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Sabbat・Servant(サバト・サーヴァント)  作者: ゆにろく
6月10日 日曜日
44/61

36話 『大熊』vs『毒蛇』(1)

◆二階堂 薫◆


「──開け」


俺の右手に『大熊グリズリー』が現れ、すぐに斬りかかる。

この大剣は斬撃を飛ばすことができる。

石動との間にある距離を無視した先制攻撃を仕掛けた。


「──開けェ!」


石動の悪魔もサーニャと同じタイミングで『武装イスティント』を出した。

形状は……。

ナイフ。

届かねぇよなぁ、そのリーチじゃあよ!!!


「死ねェェェェェェェ!!!!!」


斬撃は地面を抉りながら、石動の元へ向かう。


「飛ぶのかよ!! それッ!!」


対応が遅れている、『武装イスティント』にはどんな能力があるかわからない。

初撃で屠るに限る。

……いや、できれば瀕死が良い。

痛めつけてから殺してやる。


回避リーブッ!!!」


「っ……?!」


斬撃が石動に当たる直前、奴が消えた。


「おらよッ!!!」


石動は俺の懐にいた。

石動のナイフは俺の脇腹に向かって突きだされた。


「チッ!」


反射的に蹴り飛ばすことができた。


「うぉっ……」


当たったが浅い。

しかし、奴のナイフも擦った程度で済んだ。


「薫。 熱くなってはダメよ。 もう止めるのは諦めたわ。 しっかり殺しなさい」


「当たり前だ」


「おい、通ゥ! なーに逃がしてんだよ!!!」


「黙って見てろよ、アークマイン! ……やるじゃねぇか、お前!! まあ、安心しろや。 すぐあの世で会わせてやるよ。 彼女によぉ」


「死ね」


石動の『武装イスティント』は瞬間移動のようだ。

こちらは斬撃を飛ばし、間合いを詰めるが、相手は自分が飛んで間合いを詰めてくるってわけだ。

ゼロ距離になれば、ナイフより大剣の方が不利だろう。


「次いくぜぇ。 回避リーブッ!!」


消える。

前には現れない。


「……後ろかっ!!」


大剣を地面に刺し、柄頭を掴む。

体を浮かせて後ろ蹴りを仕掛ける。


「あぶねぇ……なっ!」


上体を反らすことで蹴りを避けたらしい。

足に鋭い痛みが走る。

柄頭に乗せた手を軸に前方に一回転し、剣を挟んで石動の逆サイドに着地。

剣を引き抜くモーションでそのまま切り上げる。


「……オラッァ!!」


砂が飛び散り、剣先は石動に向かい跳ね上がる。


回避リーブゥ!」


大剣は空振り、石動は少し離れた場所に現れた。


「ちょこまかと……ッ!」


瞬間移動も死ぬほど厄介だが、アイツ自身も動きが速い。


「おいおい、そんなもんかぁ? 俺を殺すんじゃなかったのかよ?」


「薫。 挑発に耳を傾けてはダメよ」


「……うるっせぇな」


切られた脇腹と右足から血が流れ、深い傷ではないが痛みは絶えず俺をイラつかせた。

俺は石動に圧されている。

武装イスティント』の相性もすこぶる悪い。


「……薫?」


「……どいつもこいつも」


──俺はサーニャと手を組んだとき何を思ったか。


契約者の力を使って石動を一方的にぶち殺したい。

勝ち抜くことで彩香を生き返らせたい。


この2つの目的があった。

そして、あのときの俺はこの2つを同列に並べて考えていた。

──違う。

元々、サーニャが俺の『想い』は憎しみに依存していると言っていた。

あぁ、その通りだった。


彩香を生き返らせることよりもこの男を殺したい。


彩香を愛していたゆえの復讐であるのに、彼女と会うことよりも石動を殺すことを優先させる意味。

無意味。


そう頭では理解してる。

しかし、彩香が生き返れば彩香を殺された憎しみは消えるのか?

石動を許せるのか?

多分無理だ。

もう引き返せない。

そこまでに俺の憎悪は肥大化していた。


サーニャに出会い、彼女に背中を押され、遂には石動を前にし、くだらない動機を聞いた。

挙げ句の果てに俺がこいつに殺される?


プツンと理性の糸が切れた。


こいつを殺して、それで全てが0になる。

そこからだ。

これは彩香のための復讐じゃない。


俺のための復讐だ。


相性が悪いだの、後のことなんかどうでも良い。

――ただ怒りに任せればよかったんだ。


「おいおい!! 来ないならこっちから行く――」


「待て! 通ゥ、そいつ様子がおかしいぜぇ。『想い』が強くなってやがる。 下手したら『武装イスティント』まで変化してるからよぉ」


「あ? 関係ねぇよ。 俺の『毒蛇ヴァイパー』と、この身体能力がありゃ避けられねぇ攻撃はねぇ。 回避リーブ


石動が消える。

左側に現れ、ナイフを突き出す。

止める。


「な……」


大剣では間に合わなかった。

だから手のひらを差し出した。

左手をナイフは貫くが、ナイフは止まる。


回避リー――」


瞬間移動をする前に右手の拳が石動の顔面を捕らえた。


「ガッ……」


石動は呻き声をあげぶっ飛ぶ。

ブロック塀に身体がぶつかり止まった。


「……やるじゃねぇか」


「てめぇはただ逃げ回ってれば良い。 俺が勝手に殺すからよ……」


「ククク、にしても俺たちは幸せだなぁ。 死んでも待ってる女がいるもんなぁ」


「俺とテメーはもう地獄にしか行けねぇよ」

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