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Sabbat・Servant(サバト・サーヴァント)  作者: ゆにろく
6月8日 金曜日
20/61

15話 回りだす歯車(2)

◆桐川 絶◆


俺は契約で得た身体能力を計測するため外を歩いていた。

今日は平日だが学校は休んだ。

まあ受験学年なので学校を休む生徒は少なくない。

不自然ということもないだろう。

目的地は近所の河川敷。

あそこは背に高い草が多く生えているため平日であれば昼でも人目に付きにくい。


「絶。 結局、願いは決まったか」


「あぁ…… 」


契約したものの決めていない。

勝てば願いが叶うといわれても何か叶えたい願いなど持ち合わせていない。

ガルバが気になるのも無理ない。

俺の『想い』は大きな退屈であった。

ガルバとの、悪魔との邂逅で俺の『想い』は満たされつつある。

それは『武装イスティント』の弱体化を意味する。

つまり、ガルバは俺に何か欲を持ってほしいのだ。


「まさか、退屈がそこまで消えるとは思わなんだ」


「すまないな、ガルバ。 そうだな……」


一生、俺の退屈を満たすものは何か。

悪魔になるというのも考えたが、ガルバの話を聞く限り願いにはあまりふさわしくない。

悪魔は魔法を使い魔界では《《なんでもできる》》という。

それではほとんど、今と変わらない。

もっと刺激が欲しい。

もっと生を感じたい。

何か……


「絶。 入った(・・・)


他の契約者か。

ガルバのレーダーは1kmだそうだ。


「向かってきている。 む、速いな。 車か?」


「車?」


車。

それはかなり悪手ではないか。

わざわざ的を大きくする意図が不明だ。

結局計測はできていないが車を避けるのは今の身体能力では容易だろう。

……であれば、バスなどの乗り物に乗っていて意図せずこちらに近づいてしまったというパターン。

ならばこちらも向かうとしよう。


――計測を済ませられる。


◆シェロ◆


契約後、秋奈はかなりアグレッシブに動いていた。

つまり彼女は焦っている。

なぜなら、秋奈は妹を生き返らせる(・・・・・・)という選択肢を知らない。

妹を轢いたとき殺してしまっていたら、そちらを提案したが重体で助かってしまったのでそれはそれで利用する。

あたかも治すことしかできないように装い、妹が死ねば手遅れという状況を作る。

蘇生は可能か? と聞かれたら答えたが聞かれていないので私の責任ではなく秋奈のミスだ。

私は契約者を探す際かなり焦らされた。

次は彼女に焦ってもらうとしよう。

焦れば『想い』は大きくなる。

そして、多くの契約者と戦い、経験を踏み強くなるだろう。


とそんなとき


「入ったわ♪」


網に契約者がかかった。


◆日野秋奈◆


自宅から電車で20分行ってから、バスに乗り換える。

ここは私が昔住んでいた土地だ。


自宅周辺には契約者はいないらしい、であれば距離を伸ばしていく。

とはいえ、どの方向に距離を伸ばすかという選択肢は無数にある。

なら、最初は土地勘のある昔済んでいた町へ行くという選択をした。

その移動中、もしくはここで契約者と会えることを願った。


妹にはなんの罪もない。

あんなのは理不尽だ。


この町に近づけば色々な思い出がよみがえる。

住んでいたのは小6までだったか。

あの頃は妹ともよく遊んだっけ。

妹。

大切な家族の一員であり、家族の中でも一番心を許しているといっても過言ではない。


シェロを一番恨んでいるが、アイツは私を目当てに来たのだからこの理不尽の原因は私にもある。

私は姉としてこの理不尽を取り払う。

これは姉としての責任であり、姉としての願いである。


妹にもっと生きて色々なことを経験して欲しい。

幸せに生きて欲しいという願い。


彼女の将来の夢は何だったか。

小学生のころはケーキ屋さんだったか、花屋さんだったか。

中学生に上がってからは……

彼女の選択肢を奪う権利は誰にもない。


私が奪い返すんだ。

この不公平な世界から。

くそったれの悪魔から。

こいつの思い通りになるのは酷く癪に障るがそれしかないならそうする。

――例え何を犠牲にしても。


「入ったわ♪」


透明化をしているシェロが口を開いた。

声を聴くだけでもイライラする。

この嬉しそうな声色。

憎い。


「……どこ」


今はバスに乗っている。

次で降りれば契約者と会えるか。


「そうねぇ。 あぁ、あの河川敷あたりね♪ 橋の向こう側」


建物の影から左手に一瞬見えた河川敷を言っているのだろう。


このバスのルートは知っている。

シェロの言った河川敷の上にかかる橋を渡る。

敵の場所はここから3つ先のバス停と4つ目のバス停の間といったところだ。

3つ先のバス停で降り、徒歩で敵の元へ向かう。


――もしくは……


これは戦いだ。

シェロが言っていた。

武装イスティント』は魔法の武器であるから先手を取るべきだ。

相手の『武装イスティント』の攻撃を食らう前に一撃で仕留めるのが得策だと。

シェロは暇があれば戦い方を話していた。

私はシェロが嫌いだから、相槌を打つこともしなかった、「お前なんか知るか」という態度を終始とっていた。

だがしっかりと妹を救うべく有益な情報は頭に叩きこんでいる。

そして、そのことをシェロは――癪だが――知ってていて多くを語っている。

つくづく嫌味な悪魔だ。


あとは私次第。

人を殺すことが私にできるか。

妹のためとはいえ人を傷つけてよいのか。


――多分できる。


シェロと契約してから色々考えた。

その中で一つ気づいたことがある。

私は思ったよりも冷たい。


いや、思えば私はクラスでいじめが起きた時もただ傍観していたっけ。

いじめがクラスで起きた時も知らんぷりをして友達と笑いあってたっけ。

いじめられていた子は特に友達という訳でもなかったから。

その子が一度私に「助けてほしい」という眼をして見てきたのを覚えている。

私は見返した。


――「私達にはかかわってくれるなよ」と。

私や私の友達がその対象になったらどうするんだ。と


いじめが大々的に発覚した時も全く罪悪感は湧かなかった。

……「かわいそうに」とくらいは思ったかもしれない。


まあ、他の人間も同じようなものだろう。

殺人事件のニュースを見てもそれが他人なら涙を流す人はいない。

その冷たさが他人より大きいだけ。

他の人より少し他人に冷たいだけ。

何も思わないだけ。

だから、決めた。


「シェロ。 策がある」

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