50話 魔界にて
魔界の中心にある大きな城。
そこの円卓には悪魔計5体が座っていた。
「女王リザはまだ帰っていねぇがよォ。 先に話し合い始めちまおうぜェ?」
「……そうね」
悪魔の王候補達は儀式を終えると、悪魔の王と共に魔界の重要なことを決める立場になる。
需要なこととは何か?
それは──
「人間を滅ぼすか、否か」
その一つである。
悪魔は自由奔放であり、基本的には烏合の衆だ。
その悪魔達に対して法を作ったところでなんの意味も持たない。
最低限のことを決めるのがこの円卓である。
その『最低限のこと』というのが人間達との関わり方なのだ。
前提として悪魔は人間を滅ぼせるのかという話だが、可能だと考える悪魔が大半だ。
魔界にいる悪魔の数は具体的にはわからずとも、とても多いことは確かである。
そして、魔法を使えば全体へ指示を送ることはできる。
もし、王が人間を滅ぼすと言えば、下級から中級悪魔達は祭りだと言って参入してくる。
悪魔全員で人間界へ攻め入り、憑依、契約を片端から行い暴れれば少なくとも滅茶苦茶にはなるだろう。
逆に王が人間には関わるなと言えば、下級悪魔はビビったり、わざわざ関わる悪魔はそうそうでてこない。
勿論、例外はあり、興味本位で人間世界へ降りるやからもいるが。
「滅ぼすのは反対ね。 まず、人とはもうあまり関わりたくないもの」
最初に意見を出したのは、二階堂薫と契約をしていた悪魔、サーニャだった。
彼女は後悔していた。
なぜ、人間は『想い』を抱え込むのだろう。
そう思った。
やりたいことはすれば良いじゃないかと思った。
が、薫の背中を押し復讐を完遂させた結果があれだ。
薫は死に、サーニャ自身も王になれず仕舞い。
しかし、王になれなかったことへ対して薫への怒りはなかった。
ただただ、ぶつけようのない後悔だけが残っていた。
「私もはんたーい! サーニャとは正反対の理由だけどね。 人間とは仲良くなれるよ!」
これは黒木暗子と契約していた悪魔、カノの意見だ。
カノは暗子に別れを告げられなかったことに強い後悔を覚えた。
すぐにでも彼女に会いに行きたったがそうはしなかった。
彼女は今、魔界のトップである。
彼女が席をはずしている間に人間世界を滅ぼすという話になる可能性もある。
それは絶対阻止せねばならない。
だから、我慢しなくてはならない。
そして、もしかしたら。
もしかしたら、暗子が会いに来てくれるかもという小さな小さな希望が胸にあった。
「俺は、そうだな。 人間に興味が湧いた。 人間はこのままにしておきたい」
桐川絶と契約していたガルバはそう言う。
ガルバは桐川絶と契約し、一緒にいたことで人間という種に対して興味を持っていた。
「俺ァ、もう人間はどーでもいいぜ。 関わりたくねぇ。 あんなのはもうこりごりだ」
「……私も」
石動通の契約したアークマイン、日野秋菜と契約したシェロも声をあげる。
アークマインは通の死を経験し人間と関わりたくないと思った。
シェロは秋奈の行為を見て、人間に恐怖に似た何かを覚えた。
妹というたった一人のためにどんな犠牲も厭わないという精神を理解できなかったからだ。
「とりあえず5人が滅ぼすのには反対ね……」
「まあ、最終決定はリザが戻ってからだなァ」
5人の悪魔が人間とは事を構えないという姿勢をとった。
これは、偶然ではない。
悪魔が人間を滅ぼすという決定に至ったことは今の今まで一度もないのだから。
もちろん、王とその候補の悪魔が儀式を終え魔界へ帰ってから、人間を滅ぼすという意見を出したという事例もない。
それは簡単な話で、悪魔が人間と契約すれば悪魔は変わるからだ。
悪魔は人間と契約することで、人間から理性を得て、少しだけ人間に近づく。
その過程で、どこか感情的になったり、稀に人間にしか使えない魔術を使えるようにまで変化してしまうケースも存在するたいう。
その変化を得て悪魔が至る結論は人間は滅ぼすべきではないというものだ。
なぜ、そう思うか。
それは悪魔それぞれだ。
例えば、人間に近づくが故の親近感であったり、人間に近づいて分かる人間への恐怖。
最初に人間世界へ降り立った悪魔もそういった感情を持ち帰り、人間を滅ぼすべきではないとそう言ったのだった。
それ以降、王という魔界の長を決める際、儀式として必ず人間と関わりを持たせるのが通例なのだ。
これは人間に対する認識を改める意味もあるが、悪魔を束ねるのであれば、理性を持っていた方が何かと都合が良いというのもある。
だから、悪魔の王を選ぶという行為に人間を関わらせるのだ。
そして、人間は悪魔に影響を及ぼすとはいったが、その逆。
人間は悪魔の影響を受けるかという問題。
こちらも受ける。
契約した人間は理性の鎖が緩み、自分のしたいことを実行するというケースが多々ある。
そして、このケースは溜め込んでいた欲望を解放するため、悪魔の思っているより派手に、暴れることが多い。
それを見て悪魔が人間を恐怖する例もあり、それが人間と事を構えないというパターンにもなり得る。
しかし、これは人間を狂わせているのではなくあくまで背中をポンと少し押しているだけ。
人間とはそういうものだ。
理性で縛られている分、悪魔よりも大きく強い『想い』がある。
「……人間ってなんなのかしらね」
「「「「全く」」」」




