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Sabbat・Servant(サバト・サーヴァント)  作者: ゆにろく
6月6日 水曜日
13/61

10話 サーニャと薫

◆二階堂薫◆


小早川とかいう平和ボケ野郎と戦ってからはや2日。

契約による身体能力向上は治癒力にも影響するらしく、銃弾で打ち抜かれた怪我は治りつつあった。


「暇ねぇ」


「俺だって契約者探し回りてぇけど、完治しないうち行くのは得策じゃないだろ?」


「それはそうね」


テレビを『武装イスティント』でぶち壊したときは初めて見る『大熊グリズリー』に興奮して何も思わなかったが、今思えばなんてバカなことをしたんだろう。

なんとなく大剣のイメージがあったのにこんな狭い部屋で出すんじゃなかった。


「……テレビ、買い行くか」


「あぁ。 そういえばなにか破壊してたわね」


「来るか?」


「町はあまりみてなかったから少し興味があるわ」


まぁ遠出にもならないから契約者に会うってこともないだろう。

腹がまだズキズキ痛むが、それは根性だ。

いかんせん、彩香が帰ってきたときテレビがないんじゃ不便にもなるだろう。


「てか、サーニャは俺から離れられるのか?」


「15m以上離れると『武装イスティント』も出ないし、身体能力向上もなくなるわね」


悪魔も距離を気にしてふわふわしなくていけないのであれば案外しんどそうだ。


◆サーニャ◆


「割と壮観ね」


人間世界に来るゲートをくぐるとき、原理は謎だがこの世界の一般常識みたいなものは頭に入ってくる。

それから、デンカセイヒンが多く並ぶ店があるのは知っていたが来ると案外面白い。


「そうか?」


「えぇ。 魔界は魔法があるから道具に頼らないもの」


「バカにされてたのか」


「人間は人間で工夫してて凄いと思うわよ。 悪魔ほどじゃないけど」


薫はなんだか不服そうな顔をしていた。

契約とは言ったものの私がいなくては薫はただの人間だ。

薫を物理的に殺せるかと言われたらまた別の話だが、人間はいつか死ぬので結局私は勝つ。

悪魔>人間だ。


「ふーむ」


薫はテレビの前で悩んでいた。


「どれでもいいじゃない。 映るのは同じなんでしょう?」


「俺はいいんだよ。 俺は。 彩香がうるさいんだ」


彩香。

曰く、薫の恋人だったらしい。

というか自然とその女が生き返る前提で話をしている。


「勝つ気満々ね」


「当たり前だ。 誠とかいうやつもあの後やってりゃ勝ってた」


案外ギリギリに見えたのだけれど。

薫は負けず嫌いなようだ。

まぁ勝つ気満々な態度は評価できる。


「まぁ、慢心しないようにね」


「当たり前だ。 傷が治ったらさっさと5人始末して、石動を殺して終わりだ」


ふと思った疑問を口にする。


「ねぇ薫。


――石動ってやつを殺すのと、彩香を生き返らせるのどっちが大切?」


薫は思ったより考え込んでいた。

私は見た。


――『想い』が悲しさや喪失感より殺意が勝っていたのを。


「二択をとる状況なんかねぇだろ」


「……それもそうね」


薫は結局口にはださない。

やはり人間は不思議だ。

やりたいことの優先事項が心で決まっているはずなのにそれを出さない。


「これにするか」


「こっちのと何が違うのよ」


「こっちのほうが画質はいいんだが、これは安い」


「画質が良いほうがいいんじゃないの?」


「それはそうだが、節約ってやつだ」


また、自分に嘘をつく。

画質を良いほうが良いならそっちを買えばよいのに。


――あぁ、好きなように生きられる悪魔でよかった。

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