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Sabbat・Servant(サバト・サーヴァント)  作者: ゆにろく
6月11日 月曜日
57/61

47話 終わりへのカウントダウン

◆サーニャ◆


「もう契約者はあと一人になったわ」


そう。

薫が家につく頃には、契約者はもう薫とあと一人になっていた。


「そうか」


「……」


薫はどこか遠くをみながらそう言った。


「薫。 あなた帰ってから何も食べていないでしょう?」


「腹はへってねぇ」


「嘘付かないで。 もう昼よ。 昨日の夜から食べてないのに、お腹が空かないわけないでしょう?」


「本当に減ってないんだ……」


家に帰ってから窓の外を見つめ、動いてない。

寝てもいない。

人間は、食べて寝なければならないのにそれをしていない。


「ねぇ……どうしちゃったのよ薫」


「……」


見るからに気力はなく、そして、『想い』もが限りなく小さくなっていた。


「俺がさ、石動を殺したときよ」


「?」


「あいつに剣を突き立てたときどう思ったかわかるか?」


「願いが叶って嬉しかったんじゃないの?」


「いや」


こちらを見ながら、少し笑いながら言った。


「なんとも思わなかった」


その笑みは被虐的な物だった。


「だからよ、こんなはずないと思って何度も何度も斬り付けたんだ。 でもなんとも感じねぇんだよ。 ただ、あぁ死んだのかと思うだけで」


「でも……、でも、それがあなたの願いだったんでしょう?」


「……だったんだよ。 そのはずだ」


薫はまた窓を見た。


「アイツも、妻を失ったって言ってたな」


「そう……ね」


「アイツは結局復讐してたんだ。 この世界に。 八つ当たりだけどよ」


「そう……かもしれないわね」


「……それで、彩香は殺された」


「……」


「アイツが何人も殺してたのは、多分なんの実感も得れてなかったからだろうよ」


「……随分肩を持つのね」


「いや、そうじゃねえよ。 アイツはぶっ殺されて当然だと今でも思ってる」


「じゃあなんで?」


「アイツには娘がいた。 結局、俺も今は石動アイツと同じ側の人間なんだよ」


「……薫」


「……わかってたのにな。 そんなの」


「もういいわ」


薫の近くに行き、肩を掴む。


「勝てば良いのよ! そうすればッ! そうすれば、あんたの大切な彩香が生き返るのよ!!!」


「……あぁ。 そうだな」


薫は立ち上がった。


「だから、そんな顔しないでよ。 願いが叶ったのに、そんな」


薫は復讐をして、願いが一つ叶ったはずだ。

私はこいつの怒りに共感し、力を貸した。

これは違う。

このばつの悪さは私の思ったものじゃない。

なんだろう。

この胸につっかえる感じ。


「……『大熊グリズリー』出してみてくれよ」


薫はそういった。


「良いけど……。 ──開け」


薫の手に『武装イスティント』が現れた。


「クッ、ハハハ。 こりゃ傑作だ……」


薫の手の『大熊グリズリー』は小さく小さくなっていた。

『想い』の変化によるものだ。

ここまで、ここまで小さくなるとは思わなかった。

これではまるで──


「石動のそっくりじゃねぇか」


大熊グリズリー』は大剣ではなく、ナイフに変わっていた。


◆小早川 誠◆


俺はこの戦いに参加し、誰かを助けられただろうか?

少なくとも二人は殺した。


間違っていなかったと思う。

この二人を放っておけばまだ人が死んでいただろう。

これは正しかったと思う。


俺は、殺したいと思えば身体が動いた。

しっかりと的を射ることができた。

正義をただ振り下ろすことができた。


ただ。

殺したあと、その死体をみて。

何かが重く何かのし掛かかった。


俺はしっかりと引き金を引くことができる人間だった。

しかし、やりたいことをやったからといって楽になれるわけじゃない。


かねてより、悪人は殺すとそう覚悟を決めていた。

それを実行に移すことは造作もなかった。

だが、殺したあとの責任は重く重くのし掛かっている。

この正義は、貫かなくてはならない。

少なくとも、俺が契約者という力をもつ間は。

そうでなくては殺した意味がなくなる。


俺は人を救った。

正しい光の中にいる。


そう思う。


「リザ。 あと何人だ?」


「あと、契約者は一人ね」


「わかった」


これは勘だが、二階堂薫だろう。

あいつからは始めてあったときから強い意思を感じていた。

であれば、行き先は一つ。


始まりの公園。


あそこで待てば奴は来るだろう。


もう一度、俺は正義を振りかざすのだ。

身勝手で、自分勝手な、他人思いの歪んだ正義を。

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