2章 2 リシェル、初めての実戦、そして……
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依頼を受け、サウルの街を出て、魔族領にある山、サーズ山、麓。
人族領との境にまで伸びる森の中、リシェル達は歩いていた。
「いた、ビックボアだ」
自分中心に魔力を広げ、標的となる一匹、ビックボアを感知した、レイは確認する様に、リシェルを見る。
「この先、向こう、50メートルにいる。
リシェル、用意はいいかい?
最初に言ってた様に、僕達は手を出さない」
ビックボアのいる、方向に指を差し、リシェルに告げる。
「う、うん、分かってる」
初めての実戦で、少し緊張している、リシェル。
それを見て、レイは優しく頬笑む。
「大丈夫、まずは、冷静に対処するんだ。
七年、ザーツさんや、家の親達から修行した事をすれば、どう、って事ないよ。
だから、ゆっくり深呼吸して、落ち着くんだ」
「……うん」
リシェルは、目を瞑り、ゆっくりと深く呼吸を繰り返す。
「うん、落ち着いた……行ってくる」
目を開いた、リシェルは、僕達の顔を見渡し、標的となるビックボアの方に向かった。
「……いた」
少し場所が、開いた所まで歩いた、リシェルは、ビックボアを見つけた。
静かに、腰元のベルトに挿した剣を鞘から抜き出す。
これは、昨日、おとうさんが、誕生日の祝いの時、プレゼントしてくれた、新しい剣。
今日の朝、いつもは、おとうさんと一緒に畑仕事をする時間を、今日は、手と身体に馴染ませる為に、素振りをした。
その感覚を、思い出す様に握りしめ、ゆっくり歩いた。
「ぴぎゃああっ」
ビックボアは、此方に気付き、一鳴きして向かって来た。
思っていたよりも、速く、真っ直ぐに、走ってくる。
リシェルは、冷静に観察し、ぶつかる直前、足を動かし、身体を捌きよけ、ビックボアの首もとに、剣先を突き刺した。
慣性で走り抜ける、ビックボアに剣が引っ張られない様に、直ぐ様、剣を抜く。
「ぴぎゃあっ」
走り抜けた、ビックボアは小さく一鳴き、悲鳴を上げ、途中で倒れる。
「……やった?」
倒れるのを、確認したリシェルは、小さく息を吐き、ゆっくりと、警戒しながら、ビックボアに近づいて行った。
「やったわね、リシェル」
「おー、一刺し~」
全て見ていた、三人、レイ達は同じく、ビックボアの下に近寄って、ランとライは、リシェルを讃えた。
「……うん、見事」
レイは、ビックボアの首もと、リシェルが刺した傷痕を見て確認し、リシェルに指示した。
「リシェル、良くやったね。
それじゃ、ビックボアの討伐部位の、下顎から生えている、牙を取ろうか」
「うん」
持っている剣についている血を、一振り落とし、鞘に戻した。
代わりに、右足太ももにベルトで固定している解体ナイフを、鞘から抜き出し、ビックボアの牙を取り除く。
「よいしょ、っと……これで、良い?」
「大丈夫だ。
……さて、反省点、と言いたいけど、特に無いね。
逆に、剣を、突き刺した後、直ぐ抜いたのは、良かったよ。
それに、ボアが倒れた後も、慎重に近寄ったのも良かった。
及第点、花丸だ」
「やった」
リシェルは小さく、胸元でガッツポーズをした。
「後は、数をこなして、実戦経験していくか」
「そうね」
「それと、もうちょっと、強めの魔獣とかで、オレらと連係の練習したら、いいんじゃない?」
「……そうだな、だけど、今日は依頼とってないし、このまま、リシェルの実戦を中心に。
もし、予定外の魔獣が出たら、フォロー、または、ランが言った様に、連係っていう事で」
「分かったわ」
「うん、それで」
三人で、この後の予定を決め、ビックボアの、その他の素材解体をしている、リシェルの下に向かう。
「……終わった。
こんな感じで、どうかな?」
リシェルの足元には、ビックボアの毛皮、各部位の肉、魔石に分けられている。
「……うん、上手に分けられているね。
ライ、これをアイテムボックスに入れてくれ」
「分かった」
ライが肩に掛けている、カバンに、リシェルが解体したビックボアの素材を入れていく。
その間に、レイが、再び魔力を広げ、魔獣の居どころを探す。
「よし、終わった」
「こっちも、分かった。
このまま、向かった所に、ゴブリンが数体いるね
リシェル、次は、あっちにいるよ」
「よ~し、頑張るぞ~」
リシェル達は、再び行動を興す。
討伐しては、調べ、向かい、また討伐と、リシェルは危なげなく、繰り返し魔獣を倒して行く。
ライに続き、ランの持つアイテムボックスも、一杯近くになった時点で、本日の討伐を終了した。
アイテムボックス。
ある無属性の持ち主で、空間魔法を使えた傭兵が、一線を離れ、サウルの街にやった来た元傭兵が 、鞄や袋に、空間魔法を付与し売り出した所、サウルの街を中心に爆発的に売れ、広がり、僅か数年で、元傭兵は大商人となった。
勿論、真似をする者も増えたが、元々、空間魔法を使え、更に付与まで使える者は少なく、商売する者は各地で一人か、二人くらいだった。
後は、傭兵をしていて、引退をすれば、商売をしている者に弟子入りし、商売を引き継いだり、まだ商売する余地のある場所で、商売を始めるという様になった。
また、粗悪品を売る者、詐欺をする者も増えた為、商売ギルドは、真っ当に商売する者達を引き入れた。
この事で、商売ギルドは、更に大きな組織となった。
ちなみに、ランとライが持っているアイテムボックスの鞄は二人が、それぞれ十二の誕生日に、ガイからプレゼントされ、500キロまで入る、サウル産の鞄だ。
「……何か、かなり、奥まで来てない?」
ランが、キョロキョロと周りを見渡し、レイに尋ねる。
「……あー、悪い、僕のミスだ。
調子良く、進んだから、リシェルに少しでも経験積まそうとして、周りまで見てなかったみたいだ」
「昼前に出て、まだ夕方になる前だもの、仕方ないわ。
それなのに、もう私達の鞄一杯だもの、順調すぎるわ」
「え、もうそんなに、貯まったのか?」
「そうよ?
……本当に、気づいてなかったのね」
「……悪い、それで、どれくらい討伐したんだ?」
「え~、と、ボアが六匹、ウルフが十六匹、ゴブリンが、今ので、四十三匹……」
「四十三?
……ゴブリン、多くないか?」
「多いと思う。
……これは、ギルドに報告したほうがいいかも?」
「そうだな、今日はこれで、切り上げて街に戻ろう」
「そうね」
ライとリシェルを見ると、今、倒したゴブリンの討伐部位を、取り終わったところだった。
「ライ、リシェル、今日のところは、これで終わろう。
……どうした、何か、あったか?」
ライ達に近づくと、二人は何を警戒していた。
「……レイ兄、何か変だ?」
「……向こうから、何か来る?」
「何だって?」
慌てて、魔力を飛ばし、二人が言う方向を、探ろうとしたが、その時、大量のゴブリン達が飛び出して来た。
「ギャッ、ギャッ」
「グギャ」
「ギャギャ、ギャッ」
何を言っているのか、わからないが、何か後ろの方を指差し、警戒している。
その数、百匹近く。
その内、一匹のゴブリンが、こちらに気づき騒いだ。
後ろと、こちらを武器を構え、警戒する。
「何だ、この数は?
ヤバいな……ここで、街に帰ると、こいつらも街に来るか?」
「ええ、そうね、やるしかないわ」
「……今日は、ほとんど、身体動かしてないし、調度、いいかも?」
「リシェル、大丈夫か?
……リシェル、どうした?」
今日は、戦い続けていたリシェルに尋ねると、リシェルは、まだゴブリン達が、出て来た方向を警戒していた。
「レイ兄さん、まだ、何か来る……」
「何?」
すると、少しずつ足音が近づいて来る。
やがて、姿を現したのは、一匹のオーガだった。
しかも、この辺でも珍しい、ハーミット・オーガ(隠匿の人食い鬼)だった。
「ハーミット・オーガ……何でこんな所に?」
「もしかして、この辺に、ゴブリン達が多かったのって、こいつのせい?」
「……何か、あいつ、こっち、というより、リシェルを見てない?」
「……見てるね、何で?」
「多分、リシェルの魔力量に、反応しているのかもしれない」
「リシェル、逃げれる?」
「……無理かも?
それより、あのオーガって、強いの?」
「強い、ランクで言えば、Cランク+ぐらいか?」
「……よし、決めた」
「リシェル?」
「兄さん達で、ゴブリン倒して。
私があのオーガの相手する」
「なっ、無茶よ」
「大丈夫、何とかする。
だから、なるべく早くゴブリン倒して、こっち来て」
そう言って、リシェルは私達から走って離れた。
「リシェル?」
「あー、もう、こいつら、来やがった!
こうなったら、リシェルの言う通り、さっさと片付けようぜ」
「……仕方がない、急ぐぞ」
「分かったわ、後でリシェル、説教ね!」
「そうだな!っと」
こうして、リシェルはオーガと、レイ達は百匹近くのゴブリンと戦う事になった。
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