29話 次の戦いへ
◆ロック◆
契約者の首をはねた後、契約していたと思われる悪魔はゲートをくぐり魔界へ帰っていった。
ふと、なぜあそこまで潔く帰るのか不思議に思った。
儀式のルールは人間と契約してその契約した人間が勝ち残れば悪魔の王になるのだという。
てっきり、悪魔に契約者が死ねば強制的に魔界に帰るという魔法でもかけているのかと思っていた。
しかし、あれは自分からゲートを作り帰っている。
そもそも自分勝手な悪魔たちがルールを守るとも思えない。
何かあるんだろうか?
それとも、単に王になるという執着は悪魔にはなく、ただゲームのような感覚でこの儀式が行われているのか。
なぜ、人を巻き込み儀式を行うのか。
まだ悪魔たちに謎は多い。
さて。
残った問題は小早川に関してだが……。
小早川の方へ向かう。
小早川は爆発の直撃を受けていたが腕に魔力を集中させ、頭は守ったらしい。
息はしていたが、腕は大火傷をしているし身体中ボロボロだ。
ほとんど虫の息という感じだ。
「か……勝ったの……か?」
「……あぁ」
「──あんた、ロックとかいったわね」
小早川と契約した悪魔──確か、リザとか言っていた──が現れる。
「コイツはバカだけど、一応あんたを助けたのよ。 殺すとか言わないでしょーね」
悪魔の言いなりになるのは癪だが、本当のことだ。
小早川がいなければ死んでいた。
コイツは弾のダメージの発現を自分ためでなく、俺を助けるために使った。
左腕を俺の間合いで怪我したことで隙が生まれ、そのまま勝つことができた。
少なくともこの傷は俺のためにおった傷だ。
「天の光をもって、『癒せ』」
『癒せ《ハイリング》』は傷を治す魔術だ。
ハーデンバルトさんが先程の言っていたが、致命傷を完治させるほどの力はない。
軽症であれば完治もありえるが、重症の人間に使っても悪化を防げるといったところだ。
小早川に使ってはいるが、焼け石に水、応急処置にしかならないだろう。
と思っていたのだが、想像以上に効いた。
小早川の腕の大火傷は三分しないうちに軽いやけどほどになり、身体中のあざや傷も8割は治ったのではなかろうか。
『癒せ』には一度に治癒できる限界があるのだが、その限界は『器』の大きさに比例する。
小早川の『器』の大きさは俺と同じくらいなので、悪魔と契約していることが何か影響しているのだろう。
小早川はやがて立ち上がれるようになった。
「ありがとう、ロックさん」
「……」
小早川とは優先度の関係から共闘をした。
つまり、二人で学ランの契約者を殺してから、小早川と事を構えるつもりでいた。
しかし、今はもうコイツを殺せない。
まず、小早川はあまり悪いやつではないということ。
そして、俺がこいつに助けられたということ。
しかし、これは感情論にすぎずエクソシストとしてではなく人としての考え方である。
エクソシストであることを優先するなら小早川と闘う理由になりえる。
こいつに手を出せない大きな要因。
それは
小早川に撃ち抜かれているということだ。
そう戦いの最中、小早川は俺もろとも敵へ『武装』を撃ち込んでいる。
小早川はこの事実で俺を揺すり、「儀式に勝つために協力しろ」というようなことはしないとは思う。
しかし、俺がもし何か小早川の思う「悪行」をすれば必ずこの銃弾は俺に牙を剥く。
それだけは確信があるのだ。
あの闘いのなか思った。
こいつはやる時はやる。
それはわかる。
勝つために、契約者を止めるため、自分の身をためらいなく爆発に晒す。
多くの人を殺す殺人鬼がいるならためらいなく引き金を引く。
俺はエクソシストとして魔術使いを何人も葬ってきた。
最初は自分が正しいという確信を持っていても手は震え、無意識に致命傷にならない場所を狙ってしまうものだ。
俺はそうだった。
あの時、俺諸とも契約者を撃ち抜いたとき、弾が抜けていったのは左胸から。
つまり、ピンポイントで心臓。
そのあとの体勢を崩した契約者への攻撃。
二発続けて心臓へ飛んでいた。
これは盾を無理やり突破する過程で下方向へ曲がり腹部貫通となった。
やはりどれも確実に殺す撃ち方なのだ。
全くもって殺めることへの躊躇が感じられない。
ただ真っ直ぐ自分の信じる正義感のままに撃つ。
それが小早川なのだ。
ひたすらに真っ直ぐ、それゆえに大きく歪んだなにか。
もしコイツに手をかけるとしても、まだ後だ。
危険すぎる。
「どうかしました?」
「……いや、なんでもない。 俺の方こそ助かった。 ありがとう小早川」
「お互い様でしょうよ」
「っ!! 誠」
リザが突然声を張り上げた。
「リザ、どうした?」
「二人……! 契約者がこちらに向かってきてる!」
そう。
まだ俺の闘いは終わっちゃいない。




