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Sabbat・Servant(サバト・サーヴァント)  作者: ゆにろく
6月10日 日曜日
45/61

37話 『大熊』vs『毒蛇』(2)

◆サーニャ◆


薫はついに目覚めた。

やっと自分の『想い』に気付いたのだ。

怒りや憎しみといった感情は簡単には消えない。

喜びや希望よりも、負の感情と絶望は深く深く心に傷を残す。

失った物を取り返すだけでは0にはならない。


薫の『想い』は大きく大きく、そして、どす黒く変化した。


石動を殺せばこの想いは小さくなるかも知れない。

しかし、ここまで大きければ石動を殺した程度では収まらないのではないか?

この因縁の戦いを終えても、この殺し合いを勝ち抜ける可能性はある。

薫は契約者として強くなった。


ただ。

どことなく寂しさに似た何かを感じた。


ほんの気まぐれに違いない。


「……そうよ。 薫。 自分の心に身を委ねなさい」


「あぁ」


「おいおい。 一発当てたくらいで調子こいてんじゃねぇぞ。 回避リーブ!」


石動は消えた。

薫はただ『大熊グリズリー』を振るった。

斬撃は飛ぶが、その先に石動はもういない。


「遅ぇっての」


敵の武装イスティントが薫に迫る。

腕で防いだ。

勿論刃は腕に刺さる。

薫は避けるのを止めていた。

避ければその分反撃は遅れる。

薫は刺さった腕を無視し、大剣を振るった。

しかし、もうそこには石動はいない。


「避けなきゃ、攻撃が当たるってか? バカにすん──」


「捕らえた」


「……あ?」


石動はふらつく。

ポタポタと血が地面に落ちる。


「通ゥ、油断すんなって言ったろうがァ」


石動の背中は大きく切り裂かれていた。


「『追跡する大熊の爪牙(チェイサーファング)』」


薫の『武装イスティント』は一つ進化を遂げた。

今『大熊《グリズリー』による飛ぶ斬撃は相手を追尾する。

何かに当たるまではその追跡を止めず、相手の息の根を止める。

逃げ続ける相手を殺したいという一心から芽生えた成長。


「ほら、逃げろよ」


腕にナイフを受けた後の斬撃はまだ石動を追っている。


回避リーブッ!!」


もう一度薫の目の前に瞬間移動をする。

突きだされた『武装イスティント』は薫の首へ向かっていくが、その前に左腕がナイフを受け止めた。


「狂ってんのか……?!」


「お互い様だ」


石動を薫は蹴り飛ばす。

そこで、斬撃は石動を捕らえた。

足を切り裂く。


「痛ってぇな!!」


「俺の斬撃は距離に反比例して威力は落ちる。 長ぇこと追ってる分、致命傷にはならねぇだろ? ……早く立てよ」


「ククク……。 強がってるがてめぇの腕も相当な出血だぜ……? そんな避けかたがいつまで続くと思ってんだ?」


「殺すまで」


石動の言うとおり、薫の左腕は3回刺されいる。

服も真っ赤に染まり、絶えず地面に血は落ちていく。


「……薫。 勝つのよ。 それがあなたのやりたいことなんでしょう?」


「あぁ」


薫は大剣を振るう。

先ほどより速く、多く。


回避リーブッ!!」


薫の正面に現れ、薫も防御の姿勢を見せたが次の瞬間には消えていた。

瞬間移動を使ったフェイク。

本命は後ろのようだ。


「死ねッッ!!」


腕で防がれないよう、次は切り裂くようにナイフを振るう石動。

薫は無抵抗に背中を切られる。

その痛みに苦悶の表情を浮かべながら薫は大剣を上向きに振るっていた。

空へ向かい飛ぶ斬撃は途中から重力に引かれるようにして落ちてくる。

石動に向かって。


「なっ……!!」


石動は咄嗟に腕をクロスして頭を守った。

腕を切り裂く。

そして、薫はがら空きのボディに思いきり回し蹴りを叩き込んだ。


「グハッ……!」


地面を二度バウンドして石動は飛んでいき、追撃するように最初に振るった斬撃が石動を襲う。


「リ、回避リーブッ!!!」


薫を挟み反対側へ石動はごろごろと転がりながら現れる。

斬撃が身体に深く斬り込まれる前に瞬間移動したのだろう。

しかし、体を斬られたことには変わらず石動のシャツは赤く血がじわじわと染み出していた。


「おいおい、通ゥ」


「なんだよ! アークマイ──」


「死んじまうぞ?」


少し驚いた。

石動の悪魔は殺し合いが始まってずっと下卑た笑みを浮かべながら茶々をいれるだけだった。

今、あの悪魔から笑みは消え、石動の身を案じているように見えた。


「これくらいじゃ死なねぇよ。 何人殺してきたと思ってる?」


「まァそれもそーか!!」


また笑みが戻った。


「おら行くぞ?」


薫は大剣をまた上に向け2度振るった。

斬撃はすぐに方向を地面の方へ変えて、石動の元へ向かう。


回避リーブ!」


薫の足元に潜り込むようにして現れる。

武装イスティントを胸に向かって突き出すがその刃が内臓に達する前に薫に蹴り飛ばされた。

すぐに真上からの斬撃が襲来し、石動を襲った。


「くたばっちまえ!」


薫は直ぐ様大剣を振り、斬撃を作り出し続ける。

しかし、大剣を振るう速度は落ちていた。

薫の身体もすでに限界が近い。


「ッ、回避リーブ回避リーブ回避リーブ回避リーブゥゥ!」


地面を這うようにして飛ぶ斬撃をかわし続ける。

石動も学んできている。

障害物の近くに瞬間移動し、その後もう一度消える。

斬撃は石動以外の物に当たり役目を果たし消えていく。

勿論避けきれない物もでてくる。

消耗戦。


「死ねェェェェェェェェェェェ!!」


回避リーブ回避リーブ回避リーブ回避リーブ回避リーブ!」


避けては消え、隙を見つけては薫を切りつけ消える。

二人の傷は時間経過と共に増えていく。

先に倒れた方が死ぬ。


「薫ッ!! 押しきりなさい!!!!」


「わかってらァ!!!!」


「負けてんじゃねェぞ!!! 死んだら許さねェからな通!!!」


「黙って見とけぇ!!!」


大地を切り裂く音。

血が滴り落ちる音。

獣のような雄叫び。

悪魔の声援。


そして、死神の足音ももう聞こえ始めていた。

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