46話 長い日の終わり
◆黒木 暗子◆
目を覚ますと、目の前には男がいた。
「ヒッ……!」
「あっ、起きた」
その男はニコニコとしていて、優しくて穏やかな印象を受けた。
「だ、誰です……か?」
そうだ。
確か、カノと一緒に戦って、それで。
あれ、首を切られて?
いやその続きがある。
カノが私の名を叫んでくれていたはずだ。
そうだ。
カノに聞くのが手っ取り早い。
「ねぇカノ?」
返事はない。
「あれ、カノ?」
辺りを見回す。
「カノ? ねぇ、私の友達を知らない? 悪魔なのだけれど……」
「あぁ。 帰ったよ」
「え?」
「俺の友人にエクソシストがいて、そいつが魔界へ送り返してしまった」
「……そう、なのね」
「……悪いことをした」
「いや、良いのよ……。 どうせ、今日でお別れだったのだから」
そうだ。
元々今日お別れで。
私のわがままでちょっと長くいただけだった。
「友達……だったのかい?」
「……えぇ。 たった一人の。 大切な友達だったの。 変かしらね……」
「……そんなことないさ。 なぁ」
男の目の先には銀髪の少女がふわふわと浮いていた。
「いつ友達になったのよ?」
「ほら、こう言ってるし。 悪魔も人間も関係ないさ」
「いや、何も言ってないんですけど」
悪魔も嫌そうな割には声があまり刺々しくはなかった。
「あと、君の悪魔が去り際にさ、『楽しかった』って」
「……そう。 それは良かった……わ」
あぁ。
ダメだ。
抑えきれない。
目頭がとてもとても熱かった。
涙を抑えようとしてもダメだった。
声も抑えようとしたけどこっちもダメだった。
声をあげて泣いた。
私も楽しかったって伝えたいのに。
凄い悲しいのに、死にたいくらい辛いのに、カノと友達にならなきゃ良かったとはちっとも思わなかった。
この悲しさも、苦しさも、いとおしさも、全部ひっくるめても、カノといた楽しさや喜びには全然勝てないからだ。
それだけ、充実していた。
カノ私頑張るから。
次会ったときにはもっと強く、しゃきっとして。
あなたに自慢の友達だって言ってもらえるように。
でも、今は泣き虫でいさせて。
◆ロック◆
「なんだこりゃ?」
元いた空き地へ戻ると死体が増えていた。
死体だけでない血痕の量が尋常ではない。
あとから来た二人の契約者の内、片方が死んだらしい。
「仕方ねぇ」
これも何かの縁だろう。
三人分の墓を作った。
契約者とはいえ人は人だ。
大罪人とはいえ、死んだ後くらいは安らかに眠っても誰も文句はいわないだろう。
それに、増えた死体の方はやけに損害が酷かった。
まるで、元々恨みを持たれていたような。
ともかく、手を合わせる。
「ハーデンバルトさん。 事が片付いたらドイツへ帰りましょう」
それまでの間はこの小さな墓で我慢してもらおう。
「さて」
あと何人契約者が残っているかわからないが、もうこれ以上無駄死人を出さない内に見つけ出す。
そして、次は少し見極めようと思う。
それくらいの余裕はあるはずだ。
俺への負担は増えるが、構わない。
小早川ほどじゃないにしても正義の在り方を考えようと思う。
「にしてもあれ見つからなかったな」
立ち上がる。
太陽はもうすぐ沈むだろう。
「ハーデンバルトさんの魔力探知機」




