20話 桐川 絶という男
ついに20話目です。
ここまで読んでくださってありがとうございます。
ここからガッツリ物語を動かしていきます。
◆桐川 絶◆
人生に退屈を感じ始めたのはいつだったか。
家には多くのトロフィーと賞状がある。
小学生で取ったときの物が9割、中学生で取ったものが1割。
小学生では褒められることが嬉しかった。
親が、親戚が、世間が自分を認めてくれる、期待してくれる、それが単純に嬉しかった。
それに答えるように、読書感想文、絵、習字、サッカー等々様々な物で一位を取った。
そこまでが小学生。
中学生。
俺には小学生からの友人がいた。
名はもう忘れてしまった。
その友人は小学生の頃からバスケをしていて、俺をバスケ部に誘った。
小学校ではスポーツが違うせいであまり遊べなかったから俺とバスケしようぜ、と。
その友人と共にバスケ部に入った。
友人は小学生の間バスケをしていたのだから実力に差がある。
置いていかれては、同じ部に入った意味がない。
俺はバスケを練習して
──1週間で友人を越えた。
6月の新人戦ではスタメン入りした。
そして、友人はバスケ部をやめた。
「×××君、どうして辞めたんだい?」
「別に……もうバスケ好きじゃねぇし」
「? 小学生からやっていたじゃないか」
「……。 お前は好きかよ、バスケ」
「えっ」
「だよな。 すぐに「好き」ってでないんだよな。 やっぱり」
正直なところ友人に誘われて始めたバスケだ。
好きでも嫌いでもないというが本音だった。
サッカーもそうだった。
褒められるからやっていた。
「俺はさ……『好き』って言えたんだ。 バスケが好きで小学生から続けてきたのに、最近始めたお前に勝てない。 好きでもないお前に」
「×××君……」
「ごめん。 俺、お前とはつるめないよ。 もう。 好きなもんがなくなっちまいそうだ」
誘ったのは君じゃないか。
――くだらない。
これがきっかけで俺は他人に興味がなくなった。
とはいえ友人せいではないと思う。
遅かれ早かれこうなってはいたんだろう。
友人はサッカーとバスケという違う舞台に立っている間は俺の事を応援してくれていた。
しかし、同じバスケという舞台に立った瞬間、俺のことを切り捨てた。
それから、最低限やらなくてはいけない勉強以外は何もしなくなった。
そして他人の評価でさえもうっとおしく感じ始めた。
そうやって褒めているが、俺が近づこうとすれば切り捨てるんだろう。
しかし、今は違う。
ガルバは俺の事を理解しようとは思わないだろう。
しかし、ガルバは俺をうらやむことはない。
むしろ俺を見て人間は生き辛そうとすら思うだろう。
他の契約者もそうだ。
友人のように俺を切り捨てたりはしない。
――全身全霊で俺を殺しに来るだろう。
あの女も逃げたが次会えばまた敵として立ちはだかるはずだ。
当たり前だ、他の人間には俺を殺さねばいけない理由が叶えたい望みがあるのだから。
俺がどんに才能を持っていても関係ない。
俺の『才能』を踏み越える『想い』があるのだから。
俺の『獅子』に能力は発現したが、クールタイム30秒という枷があるため、それほど使い勝手の良い物ではないし、まず武器としてのリーチが短い。
多分他の契約者に比べればずいぶん使い勝手の悪い『武装』だろう。
当たり前だ。
退屈が消え、生きる希望を得た程度の『想い』で他の契約者のような『武装』を得るはずがない。
だが、俺には生まれついた才がある。
これで対等なのだ。
初めて。
初めて俺はこの才能に感謝した。
人生への退屈の元凶である才能に縋らねば俺は他の契約者達と対等にすらなれない。
さぁ、俺と殺しあおう。
そのためならあの女のようになんだってやってやる。
あぁなんでも。




