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Sabbat・Servant(サバト・サーヴァント)  作者: ゆにろく
6月11日 月曜日
59/61

49話 正義の代償

◆小早川誠◆


いきなり現れた男、二階堂薫は人質らしき少女を連れていた。

その後、少女を殺そうとしたので、俺はすかさず、銃殺した。

あの男はやる時はやるだろうし、見るからに切羽詰まっていた。


これで終わりだ。


構えていた、銃を降ろす。


頭から血を吹いて二階堂が倒れている。

二階堂とは結局最後まで、分かり合うことも、まともに話すことができなかった。


だが、俺はこの戦いで正義を最後まで貫くことができた。

人を三人も殺した。

だが、これは正しかった。

この犠牲は必要最低限だったはずだ。


「……俺は誰かを救えたかな?」


「……少なくともそこにいる、少女は救われたわよ。 きっと」


リザは二階堂薫の遺体を指差した。

そこの少女は生きている。


「……そうか」


ふっと肩の力が抜けた。

──もう殺さなくて……いいのか。

すべてが終わったことに安堵して、緊張の糸が切れた。


ブツンと音を立てて。


「勝ったわね。 誠。 ……願いは決まってる?」


視界が歪み、リザの顔がぼやけた。

強烈な吐き気とともに意識が薄れ始める。


「あ、あれ?」


ダメだ。

立っていられない。

平衡感覚が失われ、世界がぐるぐると回る。

足がふらつき、近くにあったフェンスに手を付こうとしたが、力が入らず倒れこんだ。


「……誠?」


あぁ。

俺、思ってたより無理してたのか。


自分の貫きたい正義と心の解離。

そこには深い溝があった。


まあ、そうでもしなきゃ引き金は引けなかったしな。

仕方ないか。


「……こと! ……とッ!」


意識がそこで途切れた。


◆◆◆


……あれ、俺どうしたんだっけ?


真っ白な天井。

俺の口元には呼吸をしやすくするマスクが嵌められていて。


あれ。

なんで俺がいるんだ?


眼下のベッドでは俺──もしかしたら俺に似た人間──が寝ていた。

回りを見ればここが病院であることはすぐわかった。


なんだこりゃ。


「誠。 よく聞きなさい。 これが最後のチャンスよ」


リザ?

リザは目の前に現れた。


「私はあんたの頭の中に直接語りかけてるわけ。 そして、あんたは今所謂ユータイリダツをしてる」


そんなことできるのか。


「いや今回が特例よ。 あんたは生き延びた。 願いを叶える権利がある」


願いか。


「そ、願い。 でも、あんたはもーじき死ぬわ」


俺が?


「ぶっ倒れたのよ。 今は病院」


ああ、あそこで肩の力が抜けて……。

でも、死ぬようなことか?


「脳のデカイ血管の一本が逝ったんだって」


それは死ぬかも。


「そ、でね今の誠は意識不明の重体。 だから、願いを聞くために特別な力で話しかけてるわけ」


なるほどね。

理解した。


「わかってるわよね?」


何が。


「願いのことよ。 願うべきは一つ。 頭を治すことよ」


性格を直せってこと?


「とぼけないで……。 あなたは精一杯に人のために尽くしたじゃない。 最後くらい自分のために生きなさいよ!」


だから、この願いを自分のために使えって?


「そーよ」


まあ、そうだな。

俺は自分の正義を貫き通した。


「……誰かを助けて誠は救われたの?」


そうだなぁ。

三人も殺して、俺はボロボロになった。


「でしょ? もう良いのよ他人のために生きなくて」


確かに、俺はもう疲れた。


そうだな。


ふと隣を見た。

俺のベットの横では少女が寝ていた。

包帯ぐるぐる巻きだった。

事故にでも合ったのだろうか。

可哀想に。


「あんたほど可哀想な奴はいないわよ」


酷いな。


「そうでしょ。 見なさいよ隣のベッドには果物が置いてあるわ。 あんたのは?」


隣の少女の元には「日野静葉 様」と名前が書かれている篭があり、そこにフルーツが入っていた。

俺のところにはない。

まあそれはそうだ。


「あんたはあれだけ頑張ったのに誰も感謝しに来ないじゃない……」


それは仕方ないさ。

誰も俺の顔も名前もわかんないだろうし。

まあ、悲しいけどね。


「……これが最後の質問よ」


ああ。


「あなたは何を望む?」


俺はどこか天狗になっていたのかもしれない。

人ならざる力を手に入れて、なんでもできると思っていた。

たくさんの人を助けれると思った。

結果、この様。


人助けなんか手の届く範囲でやっていればよかったのかもしれない。

自分の身に余るようなことを正義と称して行動し、無理が祟ってぶっ倒れた。


俺の望みは……。

そうだなぁ。






──そこの女の子を治してやってくれ。






「バカね。 ……ホント」


やっぱり、変えられないよ。

これが俺の生き方なんだ。

ほんとごめん。


「なんで、……謝るのよ」


それはリザが泣いてるからだよ。


「……」


リザ。

君と居たのは楽しかった。


「そんなの、知らないわよ……」


それにさ、俺が頑張ってるのを誰も感謝しないとはいうけど、リザは見ててくれたじゃないか。

それだけで充分だよ。


「……」


短い間だったけどありがとう。


俺は最後に、人を助けられた。

俺一人の命で、一人を救う。

分相応じゃないか。


俺は満足だ。

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