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Sabbat・Servant(サバト・サーヴァント)  作者: ゆにろく
6月10日 日曜日
31/61

24話 天才


◆桐川 絶◆


──まず一人。


案外あっけないものだ。

俺はエクソシストと距離を取り着地した。

あたりは『獅子レオン』の爆発による煙で包まれている。

視界は悪い。


「……!」


急に炎纏った刀が俺を突くようにして現れた。

しゃがむことで間一髪かわす。


──こちらの位置は完全に把握されているのか。


獅子レオン』の爆発にはクールタイムがある。

30秒。

それだけ待たねば撃つことはできない。

煙が晴れるまで時間が稼げると思ったがそうはいかないらしい。


喰らい尽くせ(イェーガー)


刀に巻き付くようにしていた炎がその大きさを変え始める。

これ以上近づくと俺に引火してしまいそうだ。

エクソシストは炎の塊となった刀を振りかぶる。

一度距離を離す。

若い方のエクソシストは俺の動きに付いてこれるわけじゃない。

煙のせいで不意打ちを受けただけだ。

即座にステップバック─


「『黒閃シュヴァルツ』」


後ろから声がした。

殺したと思ったがそう甘くはないらしい。

その声とともに刀が突き出されている。

その刀身は黒いオーラのようなもので包まれていた。

前からは炎。

後ろからは謎の黒。

後者がなんであるかわからない以上、下手に触るわけにはいかない。


仕方あるまい。


前へ出る。

炎に拳を突っ込み、刀を弾き、若い方のエクソシストをタックルではね飛ばす。


「ガッ!」


突っ込んだ左手は『獅子レオン』のおかげでそこまで酷くはなかったが、火傷を負った。

このまま、若い方を始末する。


「……ガハッ!」


突如とした激痛。

黒いオーラが俺の腹を貫通し、通りすぎていった。


──黒いのは飛び道具か。


腹に風穴が開くことはなかったが、口から血が溢れた。

黒いのが腹を貫いたとき、内臓をシェイクされたような感覚があった。

その感覚はあながち間違っていなかったのかもしれない。

口が切れたわけではないので内臓へのダメージがあるらしい。

これはなかなか。


「……良いじゃないか。 もっと殺し合おう」


「悪いが、ここからもなぶり殺しだよ」


老人の方のエクソシストがそう返す。

みればスーツは所々焦げているだけで爆発によるダメージは無さそうだった。


──楽しませてくれる。


◆ハーデンバルト◆


ロックを突き飛ばしたあと『シルト』をもう1枚追加した。

それで完全に相手の放った爆発は凌ぎきった。

シルト』には練度で強度に差がでてしまうため、ロックと二人で貼るのは効率が悪かったのだ。

そのあとは回り込み、『黒閃シュヴァルツ』を撃ち込む。

こちらの動きに気づかなかったところをみると、魔力の集中は使えないらしい。

下手に学習されては困るのでここで必ず殺す。


「ロック君。 大丈夫かい?」


契約者に弾き飛ばされていたが見たところそれほどダメージは受けていなさそうだ。


「えぇ。 咄嗟の機転流石です」


「いや、引き付けてくれて助かった」


爆発のあとすぐ斬りかかった切り替えの早さは若いのによくやるものだと感心した。

とはいえ、ロックは私ほど魔力集中の切り替えが早くない。

切り替えが遅ければ、あの化け物の早さと渡り合うことは不可能だ。

私が主に攻めこみ、ロックにサポートを任せるのが最善だろう。


契約者へ向かい駆ける。

先ほどの『黒閃シュヴァルツ』はまともに食らっているのだから、今が攻め時だ。

目の前まで走り込み、右にフェイントをかけてから左から斬り込む。

武装イスティント』で防がれ──

パンッという空気が弾けると音と供に私は吹っ飛ばされた。

なんとか受け身をとる。

遅れて腹部へ痛みがやってきた。


「ガバッ……!」


もろに食らったせいで吐血までしている。

何をされた?

全く見えなかった。

刀が『武装イスティント』に弾かれた時には目に魔力を集中させていたはず。

あれで見えないとなると……


「……なるほどな」


「……ハーデンバルトさん」


「こりゃまた厄介になったなぁ」


契約者の膨大な魔力は足へ集中していた。

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