2章 6 リシェルの休日
出来ました。
待っていた方も、待っていなかった方も
お待たせしました。
なるべく句読点を減らすように書いてます。
前の方が良かったという方はいるのでしょうか?
よろしくお願いします。
「う、ん、う~」
ベッドで眠っていた、リシェルが目を覚ました。
「……ここ、私の部屋?」
「目が覚めたか、リシェル?」
「おとうさん?」
ベッドから少し離れた場所で、気配を薄め見守っていたザーツに声をかけられ、リシェルはそちらに顔を向けた。
「どうだ、気分は?
昨日の事、覚えているか?」
「昨日の事?
……思い出した、私、昨日オーガと戦ったんだ」
「そうだ、街着いた後、リシェルは眠ってしまったんだ。
多分、魔力切れを起こしたんだな」
「魔力切れ?」
「ああ、リシェルは産まれながら膨大な魔力を持っているから、今まで魔力切れにならなかった。だが、今回、ミーザから貰った槍が思っていた以上に、魔力を吸いとったみたいだ。
威力は凄いが、とんだ欠陥品だ」
「そんな……」
「リシェル、持ち主に患いをもたらす武器は欠陥品だよ。
……リシェルが良かったら、旅に出るまでに俺が調整するが、どうだ?」
「……直せる?」
「やってみるさ」
「それじゃあ、お願い」
「ああ、それより、リシェル?
お腹空いているんじゃないか?」
「……そういえば、お腹空いたかも?」
「そうだろうな、昨日、あれから、ずっと眠っていて、もう朝だからな。
ご飯、用意してくるから、着替えて支度して置きなさい。
食べたら出掛けるから」
「分かった……でも、どこに行くの?」
「何だ、これは覚えてないのか、昨日、約束しただろ?
今日は傭兵は休みで」
「思い出した!
おかあさんの所に連れて行ってもらうんだった」
「……そうだ。
まあ、その前にガイの所に行くがな」
「急いで用意する!」
「出来たら、下においで」
「うん!」
ザーツが部屋出て、リシェルはベッドから飛び出した。
「おかあさんに会える」
リシェルは満面な笑顔で着替え初めた。
「そういえば、ガイおじさんの所に何をしに行くの?」
お互いに用意が出来て、朝食を取っていると、リシェルが、ふっと思い出したかの様に尋ねてくる。
「昨日のリシェル達かが倒した魔獣の報酬を、レイ達に任せて帰ってきたからな。
それを受け取りに行くんだ」
「……別に要らないのに」
「駄目だ……リシェル、これからも傭兵を続けていくなら、こういう事はしっかりとしなくてはならない。
例え、レイ達と続けていくにしても、他の傭兵と組んでいくにしてもだ。
でなくては、リシェルがナメめられる」
「……分かった」
「暫くは、レイ達に任せ、学べば良い」
「……そうする」
その後、ザーツは、キツかったかな、リシェルの為だ、とか悩みながら、気不味い食事をとる事になり。
やがて、食事も終わり、食器も洗い終わり、二人はガイの家に向かった。
「レイ、居るか?」
ガイの家に着き、レイを呼び出した。
「ザーツさん、リシェル、いらっしゃい。
中に、どうぞ、入って下さい」
レイが出て来て、ザーツ達を向かい入れた。
「ガイ達はいないのか?」
家の中に入り、気配を探ると、レイ以外の気配を感じなかった。
「ええ、今日は皆、出掛けています。
……ところで、リシェル、大丈夫か?
体とか、怪我してないか?」
レイが大人しいリシェルを見て、昨日の事を心配し尋ねた。
「……うん、大丈夫」
「そうか、良かった。
昨日、ザーツさんの背中で、全然起きないし、少し心配したよ」
「ありがとう、もう元気だよ」
「なら、良かった。
ザーツさん、今日は、昨日の報酬の事ですよね?」
「ああ、そうだ。
昨日は任せて、すまなかったな」
「いえ、僕も、昨日はあんな事になるとは思わなかったですし、本当、リシェルは初仕事で大変だったな。
それで、一応、アリアさんに報酬の振り分けを書いて貰いました。
こちらです、どうぞ」
ザーツは、アリアの書いた紙を受けす取り見た。
依頼報酬 アリア調書
ビックボア × 6匹 × 3,000G
=18,000G
ウルフ × 16匹 × 2,000G
=32,000G
ゴブリン × 43匹 × 1,500G
=64,500G
魔石、素材の合計金額 300,000G
414,500G
ハーミット・ダーク・オーガの魔石、角
合計金額 1,000,000G
「と、書かれている通り。
依頼報酬の4,500Gを除き、410,000Gを四等分し、一人頭、102,500G。
リシェルの初仕事の祝いとして、除いた4,500Gを足して、リシェルの依頼報酬107,
000Gと、オーガの金額100万Gを、昨日のリシェルの報酬とします。
よろしければ、受け取り、確認してください」
「ああ、それで良い」
レイがお金の入った袋を差し出し、ザーツが中身の数を確認した。
「確かに、リシェル、朝、言った事は、こういう事だ。
これから、リシェルも、しっかり教えて貰いなさい。
分かったかい?」
「……うん、レイ兄さん。
どうして、最初に4500Gを除いたの?」
「……普段なら除かず、そのまま四等分にするよ。
でも、そのまま割ると数字がややこしくなるからね。
今回はリシェルが、初仕事だったし、割れやすい数字で割って、お祝いとして、除いた金額をリシェルに渡したんだよ。
次回からは、普通に四等分するから、よろしくね?」
「そっか、分かった」
「……ザーツさん、朝、何かあったのですか?」
「いや、大した事はない。
報酬のやり取りは大事だと、教えただけだ。
これからも、リシェルに傭兵のあれこれ、教えてやってくれ」
「分かりました」
「レイ兄さん、よろしくお願いします」
「うん、よろしく。
あっと、そうだ。
リシェル、ラン達と相談したんだけど、僕達の事は、これから呼び捨てで良いよ。
勿論、普段はどちらでも構わないけど。
戦っている最中に、兄さん姉さんって呼ぶの面倒臭いだろ?
まあ、ライはいつも通りだけどね。
僕達も、その変わり、リシェ、って呼ぶけど良いかな?」
「私は良いけど……本当に良いの?」
「良いよ」
「んじゃ、戦っている時はそうする」
「さて、とりあえず、これで一応、必要な事は終わったな。
じゃあ、リシェル、行くか?」
「……うん、行く!」
「これから、どこか行かれるんですか?」
「ああ、リシェルを連れて、魔王城に行ってくる」
「魔王城ですか?」
「昨日、約束してな。
あ、明日から、またリシェルと傭兵仕事、頼んだ。昨日と同じくらいに行かせるから」
「はい、分かりました。
リシェル、また明日」
「うん、また明日」
「ガイ達によろしく」
二人は立ちあがり、ガイの家を去った。
「さて、ここから転移するのは、まずいから家に帰るけど、その前に、リシェル?
リシェルのアイテムボックスを買わないか?」
「私の?」
「そうだ、せっかくリシェルの報酬が入ったから、それで買おうと思っている」
「でも、私、影魔法、収納があるから大丈夫だよ?」
「まあ、今はな。
だけど、旅に出たら全部の属性を使う訳にはいかないだろ?
リシェルは、何の属性を使うつもりだ?
闇か、無なら別に要らないが、それ以外ならアイテムボックスを持ったほうが、誤魔化しやすいだろ?
人族は闇属性を持っていたら、おかしいからな」
「そう……だね。
そういう事なら買ったほうがいいよね?」
「ああ、リシェルの全属性は普通ならあり得ない。
まあ、普段からリシェルは注意してるから大丈夫だと思うが、旅に出て少しでも危険を減らすのは良い事だ。
だから、いつでも気をつけなくちゃ駄目だぞ?」
「うん、気をつける」
「おっと、着いた、この店だ」
剣や薬等、仕事に必要な物で取りやすくする為の小さなウエストポーチはリシェルの報酬から、旅に必要な替えの服や武器の手入れ道具等、持つのに嵩張る物を入れる為の背負い袋をザーツが買い、リシェルに渡した。
「全部、私の報酬からで良かったのに……」
「娘の旅の安全を望む親の気持ちだ、受け取ってくれ」
「……分かった」
「旅に、お金は必要だ。
無いに越した事はない。
だから、お金は後で渡すから分散して直して置きなさい」
「うん」
「じゃあ、お待ちかね、家に帰って魔王城に行くか」
「うん!」
リシェルはザーツの手を握り家に戻って、魔王城に転移した。
昨日と同じく、魔王城の門の前に着き、門番の兵士を驚かせた。
「また、貴方ですか、昨日、何も言われなかったので、驚くじゃあないですか?
どうぞ、お入り下さい。
おや、その子は?」
「俺の子供だ」
「しかし、人族の子供ですよね?」
「もう一度言う、俺の子供だ」
「失礼しました」
「すまないな」
「いえ、此方こそ、申し訳ごさいません」
ザーツはリシェルを連れて中に入った。
暫く歩き、魔王の部屋に着いた。
「ここが魔王の部屋だ。
中にミーザが居るなら、良いが」
ノックをすると返事があった。
「誰だ?」
「お、居た、俺だ、ザーツだ。
中に入るぞ」
そう言って、ザーツ達は中に入った。
「ザーツ?
それにリシェルも?」
「悪いな、連日で来て」
「いや、悪くはない。
無いが、驚くではないか?
今日は、どうしたんだ?」
「昨日、帰ってリシェルにズルいと怒られてな。それで、連れて来たんだ」
「おかあさん、お久しぶりです」
「ああ、リシェル……」
ミーザは近寄り、リシェルを抱きしめた。
「相変わらずリシェルは可愛いな……
元気にしてたか?」
「うん、おかあさん、会いたかった」
「私もだ。
そういえば、傭兵になったんだって?」
「うん」
「その事で、ミーザに言わなければならない事があるんだ」
「……何だ?」
「とりあえず、座って話さないか?」
「そうだな、リシェル、私の所においで」
ミーザは椅子に座り、リシェルを膝の上に乗せ、再びリシェルを抱きしめた。
「まあ、良いが、それで話とは……」
ザーツは、昨日有った出来事を話した。
「……そうか、リシェル、すまなかったな。
体の方は大丈夫か?」
「大丈夫!」
「しかし、あの槍を作った奴、どうしてくれよう……」
「それ、何だか、あの槍、俺に改造させてくれないか?」
「ザーツが?」
「ああ、あの槍が強力なのは間違いないからな、俺が改造すれば、もう少し使い勝手が良くなるだろう。
それに、作った奴を罰しても、リシェルが悲しむだけだからな」
「そうだよ、おかあさん、駄目だよ?」
「そうか、分かった……リシェルは優しいな」
そう言って、抱きしめ顔をすり合わせる。
「……さて、話しも終わったし、リシェル、帰ろうか」
「え~、もう~?」
「ミーザだって忙しいからな。
突然に来た事だし、戻った方が良いだろう」
「……何だ、ザーツ?
もしかして、私が、こうやってリシェルを抱きしめているのが羨ましいのか?」
「うっ」
「当たりか」
狼狽えるザーツを見て、ミーザは笑う。
「そうなの、おとうさん?」
「ち、違うぞ」
「おとうさんが、狼狽える?
珍しい、初めて見た」
「そうか?
案外、リシェルでも、よく有ると思うぞ?
単に隠しているだけで、格好付けだからな、ザーツは」
ミーザは、とても楽しそうにニヤニヤしている。
ミーザにとっても、ザーツがここまで狼狽えてるは初めて見たのだった。
「~じゃあ、暫くそうしていろ。
ちょっとダグドの所に行ってくる」
照れ隠しの為、ザーツは席を立ちドアを出た。
「おとうさん、照れてる」
「だな、私もあれ程照れてるのを見るのは初めてだ」
「そうなの?」
「うむ」
「「あはははっ」」
暫く、二人は何気ない事、普段の事、ザーツの事等、ザーツが戻ってくる時間まで喋りあった。
ザーツとリシェルは魔王城を出て家に帰ってきた。
「ミーザと、おかあさんと沢山話を出来たか?」
「うん、色んな事話したよ」
「そうか、良かったな。明日から、また傭兵仕事だ。
今日は早く寝なさい。」
「うん、そうする」
「ああ、眠る前に、槍を出してくれないか?」
「あ、はい、これ」
影魔法、収納から槍を取り出し、ザーツに渡した。
「旅に出る前日までには終わらせるよ」
「うん、おやすみなさい」
「おやすみ」
こうして、リシェルの休日は終わった。
ラブラブ親子、発動!




