そうだ。
この依頼を持って来た魔族。
明日の朝、ギルドに来る予定だから、その時に、一緒に向かってもらう事になる。
名前は、ギルバードだ。
悪いが、朝九時までにギルドに来た欲しい。
よろしく頼む」
「一緒に戦うのですか?」
「すまん、分からん……その魔族、ギルバードは気難しい奴で、その時にならなきゃ分からないんだ」
「……そうですか、分かりました。
じゃあ、明日、その時に。
皆、行こうか」
レイ達は立ちあがり、部屋を出ていった。
「……参ったな」
ギルド内で、傷薬等、明日に備え、買い揃えながら、レイが呟く。
「どうしたの、レイ?」
「いや、そのギルバードさん?
その人が一緒になったら、リシェルが火属性のみの戦い、場所によっては魔法が使えない状態になるな、と思って」
「……ああ、そうか、そうなるわね」
「え、どういう事?」
「さっき、報告した時、今日、バイパーと戦って、リシェルが炎魔法を使ったって言っただろ、そうなると、木の多い所や、洞窟内とか使えないだろ」
「何で?使えば良いじゃん?」
「だ~か~ら~、そのギルバードさんって、人がいたら使えないって、言ってるの!」
「……あー、そういう事」
「そういう事!」
「仕方ないよ、私が悪いんだし、皆には、悪いけど、明日は剣メインで戦うよ」
リシェルが、ランとライのやり取りを見ながら苦笑する。
「まあ、そうなるな……
でも、リシェル、悪いって事はないよ。
あの時は、あれがベストだったから」
「……うん、私も、そう思うんだけどね」
「もう、この話は終わり!
さっさと買って、明日の為に帰るよ」
「だね、じゃあ、支払って来る」
「あ、私も行くよ」
レイがカウンターに支払いに行くと、ランもついて行った。
支払っている時、何か、ランがレイに耳打ちしている。
「何か、言ってるな?
まあ、今日は疲れたし、二人が戻って来たら、さっさと帰ろうぜ」
「そうだね」
「あー、明日も大変だなぁ」
「頑張ろうね」
「ま、な~、お、帰ってきた」
「お待たせ、帰ろうか」
「おう、帰ろう!」
四人は、そう言ってギルドを出て家に帰った。
リシェルは、ザーツと食事をし、お風呂に入り、寝室で、愛剣リュートの状態を確認していた。
今まで、どんな能力が有るのか確認していなかったので、眠る前に調べていた。
《種類・魔法剣》
能力/成長:常時発動
腐蝕:常時発動
能力吸収:標的討伐時、発動
隠蔽:任意発動
熱源探知:任意発動
魔力硬化:任意発動
猛毒耐性:常時発動
まずは、成長から深く集中して確認した。
成長/付与師ザーツが、《影魔法、分身》を付与し、持主リシェルが魔力を通した事により、新たな人格が生まれた。
これからは、リシェルが魔力を通す度に、この剣リュートは成長する。
腐蝕/腐蝕師ザーツが魔法を付与した際、契約している大悪魔ベルゼブブが乗じて付与した。
切りつけた物は、そこから脆く腐らせて、相手、または武器等を弱体化させる。
能力吸収/ハーミット・ダーク・オーガの能力、吸収が討伐した際に、魔法剣リュートの成長に触れた時、リュートが覚えた能力。
討伐した格上の魔獣の能力を吸収する。
隠蔽/ハーミット・ダーク・オーガの能力、姿、気配を隠す能力。
能力吸収により得た。
使用、または、切った物を任意で隠す。
熱源探知/シーバイパーの能力から吸収。
魔法剣リュートを握っている時、姿を隠した相手等、温度で探す事が出来る。
魔力硬化/シーバイパーの能力から吸収。
魔法剣リュートに魔力を通し、剣、または持主リシェルを魔力で硬くする。
猛毒耐性/シーバイパーの能力から吸収。
持主リシェルが、魔法剣リュートを使用時、常に毒に対抗出来る。
「……凄い。
格上の魔獣を倒したら、まだまだ強くなるの?」
明日、出る前に、おとうさんに話そう、そう決めて、リシェルは眠りに着いた。
体調が悪いのと、忙しいのとで、なかなか書けませんでした。
よろしくお願いします。
皆さん、他の先生の作品とか、いつ読んでいるんだろう?
不思議です。




