2章 5 ギルドに報告
出来ました。
よろしくお願いします。
ドクンッと、剣が脈を打った。
そんな剣を、見つめたまま、おとうさんに尋ねた。
「おとうさん、この剣に何かの魔法、付与した?」
「ん?……ああ、何か変化あったか?」
「うん」
「そうか、思っていたより早いな。
付与した魔法は、幻夢魔法、分身だ
リシェルが、剣に魔力を通せば通す程、その剣は成長し、リシェルの相棒となる。
何か、変化があったなら、剣に問い掛けると良い。
何か分かるかも知れないぞ」
「問い掛ける?」
「ああ、リシェルのやり方でな」
「……やってみる」
少し考え、剣を顔の近くに持って来て、祈る様に目を瞑り魔力を通した。
《種類・魔法剣》
名称/ありません
能力/成長:常時発動
腐蝕:常時発動
能力吸収:標的討伐時、発動
隠蔽:任意発動(初)
「……見えた」
「そうか、何が見えた?」
「え~と、この剣、魔法剣だって」
「俺が、魔法掛けたからだな」
「名前、無いって」
「リシェルの剣、だからな。
リシェルが名付けてあげなさい」
「後、能力4つも有る」
「へえ、それは凄いな?」
「まだ、増えるみたい?」
「そうなのか?
何が有るのか、分からないが大事にしなさい」
「うん、おとうさんに貰った剣だもん。
大事にするに決まってるよ?」
「ふふ、ありがとう。
でも、リシェル?
リシェルが、この先に別の剣や、武器を見つけて、それを使っても俺は気にしないぞ。
要は、その時次第、要所、用途で使えば良い。
なんなら、二本、同時に使っても良い訳だしな?」
「うん、分かった」
「但し、どんな武器も使いこなせなければ、意味は無い。
しっかり能力を把握し、練習しなさい。
そういう意味では、その剣は、どんな能力が有るのか分からないが、この先大変だぞ?」
「……うん、頑張る」
「まずは、その剣に名前を付けてあげなさい」
「うん、分かった。
何にしようかな~?
……決めた、名前はリュート、この剣はリュートに決めたよ」
「……良い名前だな、この剣は成長する程、お前の力になる、頑張れ」
「うん
「それじゃあ、レイ達の所に戻るか」
「兄さん達、大丈夫かな?」
「ガイが向かったから大丈夫だろ。
……と、何だ、あっちが先だったか」
向かう方向から、ガイがレイ達を引き連れ、手を振りながら、向かって歩いている。
「どうやら、無事だったみたいだな」
ガイが、リシェルを見る。
「……何で、ザーツの後ろに隠れているんだ?」
「リシェルが相談も無しで、私達から離れたからよ」
「だって……」
「例え、その行動が、最善の手で、正しい事でも勝手は許されないわ。
……貴女がどれだけ強くても、私達より強くても、リシェルだけに物事を押し付けるつもりは無いわ」
ランはゆっくりと、ザーツの後ろに廻ってリシェルを抱き締める。
「……ラン姉さん」
「みんな、心配したんだよ……」
「ごめんなさい」
「しかし、リシェル、本当にハーミット・オーガを倒したのね?」
「ザーツさんが来た時には、もう倒してたのか?」
ライが、オーガの死体を見て尋ねた。
「まだ倒してはなかったが、リシェル、一人で倒したよ。
後、こいつは只のハーミット・オーガじゃない。その上位種、ハーミット・ダーク・オーガだ」
「上位種?」
「そうだ。
……みんな、揃ったし街に戻るぞ。
ギルドの連中、心配してるからな。
全員、俺にしっかり触れ、転移する」
「「「はい」」」
ザーツは、皆を連れて街の近くまで転移した。
「よし、ライ、お前先にギルドに戻って報告して来てくれ」
ザーツが街の門、近くに転移出来たのを確認し、ライに頼んだ。
「俺?」
「ああ、お前が一番、俺達の中で足が早いからな」
「分かった、行ってくるよ」
「頼んだ」
ライが走って門に向かったのを見て、次にリシェルを見る。
まだ、ランがリシェルを抱き締めていたが、リシェルが限界に近かった。
「ラン、悪いがリシェルを離してくれるか?」
「あ、はい」
ランが素直に離す。
「リシェル、乗りなさい」
そう言って、ザーツはリシェルに背中をみせ屈んだ。
「お前、もう限界に近いだろう。
良いから、背中乗りなさい」
「……うん、ごめんなさい」
そう言って、リシェルはザーツの背中におんぶされた。
「謝る必要ない、しっかり掴まってろ」
「うん、おとうさん」
「じゃあ、行くか」
ザーツはリシェルを乗せ、街に向かった。
暫くして、リシェルから寝息が聞こえた。
ギルドに着き、中に入りアリアのいる受付に向かった。
そこに報告を終えたライもいる。
アリアが、ザーツの背中におんぶされている、リシェルを見て顔を青ざめた。
「ザーツさん、リシェルちゃんは大丈夫なんですか?」
「ああ、疲れて眠っているだけだから安心してくれ」
アリアはそう聞くと、安心するように息を吐いた。
「良かった~、無事なんですね?
……ふふ、そうやってリシェルちゃんをおんぶして、ここに来るの久しぶりですね」
アリアは懐かしそうに笑う。
「そういえば、そうだな」
ザーツも笑う。
「……ザーツさん、先程は失礼をいたしました」
アリアが椅子から立ちあがり頭を下げた。
「先程……ああ、リシェルを心配してる、してないの話か?
あれは、別にその事でアリアを怒らせるつもりはなかったんだ。
ただ、自分に腹をたてていただげだから」
「それでも、私にあやまらせ下さい」
「……分かった、謝罪を受け賜りました」
ここで、話を切り、では、と話を変えた。
「先にライに報告させに戻らせたが、もう一度、報告と今日の依頼報告を頼む」
「あ、はい、分かりました」
「先ずは、レイ、依頼報告だ」
「はい」
ザーツは、レイと入れ替り後ろに下がった。
「アリアさん、お願いします。
ラン、ライ討伐部位出してくれ」
「「分かった」」
二人はアリアが置いたトレーの上に部位を乗せる。
「これは……また、沢山ありますね?
もしかして、まだ有ります?」
「実は……」
実に、トレー三枚山盛りに乗っている。
大体が、ビックボアの肉がメインだった。
「……凄いわね。
これ、全部あなた達が?」
「俺達は連携の時だけで、ほとんどはリシェルが倒しました」
「……嘘?
これ、ほとんど全部、リシェルちゃんが?」
「ええ、そのせいと言うか、おかげでと言うか、僕が調子に乗って、森の奥まで行ってしまって……
アリアさん、心配かけて、すみませんでした」
レイは頭を下げた。
「……そう、だったの、それで、そんな所まで行ってしまったのね?」
「はい」
「分かったわ、とりあえず、これ評価にまわします」
お願いします、と後ろにいる職員にトレー三枚渡した。
「それじゃあ、その後のゴブリン集団の話、聞かせてくれる?」
「はい、まず……」
レイは百を超えるゴブリン、それを追いかけて来たハーミット・オーガ、そのオーガが魔力の多いリシェルに目をつけ、リシェルが自分達からはなれオーガを連れ離れた事、残った自分達がリシェルを心配しながらゴブリンと戦った事、リシェルはザーツが助けに来るまで戦っていた事を話した。
「……そんな事が」
「因みに、俺はアドバイスと預かっていた武器を渡しただけで、リシェル一人で倒したぞ」
ザーツはレイの話に加え、受付机の上にオーガの角と魔石を置いた。
「ハーミット・ダーク・オーガの部位だ」
「え、ハーミット・ダーク?」
アリアの目が点になった。
「……ハーミット・ダークって、ハーミット・オーガの上位種ですよね?
それを、リシェルちゃんが、嘘ですよね?」
「……」
何も言わない俺を見て、アリアは落ち着いてきた。
「本当なんですね?」
「ああ、俺やガイ達とで七年間、ほぼ、休まず修行し続け、今日実戦の経験をした。
これからも実戦をし、更なる経験を詰めば十五歳になる頃には、俺と同じくらいの実力を持つ事になるだろう」
「……分かりました。
では、これも評価にまわしますね。
後、ギルド長に、この事を報告させて頂きます」
「まあ、そうなるな。
レイ、悪いが、俺からの報告は終わった。
報酬の確認、頼んでもいいか?」
「はい、良いですよ」
「では、頼んだ。
リシェルを家で寝かせくる。
明日は、リシェルは一日休ませる。
お前達もしっかり休め?
じゃあ、またな。
ガイ、今日はすまなかったな?」
「いや、良い、しっかり休ませてやれ」
「またな」
そう言って、ギルドを出た。
レイ達、傭兵チームに鑑定評価の終えた報酬を渡し、私はギルド長の部屋に訪れ、今日のにあった出来事を報酬する。
「こちらが、そのハーミット・ダーク・オーガの角と魔石です。
鑑定は間違いなく本物でした」
「そうか」
ギルド長は魔石を手に取って、色んな面を見る。
「その報告が本当ならば、十二にして凄まじい力を持った少女だな」
「信じないのですか?」
「……いや、ただ、その少女、リシェルか?
実力が本物ならば、これからもランクは上がって行くだろう。
確か、そのチーム、暫くしたら、この街を出て、活動するのだったな?」
「はい、そう言ってました」
「ふむ、……まあ、良いだろう。
リシェルのランクを一つ上げ、Eランクに。
また、そのチームが来たら、少し難度の高い依頼を進めなさい」
「分かりました」
「後は、そのチーム、街を出る前に一度この部屋に連れて来なさい、以上だ」
「はい、失礼します」
アリアは一礼し部屋を出て行った。
「あの親にして、か……」
もう一度、机に置かれた角と魔石を見てため息を吐いた。




