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Sabbat・Servant(サバト・サーヴァント)  作者: ゆにろく
6月10日 日曜日
42/61

34話 信頼

◆カノ◆


「……な、何が起きたの?」


本当に間一髪だった。

契約者が少し線路に近づいた事と、他の悪魔より高精度のレーダーで捉えた魔力の残滓から何か嫌な予感を感じ取った。

列車前方から妙な金属音が聞こえると同時に透明化を解除、暗子を飛びかかるようにして床に伏せさせた。

その一瞬後、周りは血の海と化した。

立っている人間は胴体を真っ二つにされ、座っている人間は肩から首辺りを切断されていた。

もし、判断が遅れていたら暗子も……。


「か、カノ?」


「……急停止したみたい。 契約者が列車を止めたんだよ」


暗子は状況を掴めていない。

それは私が暗子の眼を手で覆っているから。

暗子は血が苦手なのだ。

それにこんな死体だらけの光景を彼女に見せれきっと卒倒してしまう。

悪魔の私ですらみていて楽しいものではない。

契約者を甘く見ていた。

町ひとつを犠牲にして宣戦布告をした契約者、暗子を殺すためだけに電車に乗る人間を全て殺す契約者。

ダメだ。

こんなのと暗子が対等に闘えるはずがない。

暗子には危機感が足りていない。

私が暗子を守るんだ。

巻き込んだのも私なんだから。


「暗子、この電車にいるのはマズイ。 外に逃げるよ」


「え、えぇ。 でも、その前に目隠しを取ってほしいわ。 ま、前が見えないもの」


「それはダメ」


「どうして?」


「いいから、ゆっくり立って」


暗子は立ち上がった。


「カノ、み、見えないのは怖いわ……」


「……」


「でも、私はカノを信じる」


「……暗子」


「カノ、勝手に目を開けたりしないから手をはずして頂戴?」


「……ほんと?」


「えぇ。 その代わり空いた手で」


暗子は手を前に出した。


「手を握ってて欲しいわ」


「……私も暗子を信じる」


ゆっくりと手を目から放した。

そして、彼女の手をぎゅっと握る。

彼女の体温が伝わり、彼女が少し震えていることにも気がついた。

それはそうだろう。

少し鈍い暗子も流石に何かが起きたことは察している。

電車が止まったのに私以外の声はこれっぽちも聞こえない。

暗子は不安で、怖くて、目を開けたくて仕方ないはずだ。

でも私を信じて目を瞑ってくれている。


「ゆっくり歩いて」


暗子の手を握り先導ドアの前まで連れていく。

歩くたびピチャピチャと音がした。

暗子の震えはいっそう強まり、私を握る手も強くなる。

私は握り返した。


「大丈夫。 私がいる」


電車が途中で止まったため、ドアは開かない。

しかし、魔力を得た暗子の力があれば力ずくでドアを開けられるはずだ。

暗子の手をドアに近づける。


「ドアがあるのわかる? 思いっきり開けようとしてみて」


「わ、わかったわ」


ギギギギという音ともにドアは開く。


「まだ目を開けたらダメだからね」


「わかってるわ」


暗子の手を引いて線路に出る。

電車をでると目の前には金網のフェンスがあり、そこを越えれば逃げることができそうだ。


「もう目を開けていいけど、絶対振り返っちゃダメ。 良い?」


「わかったわ」


「よし、あのフェンスを越えよう。 暗子ならジャンプで越えれるはず」


「や、やってみるわね」


暗子は大きくジャンプをして2mを越えるフェンスを余裕で飛び越した。


「……マズイ。 あっちも気づいて私達に近づいてきてる! 走って!!」


◆日野 秋奈◆


「……行く」


鎌の刃の位置は契約者が立っていても座っていても殺せるよう配置した。

あまり、切り裂きすぎると電車が爆発するかもしれないので一つしか軌跡を残していないが問題ないだろう。

駅にいた人達は警察へ連絡したり、写真を撮ったりと忙しそうだった。

この近くで、契約者が暴れているため、ここにもすぐ警察は駆けつけ、ニュースになるだろう。

これも大規模なテロとして処理されるのだろうか。

面倒になる前に早く立ち去る。


「……っ、秋奈」


「……なに?」


「生きてるっぽいわ」


「……めんどくさいなぁ」


電車が停止したのはすぐではなかったので距離として100mほどだろうか。

今ここで、線路に降りてダッシュすると野次馬どもに動画を撮られる。

この御時世、拡散されると厄介だ。

私は勿論、家族や身の回りの人にも迷惑がかかる。

この事件に関与しているなんて疑惑が掛かれば凶器は見つからなくとも面倒なことになる。

まあさっき鎌は見られているけど。


「シェロ、鎌」


「……次は何、するのよ」


「この駅の人達は皆殺しにする」


「……──開け」


申し訳ないが、私と家族の平和な日常生活のためだ。

死んでもらおう。


「ねぇ、秋奈。 私があんたの妹を理不尽に(・・・・)酷い目に会わせたから怒っていたわよね?」


「……そうだね」


「あんたのしてることは私と同じじゃないの?」


「私が怒ったのは、私の(・・)妹を理不尽な目に会わせたからよ。 そこにいるのは他人」


人の命は確かに重い。

しかし、人は一日に何人死ぬ?

他人の死に、いちいち悲しむ人間はいない。

結局、人の命が重いのは身の回りでの話。


私はただ、平凡に生きたい。

妹にも平凡に生きてほしい。

ただそれだけ。

百合……?

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