幕間4 〈鋼百足〉のダグド 後半
出来ました。
この幕間 4は、幕間というより、裏話ですね。
よろしくお願いします。
11月23日、スペース、改行を増やしました。
「オズマ様、ザーツが魔族を裏切り、行方を眩ませた、ってどういう事ですか!」
オズマ様の執務室に入るなり、ザーツの事を問い質す。
「……何だ、もう耳に入ったか。
お前は、相変わらずに、ザーツを気にしているな?」
「あいつには、借りがあるのです。
それに、私はあいつの強さを知っていますから」
「ふむ、……そういえば、同じ魔王候補として、選ばれていたんだったな?
……ならば、お前に頼むとするか」
「……何を、でしょうか?」
「ザーツの居場所を探し出す、事をだ。
ただし、見つけ出しても、ザーツの話を聞き、連れ戻すも、戻さないも、ザーツの意見を尊重してやって欲しいが、お前の判断に任す。
結果次第では、適当に誤魔化して報告する」
「……良いのですか?」
「構わん、というより、陛下の周りがな……」
「ああ、なるほど」
「しかし、当てはあるのか?」
「ええ、一応は」
「そうか、ならば、やはり、お前に頼む事にしょう」
「分かりました。
用意が出来次第、向かわせて頂きます」
「頼んだ」
一礼をして、部屋を出た。
俺が、あいつならガインを当てにして、この街を目指す。
俺は人族に化け、サウルの街に入り、ザーツ、またはガインの魔力を探った。
見つけた。
まずは、ガインの気配を感じ、其処に向かった。
ガインがいた場所は、傭兵ギルドだった。
向こうも、俺に気がついたみたいだが、わからない感じだった。
二十年は経っているし、人族に化けているからな、仕方あるまい。
「久しぶりだな?
ガイン、俺だ、ダグドだ」
「ダグド!
お、お前か!」
「……その様子なら、ザーツもこの街にいるみたいだな?」
「ああ、ザーツを、連れ戻しに来たのか?」
「……いや、まずは、ザーツの話を聞いてからにならだな」
「そうか、なら、案内する。
ただ、俺も話に立ち会うぞ」
「わかった、それでいい。
案内してくれ」
「こっちだ」
指を差し、ガインは其方の方に歩き出す。
それを、俺は付いて行った。
「……ダグドか?」
ザーツは、こちらを見て、人族に姿を変えた俺を、すぐに気がついたみたいだ。
「ああ、久しぶりだな」
「オズマのおっさんに、言われて、ここに来たのか?」
「お前、おっさんって、ちゃんとオズマ様と言え!
馬鹿野郎」
「俺は魔族を裏切ったからな。
別にいいだろう?
まあ、会った時は、きちんと敬語をつかうよ」
「それで」
俺は、ザーツが抱き抱えている赤子を見て問う。
「その子が、件の赤子か?」
「そうだ、可愛いだろ?
リシェルと、名付けたんだ」
「ふん、ところで、それ、魔力巡回しているのか?」
ザーツが、リシェルに魔力を通し、リシェルの身体中が魔力を巡らしているのを感じた。
「よく、わかったな」
「まあな」
経験者は語る、と言うやつだ
「それで、お前はどうしたいんだ?」
「オズマのおっさんは、何て言ってた?」
「お前の意見を尊重してやれ、と」
「そっか……悪いが、俺は戻らない。
この子、リシェルを、ここで育てるよ」
「わかった。
そう、オズマ様に報告する」
「……いいのか?」
「ああ、ただ、陛下が動いたら、その時は知らんけどな?」
「……ミーザ、あいつも怒っているだろうな」
「俺からは、直接会う事ないから、どうと言えないが、オズマ様は、陛下は色々あって、周りを静観する方針に決めたらしいと、仰ってた」
「静観……なるほど」
「わかるのか?」
「おそらく、自分の周りを草分けするつもりだろう」
「草分け?」
「ああ、自分に対して、どう動くとか。
あいつは、こう思っているのだろう。
『私を魔王と扱っているのは、表向き首部を下げていても、裏ではどんな顔をしているやら』とかな?
これを、オズマのおっさんに言っといてくれるか?
あの人なら、わかってくれると思うから」
「わかった、伝えておこう。
で、だ。
お前は、そのまま、ここに居て、戻らないという事でいいんだな?」
「……ああ、そうだ、済まない」
「構わん、俺もオズマ様と、同意見だからな。
その代わり、陛下が動いたら、その時は」
「わかってる、オズマのおっさんにも、よろしく言っといてくれ」
「後、連絡用に、俺の使い魔、置いておく」
俺は、小さな百足を召還した。
「……ちゃんと使える様になったんだな」
「覚えていてくれたんだな」
「……まあな」
ザーツは、小声で言ったが、聞こえた言葉が嬉しかった。
「それじゃ、戻るとするか。
何かあったら、その使い魔に、俺の名を言え。連絡出来る様にするから」
「ああ、わかった。
またな」
「と、いう感じで、結果、ザーツは戻って来ないと、いう事になりました」
魔族領に戻り、オズマ様に報告をすませた。
「そうか、ご苦労だった。
そうだな……今日は、自分の部隊に寄って、引き継ぎをし、明日から三日間、休みを取るといい」
「はい、ありがとうございます」
報告を聞いた、オズマ様に休暇をもらったのだが、オズマ様は報告の時も、仕切りに肩を押さえ、首を回す動作を繰り返す。
「……オズマ様、どうかなされたのですか?」
「ああ、すまん……気を悪くしたか?」
「いえ、どこか、お身体の調子でも悪いのですか?」
「うむ、お前に調査に向かった間にな、俺の部隊とアギの部隊で、楽園の森に合同演習に行った後くらいからな?
どうも、身体の調子が悪くてな?
俺も、もう年かな……」
「何を、仰います、まだまだ十分、お若いですよ。
でも、無理だけはなされないでください」
「ふふっ、ありがとう」
「では、これで失礼致します」
「ご苦労だった。しっかり休むように」
「はい、それでは」
一礼をして部屋を出た。
自分の部隊部屋に向かう途中、前方から、同じ六魔将のアギと出会った。
「おや、ダグド君じゃないか?
久しぶりだね、どこか、行ってたのかい?」
「ええ、オズマ様に頼まれた事がありまして、少し出ておりました」
「そうだったのかい、お疲れ様だったね。
もしかして、明日から休暇かい?」
「ええ、そうです、頂きました」
「それじゃあ、こんな所で、立ち話してたら悪いね?
これで失礼するよ、では、また」
「はい、ありがとうございます。
では、失礼します」
出会った時から、アギの魔力に違和感を感じたので、アズが、姿が消えるまで見送っていたが、最後までわからなかった。
五年後、とうとう魔王陛下が動いた。
陛下を見下していた、重役、側近の秘書等を牢やに入れ、見張りを立て、六魔将を連れて、ザーツの下に向かった。
ガインと共に、我らの所に現れた、ザーツは、陛下と話し合った。
陛下は叫び、怒り、うつ向き、涙を落とし、ザーツを求めた。
ザーツは、自分の考えを話し、まだ、戻れないと主張した。
ザーツは、平地全域に結界を張り、ザーツが救い出した赤子、リシェルの話を、陛下にした。
勇者が現れる……
今までに無い、激しい戦いになる、と、ザーツは言う。
ザーツは、陛下と共に戦い守る為、リシェルを鍛え、陛下には、勇者、その裏にいる神々達と戦う為、大悪魔と契約した者を探す、約束を交わした。
ザーツは、天使に取り付かれたアギを、切り殺し、オズマ様にも、切りかかった。
死んだアギから、白い煙みたいなものが出て来た。
あれが、天使だと言う。
そして、オズマ様にも、取り付いていると言う。
ザーツが、オズマ様に話す。
オズマ様は、笑い、自分の胸元、心臓に指を差し、ザーツに殺せと言う。
理由を悟った、ザーツは素早い動きで、オズマ様の胸元を突き刺した。
オズマ様に取り付いていた、天使が現れた。
ザーツは闇魔法で、二体の天使を捕縛した。
暫くして、オズマ様は蘇った。
あっという間の出来事だった。
ザーツが、成長したリシェルを連れて来た。
リシェルが、陛下におかあさんと言って、陛下が狼狽している。
狼狽している陛下を見て、リシェルが泣きそうになり、抱き締めて、おかあさんだよ伝えている。
何て、ほのぼのとした風景だろう。
だが、そんな風景を壊すような、力が帝国の方角から感じ、皆がそちらに顔を向けた。
勇者が現れた。
ザーツの言った通り、とんでもない戦いになりそうだ。
次回、もう一度、幕間入ります。
勇者メインで書こうかと思ってます。
相変わらず、ノリと流れで書いてます。
次回、長くなるか、短くなるか、分かりません。
よろしくお願いします。




