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Sabbat・Servant(サバト・サーヴァント)  作者: ゆにろく
6月4日 月曜日
6/61

5話 『武装』

◆サーニャ◆


「で、『武装イスティント』ってのはなんなんだ?」


尋ねてきた男は黒髪で目付きが鋭い男だった。

名を二階堂 薫というらしい。

昨日契約したばかりの私の契約者だ。

昨日は契約を済ませた後、薫は酒が回っていたせいかすぐ寝てしまった。

なので儀式についての詳しいところを薫宅で確認をしているのだった。


「ええ。 その説明をしなきゃいけないわね」


契約と憑依で異なるのは2点。

憑依はこちらが一方的に人間の主導権を奪うものだが、契約は悪魔と人間を対等とし、人間へ悪魔の力を渡すということ。

2つ目は契約の場合、人間の『想い』を具現化した魔法の武器『武装イスティント』を発現させる点だ。


「『武装イスティント』は薫、あなたの『想い』を武器にする。 まあ多分、人を殺すのに特化したものでしょうね」


「どうやればでる? 今、俺には見えてないだけであるのか?」


「──開け」


「っ……!!!」


武装イスティントの管理は、悪魔の手にある。


◆二階堂 薫◆


「……『大熊 《グリズリー》』」


それはこの手に握られたどす黒い刀身の大きな──1m40cmほどか?──大剣の名前だ。

そう直感でわかったのだった。

その切れ味は出現した際に破壊したテレビを以て実証されていた。

振り回せるのか? こんなもの。

と思いつつ、重さはあるが片手でその大剣を持っていることに気がついた。


「良いじゃない。 どす黒く大きな殺意が、憎しみが、わかりやすく反映されてるわね」


「これが俺の『武装イスティント』……」


「『武装イスティント』は魔法の武器。 その武器に施された特殊な力。 自分でわかるかしら?」


大熊グリズリー』は斬る、叩き潰すということに優れた武器ということは見ればわかる。

しかし、見た目からではわからない能力がこの大剣にはある。

俺は発現した瞬間から理解していた。

当たり前だ。

俺の『想い』の発現なのだから。

その能力ちからは───


◆リザ◆


私の契約者はどこかおかしい。

この優しそうな顔つきをしている──人間的にいえばイケメンという奴──小早川誠だ。


契約の適正を調べるのに視るのは、まず生まれつきの契約者としての才能。

そして、秘めた『想い』。

ここで言う『想い』とは欲望であったり、恨みなどの感情、etc。

悪魔は本能のまま好き勝手に生きるが、人間は本能や想いを理性で閉じ込めて生きているという。

それを見るわけだ。


彼には契約者の才も充分あったが

『想い』が他の人間と比較にならないほど大きかった。

人間の『想い』は大きいやつに限ってネガティブな感情、良からぬ欲望という事が多い。

感謝はすぐに忘れても恨みは一生忘れないみたいなもので、ネガティブな方が大きくやりやすく、溜め込みやすい。


しかし、彼の『想い』は目映く輝いていた。


光って見えたそれは何かポジティブな想いから生まれたことを表している。

私は取り敢えず声を掛けることにした。

正直、契約してくれるかは微妙なところだった。

それもそのはず、こんなに明るい『想い』を持った人間が殺し合いの提案に快諾するか?


うーん、ビミョー。


若干の不安を持って誠の前に現れたが、意外に快諾。

謎が深まるばかり。

この人間は何を考えているのだろう。

部屋の中もあるものは必要最低限といった感じで娯楽といえるのはテレビくらいではないだろうか。

誠という人間が更に掴めず謎は深まるばかり。


しかし、『想い』の明るさから少なくとも善人というのは見てとれた。

だから、いじわるして聞いてやった。

「人を殺せるか?」と。

少しの時間をおき、彼は「殺せる」と答えた。

彼がその答えを口に出したとき、


彼の光は一瞬も揺らがなかった(・・・・・・・)


あの顔、あの目、嘘は言っていない。

つまり、彼はポジティブな『想い』を持ったまま、人を殺せると言ったのだ。

つまり、彼の『想い』。

何か信念のようなもの。

それためならなんでもできる──人を殺せるほどに。

そこまでに純粋でまっすぐな人間。


ねじが飛んでる。


やはり悪魔は人間とは相容れない。

そんな歪んだ『想い』(・・・・・・・)は理性のない、本能のままに生きる悪魔からは生まれない。


◆小早川誠◆


「さて、どうやって探そうか。 他の契約者」


午前9時、第一次作戦会議を行っていた。


そして、他の契約者をどうやって見つけるか、それが気になっていたのでリザに問いかける。

日本全土、世界規模じゃないだけマシだが、東京と言えど契約した6人を見つけろと言われてもかなり難しい。

あなたが契約者ですか? と聞いて回るわけにもいくまい。


「そりゃね、悪魔には悪魔を見つけるレーダーが備わってんの」


「レーダー」


「そそ。 悪魔の強さによって規模は変わるけどねー」


「リザはどのくらいの規模なんだい?」


「ざっと半径1.5km。 その範囲内に契約者が入ればかなり正確に場所がわかる」


1.5km。

案外見つかるもんなのかな?

いやきつくない?


「期間は別にないからダイジョブよ、それに契約者同士は案外会えるもんなのよ。 なぜか」


「そうゆうもんなのね。 でも、まだ6人の契約者がいるかはわからないんでしょ?」


「ま、そーね。 でも、すぐ出揃うわよ、どーせ。 あんま後だしだと他の契約者が闘いなれしちゃって勝ち目なくなるしね」


「あー、それもそうか」


「で今日はどうするの? 平日だけど、ガッコ―とかバイトいくの?」


「いや、今日からは本腰を入れる」


昨日バイトに行ったのは、今月はでれないという連絡をするためだ。

割と人が足りている職場なので俺が欠けても回るとのことだった。


「その意気」


「取り敢えず、できるだけ人多いとこに行って張り込みしようか」


「それが良んじゃない?」


狂暴なやつはしびれを切らすとなにをするかわからない。

こちらから積極的にコンタクトをとって、相手を見極める。


闘いが避けられないなら、そのときはこの『大鷲イーグル』で……。


◆カノ◆


私の契約者は真っ黒のながーい髪に、メガネをかけている、猫背気味の人間だった。

名を黒木暗子というらしい。

彼女の部屋の家具はベッドと本棚だけで、本棚の上には頭蓋骨(本物じゃなさそう)や水晶玉やらなにやら怪しい小道具がごまんとあり、床には魔法陣が描かかれ、なんとなく魔女の部屋という感じがする。

しかし、セーラー服が部屋にかかっていたので、学生、多分高校生だ。


ちなみに昨日の深夜――厳密には今日の午前2時――に契約したあとは、眠かったのか暗子は儀式や契約について説明を聞いた後すぐに寝てしまった。


「で、か、カノさん……」


暗子がたどたどしい口調で話しかけてきた。

暗子は人と話すのが苦手らしい。

しかし、会話が嫌いとかそういうわけではないらしいので誰かと話すのが好きな私的にはうれしい。

他の悪魔はどーにも話に付き合ってくれないから悲しい。


「カノでいーよ。 で、どしたの?」


「『武装イスティント』のことなのだけど……」


「ああ、まだ出してなかったね。 いいよ、後回しで!」


「そうかしら……、いきなり襲われたら怖いわ」


「ダイジョーブ! 私のレーダーは他の悪魔より優秀なの! 相手より先に気づけるからどうやっても遭遇は避けられる」


「そうなの?」


「そうなの!」


私のレーダーの半径は10km。

他の悪魔の5倍とか10倍くらいじゃないかな?

カノはあんまり闘いに乗り気じゃない。

なら私の遊びに付き合ってもらって、適当なとこで降参すればオッケーだ。


「どこ……」


暗子が口を開いた。


「?」


「ど……どこか行きたいんでしょう? どこに行きたいの?」


「!!! あのね、あのね! 人がいっぱいいるとこ!」


「どこからしら、新宿とかかしら、渋谷?」


暗子はなんとなく雰囲気が暗く、最初にネガティブな印象を受けたものの――部屋が真っ暗だったからかも――みかけによらず状況適応能力が高いようだ。


何が言いたいかというと

――そう、彼女は案外ノリが良い!

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