31話 不動
◆ロック◆
「二人……! 契約者がこちらに向かってきてる!」
リザがそう言った。
実際わかってはいたことだった。
契約者達は他の契約者を殺すことが目的なのだから、ニュースとして戦いの場所が明らかになればそこへやってくるのは当然だ。
騒ぎを起こした張本人を殺したところで他の契約者には関係ない。
そこに負傷した契約者がいるなら好都合といったところだろう。
俺は魔力がほとんど残ってもいないし、ダメージ的にも連戦できるような状態ではない。
小早川も立って動けるようになっただけで、全快には程遠いし俺同様連戦は無理だ。
いったん退く。
「……リザ、二人の契約者はどっちから来てる?」
「正反対の方角からね」
幸運だった。
うまく引き付けて逃げ出せばこの二人が出会って戦いを始め、その隙に逃げることができる。
契約者を取り逃がすというのは勿論したくはない。
が、ハーデンバルトさんに助けてもらった命を無駄にするようなことはしてはいけない。
一度態勢を立て直してからまた契約者狩りを再開すれば良い。
「おい、悪魔。 具体的にはどちらから来てるんだ?」
「誠。 答えていーの?」
「あぁ。 大丈夫だ」
「空き地の入り口から向かって右と左から来る」
空き地へ引き込めば向かってくる二人は戦いを始めるだろう。
それに、向かってくる契約者としては契約者とエクソシストが一緒にいることに対して疑問を持つだろう。
そんな変な二人組にわざわざ近寄る契約者はいないだろう。
うまく逃げることができる。
「小早川向かってくる契約者をうまくここへ引き付けていったん退くぞ」
「まあ、そこのエクソシストの言うとーりね。 それが最善」
いちいち上からで腹が立つ。
しかし、これで決まっ――
「……いや」
「?」
「誠?」
小早川が口を開きリザと俺は聞き返す。
嫌な予感がした。
「ここで待つ」
「あ?」
「え?」
「俺はもともと戦いを止めるため、人死にを減らすためにここに来たんだ。 ここで逃げ出す選択肢はない」
「いやいや、小早川。 お前自分の身体をよくみてみろ。 どう見たって戦える状況じゃない」
「まず、戦う前提なのがおかしい。 俺みたいに契約者を止めに来た同志って可能性も――」
「「それはない」」
「流石に、さーすがに次は死ぬわよ! 絶対」
「そんなのはやってみなきゃわからないだろ」
ダメだ、ダメだ。
徹底的にかみ合わない。
小早川を捨てて逃げる選択肢もある。
だが、俺を貫通した弾丸がある以上その行動が小早川の気に触れたら……。
……なんで俺がコイツの機嫌を伺わなければないんだ。
イライラしてきた。
ひとまずコイツをこの場から引き剥がさなくてはならない。
「おい、悪魔。 契約者との距離は?!」
「あと1kmってとこ! 誠! 頼むから退いて」
「ダメだ」
まずここに来る以上は十中八九好戦的な契約者だ。
小早川の望むような話で解決できる人間じゃない。
というか、契約者ってのは何が願いとか『想い』があるのだから話し合いで解決させるってのがまず間違ってる。
そして、契約者がもし俺たちに牙をむくような『悪人』だったら、小早川は殺すため戦いを始める。
小早川は平和主義者を語るが売られた喧嘩は買うだろう。
とことんタチが悪い。
何か、小早川を退かせる何かを見つけなければ。




