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Sabbat・Servant(サバト・サーヴァント)  作者: ゆにろく
6月10日 日曜日
39/61

32話 犠牲

◆シェロ◆


「入ったわ……。 それも相手は電車に乗ってる」


駅で待っていると思ったより早く網に他の契約者がかかった。


「そう」


「ほら言わんこっちゃない、この駅を通過する電車よ。 つまんねぇ意地を張ってるからね♪」


「……」


ここ最近口さえ利かないせいかこいつが何を考えているか全くわからない。

会った時は今よりもまだ会話もできていた。

まあ歪めたのは私だが、会話もろくにできないあげく私への反抗心だけで効率を無視して契約者を取り逃がす。

もともと思っていたが、人間というのは愚かで本当にしょーもない。


「『あのアホ面した契約者は何をしてんだろう』って思いながら敵は電車に揺られて去っていくんでしょうねぇ♪」


「……くどい」


「くどいってアンタさぁ、しょーもない意地張ってこんなちんけな駅に残ったのはアンタでしょう?! 隣の駅まで行ってれば敵の乗ってる電車も止まるからそこで戦うだのなんだの――」


「これが最善で、一番手っ取り早いんだよ。 さっきから言ってるけど」


語気を強めて秋奈はそう言った。

イライラしてるのはこっちだっての。


「……この駅を通過する30秒前くらいになったら教えて」


◆カノ◆


「ダメだ、どんどん近づいてる!!」


「……ま、参ったわね」


暗子は結構落ち着いてるが、なかなか不味い状況になっていた。

私のレーダーは10㎞という広範囲を探索できるし、他の契約者との位置関係も高精度でわかる。

が、電車に乗ればそのアドバンテージもなくなる。

早急に事件を起こしている契約者から離れるため、快速の電車に乗ったが長い時間電車から降りられない。

それが災いし、レーダーに入っているにも関わらず電車は止まらず、逃げ出すことができなくなっていた。


「あーもう! 暗子がわがまま言うからだよ!!」


「え、ご……ごめんなさい」


「謝られても遅いし!! ……考えてみれば、暗子が全部悪いわけじゃないし、謝んなくていいよっ!!」


「えぇ……」


混乱していた。

契約を切ってリタイアしたいのは山々だがその儀式をするには時間が足りない。

どうしよう、どうしよう!!


「か、カノ。 距離はどのくらいなの?」


「え? ……だいたい後1.5kmくらい……」


「それなら、いるとしても次の駅当たりよね? 次の駅は通過だから別に大丈夫じゃないかしら……?」


「あっ、確かに」


今度は電車が止まらないということが幸いした。


「そ、そろそろ次の駅が見えてくるわね」


「……場所的に次の駅にいるみたい」


「時速100kmとはいえ目の前を通り過ぎるのは怖いわね」


◆シェロ◆


「……そろそろよ」


今までずっと身動き一つ取らなかった秋奈が立ち上がる。


「出して」


「は?」


「『蟷螂マンティス』に決まってる」


「……いやいやアンタ何考え――」


「はやくしろ」


「……、――開け」


秋奈の手元に大きな大鎌が現れる。

そして、駅で待つ他の乗客の目線を全く気にせず、すたすたと線路に近づいた。


「秋奈?」


黄色の線を踏み越し、線路のちょうど真上に鎌を持ち上げた。

――刃の向きは電車の来る方向へ。


「……あんた、正気?」


「もういい、しまって」


鎌をしまっても『蟷螂マンティス』の能力上そこには軌跡としてすべてを切り裂く刃が残り続ける。

そこに電車は高速で突っ込む。


「……100、いやそれどころじゃない人間が死ぬわよ、これ」


「……ビビってんの?」


おいおい。

人間がいくら死のうが私は知ったこっちゃない。

だって私は悪魔なんだから。

違う世界に住む人間が目の前でいくら死んでもなんとも思いはしない。

でも、秋奈は人間だ。

たかだか一人を殺すために同種である人間を何百殺すという行為はどう考えても頭がおかしい。

何が彼女をそこまでさせる。


「私は妹を助けたいの。 そのためには仕方ない」


「妹って……、たった一人でしょ? そのために何人も殺すってわけ?」


「……悪魔は死なないからわからないんだよ」


「何が……?」


「人の命の重さ。 数じゃないんだ、私にとって妹はこの電車に乗ってる他人の何百人より大切なの」


「……わかんない」


「そ」


電車は内側の窓を真っ赤に染めながら私と秋奈の前を通過し、徐々に速度は落ちて走るのをやめた。


グロくてごめんなさい

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