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Sabbat・Servant(サバト・サーヴァント)  作者: ゆにろく
6月10日 日曜日
37/61

30話 少女達は

◆黒木暗子◆


「それ持ってくの? 暗子」


「えぇ。 お守りにね」


私がリュックサックに入れたのは分厚い魔術書だった。

この魔術書は今の私には正直な所必要ない。

なぜなら、魔術にはイメージと集中することが大切で、詠唱する文言は暗記が大前提となるからだ。

この間まで魔術が発現しなかったが、イメトレ、詠唱の練習、集中する練習はしてきた。

まあ、ボールを持っていないのに素振りだけしていたようなものだ。

ともかく、今の私に魔術書は魔術を使うのには必要ない。

だから、これを持っていく理由としてはお守りにするためだ。

カノを説き伏せたが外が危ないのは事実。

私の一番の宝物を、祖母の形見をお守りとして持っていくことにした。

魔術や悪魔がいる今、お守りというふわふわしたオカルトも案外バカにできないものだ。


それにこの魔術書は精神的な支えだけでなく、物理的にも私を守るかもしれない。

漫画で分厚い雑誌を仕込むことでナイフから身を守るシーンをよくみるではないか。

あんな感じでこの分厚い分厚い魔術書は私を守ることも容易に考えられる。

私なりに自分の身は自分で守る努力はする。

カノが心配してくれたのだから、そのくらいはする。


「……一応言うけど魔術書で『武装イスティント』から身を守るとかそんなんゼーッタイムリだからね」


「え、あっ……当たり前じゃない。 それより、どこ行こうかしらね」


「……」


「し、静かな場所なんかどうかしら?」


「はぁ……。 今回は暗子が引っ張りだしたんだし、暗子の好きなところに連れてってよ」


「いいの?」


「毎回私が行きたいところに行ってたし」


「そ、そうねぇ……」


といわれても、友達もいなければ、外にもあまり出ない私に対して好きなところへ連れていけと言われてもそこそこ困る。


「その……最後だし」


カノはボソッとそんな言葉を口にした。

……最後……ね。

なにか思い出になるような場所が良いけれどどこが良いのかしら。


「と、取り敢えず駅まで行ってと、都心の方へ行こうかしら」


「そうだね」


私とカノはのんびりと歩き始めた。


◆日野 秋奈◆


「どこ行くのよー♪」


「……」


「ねえってばー」


「チッ……」


やけに甲高い声でシェロは話しかけてくる。

ほんとにうるさい奴だ。

シェロはともかく、私は駅へ向かっていた。

その駅は例の契約者が暴れたくっている街の駅から4つ先。

そこで待っていれば、件の街へ向かう契約者や、ドンパチ終えて帰ろうとするお疲れの契約者がシェロのレーダーにかかる可能性が高い。

特に後者は最高だ。

上手くいけばそいつが最後の契約者で棚ぼた的にこの儀式の勝者になれる可能性まである。

ただひたすらに勝利へ意識を向ける。

妹を救うということだけを考える。

そうしていれば、私は冷たくなれる。

勝利の下にある屍を見なくて済む。


考え事をしながら歩いているうちに駅へ着いた。


「あーなるほど、駅に行くのね♪」


改札を抜け、ホームの待合室に入りそこのベンチに腰を掛ける。

少しすると電車が来て、私以外の人間は待合室から出ていった。


「……秋奈?」


「……何?」


「何って……まさか、ここで待つの?」


「……」


「この駅って全部の電車が止まるわけじゃないんでしょう?」


そう、この駅は比較的小さい駅なのだ。

急行や、快速といった電車は停まらず、来るのは10分に一本程度の各駅停車のみ。


「相手がこのレーダーに掛かって、やる気になってもそいつが降りられないんじゃ意味ないじゃない」


「……そうなる」


「ハァー、少しは頭使いなさいよ。 電車乗るわよ」


「いや」


「?」


「ここで良い」


「……は? いや隣はもっと大きな駅なんだからそっち行った方が得でしょうよ」


「……」


「はぁ。 ま、死ぬのはあんたの妹だし良いけど♪」


契約者と戦うなら、確かに次の駅に行って待つ方が得策だろう。

しかし、私は契約者と戦いたいではない。

殺したいのだ。

そのためにはここ。

この駅が一番良い。

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